大木毅のレビュー一覧
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歴史の教科書では語りきれないことが満載されていた。
政治の世界にも腹の探り合いはあっても案外とサッパリしていると思ったけど、いやいやねちっこくあり嫌なら嫌と言えない上下関係姻戚関係。
大島浩、松岡洋右、この二人の行動が大きく影響したことがわかるが、この本ほどしっかり裏付けされた書き方をしているものは見ない。
歴史には、日独伊三国軍事同盟とあり、それは「互いに利益がある事に対して協力関係を結びましょう」エイエイオーかと思っているでしょうが
そうせざるを得ない伏線があったり、バーターであったり、たくさんの大人の事情がある。
御前会議で昭和天皇のが敢えて口を開き読み上げた
四方の海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ
明治天皇の御製が意味のわからないものはいなかったという。
なら何故と思ってしまう。
振り返れば少しのきっかけで結果が大きく変わることは多い。
終盤を拝読するあたりからはいつも慈愛の念があった。
腹の探り合いは日常かもしれないが、何かを信じたり例え痛みがあろうとも協力し支える、そんなお互い様の世の中にしていけたらと思う。
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戦史家二人による対談。
戦史史料、文書、オーラルヒストリーについて、著者二人が日本軍について語る。 様々な事例をあげながら、旧日本軍の軍人達がどのような人たちであったのかを語っており、大変面白く読めた。 二人とも過去に軍人当事者に会う機会があり、資料や書き物だけではわからない雰囲気や性格、軍人気質に接することができた。 この先そういう経験を持つ人が少なくなり、史料を読むときに、文字に書かれたことだけを鵜呑みにすることを心配している。 また戦史についてはいろいろな本が出ているが、小説家では吉村昭と澤地久枝を高く評価している。 資料の付き合い方向き合い方が真剣なのだそうだ。 対談なので面白いエピソードが多く、知らなかった事実や見解の違い、俗説への批判、文人たちの考え方などいろいろと勉強になった。
ちなみに自分の家系では、祖父が軍人で輸送船に乗って何度も南方へ行っており、生還した運のいい人だったらしい。また母方の伯父は空母鳳翔の通信長だった。 伯父の紹介で父母が結婚し、自分がいる。 身内の人たちが戦争を生き延びてくれたから今の自分がある。 この本とは関係ない話だが、生きている時に話を聞いておきたかった。 -
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ネタバレ第二次世界大戦における「電撃戦」で欧州を席巻したドイツ装甲部隊の生みの親と呼ばれるハインツグ・デーリアン将軍の評伝。
前作のロンメルの評伝と同様、様々な脚色によってゆがめられた「グデーリアン像」に対し、ファクトをベースに実際の姿をあぶりださんといているのが本書の大きな特徴だと思います。
ロンメルの場合、周辺の人々の様々な思惑が脚色されたロンメル像を形作った(ロンメル自身は1944年に服毒自殺を遂げているので当然なのですが)のに対し、グデーリアンの場合は自身がこれを意図した点がロンメルとの大きな違いでしょう。
彼の回想録には、自身の手によって画期的な装甲戦術が編み出され、暗愚な上司の無理解に悩まされながらも装甲部隊創設を成し遂げ、戦中では多大な戦果を挙げたものの、ヒトラーやその取り巻きの無能によってこれが無に帰せられたことが綴られています。
しかし本書を読むと、これらが(嘘とまでは言わないものの)大きく脚色された物語であることがわかります。
