カンバンファのレビュー一覧
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前作『わたしたちが光の速さで進めないなら』が大変良かったのでこちらも。旅立つ者と、見送る者の7つの短編集。
広大な宇宙にある無数の星々、多様な外見、テクノロジー、死生観、多数派と少数派…それぞれの理解と無理解。家族であれ恋人であれ友人であれ、お互い譲らない(譲れない)一線があり、愛していても理解、許容できないこともある。
互いに分かり合えなくても相手を愛すること、相手を思いやることはできる。
どの話も良いのだけど個人的なお気に入りは「キャビン方程式」
文字を追いながら静かに揺さぶられるような感覚。繊細な翻訳も素晴らしい。
寂しさの中に一滴の優しさがふわりと溶け込んだような読後感の一冊。 -
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ネタバレハン・ユジンの悪の種はこうして育っていった。よく練られた、サイコミステリ。
重い軽いはあっても心に善と悪のふたつを持っているのが人間だろう。物心ついた時にはそれが混然一体になった人間性が出来上がっている。生きるために。
それは一面、他人を理解し人生の深みを感じ取る大きな要素になっていると思う。
その二つがよりよく折り合っているなら人としてなんの不具合もない。
主人公のハン・ユジンの中では病的に偏った悪の芽が育っていった、残虐に。自分に都合が悪い人間を消していく。本来なら愛情に包まれ暖かい暮らしを作り上げるつながりが、冷めたまま、自己保身の殺人に向かう。
仲のいい聡明な兄弟のいる家庭。だがス -
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だいすきなSF作家キム・チョヨプさんのお仕事エッセイ。独特の抒情性とやわらかな筆致から、文系で感性派の方かと勝手に思っていたら、バリバリの理系(化学科卒)でとてつもない勉強家だった!
とにかく「ここまで手の内をさらしていいの!?」というほど、ことこまかに創作の過程を明かしてくれている。アイデアの泉などないから、とにかく自分の外にある材料を集め、世界を拡張する、と。
影響を受けた本についても、作法書や現行韓国SFまで挙げていて、すごくまじめで正直な方だなぁとますます好きになった。最初はオンラインギルドやボードゲームサークルの仲間と書き始めた、というサブカル文脈もすごくいい。 -
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ネタバレ所属している読者会の「ゾンビ回」で紹介された作品のひとつ。
短編集のうち、ゾンビテーマの表題作を取り上げてくださり、大層盛り上がりました。
初読みの作家さんですが、面白かった〜。他の作品も読みたいです。
表題作は、「結末は本編でお確かめください!」みたいなご紹介でしたが、こうきたか!と思いました。ウイルスでなく、呪い。韓流サスペンスで韓国の祭祀については想像できるので、あれか…と思うなどしました。
社会派な作品でとっても良かった。
他の、「インビテーション」「湿地の愛」「オーバーラップナイフ、ナイフ」も根底にあるのは愛な気がします。
それが悲劇的な結末になったものもありますが。
オーバーラ -
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ネタバレ『罰と罪(下)』を読み終えて、まず残った感覚は「しまった!」という悔しさだった。物語の中盤、ある証言の食い違いを前にして、私は何も引っかからずに読み進めていた。伏線回収がすでに始まっていたことに、気づかなかったのだ。
ミステリーを読んでいるとき、私はたいてい何かしらの引っかかりを持ちながら読み進めている。違和感や伏線らしきものを、完全に言語化できなくても、感覚としては掴んでいるつもりでいる。ところがこの作品では、それがすっぽり抜け落ちていた。
奇数章では犯人キム・サンウンの独白が続き、そこでは啓蒙主義やドストエフスキーといった、いかにも「考えている」ように見える言葉が大量に投下される。私は -
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ネタバレこの本を手に取ったきっかけは、正直に言えば軽いものだった。タイトルがドストエフスキーの『罪と罰』を思わせ、ページをぱらぱらとめくると、作中にもドストエフスキー作品への言及が散りばめられている。殺人事件とドストエフスキー。少しひねったエンタメミステリーとして楽しめそうだ、という期待があった。
けど、読み進めるにつれて、その期待は良い意味で裏切られる。これは、気軽に消費できるタイプのエンタメじゃない!むしろ「ちゃんと本と向き合え」と要求してくる、負荷の高い読書…。
物語は、22年前に起きた未解決の女子学生殺害事件を軸に進む。現在パートでは、女性警察官ジヘが、被害者の同級生たちに話を聞きながら事 -
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とても新鮮な読後感だった。ここには、まだ知らなかった価値観と日常が描かれている。
全部で十四の短編が収録されているが、それらは大きく二つのカテゴリに分けられていた。
『互いに触れないよう気を付けながら』と銘打ったものが八つ。『ほかの生き方もあることを』と冠されたものが六つである。
最初のカテゴリにはさまざまな存在同士のコミュニケーションが描かれていた。人とロボットの時もあるし、隣の次元の人間同士の場合もある。
表題の「惑星語書店」はすべての言語が翻訳できるモジュールが当たり前に使われている宇宙の話。そこでは人々は別の星の言葉を何の苦労もなく読めるし、話せるし、理解できる。ただ一軒、翻訳モジュ -
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本屋に並ぶ背表紙にこのタイトルを見つけたとき、すぐにキム・チョヨプさんの作品だとわかった。棚から抜取りレジに向かう。タイトルの勝利だ。
今回の作品は差別的に分断された集団同士でも、個人の単位で向き合えば、わかりあえる、愛することができると言えば大きく括りすぎだろうか。
建付けはSFだが、描かれているのは人の心だ。星間ロケットが飛ぼうが、脳の外に記憶装置を持とうが、他の惑星で亜種に進化していようが、寿命ある生物である限り、切なさはなくならない。社会を形成する動物である限り他者を想う心はなくならないと信じたい。本作品を読めばそれが良くわかる。対立する集団同士でも、身近で会話をすれば信じあ -
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韓国人著者のSFを読むと独特な気分になる。その世界の中に入り込むような没入感がありつつも、描かれる世界とは距離を少し置くような感じ。世界観には引き込まれるが、その中の当事者になる事はない。幽霊みたいにプカプカしている。この感じが好きだ。
これまで読んできたものは短編が多く、世界を移ろうさすらいの幽霊感があったが、こちらは長編。ひとつの世界に長く留まる地縛霊の気分になった。
読んでいてヒントや手がかりは散りばめられているのに、この本が提示する謎が解けない。幽霊でも分からないことがあるんだな。
ありそうでなさそうでありそうな世界の傍観者、として楽しむことが出来た -
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視点の切り取り方の目新しさや、特に女性同士が築く関係性の描き方の豊かさが特徴的なように感じている作者の新刊。こちらもこれまでの作品同様の温かさと新鮮さが感じられた短編集でした。すべてSF作品ではあるんですが、血の通ったSFというか、必ず人の感情が影響して物語が成り立っているので、目新しい設定でもすんなりと入り込めるように思います。
他のだれもが読めない本を並べる書店にやがて読める人が訪れる奇蹟を描いた表題作で運命的な邂逅に心を躍らされる一方、「サボテンを抱く」では物理的な感覚と内からの感情に乱される哀れさをただ切なく受け止める。
この本のお話では「外から来た居住者たち」が一番好きです。不可思