カンバンファのレビュー一覧

  • ことばの波間で

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    キム・チョヨプさんの本を何冊か読んだことがあり、その訳をされているのがカン・バンファさん。
    どんな人なんだろう、と思ってエッセイが出たので興味がわいて手に取った。

    岡山生まれの在日韓国人三世の著者
    子どもの頃はアボジ、オモニ、キムチ、トック、ソクリ(竹製のざる)くらいの韓国語しか知らなかった著者が大学卒業後、韓国語学留学し、学びに学び、翻訳家になる。

    ミスや失態、顔を覆いたくなるほどの不出来さも、知らないなら学べばいい。
    昨日の自分を、堂々と恥じればいい。
    そうすれば明日の自分はパワーアップしているはず。

    という爽快で向上心の溢れるお人柄。
    とてもわかりやすい文章で読みやすい。

    韓国語を学び、翻訳家になるまで、そしてなってから、起こった出来事や、出会った人々、ご自身の思いを綴ったエッセイ集。

    翻訳家としてばかりでなく、著者の人間性も垣間見れて楽しく読めた。

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    2026年09月30日
  • 派遣者たち

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    未知の菌類、「氾濫体」に汚染された地上から、地下に逃げてきた人類。
    主人公のテリンは氾濫体から地上を奪還する派遣隊を志願する少女だが、幻聴を聞くようになり…

    「自然との共生」を考えさせられる今の時代に一石を投じる小説。地球を支配しているように思える人類も、昨今のパンデミックや環境問題を経験してからは見え方が変わってきた気がする。この物語では人類と人類以外の共生とはどうあるべきなのか、どういうことなのか、暗い部分も光を当ててリアルに描かれている。

    そんな興味深いテーマに加えて、人間同士の結びつき、他人を想う気持ちが大きな柱となっていてさらに面白い。登場人物たちのそれぞれの結末が気になりすぎて、どんどん読んでしまう(でも丁寧に読みたい)。

    著者はこの若さでなんでここまで完成度の高い小説を何冊も出せるのだろう?間違いなく、今一番好きな作家!
    翻訳も丁寧で読みやすく、SF初心者にとてもおすすめ。ここから沼にハマってほしい。

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    2026年08月06日
  • 派遣者たち

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    キム・チョヨプの長編。めちゃくちゃ面白かった。
    氾濫体と呼ばれる未知の菌類から地上を取り戻さんとする派遣者たちの話。

    前半はどうやって派遣者になるかで、後半は世界の秘密を紐解いていく感じ。間に主人公のテリンの秘密と彼女を育てたイゼフの視点が挟まっている。

    個としての自分を捨てれば、死ぬことはない。
    溶け合い混じり合い永遠になっていく。
    けれど、それは本当に自分だと言えるだろうか。
    そもそも自分とは一体なんなのだろう。

    世界の認識の仕方は様々で一元的には決められない。
    テリンの葛藤が非常にSF的で好き。イゼフとの関係は母娘関係にも似て濃い。

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    2026年08月06日
  • 本と偶然

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    SF作家キム・チョヨプの読むことと書くことを巡るエッセイ。

    既存の作品に影響を受けていない作家なんて存在しないわけなんですが、どの作品からどんな影響を受けてどういうことを考えて自分の中で昇華させて、新しい作品を書いたかをここまで言語化できる作家もいないと思う。

    作風も非常に丁寧で論理的ですが、元々の人格が真面目で勉強熱心な人なんだろうなと思う。
    新しい作品を書きたいと思ったらとりあえずその分野の本を10冊読むとか、とても学ぶことに貪欲で刺激を受けた。挙げられているSFの本もどれも読んでみたくなる。

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    2026年07月12日
  • 惑星語書店

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    短編集が面白かったのでこちらも。こちらは掌編集。分量を短くしたら逆に自由になったと序文で作者様がおっしゃってたのが興味深かった。個人的には
    「サボテンを抱く」「とらえられない風景」「沼地の少年」
    がすき。どの作品も視点があたたかい。

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    2026年07月06日
  • この世界からは出ていくけれど

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    「わたしたちが光の速さで進めないなら」が好きだったので2作目!
    特に「ブレスシャドー」が好き。映画を見終わったような読後感だった。

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    2026年07月04日
  • この世界からは出ていくけれど

