古沢嘉通のレビュー一覧

  • ブラック・ハート(下)

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    ネタバレ

    ハリー・ボッシュシリーズの中で何度も引用されるドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節が原告側弁護士ハニー・チャンドラーによって、初めて引用される。
    「怪物と戦うものはだれであれ、その過程において、自分が怪物とならぬよう気をつけねばならぬ。そして、深淵を覗き込むとき、その深淵も逆に見つめ返しているのだ・・・」
    つまり、ボッシュが「ドールメイカー」事件で、ノーマン・チャーチを射殺したのは、深淵を覗くあまり怪物の側に立ってしまったからではないか、という指摘で、ボッシュの出生の事情や心に抱えている精神の闇(ブラック・ハート)が追求されていく。

    ボッシュが背

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    2016年06月06日
  • ブラック・ハート(上)

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    ハリー・ボッシュシリーズ第三弾。
    第一弾の「ナイトホークス」でほんのちょっぴり触れられていた『ドールメイカー殺人事件』がいよいよ主要事件として扱われるので、否が応でもワクワクしてしまう。

    強権的警察捜による人権侵害の問題に踏み込み、辣腕女性弁護士ハニー・チャンドラーが法廷でジリジリとボッシュを追い詰めていく裁判劇は迫力満点!

    新たに起こったコンクリート・ブロンド事件がドールメイカーの仕業なら、ボッシュは間違いを犯したことになり、裁判に負けてしまう。
    ボッシュが4年前に射殺したチャーチは、ドールメイカー殺人事件の犯人ではなかったのか?

    ドールメイカー殺人事件の真相にボッシュが近づいていく

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    2016年06月02日
  • ナイトホークス(下)

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    ネタバレ

    ボッシュを吊るし上げるネタを掴むためボッシュをつけ回す、ロス市警内務監査課のルイスとクラークのろくでなしっぷりには、ボッシュ同様呆れるし、ロス市警内でボッシュを目の敵にしている副警視正のアーヴィン・アーヴィングもとことん嫌な奴で、それだからこそ、ボッシュが組織のやり方に迎合せず、己の正義を貫き、犯罪を暴き、不正を正すため、組織の中でも孤高の戦いを繰り広げる姿を手放しで応援してしまう。

    ボッシュが推理と操作の末たどりついた容疑者フランクリンとデルガドの二人がメドーズ殺害とトンネル強盗事件の犯人かと思いきや、シャーキを殺した黒幕はあっと驚く人物で、そいつを裏で糸を引いてい操っていた人物はもっと驚

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    2016年05月04日
  • 証言拒否 リンカーン弁護士(下)

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    さすがの法廷劇で安心して、かつワクワクしながら読み進められた。ラストも納得感がある終わり方で満足度も高い。

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    2016年05月03日
  • ブラック・ハート(下)

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    ハリー・ボッシュシリーズ第3作。前作までの荒々しさが消え、プロットはより練り込まれ、洗練されている。三人称でありながら主人公に視点をしっかりと据え、その行動を通してしか物語が進行しない。このシリーズがハードボイルドたる所以の一つであり、ミステリとしても重要要素である。

    娼婦らを狙った連続殺人犯〝ドールメイカー〟の住居に単独で乗り込み射殺したボッシュは、その4年後、無実を主張した男の妻から訴えられる。男の住居からは犯行を裏付ける証拠が見つかっていたが、幾つかの相違や矛盾する点もあった。裁判が進行する中、男のアリバイを証言する者が出現。さらには自らを〝ドールメイカー〟と名乗る者によって、同様の手

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    2016年04月30日
  • 天使と罪の街(下)

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    ネタバレ

    コナリー作品のキャストがほぼ総出演の豪華な作品で、コナリー世界最恐で最大の邪悪にボッシュとレイチェルが立ち向かうサスペンスフルな作品だった。

    特にポエットがトレーラーに仕掛けた罠が炸裂するくだりや、ポエットがレイチェルに自分の手首を結束バンドで椅子にロックするよう命じるくだりなどは、ポエットの狂気に背筋が寒くなった。

    また、クライマックスのナローズでのボッシュとポエットの対決も壮絶で、ポエットの最恐ぶりに、ボッシュですらやられちゃうんじゃないかと心底ハラハラしてしまった。

    そして、テリー・マッケイレブがファイルの裏に書きなぐっていた名前「ウィリアム・ビン」の正体とテリーの死の真相にはびっ

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    2016年04月16日
  • 天使と罪の街(上)

