嶋津輝のレビュー一覧
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太平洋戦争を挟んで、ひょんなことから二人で一緒に生活していくこととなった二人の女性の出会いと別れ、そして再会の物語です。
物語は、主人公がとある女性の家に住み込みの女中として働き始めるところから始まる。その女性は、盲目だがしゃんとした人で三味線のお師匠をしている。彼女は、主人公にとっては戦時の混乱の最中に生き別れになった、誰よりも近しい人だった。大正十五年の嫁入りから、昭和二十年三月十日の東京大空襲の日まで、ずっと同じ家で過ごしてきた。その日々の中には様々な想いや葛藤があったけれど、つましい中にもたくさんの楽しみを見つけていく彼女たちは、生き生きとその時代を生きていたのだと感じられる一冊 -
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直木賞候補に上がっていたときから気になっていた小説。
大正時代から昭和にかけて、婚家の女中頭であった初枝と、嫁いできた千代、それに年下の女中、およしの3人の人生を描く。
千代の結婚と、東京大空襲が二人の運命を翻弄していくが、さらに二人の女ならではの事情が絡んでいく。育った環境も、それまでの人生も全く違う二人が一つ屋根の下で暮らし、山田家の男たちと暮らしていく。千代は夫との関係に悩むが、初枝にも事情があった。
女が耐え忍ぶばかりの話かと思ったらそうではなく、男たちにも事情があり、時代を感じさせる。千代は印象が薄いくらいの目立たない女で、苦労知らず、世間知らずであるのに、初枝はそういうおおらかなと -
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ネタバレ久々に全部好きな話が詰まったアンソロジーだった。
何よりインパクトがあったのはラストの町田その子さんの「六年目の弔い」。最後にとんでもない爆弾をぶっ込んできたな…。
設定の時点で結構突っ込んだ内容になりそうだったけど、その中で珠美と志乃がいい関係性になれてほっこり終わるのかと思ったら最後に胸がざわつく展開に。
冠婚葬祭の中で、一番無難そうで難しいテーマの「婚」がSFだったのも面白かった。普段SF読まない人間でも読みやすくて好きな話だった。雪舟えまさん、他の作品も読んでみたいな。
寺地はるなさんも安定して好みの作品。40代の幼馴染たちがバタバタする話って微笑ましい。 -
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なんだろう、不思議な読後感。
決して悪い話ではないのに、うすら怖さがあったり、変な人?とカテゴリーしたくなるような、癖のある人たちが出てくるのに、全体的には温かく優しい話の数々。作中にも出てくる幸田文の文体と似ているのだろうか?いずれも処女作というのに驚く。そして解説の森絵都さんが、著者インタビューを読んだら、「普通、ということにこだわりました。ふつうの人とか生活費を描きたいという気持ちが強いので」という言葉を見つけ、危うく椅子から転がり込む落ちそうになった。と。笑笑
7つの短編。バラバラな日常を描いている。
どれもどこか強烈な印象が残っていて面白かった。また読み返した時に何を感じるのか楽し -
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千代とお初さんの昭和初期から終戦後までが描かれている。
父親の親友の息子のもとに嫁ぐ事になった千代、そのうちにはお初さんという女中さんがいた。
千代の結婚生活は決して順調なものではなかったが、お初さんや同年代の女中のお芳さんと仲良く暮らしていく。
順風満帆ではない千代とお初さん、それでも前向きに生きている姿に清々しい感動を覚える。
立場が逆転してもこだわることなく生きていける二人がいい。
そんな関係が築ける相手がいることは大変幸せなことだろう。
戦争で身体だけでなく心も傷ついた人達がいっぱいいた時代だったんだ。
とにかく千代の生き方、お初さんの生き方、どっちも素晴らしく爽やか。
長編だったが読 -
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ネタバレ嶋津輝「漂泊の道」
葬式の時にしか会わない遠い親戚との話。自分の母親の兄の奥さんの妹の娘、遠すぎてものすごく考えた…その親戚、カナさんと4回顔を合わせ、その後、父親の後妻になっていた、そんな複雑でもあり得そうな話。何度登場してもカナさんはステキで、自分に対してもハッキリ物申す人で憧れていたのに、いつか違う感情を抱くようになっていた。薄く長いスパンの付き合いの親戚ならではの動きのあるストーリーだと思った。
町田そのこ「六年目の弔い」
哀しみを共有してくれる人がいて必要と思えば手を差し出し触れ合える、それがありがたかった
というところ、が身にしみる。
亡くなった人は、思い出の中でしか生きられない -
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裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。二人の四半世紀に渡る物語。
冒頭のシーンで女中頭だった初衣が思わぬ姿になり、その雇い主だった千代が逆に住み込み女中として初衣の家で働き始めるところが描かれている。
戦争の混乱による影響だと思われるが、一体何が起きたのか興味を掻き立てられる。
そこから物語は遡り、大正15年の千代の嫁入りから始まる。
千代と初衣の関係は傍から見れば奇妙だが、楽しい。
決して雇用主と女中という上下関係はなく、共に家を切り盛りする同僚のようでもあり、千代が嫁入りするまで家を切り盛りしていた初衣が様々なことを教える先輩のようでもあり、もう一人の若い女中・お芳と共に三人姉妹