カンバンファのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「ダストフォール」という世界的災害以後の荒廃した世界を生き抜いているナオミと、その数十年後に文明が復活した社会で植物学者をしているアヨンの視点で描かれる物語。謎を調査するといく建付けの話ではあるが、メインは人々の心の交流を描いた話。
ナオミは姉のアマラと共にブリムビレッジと呼ばれる村にたどり着く。そこは人々が僅かな食料を巡って争い続けるの他の集落とは違い、人々が穏やかに、作物を育てながら生きていた。
一方、アヨンはモスバナという植物の異常増殖という件を調査することになる。そこで青い光の話を聞き、幼い頃に見たことがある事に気付く。それはヒスと呼ばれる変わり者の女性の庭でのことだった。
フリムビレッジの来歴、ヒスの生涯、モスバナは一体何なのか、ということが一気にわかる最後が圧巻。過酷な環境で必死に生き抜いた女性たちのシスターフッド的な関係も心地よい。ジスとレイチェルの出会いと再会、徐々に心惹かれて行く様子、レイチェルの感情を操作する(してしまった)ジスと、それを知ったレイチェルの激怒、モスバナを巡る駆け引き。それがナオミの視点では語られなかったフリムビレッジの終焉とその後のナオミの生活にも影響を及ぼしていく。ひたむきに調査するアヨンが辿り着いた真実が優しくて悲しくて、でも読後感は爽やかだった。極限状態だからこその友情という側面はあるが、不器用ながら互いを思う気持ちは胸打たれるものがあった。 -
Posted by ブクログ
読みたい読みたいと思っていたキム・チョヨプさんを初めて読んだ
面白い!好き!!
地球外生命体として植物に侵食されつつある地球が主な舞台
共生か侵略か寄生か、そもそも地球の人類がそれを選べるような状況なのかも分からない
絶滅って劇的じゃ無くてこんなふうに緩慢にすすんでいくものなのかもとゾワゾワしながらも、ちょっと違うように思える隣人を受け止めたり理解してみようと思う視線の暖かさが絶妙
表題作の惑星語書店も、設定はSFなのに出てくる人達の気持ちは私たちと同じでノスタルジーに悶えた
『サボテンを抱く』には泣かされて、最初からこんな完成度でこの後どうなっちゃうのと思ったけど、総じて大満足読書でした -
Posted by ブクログ
原題を直訳すると『再捜査』らしい。
が、このドストエフスキーを食った様な不遜なタイトルは素晴らしい命名だと思います。
犯人の純文学っぽい独白と警察小説が交互に語られます。
エンタメと純文学を交互に読んでる様な気分で読みました。
とはいえ、世界文学みたいなものかと言われるとそうではなくちゃんとエンターテイメント小説です。
とにかく面白かった。
犯人の言い草に頷けないあたりが読む速度を落としますが、最後まで興味深く、追う方、追われる方から出てくる描写を楽しみました。
韓国の作家が書いて、日本語の分かる韓国の人が日本訳をした作品。
読む前にドストエフスキーの五大長編は読んだほうがいいかも?
『白痴』は結構内容に触れるので気になるなら先に読んだほうがいいですね。
面白かったです。 -
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白い。4作品とも趣向が異なり全部良かった。"オーバーラップナイフ、ナイフ"はとてもよく出来たタイムリープもので、結末が近づくにつれ悲しく痛々しいけど構成が本当に面白い。"湿地の愛"も好き。幽霊のムルとスプのやり取りが微笑ましく可愛らしい。壮大なラストで終わりのその先が気になるという感覚を久しぶりに感じた。訳者あとがきにある「ホラーの先にある爽快感と充足感」という言葉がぴったり。しっかり怖いですが、それも含めて良いなあ〜面白いなあという満足感の方が大きく読後が非常に良い。ただのホラーでなく、家族愛や友愛が描かれているので感情移入しやすく読みやすいです。チョ・イェウンさんの他の作品も読んでみたいです!
