嶋津輝のレビュー一覧
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【感想】普通のようでいて、どこか奇妙な感じの人びとが棲息してる短編集。湿っぽくなく、したたかに、やすらかに暮らしている。
【内容】(01)作業ラインで知り合った女たちのほのかな交流。(02)シミ抜き好きクリーニング屋主人と乾いた感じの妻と洗濯をしない不思議な女性カシさん。(03)女中願望のある里香と指に欠損があるが屈託ない多美子の姉妹の仕事と生活。(04)布団屋の民子・治郎夫婦と地域猫とフグ屋の女将。(05)女性にぞんざいに扱われると気分が高揚する益郎はぶっきらぼうな母娘の米屋で弁当を買う。(06)ときどき何かを探そうとする発作が起きる荒雄さんと、商店街のみんなと、いろんな店でアルバイトしてい -
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カフェー西行を中心に、そこで働いた女給達の人生を描いた作品。
それぞれの人生、人生といえど凡そ20年前後であるが、彼女達の年齢と戦前戦後が重なるその大きな時期を描いたこの作品からは、沢山の遷移とその物語がひしひしと伝わる。
一つのこの本で、彼女達の人生を共に過ごせる様な気持ちになれる素晴らしい作品。作中のどの章も読みやすく、時代が前後する構成であってもその繋がりは自然と頭に入りやすい。
同時期に働いていた女給のその後の人生をバラバラと描きながら、最終章には新しい女給を登場させ、これまでの彼女達のそれぞれの人生をうまくまとめて締めていた所は流石でした。
もう一度読み直したいと、読んでいる -
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ネタバレ大正から昭和のカフェーを舞台にした物語。稲子から幾子まで緩やかに時代をつなげて、その時々を懸命に生きる人々を肩肘張らずにふんわりと柔らかく描く。今よりずっと制約のある不自由な時代にあっても、同じ顔の女はいない。学歴を生かして挑戦しようと奮闘するセイ、自由な恋愛をしつつも一人息子を大切に育てるシングルマザーのタイ子、カフェーの女給を一生の仕事にした美登里。それぞれの選択が戦争を経て喫茶展西行の穏やかな一日につながる。ハッピーエンドと言ってよい温かい物語だった。
一方、その温かさを引き立てるような戦争に男たちものみこまれていく。好きな人との結婚して自分の店を持つ夢を抱いていた向井の無念はいかほどか -
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昭和の東京を舞台に、名もない小さなカフェーで働く女給たちが、戦前・戦後の激動期の中で自分なりの人生を静かに切り拓いていく姿を淡々と描いた作品だ。
なかでも、当時としては高学歴な「高女卒」の女給が、理想と現実のギャップに葛藤しながらも、自身の生活に実直に向き合おうとする姿に惹きつけられた。また、戦死した長男を何年経っても悼み続ける母と、そんな母を想い悩む娘のエピソードも深く心に響いた。息子が愛用していた銘柄の煙草を無理やり吸うことで、母なりに追悼を完結させようとする場面は、非常に強烈な印象を残す。喪失とどう向き合うかは、あまりに個人的な営みなのだと思い知らされた。
一方で、戦争の記憶を扱う小 -
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ネタバレ好みなのは「祀りのいきもの」。祖母は何を飼っていたんだろう。南洋の妖精?そもそも南洋の妖精は生き物なのか。不思議が心地よく残るお話だった。
文章が全体的にひんやりと静かなイメージで好み。
印象に残ったのは「二人という旅」。冠婚葬祭というテーマにSFチックな作風という斬新な角度?からの物語だなと思った。アンソロジーにスパイスが効いて私は好き。
あと、結婚について、契約の女神と対話するシーンがとても好き。結婚の誓いは後に夫婦が別れたとしても破られたことにはならない。なぜなら、結婚という契約はお互いを永遠に愛したという、それほどまでに強い願いが、人の短い人生に一生に一瞬でも存在したことの証明だから -
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ネタバレHKさんのおすすめ。
千代は、三味線のお師匠さんである初衣の家で働く女中。
初衣は東京大空襲で目が見えなくなっていたため黙っていたが、
千代は東京大空襲の夜まで初衣と一緒に暮らしていた。
千代が主人で初衣が女中として。
いや、千代の義父の妾として。
「カフェーの帰り道」と同じ作者だったが、
それよりももうちょっとしっとりした感じだった。
製罐工場の社長の妻として不自由のない暮らしをしていた千代が、
夫とは心の通わぬまま別居になり、
義父も亡くなり、もう一人の女中と三人で暮らしている様子は幸せそうだった。
さらに、大空襲をきっかけに、
独身寮の住み込み女中として自立できて、
そこで悲しい恋も