浅倉秋成のレビュー一覧
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購入済み
難しい題材ですが面白い!
漫画の題材にお笑い(漫才)を据えるというのは、なかなか勇気があると思う。ストーリー的な面白さと、漫才の面白さ、どちらもうまく表現できないと漫画として面白くならないだろうから。それに、目と音で楽しむ漫才の面白さを、言ってみれば静止画的である漫画という媒体で表現することは至難の業だと思う。
しかしながら、お笑いについては小説家で大学まで幼馴染と漫才を続けた原作者が、漫画的な表現は百戦錬磨の漫画化、小畑氏が担うことで、絶妙にお互いを引き立てているような気がします。
巻数が進むごとに漫才パートが増えるが、ちゃんと面白い。そしてストーリーの続きも気になる。先日完結し、最終巻まで発売されたが、途中から先が気になり、全巻買ってしまいました。
彼らの新作漫才が見られないと思うと、少し寂しくもあります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「自分が物語の主人公だったら」
対象者が物語の主人公になるようにするフラッガーシステム。
1か月間、フラッガーシステムのデバッガーとしてフラグを管理していくことになった東條君の物語。
コメディ調で明るいテイストの中、フラッガーシステムは無慈悲に機械的に世界をどんどん改変して物語を紡いでいく。
前半のコメディパートで起こった荒唐無稽な出来事たち。
一見何のつながりもないそれらが後半にすべて結末に向けたフラグとなる。
その物語の外側であるはずの「終わりに」すらフラグの一つとなり結末に向かっていく。
後半にかけての勢いが強く、「次はあの時の出来事が回収されるのでは」「あれはどう回収されるのか」「確かにこんなこともあった」と思い返して読んでいく展開はジェットコースターのようだった。
コメディな展開はライトノベルや深夜アニメのようで、フラグにより攻略ルートを考えていくさまはギャルゲーのようだった。
だが、この物語の中の人物たちは本来深夜アニメの人物ではない。
深夜アニメの登場人物にされた人物たちには、それぞれに本来の生き方があったはずである。
コメディな展開とは対照的に本来とは異なるがゆえに生まれる歪みが見えたり、この1か月が終わったら彼らはどうなるのかといった疑問が浮かんだりと一筋縄ではいかない物語。
自分はライトノベルにもアニメにもゲームにも親しみがあるので、東條君のフラグ管理によりフラッガーシステムが引き寄せてしまう展開を予想しながら読んでいくのが楽しかった。
フラッガーシステムにより本来とは違う生き方をすることになった人物たちが、本来の生き方に戻ったときに少しでも良い方向に向かっていますように。
読んでいて思い出したことのひとつに、いわゆる5億円ボタンの亜種のひとつがある。
「目の前にあるボタンを押したら世界中の人に良いことが起こるとしたら、押すか」
デメリットはない。ただ、自分にそのボタンを押す権利があるというだけ。
押して悪いことがないのに自分はただ単純に押せばよいとは思えなかった。
自分はその時どうするかといったら、「ボタンを押したうえで自分はこの世から退場する」と思った記憶がある。
ほんとうにみんなのためになるなら押したほうが良い。
けれど、全世界に自分が何かしら道理に反する影響を与えてしまうと思うと果てしなく怖い。責任が持てない。
自分の手の届かないくらいの強さで世界が変わってしまって、その責任が自分にあるなんて耐えられない。
一体誰の視点から見る「良いこと」なのかもわからないのに。
フラッガーシステムの目指す結末(勝利、幸福、感動)も誰にとってのものなのかが分からない。
今回の物語の結末が幸福であったとして、例えば主人公が誰かの不幸を喜ぶタイプなら幸福な物語になるのか?
好きな食べ物を好きなだけ得ることができる物語になって設定された期間は幸福で終わったとして、物語の後にそれが原因で病気になっても物語の外側は知らんぷりではないのか?
