嶋津輝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【感想】普通のようでいて、どこか奇妙な感じの人びとが棲息してる短編集。湿っぽくなく、したたかに、やすらかに暮らしている。
【内容】(01)作業ラインで知り合った女たちのほのかな交流。(02)シミ抜き好きクリーニング屋主人と乾いた感じの妻と洗濯をしない不思議な女性カシさん。(03)女中願望のある里香と指に欠損があるが屈託ない多美子の姉妹の仕事と生活。(04)布団屋の民子・治郎夫婦と地域猫とフグ屋の女将。(05)女性にぞんざいに扱われると気分が高揚する益郎はぶっきらぼうな母娘の米屋で弁当を買う。(06)ときどき何かを探そうとする発作が起きる荒雄さんと、商店街のみんなと、いろんな店でアルバイトしている演技好きなユキ。(07)妙に賑わってるスナックは常連客がよく死ぬ店でもあった。
■メモ
「ちゃんと手ぇ動かしてね!」(p.15)
「あたしは一流の人間が好き」(p.25)
柔らかい声がした。高くも低くもなく、ただ柔らかくて、まるく響く声だった。(p.47)
女客はどこかわくわくしているような目つきをし、笑いを堪えているような口許をしていた。(p.48)
あなたの汗って、なんとなく、汚くなさそうな感じがするわ(p.66)
「だって、あなたって、乾いた雑巾みたいだもの」(p.66)
里香にはもともと女中願望がある。(p.81)
「あるもので何とかする」(p.93)
「うん、たしかにやることが一番大事だけど、なんで、を考えるのも時々は必要じゃないかなあ」(p.110)
「そう、里香ちゃんは、凄いところがある」(p.130)
夫はなぜか猫をべつの動物に例えたがる。(p.137)
民子はこの女店主の笑う以外の表情を見たことがない。(p.140)
益郎は、女性にぞんざいに扱われると気分が高揚する。(p.168)
店主たちは一致団結し、荒雄さんを手から手へ運んでいくのだ。(p.189)
貧しくも健気な人間ごっこは徐々にエスカレートしていった。(p.194)
ユキはあたかも商店街全体とフリー契約でも結んでいるような形で、人手が足りないと声がかかるや、どの店にでも手伝いに出ている。(p.202)
なんのきっかけもなく、ある日突然、ああ、いま自分はこの店の一部である、と理解したのだ。(p.223) -
Posted by ブクログ
ネタバレ好みなのは「祀りのいきもの」。祖母は何を飼っていたんだろう。南洋の妖精?そもそも南洋の妖精は生き物なのか。不思議が心地よく残るお話だった。
文章が全体的にひんやりと静かなイメージで好み。
印象に残ったのは「二人という旅」。冠婚葬祭というテーマにSFチックな作風という斬新な角度?からの物語だなと思った。アンソロジーにスパイスが効いて私は好き。
あと、結婚について、契約の女神と対話するシーンがとても好き。結婚の誓いは後に夫婦が別れたとしても破られたことにはならない。なぜなら、結婚という契約はお互いを永遠に愛したという、それほどまでに強い願いが、人の短い人生に一生に一瞬でも存在したことの証明だから。という考えが良い。人と人が一緒にいることは難しいけど、そんなに強く願い合える日が私にも来るのか、考えてしまった。 -
Posted by ブクログ
7つの短編集
ちょっと変わった人達が出てくるけど、根っからの悪人ではない
普通の人の日常の中に紛れる優しさ
そして、ちょっとした謎
しかもその説明は成されない
そんな何気ないやり取りが満載
・ラインのふたり
工場の短期バイトで知り合った女性二人の交流
若い社員から目の敵にされている事を察し、口撃を試みるが
その社員から返ってきた対応とは
バイト目線では、社員さんの仕事はそう見えるのでしょうね
実際は、他のタスクのついでだったりするのだけどね
それにしても、「命の母」って職場の救急箱に入ってるものか?
頓服薬ではないんだけど?
・カシさん
個人経営のクリーニングを営む夫婦と、下着までクリーニングに出そうとしてくるオカシな客のカシさん
カシさんの意図が最後まで読んでも謎
あと、奥さんがカシさんに掛けた言葉の意図と心境の変化も
最初に思ったのは、カシさんが乳がんで乳房を摘出したとか?と思った
なので、奥さんが銭湯で裸を見て察したのかとね
旦那さんが見たのは、疑似乳房だった可能性もなくはない
でも、違うような気がする
それだとしても、旦那さんに対する妙な執着の説明が付かないのでね
やはり、以前関係を持った相手がポイントだと思うのだけど、何も推理できない
あと、カシさんは潔癖症なのかとも思った
まぁ、そんな人が銭湯に行くか?とも思うけど
湯船に長く浸かっていたとか、奥さんはその後の行動とかから察するものがあったのだろうか?
