大木毅のレビュー一覧
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第二次世界大戦をドイツと旧ソ連の戦いに絞って軍事史だけでなく政治外交史や戦時経済のことも含め様々な視点で説明された「独ソ戦通史」
かなり歴史に疎い私でも読み切れたので、歴史初心者にもおすすめしたい一冊。
岩波新書の中ではかなり読みやすく、新書の中ではデータを元に俯瞰的に描かれており、良書ではないかと(歴史に詳しくないから違うかもだけど)
独ソ戦、私の中ではヒトラーやべぇ、スターリンコワッ、ぐらいやったんやけど、この本を読むと、慢心はいかんし、失敗から学ぶことは多いし、数の暴力は→
怖い、という感想。あと、戦争はやはり嫌だな。人がチェスのコマみたいに使われているの、ほんとキツい。
ものすごい数の人間が、紙屑みたいに散っていく。ほんとに嫌。辛い。戦争はあかん。どんな正義があろうと、これははじめたらあかんやつやわ。 -
Posted by ブクログ
岩波新書 新赤版1785
独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
著:大木 毅
1941年6月22日のナチス・ドイツのミンスク、レニングラード、ウクライナへの、ソビエト連邦同時侵攻から、1945年5月11日プラハの闘いまでを、独ソ戦と呼ぶ
その戦場は、フィンランドから、コーカサスまでの数千キロに及ぶ長大な戦線と、独ソ両国民に甚大な被害をもたらした。
独ソ戦における、ソ連の被害は、死者行方不明者 1129万、一方、ドイツは、最大、832万である。
戦闘のみなら、ジェノサイド、収奪、捕虜虐殺が繰り返し行われ、人類史上最大の惨劇と言っても過言ではない
ナチスドイツ 世界観戦争 劣等人種スラヴ人を奴隷化するための戦争、絶滅戦争
ソ連 ロシアを守るための大祖国戦争
ソ連の捕虜はその場で殺害し、一方、ドイツの捕虜も、その95%が生きて祖国に戻ることはできなかった
互いに、捕虜になれば殺される闘いであり、そのために各戦線で、熾烈な戦いが繰り広げられることとなる
気になったのは、以下です。
■緒戦
・粛清によって弱体化していた軍に、ドイツ侵攻の情報が届いていたにもかかわらず、スターリンは、対抗しなかったため、奇襲をうけた形で独ソ戦はスタートした。
・ヒットラーというよりも、参謀本部は、独ソ不可侵条約をソ連が継続的に守るとは思っていなかった
・西部戦線で、イギリス軍と膠着状態になっていたドイツ軍は、同盟国ルーマニア油田の保護と、ソ連領内のマイコープ、クズヌイの油田の簒奪をもとめて、東進する計画を進めていた
・ソ連は、フィンランド戦争を仕掛け、レニングラードに隣接したカレリア地方の割譲を要求した。ドイツはこれをみて、ソ連が、国境を西に動かそうとしていることを認識した。
・ドイツは、北方軍、中央軍、南方軍を同時にソ連に侵攻させる、「バルバロッサ」作戦を立案し、1941年6月22日に実行に移した
北方軍 リガ⇒プスコフ⇒レニングラードへ(フィンランド軍と連携作戦)
中央軍 ミンスク⇒スモレンスク⇒モスクワ⇒ゴーリキへ(ソ連首都制圧、政治拠点制圧)
南方軍 オデッサ⇒キエフ⇒ハリコフー>スターリングラードへ(石油資源確保)
・ドイツ軍を待っていたのは、劣悪極まりない、ロシアの環境であった。フランスでは、舗装道路、給油できるガソリンスタンドも、乗り入れ自由な鉄道も、なかったため、ドイツ得意の電撃戦も発動することができなかった
・前線と補給との乖離、燃料などの物資は、まばらにしか届かない
・バルバロッサの失敗とは、ドイツ軍の惨敗でも、ロシア軍の善戦でもなく、兵站の不足が原因であった
■ドイツ軍VSソ連軍
ドイツの戦法は、電撃戦である、短期決戦指向、戦車と航空機を集中して、戦線を突破、敵を包囲して殲滅する
ソ連軍の戦法は、接近戦、指揮命令系統が混乱しても、降伏せず、徹底抗戦
ドイツ軍は、戦車、燃料不足に陥り、兵站の失敗が明らかになる。加えて、バルバロッサの短期決戦の構想が崩れ、独ソ戦が長期化することとなる。これは、ソ連軍が優位になることを意味していた。
ソ連軍は、予備役を呼集し、前線に段階的に投入した
赤いナポレオン、トゥハチェフスキー元帥の用兵思想
