船橋洋一のレビュー一覧
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2022年の参院選の遊説中に奈良の駅前で暗殺された安倍元首相の年代記。
上巻はトピック毎に経緯がまとめられている。
章立てに沿って、再登場、アベノミクス、靖国神社、尖閣諸島、TPP、慰安婦、戦後70年首相談話、平和安全法制、ヒロシマ/パールハーバー、消費税増税。
所謂リベラルからすれば国粋主義の巨頭なのだろうが、筋の通った国家観や国家運営の原則に則って司られた7年半の実績の重さを実感する。
著者は「通貨烈々」などを著した船橋洋一。
経済、安全保障などの外交交渉の裏側を掘り下げた著作に定評があり、本書も公開情報やインタビューなどを通じ、項目毎に米大統領から本邦各省庁職員に至る交渉関係者の言 -
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下巻は外交、天皇退位と改元、コロナ、そして退陣について。
北方領土問題の難しさがよく伝わった。日ソ共同宣言で二島返還を合意してしまった以上、二島返還で動くというのも政治決断としてはあり得るとは感じた。ロシアのウクライナ侵攻により、当分は北方領土問題の進展は難しいだろう。
そして、本書のタイトルの『宿命の子』の意味が最終章で説明されていた。安倍晋三は東条内閣の閣僚、国論を二分する安保改定を行った総理大臣岸信介の孫として生まれ、普通の家庭とは異なる環境で育っている。生まれながらにして歴史の当事者として、歴史に向き合うことを余儀なくされた人生だったのだろう。
また、安倍晋三は卓越した外交実績を残した -
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第二次安倍政権発足から、アベノミクス、靖国参拝、尖閣問題、TPP、戦後70年首相談話、平和安全法制、消費税増税などについて。参院選までに上下読もうと思っていたが、結局この時期になってしまった。
印象深かったのは戦後70年首相談話と平和安全法制の章である。
終戦の節目のたびに首相談話が中国の歴史戦の道具にされては敵わない。安倍は70年談話を最後の談話と位置付け、村山談話を踏襲しつつも「謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との文言を盛り込み、国内でも中韓でも一応それなりに理解を得られた。
自身で言うように保守派の安倍晋三だからこそ、リベラル派からの期待値は低いし、保守派からの理解も得やすかっ -
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2025.07.21
人の真の評価は棺に蓋をしてからしかする事ができないのだということを痛感させられた一冊。
アベ政権には毀誉褒貶がつきまとうが、本人は国論を二分する議論ができるのが民主国家だという趣旨のことを述べていたと知り、懐の深さに想いをいたし、マスコミのアベ批判の浅薄さを振り返る。
また、昨日.2025.07.20の参議院選にも大敗し、明日をも知れぬ石破政権をみていて確実にいえる安倍政権の功績というか強みを2つだけ指摘する。
ひとつは長期政権は外交力を生み出すということ。
もうひとつは、国家的な課題に対処するには長期政権、力のある政権にしかなしえないということ。
いわゆるリベラルの人に -
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重厚な取材に裏打ちされた記述。
紹介される話のネタがイチイチ面白い。安倍本人がエピソードトークが上手いというのが頷ける。それを丹念な取材で掘り起こして紡いでいるものだから、本の分厚さとは裏腹に読みやすいというかグイグイ引き込まれる。
(是非はさておき) 構想・理念を掲げて国内外の重要な政策課題にあたった政権だったのだなと再認識させられた。だがそれ以上に、リアリズム、実務主義、戦略的な歴史観、「開かれた保守」のように表現される、柔らかな立ち居振る舞いの数々が新鮮で印象に残った。
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自己啓発的トリビア・備忘として
「反省ノート」(p574)
・政策が正しくても優先順位が正しくないと、結果と -
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デフレ経済下で金利を下げて金融緩和するのはマクロ経済の観点からは当然の政策で、これによって派遣切り、ブラックバイトみたいな困窮が解消されたのは事実。日本のリベラル界隈は安倍晋三の右寄りの政治姿勢嫌いを拗らせて緩和的、反緊縮的な財政政策すら敵視し、マスコミを巻き込んで反安倍晋三キャンペーンを展開、一般にも悪者という印象を与えてしまったのは日本にとって不幸だと思う。某政党に至っては堂々と減税に反対する有様だ。
本書ラスト近くで消費増税に関する記述があるが、今や財務省ベッタリの自民党政調会長が安倍晋三によって財務省の影響力を抑えるために抜擢されていたというのは非常に驚いた。また消費増税のような国民生 -
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シンクタンクとは何か
政策起業力の時代
著:船橋 洋一
中公新書2532
今日本に必要なのは、私企業を支援し、私利暴利を得るのに加担するコンサルティングファームではなく、複雑な社会全体の問題・課題に取り組み、それを解決に導く、シンクタンク、ドゥタンクである
■シンクタンクとは
政策立案者と一般市民が公共政策についてのより良い意思決定を行うために、国内・国際問題の政策志向の調査・研究、および助言を行うための永続的な組織・機関である
シンクタンクの共通の機能
①政策研究集団
②政策分析と政策提言を行う シンク・アンド・ドゥタンク
③政策課題の解決のために、多様なアクターを巻き込む活動 -
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ネタバレ1.小泉訪朝・再訪朝:
●米朝関係が冷え込むと北のすり寄りにより日朝正常化機運が生まれ、拉致問題は進展。しかし正常化の関門は核問題平和解決であり、これは米朝関係が接近しないと実現しないという構造的ジレンマ。
→まず拉致じゃなくて根本の核問題を議論する姿勢は取れないのか。結局日本は米朝間の解決の御相伴に預かるしかないのか。多国間による圧力は結局露中が抜け道になってうまくいかない?
●田中均ーMr.Xのチャネルは一定の効果発揮。ジェームス・ケリー訪朝のお膳立てまでした。(北に黄海事件謝罪を促した。川口外相もライスに助言。)小泉-朝鮮総連チャネルは、田中の外交交渉力を弱めた。(ダブルチャネルは良くな -
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シンクタンク理事長である著者が、『文藝春秋』に毎月連載してきたコラム4年分をまとめたもの。安全保障や経済情勢、米中覇権争いが主なトピックとなっている。学術的とは言えないが、時宜を得た情報が多く、出展もはっきりしており説得力がある。視点にも共感でき、有益な内容が多かった。わかりやすい。
「(アメリカのTPP脱退)世界の「自由で開かれた国際秩序(Liberal International Order)」の維持にとってはかり知れない戦略的損失を与えていることはいまや明らかである」p4
「(トーマス・ライト)これからの時代、大国はどこも互いの大戦争は避けようとする。しかし、彼らは戦争一歩手前のところで