カンバンファのレビュー一覧

  • この世界からは出ていくけれど

    Posted by ブクログ

     本屋に並ぶ背表紙にこのタイトルを見つけたとき、すぐにキム・チョヨプさんの作品だとわかった。棚から抜取りレジに向かう。タイトルの勝利だ。

     今回の作品は差別的に分断された集団同士でも、個人の単位で向き合えば、わかりあえる、愛することができると言えば大きく括りすぎだろうか。

     建付けはSFだが、描かれているのは人の心だ。星間ロケットが飛ぼうが、脳の外に記憶装置を持とうが、他の惑星で亜種に進化していようが、寿命ある生物である限り、切なさはなくならない。社会を形成する動物である限り他者を想う心はなくならないと信じたい。本作品を読めばそれが良くわかる。対立する集団同士でも、身近で会話をすれば信じあ

    0
    2025年12月07日
  • 地球の果ての温室で

    Posted by ブクログ

    韓国人著者のSFを読むと独特な気分になる。その世界の中に入り込むような没入感がありつつも、描かれる世界とは距離を少し置くような感じ。世界観には引き込まれるが、その中の当事者になる事はない。幽霊みたいにプカプカしている。この感じが好きだ。

    これまで読んできたものは短編が多く、世界を移ろうさすらいの幽霊感があったが、こちらは長編。ひとつの世界に長く留まる地縛霊の気分になった。

    読んでいてヒントや手がかりは散りばめられているのに、この本が提示する謎が解けない。幽霊でも分からないことがあるんだな。

    ありそうでなさそうでありそうな世界の傍観者、として楽しむことが出来た

    0
    2025年11月30日
  • 暗殺コンサル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    完全にタイトルで読んでみたけど面白かった。最初はシナリオを書いていると思っていたら、殺人の手引きをしていたという設定にまず驚く。リストラという名の殺人、自然な死に見えるような殺人、多くの死を作り出していった主人公の結末に、幸せって何だろう、仕事って何だろうと思った。いやな内容を題材にしているのに、読んだ感じが嫌じゃないのはこの作家さんの力なのかもと思った。

    0
    2025年11月09日
  • この世界からは出ていくけれど

    Posted by ブクログ

    個人の世界とまた別の個人の世界とが重なる瞬間、すれ違う瞬間を感じた。
    わたしたちが人と関わるときに感じるズレや一致を思い出す。どの短編も心に響くものがある。自分はとくに「マリのダンス」「認知空間」が好き。

    0
    2025年11月02日
  • カクテル、ラブ、ゾンビ

    Posted by ブクログ

    わー!このセンス好き好き大好き!

    「インビテーション」ではいっしょに黒沢清観よ!ってなるし、「湿地の愛」をテーマにしたコンテンポラリーダンスが観たい。「カクテル、ラブ、ゾンビ」では母や娘と手をつないで家父長制をぶっ壊したくなるし、「オーバーラップナイフ、ナイフ」では世奇妙的な余韻が残響する。

    未邦訳の作品もぜひぜひ日本での出版にこぎつけてほしい!

    0
    2025年10月29日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    視点の切り取り方の目新しさや、特に女性同士が築く関係性の描き方の豊かさが特徴的なように感じている作者の新刊。こちらもこれまでの作品同様の温かさと新鮮さが感じられた短編集でした。すべてSF作品ではあるんですが、血の通ったSFというか、必ず人の感情が影響して物語が成り立っているので、目新しい設定でもすんなりと入り込めるように思います。
    他のだれもが読めない本を並べる書店にやがて読める人が訪れる奇蹟を描いた表題作で運命的な邂逅に心を躍らされる一方、「サボテンを抱く」では物理的な感覚と内からの感情に乱される哀れさをただ切なく受け止める。

    この本のお話では「外から来た居住者たち」が一番好きです。不可思

    0
    2025年10月17日
  • この世界からは出ていくけれど

    Posted by ブクログ

    “わたしたちが光の速さで進めないなら”に続き、またも印象的なタイトルと表紙に惹かれて購入。
    初っ端から最後のライオニに涙腺を緩ませられました。他の短編もやっぱりどこか切ないものばかりでしたが、それだけではなくじんわりあたたかい優しさも持ち合わせた作品ばかりで、読んで良かったです。

