大木毅のレビュー一覧
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ネタバレ現在進行している、ウクライナ紛争の裏にあるもの、ロシアから見たウクライナ戦とは?というところを理解するのに読んだ。(実際にはオーディブルで聴いた)
読み終えて感じたのは、この本は太平洋戦争に対する「失敗の本質」。
ナチスドイツの自国民の優越性の称揚が実は戦争の性質を規定し、独ソ戦に突入する契機となった。(自国民に対し、戦争に投入する資源の確保、という見地から、日本は、自国民に節約を強いたがドイツはより豊かな生活を約束した。本書中に、「大砲もバターも」として描かれている)
となると、戦争により栄えるドイツ、を立ててしまうと、必然的に「戦争の相手国から全てを奪う」「資源も金も、人すらも」とい -
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第二次世界大戦における、ナチスドイツとソ連の泥沼の戦いの詳細な研究記録。
ヒトラーやスターリンという残虐な暴君がその惨禍のわかりやすい原因として槍玉に挙げられるが、真理はそう簡単ではない。
実際には、加担した人々もその非難を逃れようとしてヒトラーに責任を押し付けたりだとか、各地域の人々がユダヤ人に対し強い憎悪を持ち、ナチス党員が求めずとも自発的にユダヤ人を虐殺したりだとか、政治的な駆け引きのためやむなくソ連またはナチスに加担したりだとか、一筋縄ではないのが事実である。
現在進行形に進むロシアのウクライナ侵攻を理解するのにも参考になる。
また、いざ戦争となればどのような形で国民や国土が無残に踏 -
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第二次世界大戦の指揮官、俗説を否定し新たな視点から再評価する紀伝体の戦史。
南雲忠一、カール・デニッツ、ジョージ・パットン、水上源蔵、トム・フィリップス、シャルル・ド・ゴール、ゲオルク・、トーマス、ハンス・ラングスドルフ、ゲオルギー・ジューコフ、エルンスト・ローデンヴァルト、山口多聞、ウィリアム・スミス
ビルマ戦線の水上源蔵はこの方だけで評伝が作れそう。マレー沖海戦のトム・フィリップスの戦死は、実はイギリスでは知られていなく、英軍捕虜の作り話らしい。しかし艦と運命を共にした大将、その後の日本海軍の有能な人材を失う遠因となったとの指摘。
戦史研究の進展により変わる指揮官の評価。実に興味深い -
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ネタバレ用兵家としての山本五十六に迫ろうとした伝記。筆者があとがきで、今度はこうした縛りなしで、人間山本五十六について伝記を書いてみたくなったと書いているほど、惚れ込んで資料を読み込んで書いているので、用兵家としての山本五十六の心情が逆に伝わってきた感じがする。(確かに所々で顔を出す、部下への妙な説得力は、理ではなく、人格的魅力としか言いようがない)
アメリカ留学を経験し、航空機と石油の重要性に気がついた。一式陸攻を作りださせた。これが結果として、第二次上海事変で、重慶への戦略爆撃を可能とした。開戦前からもし開戦となれば尋常ならざる航空機の損耗に気がついていて、増産を依頼していたにも関わらず、全く整 -
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当事者たちが亡くなる現在だからこそ重要な議論。軍事研究の泰斗二人が語る資料、オーラルヒストリーなど調査の留意点。
今年読んだ本の中でベストワンかもしれない。二名の歴史研究家が、調査の過程で身につけたワザ、バイアスについて語る。資料そのものには記載されていないが、重要な視点を多く指摘している。
書籍だからといって100%は信用できないという。海軍は戦後もヒエラルキーが生き続け、通史と違う内容の記載は否定されたという。戦闘詳報など公文書も同様。言われてみれば当たり前だが軍人は国家公務員。自分たちの組織に都合の悪いことは書かない。
公文書、私文書とオーラルヒストリー。それぞれの長所がある。ほと -
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対談形式でかなりマニアックな書。本当はとか、背景にはとか、現代にも往々にして存在する忖度がサラッと書いてある。故の信憑性を感じたり、歴史書には表っつらしか書かれていないちょっとした真実が垣間見れとても考えさせられました。
特に山本五十六が何故選ばれたのかについては成る程と驚嘆だった。
取材した時には、涙して聞いていたが原稿が上がってくるとそこまで書かれていないとか。人って…とか、寝て起きたら気持ちが変わる…とか、取材側も色々大変そうだ。
書籍でも版によっては書かれている事が変わっているものもあるそうで、著者のピックアップも関心度がまします。
取材と出版で数名の作家の名が上がっているが、吉村昭さ -
Posted by ブクログ
ネタバレ以前から独ソ戦に関心があったため、入門書として一冊。グラスノスチやソ連崩壊後の機密文書解除前の古めかしい独ソ戦像を徹底的に最新の情報に置き換えてくれる。YouTubeで独ソ戦などの第二次世界大戦の動画を見ることがあるが、この本の情報からすると、古く、史実に反するような情報を見て取れると感じるようになった。
第1章では、スターリンが大粛清で軍高官の多くが殺され軍が弱体化したこと、ドイツが自国を攻撃することはないと踏んで結果的に多大な犠牲を出したことがソ連側から説明される。ドイツ側の視点では、ソ連の戦力を見くびり、楽観的過ぎる非現実的な戦争計画を立てていたことが説明されていた。これはヒトラーの