安田峰俊のレビュー一覧
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ネタバレ表紙は、イ族の女性を描いたもの。
知ってる民族もあれば全く知らない民族もある。チベットやウイグルの説明は詳しく、満族や,客家などいろいろ調べてもイマイチ全貌がわからなかったグループも本書で概ね理解できた。
そもそも、民族識別工作,とか,,身分証や略歴に識別民族が記載されて公になるとか、未識別民族というのもいて、厳密な民族政策かと思えば適当に識別されちゃってるところとあり、興味深い。未識別民族の問題は中国内でタブーではないというのも面白いが、それにも増してチベット,ウイグル,モンゴルの民族文化が消滅に向かっているのは酷い。
習近平政権の極度な同化政策は何処までいくのか、エスニッククレンジングや文化の消滅にならないでほしいと思う、このような知識をアップデートしていき必要がある、著者の本は読みやすく、データも沢山あり役に立つ。 -
ネタバレ 購入済み
タイトルと中身にギャップはある
結論から言えば、民族はわかっても中国はわからなかった。また「帝国化する」という言葉も、さほど深い考察が見られるわけではなく、読者をひきつける枕詞に過ぎないようだ。
それなのに☆4つにしたのは、中国の少数民族の歴史と実像を網羅的に取り上げていること。それを知るだけでも買って読む価値はある。
読み終わって、中国は想像以上に複雑だとしみじみ感じた。それも「わかる」ということかもしれない。 -
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精力的に書き続けている中国・アジアルポライター安田峰俊の最新の一冊がこの『中国ぎらいのための中国史』。リアルにお会いしたことが何度かあるということで、応援の意味も込めて安田さんの本は全て購入しているが、本作は安田さんに取ってはホームともいうべき中国史に関する久しぶりの書籍だ。
ライターとしての安田さんの持ち味は現地取材や現在進行形の出来事を咀嚼し、中国国内の論理に照らし合わせて解説することだ。その安田さんが書くのだから、中国史に関する本といっても必ず現代に関する内容が入ってると想像していたが、 その想像通りに本書は中国の歴史的な事項が、現在においてもどのような意味を持つのかと言う観点から中国史を解説している。 中国史と言ってもいわゆる通史を書いているわけではなくコラムの集積という感じなので、中国に興味を持っている人であれば、あっという間に読むことができるだろう。
参考のために目次をあげれば、本書で取り上げる内容が大体わかると思う。
第一章: 奇書(諸葛孔明/水滸伝)
第二章: 戦争(孫子/元寇/アヘン戦争)
第三章: 王朝(唐/明)
第四章: 学問(孔子/ 科挙/漢詩と李白)
第五章: 帝王(始皇帝/毛沢東)
この目次を見れば分かる通り、本作では日本人が名前ぐらいは知っているけどよくはしらない、だけど中国では(学校教育の影響もあり)よく知られている題材を取り上げて、それぞれが現代中国でどのような意味があるのかを語っていく。こういう並びを見ると、ルポライターというのは題材選びが重要なんだなということを教えられるような気がする。
また安田さんといえば、真面目な考察の中にばかばかしいネタを放り込んでくることで文章の緩急をつけることが得意なライターだが、本作でも冒頭から「諸葛の姓を持つ人間が現在の共産党幹部に存在している」といういかにもなネタからスタートする。他にも日本でも人気のゲーム「原神」から題材を取ったり、始皇帝の部分では『キングダム』への言及を 忘れないなど、しっかり抑えるべきところを抑えていると言うところにニヤリとしてしまう人も多いだろう。
一方でこちらも同じく安田さんの本らしく、現代中国への批判的な視点をつけることも忘れていない。中国生活をしたことがある人ならわかると思うが、本作でも述べられているように、大学生以上の教養を持つ人間にとっては中国の歴史や漢詩というのは共通言語のようなもので、それを使った社会批判や権力闘争が行われていることを面白おかしく書いている。