現代戦は、激烈な消耗戦であり、それに勝利するためには、無停止の連続攻撃を行い、戦略的な広域レベルで突破を実現することが必要不可欠である
空軍、砲兵、前線部隊の攻撃により、敵の最前線から中間陣地、さらに後方陣地までも、一気に制圧する
砲兵や、前線部隊の手が届かない後方は、迅速に突破した戦車・機械化部隊、空挺部隊が抑え、敵の再編成や予備兵力招致の阻止にあたる
この作戦術は、ベトナムで敗れた米軍の目にもとまり、米軍のドクトリンとして大きな影響力と発展を遂げていく
■ソ連の反攻
3つの反攻策
天王星作戦 スターリングラードのドイツ軍殲滅計画
土星作戦 東部戦線南翼のドイツ軍殲滅計画
火星作成 ドイツ中央軍先端突出部の殲滅計画+木星作戦+海王星作戦
ウクライナ奪回作戦
ドイツ軍のクルスク、城塞作戦 プロホロフカでは、ソ連235両を撃滅、ドイツ3両の損害なるも
連合軍のシシリア上陸への対応のため、ドイツ軍の抵抗はここまでで終わる
バグラチオン作戦
1944年6月~8月のソ連のドイツ反攻作戦、レニングラードから、オデッサにいたる長大な戦線で
ソ連の反攻が始まる
連合国のノルマンディ上陸に先立つこと、ソ連軍は、すでにベルリンにその進路をすすめていた
ドイツを制し、第二次世界大戦を終了させたのは、ソ連軍の功績によるところが大きい
目次
はじめに 現代の野蛮
第一章 偽りの握手から激突へ
第一節 スターリンの逃避
第二節 対ソ戦決定
第三節 作戦計画
第二章 敗北に向かう勝利
第一節 大敗したソ連軍
第二節 スモレンスクの転回点
第三節 最初の敗走
第三章 絶滅戦争
第一節 対ソ戦のイデオロギー
第二節 帝国主義的収奪
第三節 絶滅政策の実行
第四節 「大祖国戦争」の内実
第四章 潮流の逆転
第一節 スターリングラードへの道
第二節 機能しはじめた「作戦術」
第三節 「城塞」の挫折とソ連軍連続攻勢の開始
第五章 理性なき絶対戦争
第一節 軍事的合理性の消失
第二節 「バグラチオン」作戦
第三節 ベルリンへの道
終章 「絶滅戦争」の長い影
文献解題
略称,および軍事用語について
独ソ戦関連年表
おわりに
ISBN:9784004317852
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:860円(本体)
2019年07月19日第1刷発行
2019年09月13日第6刷発行 -
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「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨
著:大木 毅
角川新書 K-254
エルアラメンの英雄、砂漠の狐、ロンメルを扱ったドキュメンタリーです。
ナチスドイツは、第二次世界大戦の初頭、ポーランド侵攻に始まる東部戦線、ベルギー・フランスへの西部戦線、北アフリカ戦線、そして、ウクライナを含む、ロシア戦線と戦線を拡大していく
ロンメルは第1次世界大戦では、WGBに属して、戦場で卓抜な功績をあげた。
戦術的センスは、抜群にすぐれていたのだ。
ロンメルは、第1次世界大戦終戦時は、歩兵部隊の大尉だった。
縮小されていく軍隊に残るためには、WGBの戦功は役にたったが、軍の幹部教育を受けることができなかったロンメルにとって、その影響は、その後に大きな弱点として現れるのである。
第2次世界大戦の前半でドイツに勝利に導いたのは、機甲師団、戦車部隊、自動車部隊であった。
ロンメルは、ヒットラーの眼にとまり、第7装甲師団を率いて奮戦をした。ロンメルの名はドイツの英雄としてとどろいたのである。
西部戦線を制した、ドイツは、ロンメルを北アフリカ戦線へと投入する。
北アフリカ戦線は、 ドイツ・イタリア連合 vs イギリス・アメリカ・インド連合 の戦いであった。
だが、師団長としては、優秀でも、地域をとりまとめる、指令官としてはいただけなかった。それは、彼には、兵站を軽んじるところがあったからである。そして、ロンメルは兵站というものを学んだことはなかったのである。
やがて、北アフリカ戦線で敗北が決定し、イタリア国内に連合軍が上陸するタイミングになると、ロンメルは再び、西部戦線に呼び戻された。