    0
    2025年10月08日
  • 長い長い夜

    Posted by ブクログ

    地球で最後のシロサイと、2羽の雄ペンギンに育てられた一つのたまご。彼らがともに歩いた長い旅と、置いてきたものたちと、その間を縫うようにつながれたいのち「ぼく」の物語。

    美しい絵に彩られた美しいお話。素直に読んで、ページいっぱいの絵と色を楽しんで、彼らに心を馳せて、夜を過ごして、一緒に旅をしましょう。それで十分。

    ストーリーが終わったあとの、絵だけが連なる無言のページが好きです。
    彼らの歩んだ足跡が刻まれた一対、そして、最後のページへ。

    …ここまで読んでよかった、と思わせてくれる、よき旅をありがとう、と言いたくなる本です。

    0
    2025年10月03日
  • 夜間旅行者

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ダガー賞読書会のために読んだ本その2。
    韓国ミステリ小説は初めて読みました。ミステリというより、サスペンスやスリラーかな。

    裏表紙のあらすじでかなりネタバレされているとはいえ、ハラハラしました。
    旅行先で、災害ツアーを保つために、人為的な災害を引き起こそうとする企みに巻き込まれてしまう。
    旅行企画会社の社員でも、「ワニ75」を与えられてしまう…「自分は読者じゃなく、読まれている側」だと思い知ってしまうのはかなり怖いです。

    一人一人にはドラマがあっても、大きな災害となると個人は見えなくなってしまう。
    番号で描かれていく終盤の災害描写、あまり読んだことがない形式で、ほんとに台本みたいでした。こ

    0
    2025年09月30日
  • この世界からは出ていくけれど

    Posted by ブクログ

    『私たちが光の速さで進めないなら』が良かったので期待してこちらも購入。文庫化たすかる。

    たとえ同じ人間という種族であっても違う個体であれば本当に理解し合えない部分というものは存在する。様々な理由からどうしたって一緒にはいられないけれど、あなたはかけがえのない存在で互いの芯の部分に触れ合えたような気がした瞬間や一緒に居れた時間をギュッと抱きしめて、あなたの幸福を祈りつつ私は自分の人生を生きていくよ、といったような寂しさを描くのが本当に上手だなと思う。
    好きだったお話は『ブレスシャドー』と『古の協約』。

    『ブレスシャドー』は全然馴染めなかった故郷と、そんな中でも仲良くしてくれた数少ない友人を思

    0
    2025年09月25日
  • この世界からは出ていくけれど

    Posted by ブクログ

    色んな意味での旅立ちや別れがそれぞれの短編で起きるので、どうしてもものさみしい気持ちになる。
    同じ場所で、あなたと変わらずこのままで、が叶わない世界。
    だけどそれは決して絶望的な別れではなく、互いのことを想いあった上でのままならない別れであったりもするから、読み終わったあとに残る感情は決してネガティブなものではない。

    不思議。
    別れの中でも死別が最も大きなものと私は捉えてしまうけれど、今なら「またね」と言える気がする。もう会えない、交わらない時間のことだけを想って絶望する私ではなくなったような感じがする。

    地球が舞台の短編の方が少ないくらい、あくまでもしっかりSFなんだけど、舞台がどこかな

    0
    2025年09月22日
  • カクテル、ラブ、ゾンビ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    4作の短編集。

    当然のことですが、韓国が舞台なため登場人物の名前だけでは男性なのか女性なのかわからず、読み進めてはじめてわかる、という箇所がありましたが…。

    まず設定が興味深いし、そのなかで親子関係や夫婦関係のわだかまり、諦念が描かれていることが面白かった。

    0
    2025年08月17日
  • 派遣者たち

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    他者との共生とそこで発生する問題についてしっかりと描かれていた。氾濫体に対する嫌悪感の描写が昨今の移民問題や過去の迫害の問題に繋がっていることがすごい。
    確かに個人という意識、国のアイデンティティ、そういうものにずっと囚われていては争いはいつまでたっても終わることがないよな
    人間という生き物をイゼフが象徴していると思う。自分や自分の守りたいものを守るため正義の名の下に他者を傷付ける。

