カンバンファのレビュー一覧

  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    間違いなく今年ベスト!
    軽やかで日常的なSFの世界に簡単に入り込める。ミステリーの要素もあるけれど、終わり方がどれもスペクタルなものではないところが穏やかで優しい。
    短い話なのに一生覚えていて、つい人に話したくなる話が何個もあった。キムチョヨプさんの本は全部読もう!

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    2025年11月26日
  • この世界からは出ていくけれど

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    ネタバレ

    最近ちょくちょく韓国発の作品が増えてきて、早川書房やるな…!という感じ。
    早川書房は安定して面白い作品を邦訳してくれるから助かるぜ。

    短編集なのに、全体としての主題が全くブレないのは凄かったな。あとがきで語っていたように、ずっと同じことを考え続けてきたのだろうな、というのがしっかりと伝わってきた。

    ある社会形態と個人の生態が矛盾するとき、その個人は時に異物とされることがある。
    奈須きのこに言わせれば「怪物」なんだけど、社会形態に慣れている私たちにとって「怪物」と一緒に暮らし続けることはできない。もしそれを可能とするのなら、私たちが「怪物」になるか、「怪物」が「怪物」であることをやめるかしか

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    2025年11月23日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    韓国作家さんのSF短編集。スペクトラムが1番好き。どの作品も共通して孤独にそっと寄り添うような静かな優しさがある。切ないけれど温かさもあって、とても好きな文章でした。他の作品も読んでみたい。

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    2025年11月16日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    ネタバレ

    SF系の短編集の中で最高傑作かもしれない。
    SF的な世界観と退廃的な雰囲気や少しディストピア的な要素の中に、愛や優しさというものがここぞとばかりに詰まっている。
    この世界観とテーマの親和性が素敵で、読後に胸に温かさが残る素敵な物語ばかりだった。

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    2025年11月11日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    ネタバレ

    「巡礼者たちはなぜ帰らない」の中での、出産に際してのリリーの葛藤、「自身の人生を呪っても自身の存在を呪うことはできなかった」という一文が印象に残った。
    ありのままで存在すること肯定する、ということは大切だと理解できるが、現実では困難を伴う。それでもそれを乗り越えて成長したい、という主人公の強い決意に勇気づけられた。

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    2025年11月08日
  • この世界からは出ていくけれど

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    前作から好きだったが、今作でさらに好きな作家さんになった。

    日常では当たり前すぎて意識しない人間の機能や感覚を、SFの世界を通して際立たせることで、改めてその尊さに気付かされるようだった。

    前作もそうだが、翻訳者の方がとても上手で、国外の作品であるというフィルターを全く感じることなく読むことができた。

    ブレスシャドー、認知空間、キャビン方程式が特に好きだった

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    2025年11月01日
  • この世界からは出ていくけれど

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    ネタバレ

    自分がSFというジャンル自体をあまり読んでこなかったこともあるかもしれないが、概念や設定が完全には理解できない中で感情が動かされるという、不思議な読書体験ができた。
    理解や共感が完全には及ばなくても他者を愛することができる、というような話も出てきたが(「ローラ」)、それが全話に共通するテーマの一つにもなっていると感じた。
    「最後のライオニ」の、主人公自身の弱点だと思っていた特性が任務遂行に不可欠であったと気付く場面には、かなり励まされた。
    上記のように要約しようとすると教訓めいた表現になってしまうのが惜しい…。
    各話とも、その舞台となる場所の秘密が徐々に明らかになり、引き込まれながら楽しく読み

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    2025年10月31日
  • 千個の青

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    ヒューマノイドが浸透し
    人間から労働力を奪っている近未来の韓国
    競走馬にはスピードが求められ
    選手としての寿命は1年ほど
    軟骨がすり減り立っていることもままならなくなると安楽死に処される
    相棒の馬トゥデイを助けるためわざと落馬して騎手としての存在価値がなくなってしまった廃棄目前の
    騎手ヒューマノイド コリー

    そんなコリーに手を差し伸べた少女ヨンジェ
    脊髄性小児麻痺で車椅子生活の姉ウネは故障のため安楽死が確定していたコリーの相棒の競走馬
    トゥデイに手を差し伸べた

    いろいろなものを消費しては生み出していく
    循環社会からこぼれ落ちてしまったものたち
    社会的価値がないもの
    役に立たないものたち

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    2025年10月31日
  • この世界からは出ていくけれど

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    ネタバレ

    どの作品も心に残る作品でしたが、その中でも
    最後のライオニ
    ブレスシャドー
    キャビン方程式
    が好きでした。

    相容れない者たちが時に反発し、時に惹かれあう姿が
    とてもやさしい視点で描かれていました。

    ○最後のライオニ
    他の人とは違うと思っていた主人公がほかの星に行くことで
    他者とのつながりを知ってアイデンティティを確立していく姿が泣けました。

    ○ブレスシャドー
    言語体系が全く異なる二人の友情と別れ。
    リアルで蔓延している排外主義に重ねてしまいました。
    「砂漠の隅っこで帽子をかぶっている靴下が見つかった……」
    という言い回しが天才だと思います。

    ○キャビン方程式
    物理学的な部分は宇宙猫状態

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    2025年10月22日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    7つの短編SF小説

    読んでいる間は
    広い宇宙の中で
    ひとりぼっちに見える地球を俯瞰しながら
    忘却や断絶
    分離主義などの
    ここ 地球上にある宿命や憂いの
    根っこのようなものを
    ずっと望遠鏡で拡大して見ているような感覚でした

