荒木あかねのレビュー一覧
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もうすぐ地球が滅亡するという終末世界で、自動車学校の教官と生徒が殺人犯探しをする物語。今までに読んだ同様の設定の作品のなかで、一番リアルだと思える状況を描いていたように思う。
何もしなくても人類はもうすぐ死んでしまうのに、なぜあえて殺人を犯したのか、犯人は誰なのか、謎を追うミステリでもあり、家族の物語でもあったなぁ。暁人と光の兄弟の絆がすごく素敵で、そんな2人と、自分と弟とを比べて見ているハルちゃんが切なくて、でも弟を想う強い気持ちを感じる。
途中で犯人はなんとなく分かってしまったけど、それでも最後の最後まですごく面白く読めて、無理のない納得感のある終わり方だった。この方の作品全部読みたいと思うほど、すごい作家さんに出会ったな〜と思う。 -
Posted by ブクログ
すごい連続殺人の話なのに、後日譚によって読後感は良くなっている。面白かった。
第1部
バイトで知り合った友達の高校仲間とともに、7人で島のバーベキューに向かう。そこにコテージを管理してくれている久城が加わって7日間過ごす。電気とガスはなく、水道だけ海底送水である。樋藤はクーラーボックスを二重底にして何かを隠し持っている。一人残らず殺すつもりだ。
島に着くとコテージに入った。樋藤は4号室。オレンジジュースにヒ素を混入させる。
しかし何もしていないうちに1号室の橋本が顔をぐちゃぐちゃに潰されて死んでしまった。凶器は置き時計。
樋藤は泳いで脱出しようとする。しかし怪我をして、溺れてしまった。
翌日の朝、2号室の大石が撲殺されていた。樋藤は彼と知り合うためだけに引越しアルバイトに入って2ヶ月ペアを組むまで粘ったのだ。
次は3号室の竹内が殺される。凶器は石。
加蘭がいなくなった。探すと遺体になって転がっていた。
ここで伊志田は高校の時の話を始めた。みんなで幻覚剤を使ったことがあった。紀田がリンチを受けて、舌を切り取られた。被害者が樋藤の先輩だったことや、樋藤という名前が偽名だったこともバレる。
第2部
無人島での殺人事件から3年経った。真莉愛は大阪東部クリーンセンターで働いている。大阪では通り魔殺人が連続して起こっている。黒いゴミ袋を回収しようとしたら、中にバラバラにされた遺体が入っていた。そして被害者は第一発見者だ。つまり次は真莉愛が危ない。二人の女性警官が護衛についてくれるという。 -
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5つのミステリー短編集。
・ある人物を殺すために乗り込んだ夜行バスで財布盗難が発生し、疑われてしまうが…。『同好のSHE』
・映画館で隣の席だった女の貧乏ゆすりに腹を立てたことで起きた傷害事件。その真相に、“妙な被疑者”専門の取調官が挑む。『震える箱』
・東海道新幹線のパーサーが見つけた片方だけのイヤリング。不可解な落とし物はある犯罪に繋がっていて…『置き去りイヤリング』
・雪の上で血を流していた継父。彼の最後の言葉は、僕へのメッセージなのか、犯人を示すヒントなのか。『答え合わせ』
・怪しい行動を起こす婚約者を尾行している時に知り合った元探偵のおばあさんとの隠密調査。その結末は。『おむこさんは殺人鬼』
前作よりも私好みの話ばかり。バットエンドでは終わらず、ホッとする終わり方のものばかりで、どれも面白くてあっという間に読み終わってしまった。
荒木さんの長編社会派ミステリーが読みたい。できれば、2作目の『震える箱』の中平刑事が主人公の長編小説が読みたいな。絶対面白いと思う。 -
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★5 おもろい! 女性からみた社会課題や、生きていく上での悩みや不安が描かれている作品集
■きっと読みたくなるレビュー
★5 『此の世の果ての殺人』『ちぎれた鎖と光の切れ端』など、先鋭的かつ感情に訴えるミステリーを書いてきた荒木あかね先生の新作。どの作品も女性からみた社会課題や、生きていく上での悩みや不安が描かれている作品集です。
めっちゃ品質が高くってビックリ、正直こんなにも面白いと思わなかった。長篇だけでなく短編もお上手なんすね~、舐めていてすみません。この作品はもっと話題になって良いと思います。まだお若いですし、これからもたくさんの作品を期待しちゃいます!
■各作品の簡単レビュー
●同好のSHE【おススメ】
東京に向かう夜行バス、復讐を近いナイフを持ち込んだ女性。しかし隣席の女性にナイフを持っていることをとがめられてしまい…
お話の舞台が高速バス、何かおこりそうな雰囲気が好きすぎる。想像以上の展開に驚く。とにかく次々と話が発展するのが楽しいし、お話としての筋も気持ちよくキレイなんだよね。終盤はさらにレベルアップ、想像だにしない結末が待っています。
●震える箱【おススメ】
ショッピングセンターの駐車場で傷害事件が発生、被疑者の女性が通報してきたのだ。刑事が取り調べをするも、具体的でなく要領を得ない。この事件にはどんな秘密があるのか?
