大槻ケンヂのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私の方が7つ8つ年下なので時に馴染みがなく共有できない思い出話も出てくるが、概ね嗜好が一致する少年期を昭和に過ごしたアホ男児の一人である私の胸の深奥に、すっと沁み入り浸潤していくエッセイである。
個人的に最も感銘を受けたのは、「レインボーマンはレ陰謀マンか?『インドの山奥で』問題を考える」の回。
全体を通し、題材のチョイスから物語の展開、そしてオチの付け方に至るまで、書き手の力量を充分に感じさせる軽妙なエンターテインメントに仕上がっている。
「地球の歩き方 ムー~異世界の歩き方」、「ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実」、「『プロレススーパースター列伝』秘録」の3冊とともに本棚に並べたくなった一冊だ。
高野秀行氏の著書「幻の怪獣・ムベンベを追え」を紹介しているくだりがあり、改題前のオリジナル版のタイトルはこちらで合っていると思うが、であるならば出版は1989年であり、本書では1999年と誤って表記されているのが引っ掛かった。
極私的にモニュメントとなるのは、「未確認思考物隊」に言及されているところに他ならない。
1から10まで自分がやりたいことを詰め込んだ番組だったので、それがこのような形で大槻ケンヂ氏にポジティヴに評価されていることは大変嬉しく、報われた思いがする。 -
Posted by ブクログ
オーケンの小説は、僕にとてもよく馴染む。
どのくらい馴染むかというと、小説の文字を全部吸い出してミキサーに入れてドロドロにし、僕の脳みそを型取った型に流し込んでできたものを、そっくりそのまま、今頭蓋骨の中にぷかぷか浮いている脳みそと取り換えっこしたとしても、今日も明日も変わらない日常を送れるんだろうな、というくらいには馴染む。
そんな本書に収められた五つの短編の中で、一番好きなのは「憑かれたな」だ。
心霊的な能力など皆無の主人公が、元役者という経験を活かし、演技力によって“悪魔と本人が思い込んでいるもの”を祓うという話なのだが、これは占い師の自分からすると、あるあるというか、結局、人はその人なりのイメージの世界で生きているのだと思う。
その人が持っているイメージの世界にまったく存在しないものは、現実の世界でも認識できないか、仮に認識できたとしても、すぐに忘れられてしまう。少なくとも、人生に大きな影響を与えることはない。
だから、相手の現実を本当に動かしたかったら、できるだけその人のイメージを読み取り、その人の世界観に適合する人物として関わらなければいけない。
その中で、相手が「こうあってほしい」と思っている理想と現実の乖離を見極め、「こういう人に話を聞いてもらいたいんだろうな」という自分を、設定し直す。
実際、占いの現場でも「当たっているかどうか」より、「この人なら信じられる」と思ってもらえた瞬間に、相談者の表情が変わり、その後の占いも、より“当たる”ようになる。
そういう要素は少なからず、いわゆる占いのスキルだけでなく、必要だと思う。
そのために読書はとても有用だと思うし、いろいろなジャンルの、いろいろな作家の作品を読んだ方がいいんだろうけど、結局戻ってきちゃうんだよなぁ。
オーケンに。
そりゃあ、「脳みそを大槻小説的脳に取り替えるのもアリかもなぁ」とか考えるくらいだもんなぁ。 -
Posted by ブクログ
面白かったです。
どの人も、筋少の曲に対する想いが溢れていた。もっと他にも、あの曲やあの曲もあるやろ!と思ったら、そう言った曲の歌詞もちゃんと話の中に登場していた。
また是非いろいろな曲を小説化してもらいたいなぁ。
辻村深月さん
中二病の神ドロシー
ある意味一番それっぽい小説化だった。
滝本竜彦さん
レティクル座行超特急。
自分は、暦15年ぐらいのにわかファンだけど、レティクル座妄想のアルバムは車の運転中に相当な回数きいている。
そのアルバムの一曲目なので、容易に脳内再生できた。
それにしてもNHKにようこそ
柴田勝家さん
サンフランシスコ10イヤーズアフター
サンフランシスコは大好きなんだけど、あえて10イヤーズアフターの方を持ってくることにまず驚き、そして読んでみて、ああ、10イヤーズアフターだ、と納得。実に筋少っぽい。
空木春宵さんのディオネア・フューチャー
ディオネアって、ハエトリグサのことだったのか。なんとなく格好いい響きだと思ってたので意外。
歌詞を改めて見ると、確かになんとなく、「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」の世界観と似たものが感じられる。
脳Wi-Fi!
この話特に面白かった。
そして人間椅子の人の書いた、福耳の子供の小説。
想像してたより、優しい話だった。
俺だったらもっと怖い話にしちゃうかも。
思いながら読んでました。
最後はオーケンの「香奈、頭をよくしてあげよう」
これは、小説、なのか?変化球なエッセイじゃないのか?