だとしても、奥さんが旦那さんに言った
「あなたって、乾いた雑巾みたいだもの」という言葉
雑巾に例えている時点で、完全にいい意味ではないわなぁ
だから奥さんも気まずそうにしているわけだけれども
旦那さんの汗ならOKという理由も謎だなぁ
もう一つの可能性として、カシさんがトランスジェンダーで性転換済みもありそう
それなら奥さんの行動も納得がいくし
手の描写も元男性という伏線にも思える
あと、ダルダルのランニングシャツで乳首が見える姿から、「グレコローマン」という渾名をつけられてるところは笑える
・姉といもうと
幸田文の「流れる」に憧れて家政婦の仕事をしている姉と、指先が欠損していて知人の経営するラブホテルで受付をしている妹
姉の派遣先の夫が、妹の彼氏の上司と判明する
妹さんの指がない理由を聞いてきたのが、その上司が人生で二度目だという
姉は物心付いた頃から妹の指がなかったので、聞くことすらしてこなかったらしい
妹さんみたいなキャラの人、身近にいたら楽しそう
メタ的な謎として、タイトルの「いもうと」がひらがななのはどんな意図なのだろう?
姉妹のキャラクターを反省させてるのかな?
・駐車場の猫
布団屋を営む夫婦と、お向かいのフグ屋の隣の駐車場にやってくる猫
旦那さんは男前で、べらんめぇ口調というギャップ
その妻が普段は猫に餌をあげているが、入院中には印象のよくないフグ屋の女将さんが餌をやっていたようで……
・米屋の母娘
怪我をした母親の元に通う独身の息子がお弁当を買うために立ち寄る米屋の母娘
値段は安いが、コロッケを爆発させたのか中身がなかったり、おかずが少なくなっていたり
しかも、接客が然程よくない
・一等賞
発作で商店街をうろつき始めるアラオと、それを治めるために連携して誘導する商店街のお店の人々
そしてそれを最後まで見届ける主人公の女性とその幼少期の出来事
・スナック墓場
潰れたスナックの女性店員3人が同窓会的に競馬場で語らう話
本当は「波止場」という店名だが、「スナック墓場」と陰口を叩かれていた理由と潰れた経緯
どの話しも良いけれども
一番気になったのは「カシさん」かな
結局、カシさんの正体や奥さんの態度が変わった理由が気になる
元は「スナック墓場」だったのを改題して文庫化
芥川賞作家のようだけど、浅学にしてお名前を聞いたことがなかった
「カフェーの帰り道」の作家さんだったのですね
経歴を見てみたけど、まだ数作しか出されていない
直木賞って、中堅どころの作家さんが受賞するイメージがあるのだけど、ある意味でまだ新人さんと言えるような方も対象なのか?
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『カフェーの帰り道』で、第174回直木賞を受賞!
いま最も注目されている作家・嶋津輝の
デビュー作(「オール讀物」新人賞受賞作「姉といもうと」)を含む傑作短篇集。
単行本『スナック墓場』を改題
幸田文の『流れる』に憧れる家政婦の姉と、指がないが活動的でラブホテル受付をする妹。
つぶれたスナックの女性店員たちが開いた競馬場での同窓会。
職人気質のクリーニング店主と常識外れの若い女性客。
自分が入院中、向いのふぐ屋のおかみさんがなぜか駐車場の猫に餌をあげていて…。
商店街の生活、女性同士の友情と葛藤、男性への鋭い視線。
思わずほほえんでしまうユーモア、人間観察から溢れる、生きることへの〝姿勢の良さ〟がにじみ出る。
何気ないやりとりから生れる違和感がクセになる、オリジナリティ溢れる全7篇。
文庫解説・森絵都「どんな個性も大らかなユーモアをもって包みこむことで、マイナスをもプラスに転化させる。これぞ嶋津マジックだろう」
第二作である長篇小説『襷がけの二人』は第170回直木賞候補作に。
宮部みゆき、三浦しをんら、選考委員が絶賛!
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Posted by ブクログ
昭和四年四月 東京。松坂屋上野店の新たな本館が開店し 街は活況を呈していた。
そんななか そこだけ忘れ去られたような寂れた一角に「カフェー西行」はあった。
それほど流行っているわけではないが幾人かの常連はついている。
働いている女給は三人ほど。一人が辞めると 再び新たな女給が入っては辞めるの繰り返しが続いていた──。
本書は五話からなる。
「カフェー西行」で一時を女給として働いた女性たちの戦前から戦後五年の物語。
タイ子、美登里、セイ、幾子。それぞれの ささやかな日常が描かれている。
どの話も良かったけれど なかでも最後の幾子の話が好きだった。
終戦から五年後。 女給がウエイトレスと呼ばれるようになっていた。
十七歳の幾子は「西行」でウエイトレスとして働いて二カ月。そこに二十代の頃「西行」で女給をしていた 美登里、セイ、タイ子が登場する。戦中を経て 彼女たちは四十代になっていた。彼女たちの幾子をみる目が温かい。
そして 戦前 戦中 戦後の目まぐるしく変化する世の中で ずっとそこにあり続けた「カフェー西行」。店主兼マスターの菊田が ひとつひとつ丁寧にコーヒーを淹れる音やその香りが満ちているであろう空間が 読んでいて とても愛おしい…。
よい本でした。