構成としてはグデーリアンの青年将校時代から、第一次世界大戦での活躍、戦間期の活動、そして第二次世界大戦と戦後の活動に至る、グデーリアンの一連の歴史経過がたどられます。
その中で大きく3つの(グデーリアンにとっての)「不都合な真実」が語られます。
1つは「装甲部隊(戦術)の生みの親」の栄誉を実際以上に享受している点。
当然グデーリアンもこれに大きく寄与していたことは事実ですが、一方でフォルクハイムやルッソといった優秀な先達が数多く存在し、彼らなくしても装甲部隊の創設はあり得ませんでした。
もう一つは、グデーリアンは巷でいわれるような「政治や人道に中立な軍人」ではなかったという点。
グデーリアンは元来国粋主義的な思想を有しており、第一次世界大戦後に創設された(彼も所属する)武装組織である「鉄師団」は、数々の残虐行為を繰り返します。
また、ポーランドにおける保養地取得に関するマンシュタインの回想では、人道を意に介さないグデーリアンの非情な姿が垣間見られます。
最後は、グデーリアンは優れた戦術眼を有する一方で(ドイツの多くの将星たちと同様に)戦略眼は欠如していたという点。
グデーリアンの戦術眼には目を見張るものがあり、対仏戦での戦術行動は今でも各国軍の模範とされていることが示される一方で、対英戦や対ソ戦では随所で戦略眼の欠如を示す言行が見られることが紹介されています。
本書ではグデーリアンのあまり知られていない経歴(特に第二次世界大戦前)が具体的に説明されているので新鮮です。
また随所にみられる小ネタ(具体的なエピソード)もなかなか面白いですね(たとえばマンシュタインが自身の対仏作戦構想をグデーリアンに評価してもらう際、二人は異なる部隊に所属してたがその司令部はたまたま同じコブレンツに置かれており、しかも二人の宿泊するホテルはなんと隣同士だった)。
ロンメル、グデーリアンに続き、マンシュタインの評伝も予定されているとのことで、それも楽しみですね。 -
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ネタバレ「砂漠の狐」として名をはせたエルヴィン・ロンメルは良くも悪くも脚色された物語を持つ英雄だと思います。
プロイセン軍人が幅を利かせた帝政時代にあってはそこから外れたアウトローからキャリアをスタートさせ、第1次大戦では大胆な戦術を駆使して次々と戦果を挙げ、ついにドイツ軍最高の勲章(ブルーマックス勲章)を獲得。
第2次大戦のフランス戦線において、彼が指揮した師団はその神出鬼没ぶりから「幽霊師団」と恐れられ、アフリカ戦線では常に劣勢な物量下で英国軍と互角以上にわたりあい、ついに元帥に上り詰める。
戦局が悪化するにつれて何とか講和による戦争終結を目指すものの受け入れられず、最後はロンメルにスポットライトをあてた当人であるヒトラーからの命により自ら毒をあおぐという悲劇によって人生の幕を下ろす・・・。まさに映画や小説のような筋書きです。
しかし逆に、どこまでが脚色でどこまでが真実なのかがはなはだわかりにくい人物でもあります。
本書を読むとわかりますが、ロンメルを題材にした著作物は様々な思惑によって彼を持ち上げ、またこき下ろしていることから事実が非常にわかりづらくなっている。
そんな中にあって本書は「真実のロンメル」を明らかにせんとして書かれた一冊なので大変参考になります(ただし、それがゆえに「夢から覚めてしまう」不安も付きまといます)。
読み終えての感想ですが、本書は非常に親切な構成でとても分かりやすいです。
文章は簡潔にして明快です。
章立てとしては、ロンメルの生い立ちから軍人としてキャリアを築いていく流れを時系列で説明しています。
その中で意外な事実も多々記されています(まさかあのロンメルがルチー(後の婦人)に黙って愛人との間に子をもうけ、しかもその子を公然と養っていたとは・・・!)
