カンバンファのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『サボテンを抱く』『惑星語書店』『外から来た居住者たち』が特に好き。
『サボテンを抱く』
胸が痛んだ。パピラの「もういない」という言葉がとても苦しいし寂しい。
『惑星語書店』惑星語って文字は、音韻はどんなのだろう。異国の地にて母国語で話しかけられたために心を開く人というのを動画でよく見かけるが、その時のまるで友人に再会した時のような嬉しそうな顔が頭をよぎった。
『外から来た居住者たち』おいしいと感じられない、という感覚の理由が地球外星人だからという設定が面白い。ダヒョンと店長が美味しさを分かち合えた瞬間をこうやって見せてもらえて嬉しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ韓国SFの新星、というよりも代表格と言って差し支えないぐらいの貫禄が出てきたキム・チョヨプ氏の本邦第二短編集。
一読しての印象は、第一短編集「わたしたちが光の速さで歩めないなら」と同様の、淡々としながらもしっかりとそこにある切なさ、それを乗り越えようとするほんの少しの勇気です。本短編集は、タイトルでも端的に表現されている通り、”この世界”に対するちょっとした疎外感と、そこから抜け出そうとする女性たちの姿を描いている作品が収められています。
この、「女性性と社会との関係性」というテーマに触れて、鴨がふと想起したのは、ジェイムズ・ティプトリー・Jr。本名アリス・シェルドンという、聡明で社会的にも恵まれた立場にあった彼女が、敢えて男性名のペンネームで綴った数々のSF作品は、21世紀の今読んでも相当に衝撃的な、性と社会との軋轢/衝突を強い筆致で描写しています。特に、女性が社会に感じる強烈なまでの違和感を描き出す筆致は、悲壮感すら漂わせています。
他方、キム・チョヨプ作品での女性キャラは、そこまでの「強さ」は感じません。むしろ、社会に対する爽やかなまでの「諦観」「疎外感」を感じさせます。アメリカ社会と韓国社会の土台の違いが大きな要素なのだろうとは思いますが、この差異に注目すると、SFというフォーマットを通して提議しうる課題とその表現方法の多様性に興味を惹かれますね。 -
Posted by ブクログ
2026 03/06
掌編小説。初めての韓国文学。『沼地の少年』『汚染区域』『最果ての向こうに』が好み。地球外植物に汚染されていく地球。人類なんて儚くて頼りない存在だな、としみじみ思う。植物の逞しさにはとうてい敵わない。なすすべもなく滅んでしまうのだろうか。
『みんなのココ』は一見無害そうに見える地球外植物ココに人類が魅了される。全人類が愛してやまない伴侶種ココ。静かな侵略って感じで恐い。
物悲しさと切なさに彩られた世界観に入り込みました。ノスタルジックな気持ちが湧き上がってくる話もあり、軽やかな文章とSFがとても相性が良いと思いました。
この著者の他の作品も読んでみたくなりました。 -
Posted by ブクログ
地上が正体不明の菌類 "氾濫体" に汚染され、地下都市のラブバワに住む少女テリンが、地上世界に憧れ、氾濫体の調査・研究を行う "派遣者" を目指そうとする話
しかし、自身の脳内に氾濫体となる、自分とは異なる意識をもっていることに気づく
脳内にいる氾濫体を呼びやすいよう "ソール" と名付け、コントロールしようとするができず、消すと脅したり、なだめたり、ほっといたりするがやがてソール自身が意思を持って主人公をコントロールしだす
地上を再び人類のものとする目的のもと派遣者となるが、
氾濫体と人間のあいだにたち
葛藤に苦しみながら、心が揺れ動きながら
地上と地下都市の共生や、
氾濫体と人間の共生や、
そして他人との考え方や価値観が異なること、
わかりあえない他者との共存について考えるようになる
希望のある、新たな道のりを歩む的な終わりかたが心地よく清々しい
-
Posted by ブクログ
ん?罪と罰?と思って手に取ったら、罰と罪、だった。タイトルも面白そうだし、書影もそそられるしで、上下巻ほとんど迷わず買ってしまった。韓国のミステリー小説を読んでみたい、という気持ちもあった。
もちろん、ドストエフスキーの罪と罰を反対にしていて、本全体の中にもところどころ、この作品の犯人と罪と罰の主人公とは反対であるようなことが語られる。犯人の独白というか手記というか、そういうものと主人公の刑事・ジヘが、事件の真相に近づいていく過程が交互に出てくる構成が面白い。
個人的にはなんか犯人この人じゃないかなーと途中で思ってしまったので(根拠はなかったけど当たっていた)、ミステリー的なワクワクは少なく感じてしまったけど、犯人の動機の部分は虚を突かれた感じだった。この年月はなんだったのかと、思わずにいられないオチ。
なんかこういう人間の欠損というか、実は最初から抉られているような部分を見せられる体験が、韓国の本を読んでいると多い気がして、そのなんともいえない心地よさがある。
一気に読んでしまわされる、強さのある本だった。