安田峰俊のレビュー一覧
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今年、発生から30年ということで、ニュースに取り上げられることも増えた天安門事件。日本では「中国共産党が民主化運動を武力で鎮圧した事件、すなわち悪」とした取り上げ方が大半です。この事件で天安門広場を占拠した当事者に、30年を経過した今の視点から当時の運動を再評価してもらうインタビューをまとめたのが本書です。
天安門事件の当事者は北京周辺の大学に通う当時の大学生が主体でした。30年前の中国で、北京に住んで大学に通うというのは相当なエリート予備軍です。彼らにすると、自らの既得権益を守ってくれる政治体制に対する反抗という位置づけになります。差別された貧困層が蜂起したわけではないのですね。
そういう背 -
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中国社会の底辺層やマイノリティ層、あるいはそういう人たちにかかわることを生業としている人たちへ取材した本…と書くと「中国という重箱のすみをつつくような本」のような印象を受けるし、この本を読む前はそういう本なのかな、と思っていたのです。
しかし、読んだ後は「重箱のすみにこそ、その重箱の扱われ方が現れるんだな」と感じた、そんな一冊。中国という「派手な重箱」を、すみっこから見渡したい人におすすめの一冊です。
文化大革命真っただ中に習近平が青年期を過ごした田舎を訪れ、「多様な価値観に触れるべき青年時代にずっと農村にいたことで、習近平は「それしかしらない」人物である(p.97-98)」と断じたくだりは -
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【紅き乱宴の後に】1989年に起こった天安門事件によって何らかの影響を受けた人々のその後の人生を取材した作品。当時のリーダーは,民主活動家は,そして血気盛んな学生をかばった教授たちは,今いかなる思いを抱えて生活しているのか......。著者は,中国に特化したルポライターとして活躍を続ける安田峰俊。
個人のレベルにまで降りていき,天安門事件の内幕を語らしめた記録としても評価できる一方,大志破れた若者たちがその後どのような道のりを辿り得るのかを,痛切な実例と共に教えてくれる一冊でもありました。中国現代史に興味を持たない方にもオススメしたい作品です。
〜大志を抱いた孫悟空の人生は,実は筋斗雲を降 -
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1989年6月4日に発生した中国の天安門事件。中国の正史上、なかったことにされており、口にすることはおろか、6月4日が近づくとWeChatPay等の送金アプリで8964元・64元という金額を送金することすら禁じられるこの事件について、政府に立ち向かった学生運動家や市井の住民、逆に政府側として鎮圧に関与した警察学生など当時を知る人々や、天安門事件以降の世代として香港の反政府デモである「雨傘運動」に関与した一連の運動家など、60名を超える人々へのインタビューをまとめた大型ルポルタージュ。
まず一読して、歴史的事実として認識している天安門事件(私自身は幼少の時代であり、ほぼこの事件に関する記憶はな -
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ネタバレ天安門関係者に話を聞いて回った著書。ステレオタイプではない生の声が満ち満ちている。転向し出世した者、一貫して反政府の態度を貫き続ける者、後年にネットで「覚醒」し活動をはじめたことで人生を狂わされた者、日本人の目撃者、元リーダーとしての十字架を背負い続ける者と十人十色。
これだけたくさん話を聞くと散漫な印象に留まりがちだが、著者の豊富な知識に基づいた思考が、地の文としてところどころ記されているため、大変に読みやすい。
ワンテーマで何かを記そうとするとき、書き手はイタコとしてふるまうだけではなく、話し手の思考をしっかり理解し、分析しながら、書き進めること。それがなにより大事なのだということを知 -
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同じ文化のルーツを持つ中国や韓国などの東アジアや、明治維新以降自らの範として積極的に文化や価値観を取り入れた欧米諸国については、日本と文化の違いはあっても、相手の価値観を理解できる。しかし東亜とも欧米とも全く違う価値観を有するベトナム人と接する時に、自分がいつも不思議に感じていたベトナム人の文化や価値観に踏み込んだ、奥の深いルポルタージュであった。筆者は、自身の価値観を挟まずに書き進めている意図を感じながらも、ベトナム人の個々の犯罪に対して、筆者の善悪判断が垣間見えるところがあり、全体の客観性を欠くようにも感じたが、一個人の意見として奥行きを感じた。取材対象を深く観察してその懐に入り込み、情
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ネタバレ表紙は、イ族の女性を描いたもの。
知ってる民族もあれば全く知らない民族もある。チベットやウイグルの説明は詳しく、満族や,客家などいろいろ調べてもイマイチ全貌がわからなかったグループも本書で概ね理解できた。
そもそも、民族識別工作,とか,,身分証や略歴に識別民族が記載されて公になるとか、未識別民族というのもいて、厳密な民族政策かと思えば適当に識別されちゃってるところとあり、興味深い。未識別民族の問題は中国内でタブーではないというのも面白いが、それにも増してチベット,ウイグル,モンゴルの民族文化が消滅に向かっているのは酷い。
習近平政権の極度な同化政策は何処までいくのか、エスニッククレンジングや文 -
ネタバレ 購入済み
タイトルと中身にギャップはある
結論から言えば、民族はわかっても中国はわからなかった。また「帝国化する」という言葉も、さほど深い考察が見られるわけではなく、読者をひきつける枕詞に過ぎないようだ。
それなのに☆4つにしたのは、中国の少数民族の歴史と実像を網羅的に取り上げていること。それを知るだけでも買って読む価値はある。
読み終わって、中国は想像以上に複雑だとしみじみ感じた。それも「わかる」ということかもしれない。 -
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精力的に書き続けている中国・アジアルポライター安田峰俊の最新の一冊がこの『中国ぎらいのための中国史』。リアルにお会いしたことが何度かあるということで、応援の意味も込めて安田さんの本は全て購入しているが、本作は安田さんに取ってはホームともいうべき中国史に関する久しぶりの書籍だ。
ライターとしての安田さんの持ち味は現地取材や現在進行形の出来事を咀嚼し、中国国内の論理に照らし合わせて解説することだ。その安田さんが書くのだから、中国史に関する本といっても必ず現代に関する内容が入ってると想像していたが、 その想像通りに本書は中国の歴史的な事項が、現在においてもどのような意味を持つのかと言う観点から中国 -
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ここで扱われている「和僑」とは、21世紀になってから日本人の間で作られた造語です。ここでは中国で行き、中国を喰らい、したたかに生きる人々を気鋭の筆者が追い続けた貴重な記録です。混沌がここにあります。
僕が中国に関心を本格的に持ったのは予備校時代に漢文講師の宮下典男先生の授業を受けたのがきっかけで、それから時は流れて幾星霜。日本と中国との関係が変化していく中で手にとって読んでみた本です。
ここでは『和僑』といわれる日本人たちが、中国で生き、中国で喰らい、中国を喰らうしたたかな生き方を気鋭の筆者が書きとめたルポルタージュであります。
出てくる人間もまぁ多士済々で、雲南の山村に住む2ちゃ