また各所で説明されるロンメルの人物評ですが、実際に彼と関わりを持った人物たちの証言が公平に取り上げられ、そこか浮かび上がる人物像として説明されているのでとても客観性が高いと感じます(当然証言者の思惑やバックボーンについても言及されています)。
それと同時に、巷のロンメル戦記の中では邪魔者として彼の足を引っ張ったかのように描かれている人物たちや、ロンメルに苦も無く蹴散らされたかのように描かれる将領たちの実際の姿も客観性を持って補足されているので、読んでいて感心します。
くわえて具体的な戦闘状況の文章描写とともに戦局図や地図が挿絵として豊富に掲載されているのも助かります。
本書を読んで浮かび上がってくるロンメル像は、大胆かつ勇敢な天才戦術家としての(馴染みのある)姿とともに、実際以上に自分を大きく見せたがる自惚れ屋、そして大きな戦略的見地を欠き、己が戦術の完遂のためには部下の命を顧みない非情な姿、です。
本書を読むとわかりますが、彼の指揮下で幾人もの師団長レベルの将領が戦死し、また捕虜になっています。この人数ははっきり言って異常です。あの血みどろの独ソ戦にあっても初期の時点ではアフリカ戦線よりましだったのではないか、と思わせるレベルです(師団長レベルがそうなのですから、下士官レベルは言わずもがな、です)。これだけを見ても、ロンメルの指揮には重大な問題をはらんでいたことが見て取れます。
個人的に彼の行動は、第1次大戦でのルーデンドルフや、もっとさかのぼって北伐における魏延の行動とかぶって見えました。
ちょっぴり夢から覚めて、真実のロンメル像を垣間見たい方におすすめの一冊だと思います。 -
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「独ソ戦」著者によるロンメル評。
最近hoi4 にハマりww2を勉強し始めたため購入。
サクサク読めたし入門本として最適だと思う。
ロンメルがドイツ国防軍の中でもアウトロー的経歴の持ち主だった事を重視し、故に勇猛大胆、独断専行な戦術家として大成し、上級将官としての教育を受けなかったことから補給軽視、戦略的視野が弱い指揮官であったと分析している。
またアウトサイダーであったため、軍部で昇進するためにも功名心とその誇示には病的であったとも。
そんなロンメルの評価は現代に至るまで未だ定まらない。
ロンメルの活躍はナチスにより過度に喧伝されており、また彼が最後までヒトラーへの忠誠心を持ち続けたかも曖昧なこともあり、ナチスの忠実な一員かドイツ国防軍の良心の一人か、今日まで上振れと下振れを繰り返しているからだ。
ただしロンメルが度々戦場で見せた騎士道精神だけはいつの時代も変わらず評価されていると、この本は締めている。
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ネタバレ第二次世界大戦におけるドイツとソ連の戦いについて、専門家ではなく一般向けに分かり易く、近年の研究成果も踏まえて解説してれる一冊。
単に戦闘を追うだけでなく、ドイツとソ連の当時の状況などの解説も加えられていて、日本人には馴染みの薄い当時のヨーロッパの状況についても理解できます。
昨今、ロシアとウクライナの間で起きている紛争の背景だとか、クリミア半島のこととか、その辺の地理のこととか、ロシア人とフィンランドや東欧の人々の間にどのような思いがあるのかなど、非常に理解しやすくなる一冊です。
日本では第2次世界大戦=太平洋戦争。
”戦争”といえば当然、日本とアメリカとの戦いの話しになってしまう。そしてヨーロッパの戦争の話しとなると、ナチス・ドイツ、ヒトラーのユダヤ人迫害、虐殺のイメージや、イギリス・フランスとの戦いや、ドイツが追い詰められた終盤の戦いぐらい。
しかし、第二次世界大戦の最も激しい戦闘は、ドイツとソ連との戦いにあったようだ。しかもその戦争は単に国家間の利益のぶつかりあいによる通常戦争ではなく、相手を殲滅させること自体が目的の絶滅戦争だった。
スターリンによる内部粛清による軍隊の弱体なども影響して、最初はドイツがかなりソ連を追い詰めたが、やがて物量も戦略も上手のソ連に押し返されていく様子だとか、相手を悪魔化して殺戮していう様子だとか、敗戦後はナチスに全て責任を負わせたが、実は国民も大部分は戦争に積極的に加担していたとか、いろいろと日米戦争と重なる部分も多いのも興味深かった。 -
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「砂漠の狐」といえば、言わずもがなエルヴィン・ロンメル将軍の異名としてあまりにも有名で、寡兵であるにもかかわらず大量の連合軍を相手にアフリカでの砂漠戦で数々の勝利を成し遂げた名将として名高い存在である。