どちらにしてもテンポが良い40年の話だった。
-
Posted by ブクログ
あいつらが簡単にやっちまう30回のセックスより「グミ・チョコレート・パイン」を青春時代に1回読むってことの方が僕にとっては価値があるのさ
修行パートがあったり、とにかくオーケンの筆が乗っていたんだろうな〜というか、書きたいことを書きまくっているエネルギーのようなものを感じた。
チョコ編から間が空いていたからか賢三ってこんな喋り方だっけ?とか最初は思ったけど、ぐいぐい引き込まれる面白さは健在だった。
最近、銀杏BOYZを愛してやまない友人(男)が、これまた銀杏BOYZを愛してやまない友人(女)に「女子で銀杏好きって、どういうことなの?」と聞いていた。(語弊がある文章になってしまったな)
私は銀杏BOYZとか全然詳しくないし、分かんない、分かんないけどグミ・チョコ・パインを読んでいる時、確かに私の一人称は俺になってしまうし男とか女とか関係なく性欲とか自己顕示欲とか自意識とか、そういうのが自分の中でどろどろのぐちゃぐちゃの綯い交ぜになって眠れない夜が確かにある。
そんな夜に自分が自己投影出来るヒーローは大橋賢三だけだ。
私も泥臭くても良いから何か、何かを掴みたい。
クラスメイトや登場人物たちの、その後を教えてくれてありがとう。
全ての登場人物たちに愛を感じた。
かなしいかな私は美甘子にはなれないけど、ずっと追いかけていたいと思う。
17歳だった私へ、これからの私へ、頑張ろうという気持ちをくれてありがとう。 -
Posted by ブクログ
星雲賞収録短編集
解説 綾辻行人(!
そもそもオーケンの歌自体ものすごく歌詞先行を僕は感じるのだけど「憑かれたな」なんてタイトルで短編書かれると素直にこの人すげえなと思ってしまう
歌だと有名な「香菜、あたまをよくしてあげよう」なんてまったく背景を説明していないのに人間性とか価値観とかまで踏み込んでいて余韻で飯食えそうだし
「221B戦記」なんて多分ホームズの住所からなんだろうけど歌自体は(更に多分)大人になれよ!みたいな意味なんだと僕は受け取った。そんなこと歌では一言も言ってないけど
作家性が高すぎて文字を読んでフムフムってより
こうなのか?とか考えながら読む(読める)作品なので合わない人にはとことん合わないのだろうなあ
僕は面倒くさい人間なので好きです
-
Posted by ブクログ
いわゆるジャケ買いでした「筋肉少女帯小説家計画」。
表紙は漫画家の藤田和日郎さん。彼をはじめとして、多くの創作に関わる人々にファンが多いのは知っていたけど、本家である筋肉少女帯の歌を聞いたことはあんまりないです。アニメ「うしおととら」のOPぐらいか。
興味はあれど、聞く機会を求めてこなかったので、聞くきっかけになるかな、と思って購入しました。
10代というか思春期が感じる違和感、疎外感、万能感、危機感、無敵感、嫌悪や潔癖、夢想に妄想、強圧や抑制、純真に偽悪、憧憬に共感、拒絶と承認。そういったもののごった煮の中から、その時の、初めて聞いた時の自分が一番欲しがっていたもの、共感できるものを見出すことができる素材だったのだろうな、と思います。
青春の一時期、何者でもないけど何者にもなれる。そういう文言だけを頼りに、うまくいかない日常をやり過ごすだけの日々を送り、文言を知ることで望んでいた何かになることができた、と勘違いをしていた自分には、現実を突きつけてくるなかなか厳しめの小説集。
踏み出す勇気を持ち得なかった自分には、サブカルクソヤロウの若かりしオーケンの独白が、羨望から生まれた尊敬と憧憬と嫉妬と冷笑となります。
自分の弱さをさらけ出し、恥をかきながら、正道や王道でなくても自分の選んだ道を歩むことをやめない強さを与えてくれたかもしれない。
その人が持っている、決意と覚悟の発露の煌めきがたまらなく好きで尊敬するのだけども、その行為の結果が好きなだけで、そこに至るまでの葛藤や逡巡には目を逸らしてきた傾向が自分にはあります。
泥の中からこそ綺麗な花は咲く、というのに。
自伝の趣がある大槻ケンヂの「香奈、頭を良くしてあげよう」で、19歳も59歳もオーケンはオーケンであるように、人間は幾つになってもその本質というものは変わらないのだとは思う。だからこそ、その本質に何らかの変化を与えるような存在と出会った喜びが、とてつもない成功体験となって肉体や精神、魂の記憶に刻まれるのだと思う。
収録されている6作品全てにおいて、それぞれの登場人物、いや作者の体験を描いたのだと思います。羨ましい。
「香奈、頭を良くしてあげよう」中の言葉を借りれば、『自分も金星人には遭っていない』年齢なので、まだ何かのきっかけがあるかもしれないなぁ。
この言葉が、ダイエット用品になりませんように。 -
Posted by ブクログ
オモイデ教なる宗教組織で、対立する人間を狂わせたり、殺すために使用されている電波「誘流メグマ祈呪術」を巡ったお話。
主人公ジローの隣の席にいたなつみがオモイデ教にはまり、ジローも誘流メグマ祈呪術を中心とした対立に巻き込まれていく。
いわゆる超能力ものに分類されそうではあるが、術にかかった際の状態や幻覚で見えたものの表現が独特で面白い。
あとがきを見た限り著者が実際に体験した経験に影響されて書かれたような雰囲気。
うまく言えないが普通の人とは違うジャンルの経験値で成長した書き手が書いている小説な気がした。
「誘流メグマ祈呪術」を「自分の中の爆弾」と表現してたが、この本自体が著者の自己表現だったのかもと思った。