安田峰俊のレビュー一覧
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調査によると、日本人の9割は中国が嫌いである。この嫌われている中国は、つまり「現代中国」でありさらに言うならば「中国共産党の中国」であろう。
一方、三国志しかりキングダムしかり、エンタメ作品などで中国的世界観は根強い人気を持っている。
すなわち、日本人の素朴な理解においては「中国的」な魅力や歴史ある中国と、現在習近平が暴虐を振るう中国共産党の中国というもの明確に断絶して捉えられているのだ。
しかし、当然中国側としては中国という国は連続している。
それらは、中国で愛される作品や、原神など中国開発のエンタメにも現れている。
一方で、共産党独裁の歪みの中で生まれた、水滸伝などを標的にして間接的に政 -
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安田峰俊さんは本当に「読ませる文章」が上手な方で、この本もすらすらと読めるのだが、内容と問題提起は常ながら実に深い。
なぜ諸葛亮の南征が、現代中国で肯定的に受け止められるのか。
中国の情報工作「認知戦」と紀元前に書かれた「孫子」の関係は。
「原神」のセリフや固有名詞は、なぜ中国古典や漢詩を踏まえているのか。
習近平は演説でしばしば古典を引用するが、「中国において歴史とは、現代の問題を肯定したり否定したりする材料として活用する対象だ」と安田氏は説く。
本書によると、日本には中国を、東洋史学、中国文学、哲学の観点から研究する「シナ学」(シノロジー)が存在したが、「2度にわたる痛恨の体験」で、 -
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アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情に通暁するノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポルタージュです。「無国籍者」となった女子大生。「夜の住人」となった軍閥高官の孫など、個性ある人物が登場します。
本書は中国を中心に活躍されているノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポルタージュです。「無国籍者」となった女子大生。漢族によって抑圧されているウイグル族の青年。「夜の住人」となった軍閥高官の孫…。とエッジの効いた人物たちが目白押しです。
僕は安田氏の著作は『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』(角川文庫)を読んで以来、僕の中に幼少時からある「中国趣味」と安田氏がメインフィ -
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法輪功や青幇、中華人民共和国の衛星政党・中国致公党など現代中国におけるマフィアや宗教団体、政党など秘密結社的な性格を持つ団体の興亡史である。本書に著された各団体への理解において、著者の院生時代の研究テーマである、「械闘」の研究が生かされており、また著者のバックボーンである中国史の知識が本書を「お手軽な新書」に終わらせない奥行きをもたらしている。
2020年アメリカ大統領選挙では陰謀論を信じるトランプ支持者集団「Qアノン」が多くのニュースを賑わせたが、本書ではアメリカ大統領選挙をめぐる陰謀論の流布に一役買った郭文貴や「大紀元」などの法輪功系メディアについても紙幅が費やされており、アメリカ政治に -
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とても面白かった。
ベトナム難民2世、ウイグル、台湾ひまわり学運などどれも今読んでも時勢に合う新鮮な話題で、筆者の先見の明に敬意!
ひまわり学運のときに筆者が感じた「情緒的な感情の揺れ」も興味深かった。
もちろん、記者はある対象に強い思い入れを持ちすぎると公正な取材・執筆ができなくなるし、常に冷静に観察することを忘れてはいけないと思う。駆け出しながら同じ職業についた私自身、それを日々痛感するし忘れてはいけないと思っている。
でも、そんな職業的倫理と、個人的な好意を抱くことって両立し得ないのだろうか?
自分の心から応援したいものに蓋をし、永遠に当事者ではなく傍観者であり続けないといけない。 -
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安田さんすごい。尊敬。いつかこんなものが書ける大人になりたいんだけどなれますか。
新聞に染まりすぎて「著者の感想が表に出る文章」を長らく書いてないけど、やはり筆者の考察が挟まれた方が読み物っておもしろい。一方でそれは明確に「これはあくまで筆者の考えです」とわかる書き方で書かれている。つまり「これが事実だ」という押し付けがましさがない。
かつて参加したけど今は現状の中国をそれなりに肯定する知識人(体制の受益者)、かつて参加したor後年目覚めた危うい一般人、今も気持ちがある少数の一般人、今もまじめに活動してる少数の活動家…
ざっと類型化するとこんなところか。
香港も台湾も今は何も影響を受けてい -
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現代の中華圏(華人社会含む)に存在する”秘密結社”の現状と、その歴史的背景を解説する一冊。
いろいろな秘密結社のことを扱っているのですが、犯罪的秘密結社と宗教的秘密結社を特に大きく扱っている。
筆者ならではの飛び込み型取材は健在なのですが、この一冊はその背景や歴史も詳しく説明してくれる。そして、そういう「中国ならでは」な結社と似たような組織であったり背景であったりが日本にもあることを示唆しながらそれを説明してくれる。
それがこの本の最大のウリであり…多分読者も選ぶところだと思う。詳しい説明はそういう解説より面白いストーリーを求める人には受けないし、宗教的・暴力的なカルト組織やその構成員を日