しかし、ロンメルが寡兵がゆえに苦労した原因としては従来、そもそもアフリカ軍団としてドイツは2個師団しか送り込まなかった、そもそもイタリアの尻拭いの戦いでありイタリア上層部との諍いが絶えなかった、言っても言っても補給が思い通りにならなかったなどが挙げられていたかと思う。
にもかかわらず戦術的な勝利を続けたロンメル将軍は「名将」の名を欲しいままにしていたわけだが、欧米では逆に作られた「英雄像」ということでロンメル批判ともいうべき言論も展開されていたそうである。
しかし、近年になって「ロンメル」像の再評価が行われているということであり、本書はそうした最近の知見を筆者の見解とともに論述した内容となっている。
「砂漠の英雄」として祭り上げられたのは、当時「英雄」を欲していたドイツ国内の事情も大きいとのことである。
ヒトラーの引き立てに加えて、宣伝相・ゲッペルスの「英雄」としての大喧伝、ロンメル自身の自己アピールの大きさがあったということである。
ロンメルはプロイセン出でもなく中産階級の出であり、参謀養成の課程も受けたことがなかったため、本来は出生する人物ではなかったということであるが、持ち前の戦術指揮の優れた才能や常に最前線で陣頭指揮を行う姿、それらの結果として成し遂げた功やそれ以外に他人の功まで自分の功として猛烈に自己アピールする自己顕示欲の強さなどが最終的にヒトラーに認められたことにより大出世を遂げたとのことであった。
(ま、こういう人は今でも少なからずいますね・・・)
しかし、そうした性格と才能が発揮できるのは戦術レベルの指揮官までであり、戦略レベルの構想や実行、補給など軍司令官レベルに求められる才能としては失格で、常に戦術レベルの有利さを追い求め、司令官が不在となるにもかかわらず陣頭に立ち続け、補給を無視した作戦を実行するということで、それなりの上司からは有能なのは師団長までという烙印を押され続けていたようである。
(ま、周りのフォローが続く間は良かったのでしょうね。今もいますね・・・)
そして彼の悲劇は、彼を引き立ててくれたヒトラーとの関係が悪化し、ノルマンディー上陸作戦への対応を見誤り、ヒトラー暗殺計画に関与しようとしていたことなのだろう。
次第にひどくなるヒトラーの国家戦略についていけなくなり、自らも決定的な戦略的誤りを犯してしまう。
結局、政略・戦略的な才能が無い分、逆の意味の運命に翻弄されたのでしょうか。
(今もそんな人が結構いますが、その運命は・・・!?)
「砂漠の狐」の実像ということで、結構面白かったです。
ヒトラーが指示した戦争犯罪行為には加担しなかったということなので、それなりに気骨もある人物だったのかもしれません。
やっぱり後世に名を残す「将軍」ということでいいんでないかな。 -
Posted by ブクログ
ロンメルは第二次大戦中のドイツの将軍としてあまりにも有名だが、北アフリカで機甲師団を率いていたという程度のイメージしかなかった。
本書では、ロンメルの生い立ちや軍歴、特に、ドイツの軍人として非主流派に属し、軍幹部になるための高等教育を受けていなかったこと、そして、それが故に、前線指揮官としては有能でも、大軍団を率いるような戦略的視点を欠いていたことを幾つもの事実からあぶり出している。
その上で、ヒトラーやドイツ軍幹部との関係やナチスとの距離感なども幾分の推測を含めて記述し、人間としてのロンメルにも迫っている。こうした分析を日本語で読めるというのは幸いなことだ。
あとがきに、著者が本書を執筆するきっかけの一つに呉座勇一さんの著書の話が出てきたのも中々に興味深い。分野は違えども、気鋭の学者の刺激で、こうした面白い本が連鎖的に生まれるというのは、読み手としてはありがたいことだ。 -
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沙漠の狐が霞んだ。
ロンメルのことは沙漠の狐とノルマンディーの要塞,ヒトラー暗殺計画くらいしか知りませんでした。
沙漠の狐の内容が予想とは異なっていました。もっとモントゴメリーを苦しめたと思っていました。映画などで見る誇張された内容は真実とは異なっているということを知りました。ゲッベルスの広告塔利用については,良く分かります。戦国武将的な指揮官は前線における兵士の士気に大きく影響しますから。
軍人としてのロンメルは戦術家であり,戦略家ではない。と思いました。でも,戦史におけるヒーローは常に戦術家ですから,ロンメルの人気もうなずけます。
現在の経営者にも当てはまる部分があるとすれば,ロンメルはよき部門長であり,良き経営者ではない,といったところでしょう。
ヒトラー暗殺計画の関与については,真実は分かりませんが,人としてロンメルが関わっても何の不思議もありません。
Dデイのことについても,パウルカレルの「彼らは来た」しか詳細の記述を知らなかったので,シェルブールの攻防など新たな知見になりました。
カンプグルッペのことももっと知りたかったですが。
これからもヨーロッパ戦線の史実が明らかになることを願います。