ヒットラーにとって、ロンメルを、英雄として使える手駒としてあつかったのである。
こうして、イタリア戦線と、西部戦線を行ったり来たりする、ロンメルに最後の時が訪れた
1944年10月14日、ヒットラー暗殺の首謀者の一人として、ロンメルは、SSから毒を与えられて、それを呑んで自害した。
その死にあたっては、盛大な国葬で贈られている。何たる欺瞞。
ドイツをはじめ、連合国でも、ロンメルは、敵の戦士を尊重する紳士であるという評価である。
色褪せた英雄とはなったが、ロンメルの名声は、「砂漠の狐」とともに、そのフェアネスに対する評価を残したのであった。
目次
序章 死せる狐
第1章 ロンメル評価の変化
第2章 「アウトサイダー」ロンメル
第3章 第一次世界大戦のロンメル
第4章 ナチスの時代へ
第5章 幽霊師団
第6章 ドイツ・アフリカ軍団
第7章 熱砂の機動戦
第8章 エル・アラメインへ
第9章 アフリカの落日
第10章 イタリアの幕間劇
第11章 いちばん長い日
終章 ロンメルとは誰だったのか
あとがき
主要参考文献
写真・図表について
ISBN:9784040822556
出版社:KADOKAWA
判型:新書
ページ数:320ページ
定価:900円(本体)
2019年03月10日初版発行
2019年04月10日3版発行 -
Posted by ブクログ
本作中で書かれていますが、ロシアのウクライナ侵攻が独ソ戦を彷彿としていると感じていた読者の中の1人である私。
そして必然的に本作を拝読する流れになるのですが、読みながらずっと「へーぇ!ほうほう!」と頷いてしまう程興味深い内容ばかり。(公園に居ましたが周りに人が居なくて良かった)
ウクライナ侵攻について独ソ戦に準えて書かれているだけかと思いきや、大木さんの著書『独ソ戦』で書き切れなかった補足等や、大木さんが取捨選択して下さった文献も丁寧に紹介されており良い意味で裏切られました。
色んなメディア等に寄稿された記事やインタビューも一纏めにされているので有り難いです。
では印象深かった内容を。
何故こんなにも長期化しているのか。私自身、当初はロシアが圧倒的武力と作戦能力で短期決戦に持って行くのでは無いかと予想していたのですが、本書を読んで納得。
ウクライナ側はゼレンスキー政権からの解放を受け入れ、ここまで抵抗するとは思わなかったプーチンが楽観視してしまい政治が軍事的合理性にそっぽを向いてしまったと著者。
なるほど、今回の侵略も戦争ではなく「特別軍事作戦」と称していたのも頷けます。
更にウクライナ軍が「任務指揮」をしっかり勉強していて下士官に至るまで叩き込み、ロシア軍を圧倒したという驚愕の事実。
「軍事は理屈で進むが、戦争は理屈では動かない」
消耗戦まっしぐらになる訳です…。
今回のウクライナ侵攻も後に歴史家の方々に研究される対象となるのでしょうけれど、大木さんは本書で歴史修正主義にも警鐘を鳴らされております。
作中で例に挙げられている船戸さんのお言葉「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない」まだまだ知識不足で勉強中の私には響きました。
『同志少女よ敵を撃て』を書かれた逢坂さんはこの辺りを良く分かってらっしゃるんだなと改めて感服した次第です。ちゃんとソ連側も虐待していたものなあ(ちゃんと、という表現は良くないですけれど)
しかしウクライナに対して「ナチ化」とのたまうプーチン自身が、ヒトラーと同じく収奪によって戦争を維持している事実に頭を抱えてしまいますが、台湾での緊張も高まっていますしいよいよ他人事では無くなって来ていますね。
『独ソ戦』が再度売れ出したのも皆さん危機を感じていらっしゃるからなのかも。
最後に私が衝撃を受けたトロツキーの言葉を書き置いて終わりにしたいと思います。
「諸君は、戦争には関心がないというかもしれない。だが、戦争のほうは諸君に関心をもっている」 -
Posted by ブクログ
第二次世界大戦の指揮官、俗説を否定し新たな視点から再評価する紀伝体の戦史。
南雲忠一、カール・デニッツ、ジョージ・パットン、水上源蔵、トム・フィリップス、シャルル・ド・ゴール、ゲオルク・、トーマス、ハンス・ラングスドルフ、ゲオルギー・ジューコフ、エルンスト・ローデンヴァルト、山口多聞、ウィリアム・スミス
