安田峰俊のレビュー一覧

  • 現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史

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    中国の秘密結社が現代においても大きな意味を持つ、そもそも中国共産党が秘密結社の成功例だという指摘は面白い。中国の歴代王朝は中央集権的な体制を作ったが、地方に送られる官僚に土地への愛着はなかったために民生向上へのインセンティブがなく、政治や社会への不信感を抱かざるをえない、究極の自己責任社会だった。そこで血縁者同士のより集まった宗族や同郷会といった相互扶助組織が作られた。それが中国の秘密結社の下地になっている。
    チャンツィーも入党した中国致公党という参政党、世界各国の華僑社会の秘密結社、法輪功、全能神、新天地教会といったカルトなどについて説明されている。

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    2021年04月30日
  • 現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史

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    面白いテーマで中国を理解する上で知っておいて損はない。秘密結社は近現代史的な内容で、後半多くのページが中国の新興宗教に関する記述でさかれていて、信じられないおかしさ、真剣さ信心深さと、当局の異常な警戒ぶりを垣間見る。なぜこのような宗教にハマる人々がいるのか、から、そうは言っても人権侵害や不当弾圧している政府、共産党。冗談みたいなことが真面目に起こる中学の不可思議を痛感。

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    2021年04月03日
  • イミダス 現代の視点2021

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    ネタバレ

    世の中のことにとても疎いので読んでよかった。


    印象に残ったワード「全体主義」「差別」「ファシズム」「水道法改正」「種苗法改定」「カジノ」「歴史修正主義」


    コロナ禍だからこそ伝えたい「自由」と「権利」と「多様性」
    p19「自由や多様性を守る」ということは、(コロナ禍で)マスクをしない人も、バーベキューをする人も、同じ社会で暮らす仲間として尊重するということ…せめて糾弾したり排除したりしないということ…自分たちの安全のためにどうしても行動を変えてもらう必要があるならば、その人の人権や生活が損なわれないよう、民主的な手続きを守りながら、理性的にお願いするということ
    p17〜18 社会を民主的

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    2021年03月06日
  • 現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史

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    現代における天安門事件の意義を描いた傑作ノンフィクション『八九六四』があまりにも素晴らしかった著者が中国の秘密結社をテーマにしたのが本書であり、もうタイトルを読むだけでワクワクしてしまう。

    対象となるのはマフィア、マイナー政党、カルト宗教などであり、日本でも話題の孔子学院などは著者自らが潜入しており、その生々しさも含めて面白い。また、本書が優れているのはそうした普段は陽の目を見ないような秘密結社を白日のもとに晒したという点もさることながら、こうした秘密結社を共産党がなぜ執拗に迫害するのか?(例えば宗教団体の法輪功への迫害はその筆頭である)、という点への答えを見出している点にある。

    本書での

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    2021年02月28日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    かなり面白かった。
    当時を振り返って、現在の中国人だけでなく日本人にもインタビュー。彼らは身分も「八九六四」に対する意見も様々で、「あれは失敗だった」と悔悟する者もいれば、今なお運動を続ける者もいる。
    天安門事件とは何だったのか。何となくフワ〜っと始まったデモが、体制の武力行使によって鎮圧されたというのが事の顛末らしい。それによって大半の若者たちの心は折られてしまい、今なお傷痕を残している。

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    2021年01月22日
  • さいはての中国(小学館新書)

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    ディープな中国像が中国内外から見えてくる1冊。
    7章8章は興味深かった。個人的には内モンゴルの章のモンゴル族とチベットやウイグル族の国への認識の違いみたいなところも面白かった

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    2020年05月29日
  • 性と欲望の中国

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    冒頭にあるように、人口が多ければそれだけ欲望も大きなる。極端なところの切り出しではあるだろうけれど、スケールが違う。そのパワーは、AIとの融合やラブドール仙人みたいにプラスの方向に作用することもある。

