安田峰俊のレビュー一覧
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中国の秘密結社という魅力的なタイトルに誘われて本書を手にしたが、私がイメージしていたフィクサーのような存在や闇から表社会を捜査しているというものよりも、もっと現実的な存在であった。一方で、表社会に多大な影響を及ぼすというイメージは合っているようであった。
秘密結社とは、政治や宗教、犯罪も含めて同じ目的のために集まりお互いを助け合う集団であり、その性格から外部に情報があまり出ないことから、秘密結社化していくものであり、中国に関わらず、どの国にも多かれ少なかれそのような集団は存在している。
本書ではその中でも中国を舞台に過去から現在までに、どのような秘密結社が生まれ各時代にどのような影響を与えてきたのかを克明に記録したノンフィクションである。
清の末期からどのような成り立ちを経て、現在の中華人民共和国という国が出来上がってきたのか、その流れを理解することができた。
一方で、中国人(という定義がどこまでを含むかは議論の余地があるが)が、各国に移住し華人としてコミュニティを形成し(これが秘密結社化する)、最終的にはその国の中枢にまで入り込み、気づいたら中華人民共和国に支配されてしまうということが、これから各国で起こるのではないかと不安になってしまった。特に日本は鎖国的であるものに、白人や黒人など明らかに人種の異なる移民や難民は警戒するが、中国人や韓国人などの近しい人種には比較的寛容であることが、知らないうちに日本が蝕まれるのではないかという不安が残った。 -
Posted by ブクログ
中国の秘密結社が現代においても大きな意味を持つ、そもそも中国共産党が秘密結社の成功例だという指摘は面白い。中国の歴代王朝は中央集権的な体制を作ったが、地方に送られる官僚に土地への愛着はなかったために民生向上へのインセンティブがなく、政治や社会への不信感を抱かざるをえない、究極の自己責任社会だった。そこで血縁者同士のより集まった宗族や同郷会といった相互扶助組織が作られた。それが中国の秘密結社の下地になっている。
チャンツィーも入党した中国致公党という参政党、世界各国の華僑社会の秘密結社、法輪功、全能神、新天地教会といったカルトなどについて説明されている。 -
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ネタバレ世の中のことにとても疎いので読んでよかった。
印象に残ったワード「全体主義」「差別」「ファシズム」「水道法改正」「種苗法改定」「カジノ」「歴史修正主義」
コロナ禍だからこそ伝えたい「自由」と「権利」と「多様性」
p19「自由や多様性を守る」ということは、(コロナ禍で)マスクをしない人も、バーベキューをする人も、同じ社会で暮らす仲間として尊重するということ…せめて糾弾したり排除したりしないということ…自分たちの安全のためにどうしても行動を変えてもらう必要があるならば、その人の人権や生活が損なわれないよう、民主的な手続きを守りながら、理性的にお願いするということ
p17〜18 社会を民主的に保ちたいのであれば、…個人の自由や権利に制約を課すことには、極めて抑制的でなければならない。同時に、私たちは制約を課したり課されたりすることに、常に抵抗感と違和感を保たなければならないのであって、絶対に慣れてしまってはいけない。…多くの権利者にとって、市民の人権を容易に制限できる状況は、とても都合がよいものだから
p21 民主社会の強みの一つは、多様な背景を持つ多様な人々が存在するがゆえに、大きな社会問題が生じた際にも多方面から無数の解決法が自由に試みられることにある。そうした解決法には、優れたものも、ダメなものもあるだろうが、ダメなものは次第に淘汰され、優れたものが採用されていく。それがイノベーションの基本的な力学だ。
映画作家 想田和弘
集団行動が生み出す独特の高揚感は、集団を統率する権威と結びついたとき、ファシズムへと変貌する
p267 権威に従属することによって人は行動に伴う責任から解放され、社会的な制約から「自由」に行動できるようになる…こうした治外法権的な状況がいったん成立すると、これを維持・強化しようとする動きが服従者の側から自発的に出てくる。それは人びとが自分の行動の責任を指導者にゆだね、その命令を遂行することにのみ責任を感じはじめるという、状況的義務への拘束が生じるためである。
