大槻ケンヂのレビュー一覧
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「ジロー、知っとるか?この世は色と光と音のためにある。」
本作でも一番好きなキャラクター、中間さんのセリフです。
正しいとされていること。
正しくないとされていること。
みんなが綺麗というもの。みんなが汚いというもの。
ドロドロぐちゃぐちゃな臓物で出来た赤茶色の世界の上に、二重三重にアルミホイルを敷いて、ぐっちゃぐっちゃと汚らしい音を響かせながら、まるで銀色にキラキラ輝く道を澄まし顔で散歩しているような人たち。
そんな人たちに嫌われないよう、サランラップよりも薄っぺらい笑顔を貼り付けて、同じように生きる、子供よりも子供みたいな自分。
もしもこの世が色と光と音のためにだけあるならば、それ -
Posted by ブクログ
2025/8/12にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREでの大槻ケンヂ氏のイベントに行ってきた。
20年ぶりくらいに生ケンヂに会ってきた。
彼は楽器ができない、楽譜が読めない音楽家ということで有名だったけど、
人前で弾き語りができるほどにギターを弾きこなしていて感無量だった。
途中で演奏失敗して曲が止まって「ちょっと練習するね」とか言ってたのはわざとだったはずきっと。
この本は曲の歌詞を小説にしたもの。
原曲に思い入れやイメージがかなり強かったのだけど、どの短編もいい意味で裏切られて楽しめた。
自分は辻村さんと生まれた日が近いので同じ時代を生きてきた。
藤子・F・不二雄や女神 -
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ネタバレ現状から抜け出し遠くへ行く為の手段を見つけて、俺たち、もしかしたらもしかしちゃうのかもしれない!とエネルギーに満ち溢れる感じ、最高だ。
胸の高鳴りを感じながら読んだ。
賢三が敵わないと感じる美甘子も羽村の前では1人の初心な少女なのが良い。
賢三と美甘子はとても近しい葛藤を抱えていて、男とか女とか余分なパーソナリティを取っ払ったときの魂の形がとても似ているんだと思う。(それを言ったらカワボン、タクオ、山之上を含めた全員が10代特有の何か似たようなものを抱えているけど)
だから瓜二つの魂を持つ賢三と美甘子というのは恋愛対象として出会ったというより、入れ物の違う自分と自分が出会った、というような感 -
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筋少の歌詞をベースに作成された短編集。どの話も、出てくる主人公は所謂「陰キャ」と呼ばれる人たちで、世間の輪の中に上手く混ざれない人たち。
そんな彼ら(彼女ら)に起こるヘンテコな話・・・なんだけど、いや~どの話も面白かった!!
元々大槻ケンヂの書く詩(筋少の歌詞)って、物語っぽいから小説にしやすいってのは想像できましたが、ここまでドはまりして読めるとは思わなんだ。
特に心に刺さったのは、一番最初の「中2病の神ドロシー」、人間椅子の和嶋慎治さん作の「福耳の子供」、そして最後の大槻氏本人作の「香菜、頭をよくしてあげよう」ですかね。
特に、最初と最後の奴、一度喪失したモノと長い月日を経て邂逅するって展 -
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いつも面白い本を教えてくれる年下の友人がいます。この本を読んでいて、彼が一番最初に勧めてくれたのがこの著者の「のほほん雑記帳」であったことが突然思い出されました。もはや30年近く前のことです。その本を読んだかどうか…も忘れてしまいました。書名だけ可愛くてなんとなく記憶の底に残っていたようです。そしたら本書の中の「作家の読書道」というインタビューで「僕、エッセイで意外に大事なのは、忘れちゃえることだと思うんです。」(P234)という発言があってちょっと許されたような気になりました。そののち「サブカルで食う」も気になりましたがこの本棚には登録していなかったのでこれも書名記憶だけかもしれません。改め
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俺のことが書かれている、と思う、思っちゃう。
グミチョコパインを読んでいる間だけは私の一人称は私ではなく俺になり僕になる。
俺は他とは違うと思いながらも何も成し遂げられず、そう思う自分だって何も成し遂げていないくせに…他のヤツが出来ることが出来ないから自分は非凡だと信じ込んで逃げてるだけのくせに…と心の片隅で感じつつ現実から目を背けるために、自分の平凡さに気づかない為に理屈っぽく話して他の誰も見ていなさそうな映画を見て本を読んで。
けどやっぱり、やっぱりいるんだ、美甘子みたいな奴が。
一生追いつけないんじゃないかと思う。
自分のちっぽけさを呪うし行動力の無さや勇気の無さにがっかりもする。
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「そのバンド 本当はいなかった 25年見てたのは
自分の心さ 君自身の影なのさ」
“中2病の神ドロシー”より
うおぉ!筋肉少女帯の楽曲が小説に!しかも執筆陣も豪華アンド本人降臨!!
素晴らし過ぎる作品だ。筋少ファンとして思わず歓喜の涙(泣)
この作品は全6篇+装丁のアンソロジー短編集となっていて各作品のテーマとなった楽曲がタイトル(一部違うが)となっている。各執筆者はテーマとなってる歌詞を物語化しているが、まぁ、出てくる出てくる他の曲(笑)
探せば20曲くらい歌詞でてくるんじゃないかという勢い!しかもなんか大槻ケンヂの文章っぽさも感じる(寄せてる?)
筋肉少女帯愛が濃い!濃すぎる!!
物語と -
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ネタバレグミ編で賢三といい感じだった美甘子が簡単に羽村に惚れ込んでいく様子を嫌だ、ショック、低俗、気持ち悪いって思う人の感性は絶対に間違ってなんかなくて、
だけど自分がそう感じなかったのは大人になったってことなのかな それとも私が根本的に女だからなのかな
触れてきたカルチャーが通俗であっても羽村という人間は低俗じゃないし、なんなら得難い存在だったと思う。
美甘子は大人として、表現者として確実に成長したしやっぱり何百冊も本を読むことよりも好きな人と一回キスすることの方が重要なのかなぁ、いやどうなのかなぁ 優越感とか関係ない真っ当な趣味ならこんなこと考える必要もないんだけど 私の場合はどうなんだろうなぁ -
Posted by ブクログ
ネタバレエッセイ風の小説というか、エッセイにフィクションを混ぜ込んだらそれは小説ではないかという画期的な作風で面白い。そう考えるとエッセイと小説の明確な線引きなどないのではないか。枡野浩一さんの『愛のことはもう仕方ない』を読んだ時は、ご本人は小説と言っていたけど物語としての展開があまりなくてやっぱりエッセイではないかと思ったものだ。エッセイでも物語的な展開が描かれることもあり、結局は読み手がどう受け取るかの問題かもしれない。
エッセイ的な小説かなと思っていると、ラストは完全にフィクションになってそれまでのエピソードが盛り込まれてオーケンさんご自身の身の上と絡み合ってダイナミックに展開する。冷静に