実際には現実に存在しないような強い力のことを考えるとどうしても怖い。
フラッガーシステムはこの物語の後も改良され開発が続くようだが、絶対にもっと大きな過ちを引き起こすからやめたほうが良い。
このフラッガーシステムに、深夜アニメファンの大きな夢が詰まっているのだろうが…。
現実はフィクションではないから、自分は物語の主人公ではない。
東條君のように言葉にするだけで現実を変えていく力はない。
何もしなければ何にも起こらないまま。
けれど、目的に向けて言葉にして行動にしていけば現実だって少しは何かが引き起こせるはずである。
フラグ管理していくみたいに、凡庸な自分の物語を少しずつ作っていきたい。 -
Posted by ブクログ
読書備忘録916号。
★★★★★。
浅倉さん!神!こんなすごい作家さんだとは思わなかった!
あとがきに書かれていましたが、サブカルとしてのアニメの神!
ジャンルとしては特にラブコメ!神!
物語は一言でいえば、ラブコメアニメの主人公になって感動を味わえるシステムのテストに招聘された男子高校生の激動の1ヶ月を描く!
システム名はフラッガーシステム。
フラッガーの方程式とか言われると、そんな大層な数学の方程式ってあったっけ?と思いましたが、なんてことはない物語の変化とストーリー展開の肝となる"フラグ"のことだった。笑
ジジイの理解は、ごまんとある世のラブコメアニメを機械学習させたAIシステムですね。
そして、なぞの電波で人心を操るシステム。おいおいどこの周波数帯を使っているんだ?
周波数は全て国の管理だからそんなおいしい周波数帯残っていないぞ!海賊電波か?
そんなことはさておき。
うだつの上がらない男子高校生、東條涼一の目の前に突如現れた男。
村田静山(これは浅倉さんですね!間違いない!)。フラッガーシステムのシナリオ担当であり広報・営業担当。涼一にシステムの被験者にならないかと持ち掛ける。
普通、こんな怪しい誘いには乗りませんが、クラスメートで憧れの佐藤さんとウフフになりたかった涼一は被験者に!
そして12月(クリスマスというラブコメイベントがあるのがみそ)の1ヶ月間、フラッガーシステムが起動する。
12/1。まず涼一の両親が排除される。突然のアフリカ転勤。
これは、意中の女子を家に誘うときに、両親がいるという興ざめ設定を排除しているんですね!
そして登校するとクラスメートの男子が排除されている。男子だけ集団はしかに罹り学校を休むという事態。
これは、ラブコメの王道として、主人公のへぼ男が恋に落ちるためには男子は少ない方が良いという王道ですね!
そして、怪しい電波で操られている女子から涼一はモテモテ状態になる!
ただ、佐藤さんが遠い!遠すぎる!
近づいてくる女子は、
・生徒会長で、御園生財閥令嬢の御園生怜香!バーン!
・突然東条家に居候することになる米澤ひなた。メイド喫茶で風俗嬢!バーン!
・魔術研究会の会長で唯一のメンバー一ノ瀬真!魔術を使えると!バーン!
とかとか!
そんなこんなで幾多の障壁を乗り越えて佐藤さんへのアプローチがやっと開けていく!
しかし、ゴールはそんなにたやすく手に入らないのがラブコメアニメ!
佐藤さんに災難が降りかかる!
果たして涼一は災難を潜り抜けて佐藤さんとウヒヒになれるのか!
めちゃくちゃハマりましたよ!
なんせ、次々に発出するフラグの数々。それらフラグが作り出す伏線と回収!
全ては、ジジイが今も慣れ親しむアニメワールドの黄金律の世界!
サブカルとしてのアニメを愛する読者の皆様には評価★5つは軽ーく超えるでしょう!逆に、この世界に縁の無い方には、意味不明な単語の連発で苦痛でしかないでしょう!読み手を選ぶ作品と言ったらカッコよすぎるか!
涼一を取り巻く登場人物のボケと涼一のツッコミはイメージとしてはサンドイッチマンのコント。
若干しつこいキライはあるが、ウケまくる!
時々登場する村田が行うラブコメ解説はミルクボーイの漫才。同じくウケる!
500pの文庫ですが、こんなに笑いながら読書したのは過去に記憶がない。