甲南大学教授 田野大輔
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Posted by ブクログ
現代における天安門事件の意義を描いた傑作ノンフィクション『八九六四』があまりにも素晴らしかった著者が中国の秘密結社をテーマにしたのが本書であり、もうタイトルを読むだけでワクワクしてしまう。
対象となるのはマフィア、マイナー政党、カルト宗教などであり、日本でも話題の孔子学院などは著者自らが潜入しており、その生々しさも含めて面白い。また、本書が優れているのはそうした普段は陽の目を見ないような秘密結社を白日のもとに晒したという点もさることながら、こうした秘密結社を共産党がなぜ執拗に迫害するのか?(例えば宗教団体の法輪功への迫害はその筆頭である)、という点への答えを見出している点にある。
本書での結論は、そもそも中国共産党自体がその結成当時は秘密結社と言ってよいレベルの胡散臭さに満ち溢れたものであるが故に、同じような秘密結社がいつか自らの政権を危機に陥れる可能性があるリスク要素であるとみなしているからの他ならない、というものである。一党独裁体制が成立した今でこそその権力基盤は当初から確立されているかのように見える共産党も、当時の歴史を辿れば極めて山師的な一軍であったのは間違いがない。そうした点で本書は単なる面白おかしく秘密結社を描くだけではなく、中国という国家の成り立ちを秘密結社というキワモノを舞台にして描き出すことに成功している。 -
Posted by ブクログ
中華圏の周縁を生きる人へのルポルタージュをまとめた一冊。同著者の書いた「さいはての中国」の続編的な一冊。
内容的には濃くなっていて。中国本土の村同士の抗争が起こった地域に踏み込んだり、恐竜オタクから研究者になった人に話を聞いたり。中国の深淵をさらに覗き込んだ一冊になっている。
なんだけど…前作とはなんか味わいが違う感じがしていて。
それが何によるのかがわからずモヤっとしていて、レビューも書けずにいたんだけど、それが「読み手(聞き手)が書き手(話し手)に期待するもの」によるものの変化だとわかって、やっとレビューを書く気になった。
それを端的に感じさせるのが、本著の最後にある郭文貴という人物へのインタビュー記事。
「昔は中国政府の要人とも付き合いのあったビジネスマンだったが、今はアメリカに亡命して中国政府要人の暴露をネタにユーチューバーをしている」という人物。実際、その「ネタを暴露された政府要人(王岐山)」が先々月も訪日して日本首相と会ってたりする、そんな人物。
別にこの「暴露ユーチューバー」の記事がどうこう、ということではないのです。
ただ、この人物はお金を持ち政治力も持つ(あるいは持っていた)「声の大きな人物」。だからこそ、本人は本人の言いたいことを話して影響を与えようとするし、周りもそれを理解して自分自身の主張をこの人物が語ってくれることをどこか期待している。
前作の「さいはての中国」で取り扱っていた人物には、例えば中国のネットカフェでくすぶっている人のような「声の小さな人物」が結構いて。そんな声をすくい上げているのが魅力であった反面、それが今の中華圏を代表・左右しているのか、と言われると疑問だった。
今作の「もっとさいはての中国」でも扱っているのが中華圏の周縁であることは間違いがない。ただ、より「中華圏を左右しうる人物」にもアプローチをしていて。
だからこそ、読者も発言力のあるそんな登場人物(や著者)が自分にとって都合のいいことを話してくれることを期待してしまっている。それが自ずと味わいに変化を与えているんだろう、と。
そういう無意識の先入観を排してみれば、前作同様、中華圏を非常に興味深い観点から見ている良著。
著者のライターとしての成長と、読者の未熟(それを自覚するのに一か月以上かかることも含め)を実感した一冊でした。 -
購入済み
すばらしい
よくまあ、これほど丹念に、このテーマを追いかけたこと。すばらしいと思います。当時、彼の地で騒動が起こっていることだけはわかりましたが、実際に何がどうなっているのかは全然知らなかった。そうだったのかあ、といちいち興味深く、共感したり、反感を持ったりしながら一気に読了しました。筆者が何も押し付けてこない、ただただ、淡々と、今引き出せることだけを取材して並べた手法もすばらしいと思います。良書です。