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    2020年05月16日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    天安門事件は中国の民衆の中ではすでに風化した経験であることを明らかにしたルポ。風化に現在の政権が加担しているのは明らかだが、それだけではないことが歴史の難しさを示している。

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    2020年01月19日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    1989年に天安門広場に集まった大学生たちは、国のエリート候補である自覚を持ち、親である共産党政府に甘える子供のような気分だった、というのはわかる気がする。

    それを打ち砕き、近代史に残る事件としたのは、共産党内部の権力争いの結果だった。

    集会に参加したエリート候補たちは、その後、中国政府の幹部となった者、民主化運動を貫きアウトロー?化したものとさまざまだが、「言論の自由はないが豊かになった中国社会」に対する想いには複雑なものがある。

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    2019年12月25日
  • もっとさいはての中国(小学館新書)

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    中華圏の周縁を生きる人へのルポルタージュをまとめた一冊。同著者の書いた「さいはての中国」の続編的な一冊。

    内容的には濃くなっていて。中国本土の村同士の抗争が起こった地域に踏み込んだり、恐竜オタクから研究者になった人に話を聞いたり。中国の深淵をさらに覗き込んだ一冊になっている。

    なんだけど…前作とはなんか味わいが違う感じがしていて。
    それが何によるのかがわからずモヤっとしていて、レビューも書けずにいたんだけど、それが「読み手(聞き手)が書き手(話し手)に期待するもの」によるものの変化だとわかって、やっとレビューを書く気になった。

    それを端的に感じさせるのが、本著の最後にある郭文貴という人物

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    2019年12月06日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    "そこ"にいた人もいなかった人も、いまだに熱い思いを抱く人も冷めた目で見ている人も、さまざまなインタビューから紡ぎあげられる天安門事件はそのイメージが一つに集約されるわけでなく、歴史は様々な側面があることを肌感覚で知ることができる。
    また、最近の香港における反送中プロテストの背景も垣間見ることもできた。
    天安門事件の詳細な経緯などは他の書籍に譲るとして、インタビュー各人毎に節が構成されており、一人ずつ毎日少し読んでも飽きが来ないし、話の流れが途切れることもないので、気軽に読めるところが本書の良い点でもある。

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    2019年11月29日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

    購入済み

    すばらしい

    よくまあ、これほど丹念に、このテーマを追いかけたこと。すばらしいと思います。当時、彼の地で騒動が起こっていることだけはわかりましたが、実際に何がどうなっているのかは全然知らなかった。そうだったのかあ、といちいち興味深く、共感したり、反感を持ったりしながら一気に読了しました。筆者が何も押し付けてこない、ただただ、淡々と、今引き出せることだけを取材して並べた手法もすばらしいと思います。良書です。

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    2019年11月26日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    香港情勢を理解する上で役に立つかな?と手に取った天安門事件の「後」を生きる人々のインタビュー集。一言でいうと「世知辛い」。自由より民主制より繁栄。豊かさを与えれば大衆は独裁に従順になる…。

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    2019年11月11日
  • 移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々

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    安田峰俊(1982年~)は、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員も務める、ノンフィクション作家。立命館大在学中に中国・深圳大学に交換留学した経験から身に付けた流暢な中国語を駆使した、中国関連の書籍や雑誌媒体、テレビ等での活動で特に注目されている。2018年出版の『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』で城山三郎賞及び大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
    本書は、2015年に単行本で出版された『境界の民』を加筆修正の上、2019年に文庫化されたものである。
    本書のテーマは題名通り「境界の民=マージナル・マン」であり、取り上げられているのは、在日ベトナム人、日本ウイグル協会、日本人と中国人の間に

