カンバンファのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“自我”とは何か
我々は我々の方法でしか物事を理解することができない。
テリンを取り囲む粘液質の集合体が言う。
「意識こそ主観の感覚が生む幻想にほかならない」
物語を読んで最初に浮かんだのが「風の谷のナウシカ」の“腐界”の物語(アニメではなく原作漫画の方) 受け入れることの難しさがこのお話同様に語られていた。
たしかに、生まれてからずいぶんと長い時間を経てやっと折り合いをつけた“自分”と“この世界”
それを捨て去るのはとても勇気がいる。
「大事なのはね、自分が自分だけで成り立っているって幻想を捨てること。そしたら、可能性は無限だよ」
死ぬまでわからないだろうなぁ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあるひとときの出会いと別れの短編集で、寂しさと温かさが入り混じる心情になりました。
個人的には最後のライオニと古の協約のお話が特に好きで、誰かを思い続けることの透明さに憧れを感じました。
ライオニと約束をしてシステムを守り続けるセルが痛ましい姿になりながらも、番人の役目を果たし続けていて泣きました。
古の協約では星の活動から生まれる成分が毒になる、そしてその解決方法が星の破壊である、星での一族についてのお話でした。物質「ルチニール」に耐性のある人さえ25年しか生きられない星で、地球からの宇宙探査機が来着して、そこで恋心が芽生えるロマンチックな話であり、次の来着までには現地のノアは死んでいることが確定している残酷な話でした。星が持つ性質としては人間には有害で厳しい環境だけど、星が慈悲で活動を止めてあげる優しさの両面がありました。 -
Posted by ブクログ
普段SFと呼ばれるものはあまり読まないのだけれど、キム・チョヨプさんの本はよく手に取る。表紙の絵と、余韻を残すタイトルがたまらなくて。
この「惑星語書店」という短編集は、スカッとした読後感があるわけではなく、仄かに物寂しいような気持ちになる。
多分、普段は「面白い動画を」「もっと効率よく」「もっと有益な情報を」というモードなので、それと対極の寂しい、静かな感じが良いのではないかな。
「互いに触れないよう気をつけながら」と「ほかの生き方もあることを」という二つのセクションに、8編と6編の掌編小説。
前者は、「痛みを与えないことが愛なのか、はたまた痛みに耐えることが愛なのか」というフレーズに導かれるとおり、愛するものや憧れるもの、親しいものとの距離感が描かれているかと思う。
後者は、全体的につながった世界を共有していて、宇宙からやってきた植物に地球が侵略されてしまい、人間の在り方も大きく変わってしまった世界。
「昔一万年時計なんてものを作った人がいたけど、私たちはもう数十年しか持たない」のような話なので、かなり危機的な状況なのかもしれない。
地球にやってきてしまった宇宙人の、地球の食に馴染めない様子とか、人の脳に作用して愛玩植物として大流行している宇宙植物が蔓延る世界とか、想像力豊かにちがった世界を提示してくれる。
空想を羽ばたかせる、でもなく、空想を静かにじんわり広げる本。 -
Posted by ブクログ
SFだとか、ホラーだとかにどこかずっと偏見があったように思う。読者をびっくりさせることで読ませようとする感じが、インパクトのあるサムネで再生数を稼ごうとするYouTuberのように思えていたのかもしれない。それすらも偏見なのかもしれないが。
著者のSF作家としての生き残りをかけた奮闘記のようなものだと思って読み始めた本書だが、最初の数ページでそのイメージは覆された。非人間に真摯な向き合うこと、それがSFというジャンルと合わさったときに、面白かったで終わらない、とてつもないエンタメが生まれるのかもしれない。
「SFは人間中心主義という長きにわたる天動説を覆すものなのかもしれない」これはもしかしたら、差別とかそういう問題にも通じる視点変換の取り組みなのかもしれない。
本書は書くことに関するエッセイであると同時に、著者の読書遍歴でもあるので書評としても読める。
私が一生出会わなかったかもしれない本に、これから会いにいこうと思う。