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Posted by ブクログ
ネタバレ最近ちょくちょく韓国発の作品が増えてきて、早川書房やるな…!という感じ。
早川書房は安定して面白い作品を邦訳してくれるから助かるぜ。
短編集なのに、全体としての主題が全くブレないのは凄かったな。あとがきで語っていたように、ずっと同じことを考え続けてきたのだろうな、というのがしっかりと伝わってきた。
ある社会形態と個人の生態が矛盾するとき、その個人は時に異物とされることがある。
奈須きのこに言わせれば「怪物」なんだけど、社会形態に慣れている私たちにとって「怪物」と一緒に暮らし続けることはできない。もしそれを可能とするのなら、私たちが「怪物」になるか、「怪物」が「怪物」であることをやめるかしかない。
だから、作中の「怪物」であった彼らは、誰も社会の中で生きるという選択肢をとらなかったのだろう。(『ローラ』はそれでも愛があれば、その溝を埋められるかもね、という作品だったけれど)
SFにおけるファーストコンタクトとは、普遍だと思っていた私たちの価値観が、ある観点からすれば「怪物」になりうるという驚きだと思う。
その驚きこそがセンスオブワンダーであり、SFファンである以上そういった驚きを喜ばなくてはならない。科学によって文明が広がるように、出会いによって世界を広げなくてはならない。
キム・チョヨプが人と「怪物」における物語の舞台をSFに選んだのも、なるほど頷ける話だ。
まぁここらへんは序文と後書きで書かれているのだけどね。そこも含めて、短編集としてのクオリティが高かった名著です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自分がSFというジャンル自体をあまり読んでこなかったこともあるかもしれないが、概念や設定が完全には理解できない中で感情が動かされるという、不思議な読書体験ができた。
理解や共感が完全には及ばなくても他者を愛することができる、というような話も出てきたが(「ローラ」)、それが全話に共通するテーマの一つにもなっていると感じた。
「最後のライオニ」の、主人公自身の弱点だと思っていた特性が任務遂行に不可欠であったと気付く場面には、かなり励まされた。
上記のように要約しようとすると教訓めいた表現になってしまうのが惜しい…。
各話とも、その舞台となる場所の秘密が徐々に明らかになり、引き込まれながら楽しく読み進めることができた。
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Posted by ブクログ
ネタバレどの作品も心に残る作品でしたが、その中でも
最後のライオニ
ブレスシャドー
キャビン方程式
が好きでした。
相容れない者たちが時に反発し、時に惹かれあう姿が
とてもやさしい視点で描かれていました。
○最後のライオニ
他の人とは違うと思っていた主人公がほかの星に行くことで
他者とのつながりを知ってアイデンティティを確立していく姿が泣けました。
○ブレスシャドー
言語体系が全く異なる二人の友情と別れ。
リアルで蔓延している排外主義に重ねてしまいました。
「砂漠の隅っこで帽子をかぶっている靴下が見つかった……」
という言い回しが天才だと思います。
○キャビン方程式
物理学的な部分は宇宙猫状態でしたが、
局地的時間バブルというものを通して
姉妹が再びリアルタイムで通じ合えるラストがとても印象的でした。
マリのダンスは、
「マジョリティはマイノリティの声がうるさいと言うが
うるさくしないとマジョリティには聞こえない」
というようなことをどこかで聞いたことがあり、それを思い出しました。
ローラは、クレイジージャーニーの人体拡張回みたいでした。
古の協約は、村田沙耶香の「信仰」に入っていた「無害ないきもの」を思い出しました。
認知空間は、集合知識の危うさを描いていました。
ラストに亡き友人が遺し主人公が完成させたスフィアを手に、
格子ストラクチャを後にする主人公の姿が泣けました。
全く違うかもしれませんが、
ウィキッドでオズの魔法使いが言う
「みんなの信じたことが歴史と呼ばれている」というセリフを思い出しました。 -
Posted by ブクログ
〜あらすじ〜
正体不明の菌類『氾濫体』に地上は汚染され、地下都市に追いやられ、『氾濫体』による『錯乱症』怯えながら暮らす人類。
地上奪還のため氾濫体の調査・研究を行うため、地上へ出ることを唯一許されている『派遣者』になることを夢見る地下都市ラブバワに住む少女テリンは、師匠である派遣者のイゼフに憧れながら、派遣者の資格試験に挑み続ける。
美しい地上を夢見るテリンを中心に展開するSF。
〜感想〜
あらすじから住処を奪われた人類と氾濫体との戦いを巡るディストピアかと思い読み始めると、冒頭から三分の一くらいまでは地下都市ラブバワでのテリンの日々を淡々と描いていたのに、中盤から突然、個について、意識や自我の存在について問いかけ始める。
「自我とは?」
「個体とは?」
「死とは?」
「われわれとは?」
「わたしたちとは?」
「きみが本当にひとつの存在なのか」
人間と外側との境界線が崩れることで、人間と非人間との共生の難しさ、変化と困難がテーマとして浮き彫りになってくる。
本来の自分を全く失うことなく、異質な他者との共存は難しい。自身の存在や生存を脅かす危険性がある他者を、主人公のテリンは苦悩の果てに信じ、受け入れ、変化する。
テリンとイゼフが望む2人共通の夢と未来は、そこに憎しみも加えられて到達した結末はとても美しかった。
コロナを経たからこそ描くことができた、他者との共生と個の存在について描いた作品でした。
また何年かしたら再読してその時の自分がどう感じるのかを味わってみたい。 -
Posted by ブクログ
前の短編集が面白かったので、今作も購入。しばらく積んだのちようやく読み終えた。
どの作品でも、作中の人物は自分が属していた環境を離れる経験をする。
その時旅立つ彼らが振り返った、今まで属していた世界、また旅立つ彼らを見守る人、そんなものを描いているようだ。
彼らは自分と周囲の社会にどうしようもないミスマッチを抱える。
ある人は幻肢を持っているが、それは精神の病気だから治療すべきだと言われ、自分の気持ちを否定され続ける。
ある人は数百年のコールドスリープからすっかり変わってしまった世界に目覚めさせられ、言葉も通じず、何年経っても馴染むことができない。
彼らはたった一人で多数の人が作る良識や常識に耐え、傷つけられて、住み慣れた環境を離れる。
その時に、見送ってくれた人にそっと心を残す。それがタイトルの『この世界から「は」出ていく「けれど」』のように感じられる。
どの人にも、世界を出ていく前に一人の心通わせられた人がいた。感じ方や環境の変化から、離れることになっても、やはりお互いがお互いを理解しようと努め続けたり、心に残し続けたり、みんな繊細で、誠実で、優しい。
設定はSFなので非日常的だけど、他者と理解し合えず、違う世界を生きてるくらい孤立した気持ちは日常にある。
そんな気持ちを言語化されて、登場人物の中に客観視できて、成仏させられる、とても優しい短編集だと思う。
ただ、SFを読み慣れていないので、いちいち新しい世界の異なる常識に頭を書き換えるのが、面白くもあり、大変でもあった。
「一人前のロモン」?「間違った地図」??「粒子の意味」???