ちなみに小学生でも漢詩を誦じれるというと日本人にとってはかなり驚きだが、我々だって「春はあけぼの」とか、「古池や蛙飛びこむ水の音」とかは普通に知っているわけで、文化に紐づいた教養というはそういったものなんだろう。トップクラスの大学に受かるレベルの人だと「漢詩でしりとり」をできたりするくらいなのだ。 -
Posted by ブクログ
ここで扱われている「和僑」とは、21世紀になってから日本人の間で作られた造語です。ここでは中国で行き、中国を喰らい、したたかに生きる人々を気鋭の筆者が追い続けた貴重な記録です。混沌がここにあります。
僕が中国に関心を本格的に持ったのは予備校時代に漢文講師の宮下典男先生の授業を受けたのがきっかけで、それから時は流れて幾星霜。日本と中国との関係が変化していく中で手にとって読んでみた本です。
ここでは『和僑』といわれる日本人たちが、中国で生き、中国で喰らい、中国を喰らうしたたかな生き方を気鋭の筆者が書きとめたルポルタージュであります。
出てくる人間もまぁ多士済々で、雲南の山村に住む2ちゃんねらー。欲望の海・マカオで「ニッポン定食」として働いていた風俗嬢。上海で日系企業の依頼で組を作ったやくざ…と規格外の人間ばかりで、読み終えたときにはあまりのディープな世界でため息すら出たのですが、彼等の『濃厚』な生き様と、それを追い続けた筆者の『執念』に感動すら覚えてしまいました。
「2ちゃんねる」に書かれた情報を元に中国の農村へと単身飛び込んでいく無茶を最初に持っていき、その雲をつかむような様子に始まり、マカオではそこに蠢いている人間から『金を儲ける』ということはいったいどういうことであるかを語り合い、マカオの歓楽街で『ニッポン定食』と呼ばれる「おねいちゃん」をやっていた『世界をまたに駆ける』風俗嬢と歌舞伎町というこれまたディープな世界でワールドワイドな『性』事情を赤裸々に語りつくす。本当にディープな世界です。
しかし、上海では『かつての日本』を形作るような福利厚生の厚い会社に勤める人間と現地の人間と積極的に交わっていく『起業家』たちとの『差異』についての考察も非常に面白かったです。
さらには日本の広域暴力団の幹部だった男が上海で現地の人間の上に巨大な組織を作り上げ、なおかつそれが『お上公認』であることに衝撃をうけ、かつて日中友好に身を捧げた女性が『ネット右翼』のような『さらば日中友好』に変じていった軌跡を追い、圧巻のラストは最初で会うことの出来なかった中国で暮らす日本人の青年との直接対決のエピソードでありました。
彼が
「日本よりも中国のほうが自由で暮らしやすいんですよ」
と語るその生活は、これまた規格外のもので、
「こういう人間がまだいたのか!」
という驚きと共に、『人に定めなし』という黒岩重吾先生のお言葉をいまさらながらに感じざるを得ませんでした。混沌を極める現代の中国。そこでしたたかに生きる日本人の存在とその息吹を、少しでも感じ取っていただければ、幸いに思います。
※追記2016年4月23日、KADOKAWA/角川書店より『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人 (角川文庫)』として文庫化されました。 -
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ネタバレ作者の安田さんが中国についてよく知っていて、長年追いかけてる事を知り読んだ。
一方的に中国を叩く安っぽい本ではなく、様々な取材を重ねて客観的に書かれている。
戦狼外交してる外交官も、ポーズでそうしてる場合があることや、日本にいる中国人の中には共産党員で情報を流してる可能性があること、農村出身の苦労人の人も高官の中に居ることなどを改めて学んだ。
習近平さんが農村のために色々やってることや、当時から多弁な人が多い中でどっしりとおおらかな構えでいたエピソードも興味深い。まさに呻吟語の深沈厚重の人物である。
中国を裏側から多面的に知れる本。
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Posted by ブクログ