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    「わたしたちが光の速さで進めないなら」がとても刺さったので本作も読んだ。
    ここではない遠い星のどこかの話なのに、この世界で起きている出来事かのように感じられる、不思議で優しくて切ない短編集だった。
    異なる生き物同士の、相互理解ではない形の寄り添い方について考えさせられた。

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    2026年06月24日
  • 長い長い夜

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    一つの卵を、命をかけて守り続けたサイとペンギンの物語。だれかを愛おしく想い、支え合う姿は、本当に美しいなあ。そうやって命はつながれていくんだ。だからこそ別れは切ないのだけれど。でもきっと、「ぼく」とノードンは再会できるって信じることのできる終わり方でよかった。感動した。

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    こわかった。でも、ぼくは知っている。まもなく自分はあの海へ入り、はるかな冒険に出る。そして、ひとりぼっちでいくつもの長い長い夜にたえぬいていくのだ。ぼくはその先で、長い長い夜の空にかがやく星のような何かを見つけるだろう。 ー 127ページ

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    2026年06月14日
  • 惑星語書店

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    SFじゃないと成り立たない設定で感動しつつ、でも"気持ち"の部分は現実の世界でも想像できる切なさを見せてもらう。

    便利になりすぎることでむしろ何が大事なのか明確になる感じが、いいなぁと思った。人間のことを好きになれる、とでもいうのでしょうか…。
    人間って正しいとわかっていても真逆の選択を選んでしまったり、よくわからない行動に出てしまったり。
    でもそれは無くさなくていいのではないか。
    戻れなくなってからでは手遅れなのでは…。
    はじめてSFを読んだ日の解釈としてここに書いておく

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    2026年06月02日
  • 誤解されても放っておく

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    誤解されずに生きたいなんて思うのは自分に甘すぎる。
    プライドがなくて人に流されやすいことと、
    知った上で人を許せることは大きく違う。

    ついつい見かけ上のものに惑わされてしまうけど
    アドリブで発揮されるのは地道に積み重ねられたものと思って、読む→考える→実践する日々

    最近ずっと考えていた価値観がすっきりとまとまっていて、今度は付箋を用意して再読したい。

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    2026年05月10日
  • 地球の果ての温室で

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    ネタバレ

    「ダストフォール」という世界的災害以後の荒廃した世界を生き抜いているナオミと、その数十年後に文明が復活した社会で植物学者をしているアヨンの視点で描かれる物語。謎を調査するといく建付けの話ではあるが、メインは人々の心の交流を描いた話。
    ナオミは姉のアマラと共にブリムビレッジと呼ばれる村にたどり着く。そこは人々が僅かな食料を巡って争い続けるの他の集落とは違い、人々が穏やかに、作物を育てながら生きていた。
    一方、アヨンはモスバナという植物の異常増殖という件を調査することになる。そこで青い光の話を聞き、幼い頃に見たことがある事に気付く。それはヒスと呼ばれる変わり者の女性の庭でのことだった。
    フリムビレッジの来歴、ヒスの生涯、モスバナは一体何なのか、ということが一気にわかる最後が圧巻。過酷な環境で必死に生き抜いた女性たちのシスターフッド的な関係も心地よい。ジスとレイチェルの出会いと再会、徐々に心惹かれて行く様子、レイチェルの感情を操作する(してしまった)ジスと、それを知ったレイチェルの激怒、モスバナを巡る駆け引き。それがナオミの視点では語られなかったフリムビレッジの終焉とその後のナオミの生活にも影響を及ぼしていく。ひたむきに調査するアヨンが辿り着いた真実が優しくて悲しくて、でも読後感は爽やかだった。極限状態だからこその友情という側面はあるが、不器用ながら互いを思う気持ちは胸打たれるものがあった。

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    2026年05月10日
  • 派遣者たち

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    ネタバレ

    エピローグにて、ある人とある人の別れが、生と死という概念では説明できない繋がりによって再び繋がる描写がある。

    今、生きて存在してる私・私の大切な人たち、過去に亡くなってしまった大切な人たちが、私たちの今の生が終わった後にこうしてまた会えるといいなと思う。

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    2026年03月30日
  • この世界からは出ていくけれど

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    ネタバレ

    相互理解って、どれほど難しいことなのか。それをしようとすること自体の尊さと、欺瞞と、そして結局のところ不可能かもしれないということ。
    けれども理解しようとする、もしかしたらそれは酷いことかもしれないけど、理解しようとすることが大切なんだと私は思う。思うことにしました。