    すべての物語に希望があり
    心が暖かくなる気づきがあったのに
    なぜか少し泣きたくなった

    これからもこの場所は
    困難な問題を抱えながらも
    変化していくんだ

    すべての物語を読み終えて
    その困難さに立ち向かっていく
    静かな覚悟が芽生えた

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    2025年10月22日
  • 本と偶然

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    エッセイを購入したのは人生初かも知れない。
    エッセイとはもっと堅苦しいものだと思っていたので読みやすくて驚きました。

    チョヨプさんのSF世界観が好きでどんな人かな?とずっと気になっていたからカビに興味を持つとかユーモアのある人柄で、それが文章に滲み出ていて嬉しかったです。

    チョヨプさんが読んできたたくさんの本が紹介されているので読んでいないものを探して読んでみようと思います。

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    2025年10月23日
  • 派遣者たち

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    〜あらすじ〜
    正体不明の菌類『氾濫体』に地上は汚染され、地下都市に追いやられ、『氾濫体』による『錯乱症』怯えながら暮らす人類。
    地上奪還のため氾濫体の調査・研究を行うため、地上へ出ることを唯一許されている『派遣者』になることを夢見る地下都市ラブバワに住む少女テリンは、師匠である派遣者のイゼフに憧れながら、派遣者の資格試験に挑み続ける。
    美しい地上を夢見るテリンを中心に展開するSF。

    〜感想〜
    あらすじから住処を奪われた人類と氾濫体との戦いを巡るディストピアかと思い読み始めると、冒頭から三分の一くらいまでは地下都市ラブバワでのテリンの日々を淡々と描いていたのに、中盤から突然、個について、意識や

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    2025年10月15日
  • この世界からは出ていくけれど

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    前の短編集が面白かったので、今作も購入。しばらく積んだのちようやく読み終えた。

    どの作品でも、作中の人物は自分が属していた環境を離れる経験をする。
    その時旅立つ彼らが振り返った、今まで属していた世界、また旅立つ彼らを見守る人、そんなものを描いているようだ。
    彼らは自分と周囲の社会にどうしようもないミスマッチを抱える。
    ある人は幻肢を持っているが、それは精神の病気だから治療すべきだと言われ、自分の気持ちを否定され続ける。
    ある人は数百年のコールドスリープからすっかり変わってしまった世界に目覚めさせられ、言葉も通じず、何年経っても馴染むことができない。
    彼らはたった一人で多数の人が作る良識や常識

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    2025年10月08日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    素晴らしかった。全ての作品がとても濃密で味わい深く、寂しく愛おしい。大切に抱きしめながら読んだ。誰もが抱える寂しさと、それでも誰かに手を伸ばしたいという切実な想いが詰まっていた。どれだけ技術が進んでも、理解しようという姿勢、誰ひとり取り残されない未来を信じたい。

    特にお気に入りは「巡礼者たちはなぜ帰らない」「わたしたちが光の速さで進めないなら」の2篇。

    あとがきも素敵。SFっていいな。

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    2025年10月07日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    とても面白かった。
    sfの骨太な感じの中にポップさや可愛さが作品の中に感じられとても良かった。
    普通にわかりやすくてとても面白い。

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    2025年10月03日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    韓国の新進気鋭のSF作家 キム・チョヨプの初短編集。

    ほとんどの作品がマイノリティを主人公にしている。特に女性科学者が多い。これらの主人公はマイノリティである一方で、社会的には成功者達である気がするので、その辺をどう捉えたらいいんでしょうか。フェミニズム文学?マイノリティ文学?(そもそも間違っているかも?)についての理解不足が露呈している。

    この短編集は地球滅亡などの大きな危機に立ち向かうものではなく、科学技術の発展した近未来での人間の心理を題材にしたものになっている。ハードの進化によるソフトの変化を考えるうえで非常に面白い作品群だった。

    ハード面については、サイボーグ化といった身体改造

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    2025年09月27日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    もっと読みたい
    あぁ 終わっちゃった…
    という気持ちにさせてくれた

    どの短編も やわらかい雰囲気がした
    不思議な読み心地
    空想の世界にとっぷりと浸かったような
    こんな軽やかなSFもあるんだなぁ。。。と
    この本を読んで 何だか無性に
    宇宙について調べたくなった
    宇宙図鑑が欲しい 笑

    どの作品も味わい深い。
    スペクトラム というお話では
    ちょっと泣きそうになった
    あとから じわじわくる

    すごく よい読書時間だった
    この著者の本は
    全部読みたい
    味わいつくしたい


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    2025年09月27日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    ここではないどこか、まだ見も知らない誰か。
    無力で孤独で未来が見えない頃の方が、遠くが見えていたのかもしれない。
    寂しさが温度をもって心に寄り添うSF短編集。

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    2025年09月24日
  • 地球の果ての温室で

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    作者のSF第2作らしい。デビュー作はSF短篇集だったけど本作は長編。
    面白いねぇ。
    もちろんSFとしての設定は確かなものなんだろうけど、読んでいてSFらしさを感じない。サイボーグや未知の物質に覆われたディストピア世界なのに。それだけ物語として素晴らしい。
    アフターコロナの世界を予見するような人々。人間の業は、特に欲望は未来永劫変わらないのでしょうね。破滅すると分かっていても欲望を制御できない。それでも生命はいつどんな時も生き残る道を探すのだ。

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    2025年09月24日
  • 派遣者たち

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    同著者2冊目。
    完全にファンになりました。
    SFの世界観でありながら純文学のような、あるいは思考実験のような側面をもつ作品なので、これまで全くSFに触れてこなかった私にも刺さります。

    キム・チョヨプさん、これから積極的にオススメしていきたいです。

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    2025年09月22日