表紙がタトゥーがっつりの男の上半身、色はマゼンタという毒々しさなので、ちょっと手に取るのを躊躇するが、内容はちゃんとしたものだったので、ちょっと表紙で損しているかもと思う。
ボドイと呼ばれるベトナム人(逃亡技能実習生など)の絡んだ事件を調査し、当事者に会い、現地取材もしていてすごく読み応えがある。
他の取材記者と違って著者が彼らの本音を聞き出せたのは、言葉の問題をクリアできたこと(チー君という日本生まれのベトナム人通訳が活躍)、手土産(ベトナム人は「金麦」が好き)、一緒に食事したことらしいが、言葉と食事というのは高野秀行さんが外国人と仲良くなるためにいつもやってることと同じだなと思う。
読んでいると彼らの「秩序を担保するのは民間の暴力装置と、個人による人治的な権力だ」(P107)というところなんか昭和のヤクザみたいでもある。
著者はベトナム人=悪という書き方はしない。彼らを生んだのは日本とベトナムの経済格差と、「現代の奴隷制」である技能実習生制度だときちんと書いている。
経済成長しない日本で物を安価で売るために外国人不法労働者が黙認されている、ということはうすうす認識していた。しかし、
「(技能実習生を送り出す国々は)人権意識が充分に確立していない、しかも庶民が権力を批判する自由が制限されている強権的な非民主主義国家」であり、「これらの国の「優秀とは呼べない」人たちは、たとえ自分の人権が侵害されても、自覚できなかったり、異議の申し立てを諦めていたりする。そういう土地からそういう人を選んで連れてきて、日本でも母国と同様に制限された人権環境に置く。かくして低コストを実現させているのが技能実習制度の本質的な仕組みなのである。」(P29)というところには、ショックを受けた。国家として人権侵害をしているだけでなく、他国の人権侵害を奨励してるようなものである。
日本の平和で純朴な人々が暮らす農村や漁村で「最もうるわしき日本の姿と並行して、ベトナム人技能実習生が織りなす『蟹工船』さながらのストーリーが展開している。」(P92)
以前は中国人が多かったが中国が経済成長して少なくなり、現在底辺労働者として来る中国人は「本人の学力も実家の経済力もなく、人付き合いも苦手なタイプの、中国社会でうまくいかない地方出身の若者たちである。往年のハングリーな中国人と違って、甘く打たれ弱いが権利意識が強い」ってのもショック。これ、日本の若者にも同じタイプたくさんいる。もし日本がもっと貧しくなれば、こういう若者が海外で出稼ぎするのは明らか。というか、もうやってるだろう。暗澹たる思いがする。
これを読んだ後、ベトナム人によるユニクロ集団万引きのニュースを見たが、驚かなかった。
日本の経済力の低下、少子高齢化などとも絡み、簡単な解決策はないが、とりあえずこの現状を認識することは大切だと思う。
著者には体に気をつけて頑張って欲しい。 -
Posted by ブクログ
労働力減少という大きな日本の社会問題に対する解決策として政府が主導したいわゆる外国人労働者の技能実習制度はこれまでにも数多の問題点が指摘されてきたところであるが、その結果として雇用先企業から脱走して、不法滞在状態にある外国人労働者の問題がある。
本書は、外国人労働者の出身国として、2020年から中国を抜いて1位に躍り出たベトナム(今や、日本で生活する外国人労働者の1/4にあたる)出身の不法滞在者、彼らは”兵士”を意味する”ボドイ”と呼ばれているが、その”ボドイ”にスポットライトを当てたルポルタージュが本書である。
著者のアプローチはとにかく生々しい。というのも、技能実習生の多くが雇用されている地方都市に出向き、ボドイが居住していそうなアパートを見つけると、コンビニで買った缶ビールパックを土産に訪問して一座の輪の中に入りこんでしまうのである。元の雇用先がいかにひどかったか、ボドイが起こした事件などのいきさつ、など、リアルな一次情報に溢れている。
テーマ的に明るくない話も多いのだが、不法滞在の状態を巧みにサバイブしていこうとするボドイたちの生活力ある姿は純粋に面白く、それでいて技能実習制度という政策の問題点を巧みに照射している、という点で社会問題を扱うルポルタージュのお手本とも呼べるクオリティの一冊になっていると思う。