ビルマ戦線の水上源蔵はこの方だけで評伝が作れそう。マレー沖海戦のトム・フィリップスの戦死は、実はイギリスでは知られていなく、英軍捕虜の作り話らしい。しかし艦と運命を共にした大将、その後の日本海軍の有能な人材を失う遠因となったとの指摘。
戦史研究の進展により変わる指揮官の評価。実に興味深い内容の一冊。 -
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ネタバレ用兵家としての山本五十六に迫ろうとした伝記。筆者があとがきで、今度はこうした縛りなしで、人間山本五十六について伝記を書いてみたくなったと書いているほど、惚れ込んで資料を読み込んで書いているので、用兵家としての山本五十六の心情が逆に伝わってきた感じがする。(確かに所々で顔を出す、部下への妙な説得力は、理ではなく、人格的魅力としか言いようがない)
アメリカ留学を経験し、航空機と石油の重要性に気がついた。一式陸攻を作りださせた。これが結果として、第二次上海事変で、重慶への戦略爆撃を可能とした。開戦前からもし開戦となれば尋常ならざる航空機の損耗に気がついていて、増産を依頼していたにも関わらず、全く整っていない日本の貧乏さ。
か細い可能性として、手持ちの貧弱さを考えると、真珠湾攻撃しか手がなく、それを周囲に納得させた。
かつ、明治時代の名残である、艦隊司令と軍令部との2重性の悪弊が、ミッドウェイの大敗を呼び込み、その後も、戦略として回避したかった、消耗戦に突入してしまう。
組織に縛られ、歯がゆい思いを感じながら、そこで自分に課せられた職務を全うしようとした姿が伝わって来た。
日本帝国海軍にとって不幸だったのは、艦隊派と条約派の派閥争いにより、条約派の高級士官が退役させられ、その余波として、組織開発を行う余地がなくなってしまった。
日露戦争時に、山本権兵衛がデザインしたように、持てる力を戦略のために使うということができず、組織デザインがおかしいと声を上げられなくなった姿が浮き彫りになった。
他の歴史書を読むと、陸軍と対比して、 -
Posted by ブクログ
当事者たちが亡くなる現在だからこそ重要な議論。軍事研究の泰斗二人が語る資料、オーラルヒストリーなど調査の留意点。
今年読んだ本の中でベストワンかもしれない。二名の歴史研究家が、調査の過程で身につけたワザ、バイアスについて語る。資料そのものには記載されていないが、重要な視点を多く指摘している。
書籍だからといって100%は信用できないという。海軍は戦後もヒエラルキーが生き続け、通史と違う内容の記載は否定されたという。戦闘詳報など公文書も同様。言われてみれば当たり前だが軍人は国家公務員。自分たちの組織に都合の悪いことは書かない。
公文書、私文書とオーラルヒストリー。それぞれの長所がある。ほとんどの関係者が亡くなった今、お二人のように旧軍人との接点が異常なほど多かったことがありがたい。そして本書でその経験を後世に伝えようとする姿勢も素晴らしい。
澤地久枝、吉村昭の取材スタイルを絶賛しているところも本読みとして面白い。
今や戦争を知らない世代がさらに知らない世代に伝承していく時代。残された資料そのまま信用するわけにもいかないし、証言も記憶の変化、バイアスがかかっていることもある。そんな状況でどのように資料に向き合うか、本書は貴重な視点を与えてくれる。 -
Posted by ブクログ
対談形式でかなりマニアックな書。本当はとか、背景にはとか、現代にも往々にして存在する忖度がサラッと書いてある。故の信憑性を感じたり、歴史書には表っつらしか書かれていないちょっとした真実が垣間見れとても考えさせられました。
特に山本五十六が何故選ばれたのかについては成る程と驚嘆だった。
取材した時には、涙して聞いていたが原稿が上がってくるとそこまで書かれていないとか。人って…とか、寝て起きたら気持ちが変わる…とか、取材側も色々大変そうだ。
書籍でも版によっては書かれている事が変わっているものもあるそうで、著者のピックアップも関心度がまします。
取材と出版で数名の作家の名が上がっているが、吉村昭さんは読み手からしても感じていた取材に対する真摯さはこちらでも評価してが高く、やっぱりそうでしょと思いながら読んだ。