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    2019年11月09日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    天安門事件から30年が経過した現在に、関与した人たちへの入念なインタビューをまとめたドキュメンタリー。
    現在でも中国政府は天安門事件に関して規制しているため、既に中国人の若者たちは天安門事件を過去の出来事として詳細に知ることも出来ない。さらに事件に関与した学生たちも、多くの人たちが現在の地位を脅かされることを恐れて、当時のことを語ろうとせず、事件は風化しつつある。
    そのような中で、著者は粘り強く取材を重ねて、様々な形で事件に関係した人たちへのインタビューを行い、それらを本書にまとめられた。
    さらに、現在の中国では経済成長に成功したこともあり、当時のように中国を変えようとする意識も低くなり、活動

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    2019年09月14日
  • 性と欲望の中国

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    「エロ」という根源的欲動をテーマを、中国に身を投げ出して取材するような著者だからこそできる取材スタイルで掘り下げた一作。

    テーマ自体は中国人すべてにかかわるといってもいいテーマ。だからこそ、テーマを追えば追うほど「中国人のエロ」というより、エロよりも「中国人各人のもつフェチズム」が見えるようなところがあり。読めば読むほど「中国」そのものはわかるような、わからないような、そんな気分になる一冊だった。

    個人的に気になったのは、東莞の性風俗事情について書いたくだり。接待向けにも使われる中国式の風俗サウナが中華圏の人に向けて特殊化し「莞式服務」とか「東莞式ISO」などと呼ばれある種のブランド化して

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    2019年08月15日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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     「“その事件”を、口にしてはいけない」
     1989年6月4日、中国の“姿”は決められた。
     中国、香港、台湾、そして日本。60名以上を取材し、世界史に刻まれた事件を抉る大型ルポ!!この取材は、今後もう出来ない――。

     天安門事件の学生指導者の筆頭であり、いまも中国民主化運動の象徴的存在である王丹は答えた。

    「しばしば『天安門事件は中国を変えなかった』という批判がなされますが、しかし『たとえ中国を変えなくても世界を変えた』とは言えるはずですよ」

    「私たちは自分の家の問題は解決できなかったが、よその家の問題を解決していた―――」


     そしてこのルポの作者、安田峰敏は感じた。

    「あまりに

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    2019年08月11日
  • 移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々

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    国境の隙間にいる人たちを取材した旅の記録。埼玉のベトナム人タウン、新疆ウイグル自治区での中国共産党の弾圧、上海の日本人社会、上海の日本人向け風俗店を営む中国人マスターの一族の話、国自体が「隙間」の存在である台湾、という形で章が立てられている。

    取材されたのが2013・2014年で初出が2015年。4年を経て新疆ウイグルでのウイグル人達への監視体制の強化が進み、台湾の政治情勢よりも香港への中国の関与が大きくなっている。

    現在コンビニで働く外国人のアルバイトの人たちの在留資格で出来るかはわからないが、仮に一部の人たちが永住するといわば移民一世となる。彼らの子ども達が社会人になる頃はどうなるのだ

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    2019年08月06日
  • 性と欲望の中国

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    ネタバレ

    ノンフィクション関連で大きな受賞をした後の第1作がこれ、、というのがいかにも著者らしいが、統治への考察と庶民の生活をうまくミックスして論ずるという彼の特徴は充分に活かされている。

    驚きなのはラブドールが大陸では独自の発展を遂げると共に、テクノロジーを活用したものになっているということ。かつて一人っ子政策という壮大な実験を行った大陸では、何事も大がかりになるのだなぁと思わずにはいられない。

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    2019年06月23日
  • 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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    ネタバレ

    天安門事件に対し、中国人の見方はさまざま。「民主化すべきだった」という意見に、「あのとき民主化すれば現在の繁栄はなかった」という意見。デモの参加者もどこか牧歌的だったところはあるし、子が親に反抗するような、そんな感じのデモだったという。多くの中国人が出てくるが、聞きっぱなしや書きっぱなしではない。しっかり著者の考察が入っており、ジャーナリズムの鑑だと思う。

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    2019年05月27日