船橋洋一のレビュー一覧
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先の大戦での敗戦と福島第一原子力発電所事故への対応の病根は、
同じ性質なのではないかを論じたのが本書である。
日本の政治・官僚の責任回避、危機に際しての組織としての機能
不全、権限・指揮系統の不透明性。それは戦時中から連綿と受け
継がれた。
そして、福島第一原子力発電所事故のような国家の存亡がかかっ
た危機に直面するとそれが如実に表面化する。
国民にパニックを引き起こす可能性が大きいからと、原発事故の
際の放射能拡散のデータは隠され、官邸も専門家と呼ばれる人も
「ただちに健康に影響はない」と繰り返した。
国民のパニックを心配する、その政府中枢が一番のパニックに陥り、 -
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東日本大震災による福島第一原発危機への対応を詳しくたどった本。国家の危機管理運営がどうなっているのか、想像を超える問題と責任を前にして人と組織がどう動くのか、そのためにどういった準備が必要であったのか、手に余る問題の前で想像力が停止してしまうとはどういうことなのか、など様々なことを考えさせる。保安院上層部の面々や清水社長をはじめとする東電上層部の事態に対する反応は事の重大さを思うと目を覆うばかりだ。しかし、そのことを無遠慮に批判することができる人が果たしてどれだけいるだろうか。保安院の中村幸一郎を更迭したこと、菅首相が原発訪問したこと、SPEEDIのデータを出せなかったこと、など初期時点での後
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ネタバレ日本が過小評価されているし、翻訳ものなので読みづらいという点もあるし、星を3つにしようか4つにしようか迷ったが、日本のマスコミが取り上げない視点で書かれていることが多いという点で、やはり参考になる本だと思う。
日本のマスコミが取り上げないのは、この本の考え方が的外れだからだ・・・という反論は十分に成り立つと思う。が、日本の中にいれば、この本は日本のことを過小評価しすぎていると思えることであっても、やはり欧米からは、さらには新興国勢力からでさえも、日本の存在感がそのように見えてしまう、というのはあるのだと思う。そしてそのことを肝に銘じて、これからの日本のあるべき姿を考えていくことが大事だし、それ -
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ネタバレ福島原発事故時、政府・東京電力が失敗した原因を追究したノンフィクション。リスク意識・組織ガバナンス・リーダーシップの欠如という日本人の国民性は、先の大戦の時から進歩が無いのだということを主張しており、自分たちの仕事においても反面教師にすべき点は多いと感じた。
一番興味深かったのは、当時の福島第2原発の所長へのインタビューでの、メルトダウンした第1原発と、正常に停止できた第2原発との違いについて。
一番の原因は、中央制御室が第1は停電し第2はしなかったこと。更に、第1はプラント1-6号機で型が3種類あって状況把握が難しかったのに対し、第2は1-4号機まで同型だったとのこと。
第1原発は、古く多 -
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福島第一原発での事故対応に関して、危機に際してのリーダーシップのあり方、組織のあり方にスポットをあてたノンフィクション。「事故対応で有効に機能したのは自衛隊だけで、それは自衛隊がそもそも何が起こるかわからない状況を常に想定して普段から訓練しているからである」との記述には納得。企業が事故を起こした後で「マニュアルが無い事が事故の原因」という論評をマスコミがする事があります。確かに、いろんな場面を想定してマニュアルを準備するのは大事だと思います。しかし事故って「そんなレアな状況はめったに無いで」みたいに人間の想像力のちょっと及ばない所で発生する事が多々ありますし、そういう状況に陥った時にいかに冷静
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内的なリスク回避を追求した積み重ねが、開戦という最もリスクが大きい選択となった
危機の際に求められる人間は空気を読む人間ではない。危機の時には優先順位を峻厳につけるしなない
安井正也 言い切ってします
危機の時、一方でなになに、他方でなになにという両刀遣い的プレゼンはあまり役にたたない
分化と統合という相反する関係にある状態を同時に極大化している組織が環境適応に優れる
松下忠洋 12/9/12 自殺 彼ほど自治体にせっせと通い、親身になって相談にのった政治家を私は知らない
現場にいる人間が究極の権限を持つべき
楽観的バイアス 危機下ではその状況が一刻でも早く終わって欲しいと願うあ -
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地政学の視点で、世界情勢から考える日本の課題についての連載記事(文藝春秋、2020年〜2023年)をまとめたもの。
日本に脅威を与えうる周辺国の中国、北朝鮮、ロシアは専制主義であり、個人独裁体制を特徴としている。政策決定過程は不透明であり、意図は予測し難い。そのため意図よりも能力を中心に把握し、同時にこちらの能力を的確に把握させることが重要と説く。
勢力を均衡させ、力によって現状を一方的に変更できると相手に思わせないようにしなければならない。経済を守り、育て、必要な時にはそれを提示する経済安全保障政策(具体的にはエネルギーや金融にかかる経済制裁か)が求められている。
地政学と地経学の視点を -
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コロナ以降の世界を読み解く本を立て続けに読んでいる。今度は日本人のもの。トッドさんのものより少しだけ古いので、本書にある予測や分析は少し外れているが、「思慮深い政治指導者を欠いた国家の悲劇」というのは間違いない。逆にいうと、そういう人をリーダーにしてはいけないということだろう。また、今後目指す方向性の一つとして、自国のモデル(民主主義や自由主義も、その他も)を他国に拡散しようとするのではなく、国内での定着や実施を通じて国力を蓄えることも必要というのは納得。さらに本書では、プーチンの政治・外交手腕を(悪であるが)賢く手強いと評価する。これが最もよく出ているのが、習近平に対して、ロシアのウクリナ侵
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読みやすかったのだが、やーっと読み終わった、と言うのがまずの感想。上下巻、これは長い。
安倍政権とはなんであったかの、割に、公平な検証。元朝日新聞記者でところどころおい、と思うところはあっても、必要以上に角度をつけたところに持って行こうとしている感じはしなかった。
安倍政権とはなんであったか。
戦後、みんなが目を瞑って来た歪みに、一気に手を突っ込もうとした。全てをやろうとした。
その一歩で、どこまでもリアリズムに徹した政権。
すごい時にすごい人が、チームが残ってくれたもんだ。
改めてこうやってみると、モリカケサクラ、くだらないことで必死に恥も外聞もなく日本に抱きついて沈めようとしたあの -
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地政学というよりも、時事問題についてのエッセイという感じだ。米中対立、ウクライナ侵攻、イスラエル・ハマス衝突など、現代の国際情勢を取り扱っている。調べると、船橋洋一は、朝日新聞の元主筆であり、日本のリベラル派の代表的な論客として知られている、らしい。著者の豊富な経験と洞察が活かされ、現代の複雑な国際情勢を理解するための枠組みを提供しているという触れ込みではあったが。
― 二十世紀最大の理論物理学者の一人だったアルベルト・アインシュタインはユダヤ人だったが、人生の半分は平和を現実主義的に希求した知識人として行動した。彼はイスラエルの国家建設を支持したが、一九二九年に次のような警告を同胞に発して