何かを隠していそうな被疑者に対してひたすら会話が続く物語なんだけど、これが超おもろい! 会話劇も、少しずつ落としていく経過も、人物像も、背景も、他の刑事との関係性も短編なにのバランスよく書けてる。あと色々言いたいんだけど、とにかく甘える人間は嫌い。
●置き去りイヤリング【超おススメ】
新幹線の売り子パーサーとして働く女性たち。接客業を得意とする主人公今井と要領が悪い新人依田の二人。仕事中に今井は落とし物のイヤリングを拾うのだが…
おもろい!完成度の高いミステリー短編 短編だと今年トップレベルだと思います。
・新幹線のパーサーって題材がまず見たことなく面白い
・ミステリーの問題提示も不思議で奇妙、なにより真相の意外性が高い
・登場人物二人の関係性が素晴らしいし、この事件をとおして気づきも成長もある
・働く女性や職種、時代を切り取った課題提起もある
・リーダビリティが高く、ミステリーとしても読み物としても優れている
・こういったエモいラストが大好き
と、マジ褒めるところしかありません。おもしろかったです。
●答え合わせ
継父と息子の物語、誰かに首を刺され息も絶え絶えの継父から絞りでた言葉。犯人の手がかりかもしれない、息子には何を伝えたかったのか…
テーマはダイイングメッセージ、こんなにも挑戦的かつ胸に響く死者からの伝言はあったでしょうか。父と子のエピソードを読んでると、自分の親としての体たらくぶりに気づかされる。
●おむこさんは殺人鬼
まもなく結婚を控える女性、しかし街で彼氏が怪しい行動をしているのを見かけてしまう。そっと後をつけると、彼は見知らぬアパートへと足を踏み入れるのだった…
男女の浮気話かなと思いきや、図らずも探偵ものに発展していく筋立て。キャラクターおばあちゃんが良すぎて、できればシリーズ化して欲しいほど。結婚すれば幸せでなく、その幸せを継続することが難しいんだよね。主人公の女性を応援したくなりました。 -
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ネタバレ無人島・徒島にある海上コテージを訪れた友人同士7名。樋藤はリンチに遭った先輩の復讐として他の6人の殺害を計画していたが、自身が手を下す前に友人たちが惨殺されていく。第一部では徒島での事件。第二部ではその3年後に大阪を舞台とした事件が語られる。
すごい物語だった。第一部は本格ミステリっぽく、徒島の地図、海上コテージの図が描かれていて、『そして誰もいなくなった』、『十角館の殺人』を想起させるような設定。それでいて、殺人を計画していた樋藤が探偵側に回るというまさかの状況となる。正直第一部の設定と展開だけで一冊作れるんじゃないかと思うんだけど、どんどんどんどん人が死んでいって、九城を名乗った漁師が犯人だと判明し、そいつの指を食いちぎって樋藤は海へ身を投げる。
死体の第一発見者が連続して殺されていくという状況に対しても、理論的に納得のできる説明がなされ、またそれが友人を想うが故というのもなんとも言えない。なぜ舌を引き千切られていたのかについても、過去のリンチ事件と全く関係のない答えが用意されていて、九城への疑いを全然抱けない展開だったのもすごい。
そして唐突に第二部が始まり、舞台も大阪に変わる。
大阪市のクリーンセンターではたらく横島真莉愛は、いつものゴミ収集作業をしていると、バラバラ死体が入った袋を見つけてしまう。大阪では第一発見者が次々と殺害されているという事件が起こっており、その連鎖に真莉愛は巻き込まれていく。
突然舞台も時間も変わって大阪での連続殺人事件にフォーカスが当たる。しかしそれを調査していくうちに3年前の事件との関連が見えてくる展開に引き込まれた。そして真莉愛と刑事の如子のバディ感は前作を思い出す。真莉愛は直情的で、如子は理性的。この復讐の連鎖のような物語の中で、如子が復讐について真莉愛に諭すシーンは印象的で、許せないと思うことは自然なことで大事なこと。でも決して独りよがりな感情で人を裁いてはいけない。この法治国家は数えきれない経験と議論の上で、さらに現在も議論を続けることで成り立っている。一部の最後で樋藤が「人が人を傷つけることを、正当化してはいけない」と語っている。復讐に走った樋藤が最後の最後に気付いたことが第二部でも語られ、復讐という動機が連鎖するこの物語で、この言葉は染み入る。
真相が明らかになってからのラストシーンも劇的で、これも前作を彷彿とさせるような展開だった。序盤の引きからラストシーンまで夢中になって読み進められる読み応え抜群のミステリだった。 -
Posted by ブクログ
もうすぐ隕石がやってきて、地球が滅亡する。
そんな世界で発生した殺人事件に、特異な女性バディが挑む終末ミステリーでした。
私は、SFならまだしも、ミステリー作品を読んで「この世界にいってみたい!」と思うことがこれまでありませんでした。そう思ったのは本作が初めてです。
どうせもうすぐみんな死ぬ、という世界設定が魅力的なだけでなく、そんな状況の中で生きる人々の葛藤や信念、選択には心動かされるものがありました。
捜査がどんどん進み登場人物が増えていく展開の良さ、荒れ果てた世界なのにため息が出るほど美しい壮観の描写は、何度でも味わいたいほど痛快でした。
デビュー作で江戸川乱歩賞を受賞した荒木あかねさん。本作を読んで大ファンになりました。2作目の「ちぎれた鎖と光の切れ端」も読んでみたいです。