桃野雑派のレビュー一覧
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ネタバレわかりやすくミステリの条件を満たしている部分と満たしていない部分に分かれている作品だった。
ミステリの条件として、これまでに考え付かれていないトリックがある、舞台が斬新で興味を唆るなどが挙げられるだろう。
トリックの条件には当てはまる部分と当てはまらない部分があった。犯人が自分が死んだように見せるというおおまかなトリックはかのアガサクリスティの名著でも使われたトリックであり、目新しさはない。しかし、電磁波を使ってそれを可能にするというトリックは新鮮味を持っている。
舞台設定についてもだ。クローズドサークルとはすでに何度も使われた設定であり、相当ストーリーが面白くないと興味を惹きつけることは難しい。
この小説における新しさはまず、完全なクローズドサークルとは言えない点であろう。
主人公たちは事件が起き、身の安全を守るため脱出ポットで逃げようと試みる。
しかし、参加者たちはそれぞれ宇宙旅行に巨額の金と目的をもって参加しているし、会社も簡単にツアーを中止にできない。さらに、会社からの忠告メールの全文が読めないというアクシデントも発生する。
物理的よりも心理的なクローズドサークルの要素が強いと言えるだろう。
また、完全な宇宙空間でのクローズドサークルは膨大な知識量が天文学、物理学においても必要となる。その点は細部まで説明がされており、初学者でもなんとかくらいつける。 -
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風呂に入るまでが面倒くさい。
サッと入ってしまえばすぐに済むのに、毎夜、「あぁ、風呂に入らないとなぁ……」と思いながら、何時間も無駄な時間を過ごしてしまう。
スマホというやつは本当に良くない。テレビも見られるし、ラジオも聴ける。こうして、風呂に入るまでの時間はいくらでも溶けていく。
「5分後にお風呂に入りたくなる!」
そんな謳い文句を見て、縋るような気持ちでこの本を手に取った。
本書には、入浴にまつわる18篇の小説と4篇のエッセイが収録されている。どれも5分もあれば読み切れるような短い作品ばかりだ。
しかし、これを読んだら即座に風呂に入れる、という作品は、残念ながら一篇もなかった。
私とて、正直な話、この本を読んだからといって、簡単に風呂に入れるとは思っていなかった。
ただ、少しでも早く風呂に入る決心ができるようになるためのヒントがないかと思ったのだ。そのヒントは、結局「風呂に入らない」2篇の中にあった。
風呂に入らないと決め、痒みや気持ち悪さといった数多の「受難」を乗り越えて、ついには「思い込み」の力で、風呂に入らなくても「入浴の効用」を得られるようになったと主張する青年を描いた、さや香新山作の『プラシーボ!』。
風呂に入らなくても身体を完璧に洗浄する技術が開発された近未来で、人類が入浴という苦難から解放され、ついには入浴が法律で禁止される世界を描いた、日野瑛太郎の『そして誰も風呂に入らなくなった』。
人間というのは天邪鬼なもので、他人から「やれ」と言われればやりたくなくなり、「やるな」と言われれば、やりたくなるものだ。
同じように、風呂に入ることを固く禁じられたなら、私は今すぐ風呂に入りたくて仕方なくなるのかもしれない。 -
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本書は、お風呂にまつわる22篇の短編小説・エッセイ((小説18篇、エッセイ4篇))からなるアンソロジーです。
タイトルに「5分後に」とあるように、1篇5分ほどで読み終えられます。
大変恥ずかしながら、わたしは風呂キャンセル界隈のひとりです。
疲れて帰ってくると、そのまま寝落ちてしまいます。
ですが、疲れた時こそお風呂に入らなくてはいけないという義務感は持っています。
なので、お風呂に入るモチベーションが湧かない日に1篇ずつ読んで、これで入浴できれば最高だと思って購入しました。
が、結論から申し上げますと、本書のおかげでお風呂に入れるようになったということはありませんでした。