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    2026年03月29日
  • この世界からは出ていくけれど

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    ネタバレ

    SFというジャンルではあるものの、本質は他者との分かりあえなさについて描かれた小説だと感じた。

    著者が「感覚バブル」という言葉を使って説明している、一人ひとりが知覚している世界の違いとそのすれ違いについて思いを馳せることができて面白かった。

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    2026年03月15日
  • 惑星語書店

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    SF掌編集。
    最初の「サボテンを抱く」で心を鷲掴みにされた…!ここではないどこかの世界の話でありながら、この世界で生きるために大切な優しさを教えてくれる、不思議な物語ばかりだった。

    予備知識なしでふと手にとった本が自分好みだったとき、なんだか運命を感じる。

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    2026年03月08日
  • 長い長い夜

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    人間のせいで最後のシロサイになってしまったノードンとペンギンの辿る長い夜とその旅路。ノードンの語る彼の経験してきた話。絵の美しさと共に心に深く染み入る。

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    2026年02月28日
  • 惑星語書店

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    読みたい読みたいと思っていたキム・チョヨプさんを初めて読んだ

    面白い!好き!!
    地球外生命体として植物に侵食されつつある地球が主な舞台
    共生か侵略か寄生か、そもそも地球の人類がそれを選べるような状況なのかも分からない

    絶滅って劇的じゃ無くてこんなふうに緩慢にすすんでいくものなのかもとゾワゾワしながらも、ちょっと違うように思える隣人を受け止めたり理解してみようと思う視線の暖かさが絶妙

    表題作の惑星語書店も、設定はSFなのに出てくる人達の気持ちは私たちと同じでノスタルジーに悶えた

    『サボテンを抱く』には泣かされて、最初からこんな完成度でこの後どうなっちゃうのと思ったけど、総じて大満足読書でした

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    2026年02月23日
  • この世界からは出ていくけれど

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    汎ゆる世界から旅立つ者達の
    7つの短編集
    元タイトルは
    『さっき去ってきた世界』
    序文で日本の読者への
    メッセージが書かれていて、
    その丁寧さに心打たれた

    SFは翻訳者の技量も
    特段問われる分野だと思うが、
    物語自体の内容も
    プロットもしっかりしてて、
    凄く読みやすく、儚い世界観も好み

    本の装丁もかわいいし、
    著者の別の本も手に入れたいと思った
    装画は最終話のキャビン方程式からかな?
    読み終えてからの装画の良さが増すね〜

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    2026年02月01日
  • 罰と罪 下

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    原題を直訳すると『再捜査』らしい。
    が、このドストエフスキーを食った様な不遜なタイトルは素晴らしい命名だと思います。

    犯人の純文学っぽい独白と警察小説が交互に語られます。
    エンタメと純文学を交互に読んでる様な気分で読みました。
    とはいえ、世界文学みたいなものかと言われるとそうではなくちゃんとエンターテイメント小説です。
    とにかく面白かった。
    犯人の言い草に頷けないあたりが読む速度を落としますが、最後まで興味深く、追う方、追われる方から出てくる描写を楽しみました。
    韓国の作家が書いて、日本語の分かる韓国の人が日本訳をした作品。
    読む前にドストエフスキーの五大長編は読んだほうがいいかも?
    『白痴』は結構内容に触れるので気になるなら先に読んだほうがいいですね。
    面白かったです。

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    2026年01月02日
  • カクテル、ラブ、ゾンビ

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    めちゃくちゃ面白い。4作品とも趣向が異なり全部良かった。"オーバーラップナイフ、ナイフ"はとてもよく出来たタイムリープもので、結末が近づくにつれ悲しく痛々しいけど構成が本当に面白い。"湿地の愛"も好き。幽霊のムルとスプのやり取りが微笑ましく可愛らしい。壮大なラストで終わりのその先が気になるという感覚を久しぶりに感じた。訳者あとがきにある「ホラーの先にある爽快感と充足感」という言葉がぴったり。しっかり怖いですが、それも含めて良いなあ〜面白いなあという満足感の方が大きく読後が非常に良い。ただのホラーでなく、家族愛や友愛が描かれているので感情移入しやすく読みやすいです。チョ・イェウンさんの他の作品も読んでみたいです!

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    2025年12月10日