嶋津輝のレビュー一覧
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『襷がけの二人』文庫版。感想は単行本版に書いたので、こちらはスピンオフの感想を。
文庫版に書き下ろされた『わたぼこりの女』は、お初さんの三味線の弟子である芸姑の和江さんが主人公の物語。
芸者の置屋(事務所と寮のようなもの)にある日、頭が白く、大きな老婆がやってくる。その女は病気で療養中の女中の代わりにやってきた親戚のものだという。
太めの和江を「信楽焼のたぬき」に例え、歯に衣着せぬ発言で周りを辟易させるものの、働き者で重宝されていたが…。
まさに作者が好きな幸田文の『流れる』を彷彿とさせる物語でした。芸者の置屋の様子が生き生きと描かれているし、お初さんや千代さんも登場します。
二人が変わらず、穏やかに暮らしている様子でよかった。 -
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ネタバレ【きっかけ】
レトロ喫茶店が好きで、タイトルと表紙に惹かれた。
【好きな箇所】
(冒頭略)人に見られたいという気持ちが、自分にもたしかにある。見られることで、自分という存在を、誰かに知ってもらいたかったのだ。今のいままで気づかなかったけれど。
自分を人の目の中に置きたいという欲は、きっとセイにも、嘉代にもある。昇降機ガールたちにだって、あるにちがいない。
【感想】
この気持ちわかる、、としみじみ思う箇所が、たくさん。物語のなかで時が経つうちに、全員の人生が愛おしくなってくる。
菊田さんがいてくれて、よかった。ここに出てくる女たちにとって、カフェー西行があってくれてよかった。
いちばん好きなシーンは、息子を戦争で亡くした母親が回復していくくだり。よろよろの体でも味の濃い中華そばを食べる。帰り道でへばりそうになったとき、夫からの、おぶるから乗りなさいという言葉。お見舞いでもらった息子のものと同じ銘柄のタバコを、みっともないほど盛大に咽せながら吸ったこと。直接意味なんてないようなことで、人は元気を取り戻せることがある。この母親は、仏壇の前にいる時間こそ誰よりも長かったけど、ずっと弔いができないままでいたんだな。頭で考えるとか、気持ちを整理しようとするとか、頑張っても、このままじゃいけないと思っても、どうにもできないときが人間ってある。だから、無理矢理にでも妻を外に連れ出した夫、ナイス。老け込んだ妻を見捨てて浮気でもするんじゃないかと、頭の片隅で予想していたけど全く違った。いい父親で、いい夫だ。
この母親には、戦前から遠のいていた味の濃い食事と、年齢以上に老いてしまった自分を、人目も気にせず背負って歩こうという夫の優しさに触れたこと。そしてタバコをきっかけに、息子のいない人生を生きられるようになった。咳と一緒に、悲しみを少し体内から出せたのかもしれない。
タイ子の息子は、帰還してから恋とかできたかな。菊田さんは、きっとカフェーに関わった皆んなに囲まれながら死ぬんだろうな。 -
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ネタバレ『駐車場のねこ』は普通の人と、ちょっと普通じゃない人たちの物語。この「わからない感じ」が面白くて少し怖いのです。
文庫化の際に『スナック墓場』から『駐車場のねこ』へタイトルが変更されました。
【駐車場のねこ】
ふとん屋の民子は野良猫たちに餌をやっている。猫は去勢済の「さくら猫」だし、客受けがいいので商店街でも餌やりを認めていた。
しかし、向かいのふぐ屋の料理人だけは、民子に文句を言ってきた。
ある時、民子が膝の手術で入院中に夫から猫たちが来なくなったと聞かされる。民子はふぐ屋がなにかしたのではと思い込むようになり…。
商店街の店同士って、連帯感があるのかとおもったら、アパートと同じで付き合いがないことも多いんですね。
近所が何をしているかわからないのが少し怖い感じがします。
そんな、ちょっと怖くてほっこりする人々の日常が描かれています。 -
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お話の主要な場面に「猫」が登場するアンソロジー。
内容はミステリーだったり、エッセイだったり。。
どれも秀逸で、面白く読むことができました。
最初の作家さんの、親の影響で猫を飼っていて、仕事の中で余命いくばくの猫に遭遇して・・のお話も良かったし、ミステリー好きとしては、ロックの仲間割れを招いた猫の話、離婚話で持ち上がったある疑惑から、猫が切欠で現実味が帯びる話はゾクッとするものがありました。
その中でも、一番好きなのは、野良ちゃんを見守るご家族のエピソードが詰まった、感動&笑いのお話。とても良かったし、私がポチっとしたこの電子書籍代も、猫ちゃんの治療の還元に役立てば大変うれしいです笑