あらすじ
10万人を動かした中国最大の民主化勢力幹部 逃亡2万キロの全記録。まさに現代の『水滸伝』だ。
巨額の贈収賄や不正ビジネスが横行する中国共産党、資産隠匿に手を染める高級幹部たち……。腐り切った現体制に業を煮やした共産党若手エリートは、社会問題を考える人々の食事会に参加したのをきっかけに、次第に体制改革運動に身を投じてゆく。
著者らを待ち受けていたのは、国内安全保安局(いわゆる秘密警察)による監視、尾行、盗聴だった。そして逮捕、監禁、拷問すれすれの非人道的な取り調べ……エスカレートする弾圧から逃れるため、彼らは家族も捨てて逃亡を開始する。
中国国内には当局の厳重な監視をかいくぐって民主化シンパたちの地下ネットワークが張り巡らされている。か細い糸をたどって潜伏先を探すが、すぐに当局の包囲網が彼らを追い込む。
逮捕された後、当局の取り調べは熾烈を極める。自白しない著者の前に、妻まで連れてこられ、強烈なプレッシャーをかけられた。運良く獄から出られても、監視の目はつきまとう。
息詰まるようなサスペンスが次から次へとやってくる中、それでも彼らは逃げ続ける。チベット、香港、ミャンマー、タイ……。拠点を移しながら活動を続け、ときおり北京にもこっそり戻り、体制改革へのアピールを続けてゆく。再び捕まったら一巻の終わり。ボロ雑巾のようになるまで人間性を破壊され、闇に葬られる。
祖国の民主化のため、凄まじい人権侵害と闘い続ける英雄豪傑たちの群像。
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Posted by ブクログ
面白かった。
今の中国政府が反体制派と見做した人間にどのような行動をとるのかがよくわかる。そして何より彼がさすらう中国全土のそれぞれの土地の様子もとても面白い。
ミャンマー軍閥割拠地域やメコン川沿いの黄金三角地帯、チベットから雲南の冬の山越えなど、旅行記としての価値も高くて最高。
Posted by ブクログ
中国で民主化運動を行っていた人物の逃亡記。
正直、この程度の些細な活動で拘束される中国の恐ろしさを味わった。家族と離別し、命からがらタイへ逃げるという話は、あまりにも壮絶である。
あとは一度拘束されても、民主化運動を継続しようという意思の強さに敬服する。家族や仕事があれば、運動から身を引こうとするのではないかと思う。しかし。それでも続けようとするのは、本人の意思の強さにに加え、現代中国社会があまりにも酷いからなのかもしれない、とも思った。
Posted by ブクログ
筆者は1974年生まれ。中国共産党のエリート養成校出身だが、公民権運動の中心人物となったため、習近平政権後の弾圧により苦難の後に2015年2月にタイに出国するまでの手記。2016年6月第一刷。中国共産党による独裁体制の歪みをインサイダーの視点から書いていることが本書のリアリティを増している。
Posted by ブクログ
中国で人権を訴えていた顔(がん)氏が国家権力から目をつけられて以来、拘束を逃れるために逃亡し、そして逮捕され、拷問を受け、ついに脱獄してタイに亡命するまでの体験を綴った逃亡記。国家権力が法的な根拠もなく、国家にとって都合の悪い人物を強制的に拘束することが許されている現代の中国がいかに歪んだ政治形態であるかを読者に訴えて来ます。顔氏が拘束されそうになったとき、かつて共産党当局によって拘束された経験を持つ友人の語った次の言葉が中国という国の持つ闇の深さを物語ります。「南アフリカでアパルトヘイトと闘ったネルソンマンデラのような獄中闘争ができると思ってはならない。マンデラが闘ったのはまっとうな教育を受けた西側諸国の白人紳士だ。彼は獄中でも基本的人権は保証されていた。共産党当局の検察は獄中で肉体的、精神的に徹底的に破壊しようとする」
逃亡記の内容については是非、本書を読んでみてください。手段を選ばない中国共産党当局のやり口が詳細に述べられています。