カンバンファのレビュー一覧
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ネタバレダガー賞読書会のために読んだ本その2。
韓国ミステリ小説は初めて読みました。ミステリというより、サスペンスやスリラーかな。
裏表紙のあらすじでかなりネタバレされているとはいえ、ハラハラしました。
旅行先で、災害ツアーを保つために、人為的な災害を引き起こそうとする企みに巻き込まれてしまう。
旅行企画会社の社員でも、「ワニ75」を与えられてしまう…「自分は読者じゃなく、読まれている側」だと思い知ってしまうのはかなり怖いです。
一人一人にはドラマがあっても、大きな災害となると個人は見えなくなってしまう。
番号で描かれていく終盤の災害描写、あまり読んだことがない形式で、ほんとに台本みたいでした。こ -
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『私たちが光の速さで進めないなら』が良かったので期待してこちらも購入。文庫化たすかる。
たとえ同じ人間という種族であっても違う個体であれば本当に理解し合えない部分というものは存在する。様々な理由からどうしたって一緒にはいられないけれど、あなたはかけがえのない存在で互いの芯の部分に触れ合えたような気がした瞬間や一緒に居れた時間をギュッと抱きしめて、あなたの幸福を祈りつつ私は自分の人生を生きていくよ、といったような寂しさを描くのが本当に上手だなと思う。
好きだったお話は『ブレスシャドー』と『古の協約』。
『ブレスシャドー』は全然馴染めなかった故郷と、そんな中でも仲良くしてくれた数少ない友人を思 -
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色んな意味での旅立ちや別れがそれぞれの短編で起きるので、どうしてもものさみしい気持ちになる。
同じ場所で、あなたと変わらずこのままで、が叶わない世界。
だけどそれは決して絶望的な別れではなく、互いのことを想いあった上でのままならない別れであったりもするから、読み終わったあとに残る感情は決してネガティブなものではない。
不思議。
別れの中でも死別が最も大きなものと私は捉えてしまうけれど、今なら「またね」と言える気がする。もう会えない、交わらない時間のことだけを想って絶望する私ではなくなったような感じがする。
地球が舞台の短編の方が少ないくらい、あくまでもしっかりSFなんだけど、舞台がどこかな -
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「巡礼者たちはなぜ帰らない」の感想。
なぜ巡礼者たちは帰ってこないのか?その疑問を追うSFストーリー。物語の構成とSF設定、心理描写が面白い。
序盤から中盤にかけて謎と情報が点のように散らばり、終盤でその点が繋がっていき線になる。語り手の視点を追うような構成。これにミステリーで謎を解いていくような面白さがある。話の中で、資料を見るという形で視点が切り替わる多重構造も面白い。
SF設定と心理描写については、「科学技術」と「人の思い、葛藤」が関係付けて描かれておりリアリティがある。若者の見えない未来への不安、好奇心、希望がリアルに描かれている。
追記:
短編「わたしたちが光の速さで進めな -
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最近あまりSFを読んでなかったが、
とある動画で紹介されてるのをみて
タイトルに惹かれて購入してみた。
調べてみると、同世代の韓国女性の作家さん。
まずとても読みやすい文体と短編で長過ぎず、短過ぎずな点が、久々にSFに触れるということもあるが素晴しかった。
取り扱ってるテーマは感情などの普遍的なもので、
舞台装置としてSF世界に置かれることで、
その普遍性や特性をさらに炙りだし、
読者にも考えさせたり、感じさせたりする構造になっていると思った。
SF世界のようにAIなどのテクノロジーが外界を目まぐるしく変化させていく半ばSF的な今世において、人間性を考えるきっかけにもなったかな。
ま -
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『サボテンを抱く』
皮膚が過敏になり、物質と接触するだけで激しい痛みを伴う障害を患った元建築家のパヒラと、お手伝いロボットの話。
『#cyborg_positive』
機械の眼を持つインフルエンサーリジーが、企業のプロモーションを受けるか迷う話。
『メロン売りとバイオリン弾き』
万引き常習犯の子供ふたりが出会ったメロン売りとバイオリン弾きの話。
『デイジーとおかしな機械』
同じ空間にいるふたりと音声を文字として表示する機械の話。
『惑星語書店』
脳内インプラントの言語変換機能を妨害することで、読む能力がなければ読めないようになっている本を売る書店の店員と、努力して惑星語を習得しようとし -
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読んだ。薄かったのでサクッと。全体的には「切ない」という言葉なのだが、「切ない」と言い切ってしまうまで「切ない」わけでもない。ふと胸に宿る寂寞のカケラに気が付かされるような。そのカケラに向き合って過ごすにはあまりに小さすぎるような。でもその存在に気がついたなら明日からの私達は同じではいられない。ケン・リュウの時のようなひりつく苦味と切なさでもなくて、地に足をつけた優しさを感じる。
また、この著者は自らの世界観を広げて小説書くタイプだ。他の本も繋がっている。「派遣者たち」は読みたいし、他も手を広げたい。
直接内容の感想ではない所だと、翻訳が日本人では無いということが新鮮。勿論相互の言語に堪能なの