お風呂に入るモチベーションが湧かないくらい疲れている日は、小説にも手が伸びなかったからです。
わたしが風呂キャンセル勢なのは、モチベーションの問題ではなく、お風呂に入る体力がないからだとわかりました。
このことを明らかにしてくれたのは本書の功績です。笑
というわけでわたしは体力のある日にまとめ読みしましたが、たぶん編者のかたは、お風呂に入るモチベーションが湧かない日に1篇ずつ読むことを想定しているのだと思います。
以下、感想です。
5分で読める短編小説と言えば星新一作品ですが、本書には星新一作品ほどウィットに富んだ小説は見当たらないかなと思いました。
宇宙が舞台になっているなど、設定が奇抜な作品はいくつかあったのですが。
(ちなみに、宇宙が舞台の小説は3篇もあります。宇宙というお風呂に入りづらい環境を描くことで、逆説的にお風呂の素晴らしさを強調する意図でしょうか。)
どちらかというと、平凡な1日が描かれていて特に衝撃的なオチがあるわけでもない作品のほうが印象に残りました。
特に日向夏『回復の泉』なんかは、RPG風の軽妙な筆致が良かったですね。
「5分後にお風呂に入りたくなる!」の謳い文句からは、お風呂の素晴らしさを称賛する作品ばかり並んでいそうな印象を受けますが、お風呂に入らなくてもよくなったと主張する人を描く作品、更には「人類を風呂から解放する」と高らかに宣言する作品まであるのも非常に面白いところです。
(ネタバレ防止のために、具体的な作品名を挙げるのは避けます。)
本書が風呂キャンセル界隈の人のモチベに効くかはわかりませんが、お風呂というテーマがここまで多様な作品を生むことに感動できるのは間違いないです。 -
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ネタバレ【あらすじ】
くたくたに疲れて帰った日、ショート動画でだらだら時間を溶かしてしまう日。
「お風呂に入らなきゃ」と頭ではわかっているのに、入る覚悟が決まらない!
あなたに効く小説、ここにあります。
『わたしは本当にばかだ。あの会社を蹴ってしまうだなんて。
けれど、わたしが何度も頭を下げて選んでいただくなんておかしい。いま、こちらが未来を選んでいるはずだった。もっと気高くいなければ。わたしは落ち込んで醬薇風呂に入るような女なのだから。』
【個人的な感想】
お風呂に入りたい!とはならなかったが、色々な方の作品が読めて面白かった。
特に、この2作品が好きだった。
・無力 小原晩
・薔薇風呂の日々 くどうれいん -
Posted by ブクログ
とにかく1日の疲れが最高値に達した時のお風呂に入らなきゃっていうのが億劫過ぎる。
で、入んなきゃ〜入んなきゃ〜って思ってる間にうたた寝。
こんな生活が多いので、本の帯の文句にどんぴしゃり。
くたくたに疲れて帰った日、ショート動画でだらだら時間を溶かしてしまう日。
「お風呂に入らなきゃ」と頭では分かっているのに入る覚悟が決まらない!
→まさに私のこと。
なので気になって買いました。
お風呂にまつわるいろんなジャンルの話が読めて楽しかったけど、一つ一つが短いから何となく物足りなかったかな。
でも、お風呂に入った時の開放感、安堵感、そういうのに改めて気付かされたというか。もうさっさとお風呂に入ろうって思えました。
入っちゃえば気持ちいいんですよね。
いいなと思ったのは日向夏さんの『回復の泉』です。 -
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星くずの殺人の続編。
周がお気に入りキャラだったので、彼女が主人公ということでワクワクして読んだ。
今度は宇宙ではなく、京都が舞台。宇宙からの帰還の際の周のピアノ演奏生配信が、被害者が出ているのに不謹慎だなどで炎上してしまう。そしてその映像のコメント欄に「金閣寺を燃やす」というコメントが寄せられ、実際に炎上する。そこからは次々に京都の名所が燃えていく。
ネット上での炎上と放火事件、京都タワーが蝋燭に見立てられている点からタイトルがとてもしっくりくるし、かっこいい。表紙の絵も素敵。
ミステリー部分は前作より弱い気もするけど、加害者家族や差別、中傷などテーマは重い。
京都が舞台なので方言もがっつり、関西ネタもたっぷりで個人的には楽しく読んだ。