    相変わらず翻訳がとても読みやすい

    0
    2025年08月05日
  • カクテル、ラブ、ゾンビ

    Posted by ブクログ

    明るすぎず暗すぎず絶妙なトーン。
    特に最後の短編はまるで映画を見ているようで、その時間軸の使い方と世界観にかなり引き込まれた。色んな要素がうまく絡み合っていながらも複雑すぎずに読みやすい。
    韓国の小説ってゾンビ物が多い気がする。

    0
    2025年07月23日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    掌編集でどれも読みやすいし著者自身が序文で語っている通り、掌編だから思い切って細かい設定や背景の描写はすっ飛ばしてる潔さもあって読みやすい。
    過去作同様マイノリティへの優しい視線や普遍的な人生観を扱っているけれど掌編故にメッセージがむき出しで迫ってくるのも良い。
    デイジーとおかしな機械、惑星語書店、とらえられない風景、外から来た居住者たち、が特に好きだった。

    0
    2025年07月21日
  • 派遣者たち

    Posted by ブクログ

    面白かった。SFは苦手だと思ってたけど、恐い描写があるわけではなく、綺麗であたたかい世界の中でストーリーが流れていって、読んでて心地よかった。

    0
    2025年07月13日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    掌篇集ということで、キム・チョヨプさん特有の抒情性は少し薄れるものの、あいかわらずのやわらかな筆致。ワンアイデアで広がる豊かなイマジネーションがすばらしい。
    絵画から着想を得たもの、特殊な五感を持つ人、20年ごとにバラードが流行る謎の調査、アナログへと回帰することで捉えられるもの。
    表題作の『惑星語書店』はふたりのこの先も見てみたくなるようなわくわく感があった。

    0
    2025年07月07日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    『サボテンを抱く』
    皮膚が過敏になり、物質と接触するだけで激しい痛みを伴う障害を患った元建築家のパヒラと、お手伝いロボットの話。

    『#cyborg_positive』
    機械の眼を持つインフルエンサーリジーが、企業のプロモーションを受けるか迷う話。

    『メロン売りとバイオリン弾き』
    万引き常習犯の子供ふたりが出会ったメロン売りとバイオリン弾きの話。

    『デイジーとおかしな機械』
    同じ空間にいるふたりと音声を文字として表示する機械の話。

    『惑星語書店』
    脳内インプラントの言語変換機能を妨害することで、読む能力がなければ読めないようになっている本を売る書店の店員と、努力して惑星語を習得しようとし

    0
    2025年07月05日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    読んだ。薄かったのでサクッと。全体的には「切ない」という言葉なのだが、「切ない」と言い切ってしまうまで「切ない」わけでもない。ふと胸に宿る寂寞のカケラに気が付かされるような。そのカケラに向き合って過ごすにはあまりに小さすぎるような。でもその存在に気がついたなら明日からの私達は同じではいられない。ケン・リュウの時のようなひりつく苦味と切なさでもなくて、地に足をつけた優しさを感じる。
    また、この著者は自らの世界観を広げて小説書くタイプだ。他の本も繋がっている。「派遣者たち」は読みたいし、他も手を広げたい。
    直接内容の感想ではない所だと、翻訳が日本人では無いということが新鮮。勿論相互の言語に堪能なの

    0
    2025年06月28日
  • 惑星語書店

    Posted by ブクログ

    短編なのでさくさく読める上に、どのお話もしっかりと心にあたたかいおみやげを残してくれる。収録作の『サボテンを抱く』と『惑星語書店』が特に良かった。「痛みを与えないことが愛なのか、はたまた痛みに耐えることが愛なのか」という言葉が印象的。

    0
    2025年06月20日