カンバンファのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
蟻地獄から抜けられない恐ろしさ… 人間の邪悪な本性が描かれたショッキングスリラー #夜間旅行者
■あらすじ
独特のテーマを持ったプランを提供する旅行会社に勤務する主人公。彼女はツアープログラム業務にあたっており、収益が良くないツアーの見直しを命じられていた。
あるベトナムのツアーに同行して現地を査定する主人公だったが、途中でコンダクターとはぐれるトラブルに見舞われてしまう。仕方なく街に滞在することになるのだが、なにやら街には秘密があるようで…
■きっと読みたくなるレビュー
人間の醜悪さが詰まったスリラー。不愉快な怖さが魅力ですね。
まず独特の背景設定とストーリーが絶妙に厭らしいんですが、きっと何も知らずに読んだほうが楽しめます。そのため、書き記したあらすじ以上のことは詳しくは語れません。
序盤から嫌な雰囲気が漂うのですが、中盤からは徐々に圧迫さが増していき、悪夢が広がっていく。蟻地獄にハマったしまった様に、ずるずるとしかも着実に引きずり落されている感覚がイヤすぎる。発生している理由も、止める方法も分からない。しかも誰も助けてくれないという恐ろしさ… こわっ
恐怖のキーワード「ワニ75」
たったこれだけの単語なのに、身悶えするほど恐ろしい。動物名と数字だけのこのキーワードが、一体どんな意味なのか… 読んでみればわかります。
またさらに不快感を増す要素として、本書にでてくる人間たちの価値観ですよ。
そもそもこの旅行会社のプランについて、漫画カイジの鉄骨渡りのあるエピソードを思い出してしまいました。大金持ちの権力者たちは、鉄骨渡りをしている若者たちを見て、自分が安全な場所にいるという優越感を楽しんでいるというシーンです。
人間は誰しも弱い生き物ということなんでしょうが、非道なことに興味がわいてしまうという事実は悲しいものです。
そして街の人々ですよ… 貧しさはもはや罪であり、正義がなんなのか分からなくなってしまっている環境が辛すぎる。物語の話だけであって欲しいと、願わずにはいられませんでした。
■ぜっさん推しポイント
物語の終盤はもちろん怖さも最高潮なんですが、さらに切羽詰った感じ、スピード感、なにより哀愁の表現が素晴らしいんです。これまで様々なミステリーで不幸な登場人物を見てきましたが、最たるものですね。
私はいつも恵まれない人生だよな~と、ボヤいているのですが、決してそんなことはなく十分に幸せなんだなと感じるのでした。
と…これも、自分が安全な場所にいるという優越感ですよね。私も醜い生き物です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
ずっーと読みたくて仕方なかった本に偶然本屋で出会って、即購入。
期待を裏切らなかった。読んだあと心がスーッと軽くなって、自分の生き方とか考え方は何ひとつ間違ってないよねって気持ちにさせてくれる。
なんで韓国エッセイってこんなに素敵な言葉と表現で溢れてるんだろう。
私もこんな素敵な言葉を使いこなせる人になりたい。
わいの心に残った言葉
「内向的な人とは、物理的、感情的に敏感な人のことを言う。だから、外界のどんな小さな変化も刺激に感じるし、短い外出や何気ないやりとりにも疲れてしまう。たとえるなら、Wi-FiやBluetooth機能がオンになったままの携帯電話。キャッチしなくていい電波にまでいちいち反応して、たちまちバッテリー切れになってしまう。」 -
Posted by ブクログ
とつぜん繁殖した雑草の秘密をめぐってほどかれてゆく世界の歴史と、そこに生きた女性たちの物語。
どこか懐かしくて柔らかい、ロマンチックなSF物語。この世界はどうしようもなくても、もう立て直せないと思っても、それでも守る価値のあるものは存在する。世界がどんな形に変わろうともそれでも愛はそこにあるのだと、穏やかな文体が静かな力で描き出す。
出てくるモチーフひとつひとつがとても魅力的で知的好奇心をくすぐられるのと同時に、儚くも美しい光景が頭の中に広がっていく。
そして登場人物も。かつての機械整備士と植物学者がたどり着いた夢の果ては決して哀しいものではなかったのだと信じたい。
前作が好きだったので今作も購入。変わらずノスタルジーとロマンチックが溶け合った、静かに染み入る物語だった。 -
Posted by ブクログ
巷に繁茂し出した雑草の謎を追ううちに、ひとりの植物学者はかつて滅びかけた世界の真実と、その時代を潜り抜けた女性たちの半生を知っていく。
途方もない災厄の中で醜く争う人類たちと、その中でも親愛を失わず、未来への希望も捨てきれずに生きる人々をやわらかく繊細に描き出し、やがて一人の科学者と整備士の深い絆を思い知ることになる。複雑な事情の絡んだ彼女たちのあいだにあった真実が明かされる終盤は、抒情的で切なく、とても素敵でした。
そして世界の危機に瀕した人々が、生きることに汲々としてわだかまりもあった彼らが、実は共通の行動を起こして未来を作っていた。そんな、どこか理想的だけれど、こんな善性を信じてみたいと思わせる真実に作者のやさしい視線を感じました。
ディストピアSFに区分される物語なのでしょうが、破滅や諍いだけでなく、その中で生きる人々の、愚かしくもいとおしい姿を繊細に描いた作品だと思いました。
すごく良かったです。 -
Posted by ブクログ
デビュー作でもある前作の短編集から一気に大ファンになった作家さん。
待ちに待った新刊でウキウキしてあらすじを見るとどうやら今回は長編とのこと。
それもあってか前作よりも展開はゆったりとした流れ。
それでも中盤から終盤にかけて過去と現在が交差し運命が紐解かれていく様は圧巻だった。
終末という救いようのない世界を描きながら、まるで陽だまりの中に包まれるような安堵感を覚えるのは、やはり作者の優しい眼差し故なのかな。
前作から共通する、好奇心が揺さぶられるSF設定の楽しさと「あなたを知りたい」という人間的な願いの尊さが、引き続き素晴らしかった。
早くも次作が待ち遠しい。