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    ネタバレ

    本書は「ザ・ポエット」の続編なので、本書でポエットの正体を知る前に「ザ・ポエット」を読むのがおすすめ
    と訳者あとがきで知った。
    先に本書を読んでしまうと、ザ・ポエットの驚愕がそがれてしまうとのこと。

    「ザ・ポエット」のヒロインFBI捜査官レイチェル・ウォリングが、ボッシュとともにポエットと対決する。
    ポエット、最強にして最恐!鳥肌ものの恐怖を感じる。

    ちょっとショックだったのは、「わが心臓の痛み」と「夜より暗き闇」の主人公元FBI心理分析官テリー・マッケイレブが物語冒頭で死んでしまっていたこと。。。
    テリー・マッケイレブ好きだったのになぁ。
    準主役扱いで今後も活躍するのかと思っていたのに。

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    2016年04月15日
  • 暗く聖なる夜(下)

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    ネタバレ

    本書が出版された2005年に初読していたが、10年経ってすっかりからくりを忘れてしまっていたため、ボッシュとフォー・キングズの対決シーンではクライマックス感満載で手に汗握り、事件の裏で手を引いていた黒幕の正体に唖然とし、エレノアが隠していた秘密に涙してしまった。

    米国で最も権威のあるミステリー賞である「MWA賞最優秀長篇賞にノミネートされ、米国で圧倒的な人気を誇る作品だけあって、ミステリーとしても十分に面白いし、小説としても完成度が高い作品に感服した。

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    2016年04月09日
  • 暗く聖なる夜(上)

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    「夜より暗き闇」の後の「シティーオブボーン」を読まずに「暗く聖なる夜」に取り掛かったので、ボッシュがロサンジェルス市警を辞めて私立探偵になったことを知らず、戸惑った。
    やはりシリーズものは順に読むべきと反省。

    それでも、私立探偵となったボッシュの信条、「この世におけるわたしの使命は、バッジがあろうとなかろうと、死者の代弁をすることなのだ(37ページ)」にいきなりノックアウトされ、過去に担当した未解決事件の独自捜査にのめり込んでいくボッシュにつられて、こちらもどんどんハリー・ボッシュのハードボイルドな世界にのめり込んでしまった。

    映画会社に勤めていた「アンジェラ・ベントン」殺害事件と小道具と

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    2016年04月09日
  • 夜より暗き闇(下)

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    ネタバレ

    ボッシュシリーズでたびたび目にするニーチェの警句、「深淵を覗く者は、そこに潜む怪物と同化せぬよう気を付けねばならない」が暗示してきたように、ついにボッシュは怪物と同化してしまったの?と不安にかられつつ、そんなはずはない!とボッシュを信じて読み進める。

    裁判での検察側、弁護人側の抗戦、攻防のゆくえはどうなるのか、ボッシュの嫌疑は晴らされるのか、急な襲撃により危機一髪に陥ったマッケイレブは助かるのか、はらはらドキドキの期待を裏切らない展開で、やっぱり「マイクルコナリーは安心して読める、決して外れのない作家」だと再認識できた。

    読み手をびっくりさせたり、陰惨な気持ちに陥れたり、呆れさせたりする奇

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    2016年04月02日
  • 証言拒否 リンカーン弁護士(下)

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    わたしはやってない!裁判で無実をひたすら訴える容疑者。検察側、弁護側ともに決定的な証拠を欠き、勝敗は五分と五分。住宅差し押さえ代行に絡む莫大な金をめぐり人間たちの欲も蠢く。裁判妨害、血痕、身長差…。刻々と変わる法廷劇の結末は?名手コナリーの技に脱帽。圧巻のリーガル・サスペンス!!

    というわけで、物語を堪能いたしました。このクオリティはなかなかのものです。

    余談。ボー・デレクという女優の話が出てくる。「ボレロ」という映画は未見だが、「テン」の方は観た。確かにラヴェルのボレロが印象に残る使われ方をしていた。懐かしい。

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    2016年03月15日
  • 証言拒否 リンカーン弁護士(上)

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    シリーズ第四作。
    ローン未払いを理由に家を差し押さえられたシングルマザーが、大手銀行副社長撲殺の容疑で逮捕された。彼女は仲間を募って銀行の違法性に抗議するデモを繰り返す有名人。高級車リンカーンを事務所代わりに金を稼ぐ、ロスきっての人気弁護士ミッキー・ハラーは社会的注目を集める容疑者の弁護に乗り出す。

    安定の面白さ。映画化にまつわるくすぐりにニヤリ。

    ドラマ化された「ボッシュ」の新シリーズも待ち遠しい。

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    2016年03月13日
  • 夢幻諸島から

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     ここ(ドリーム・アーキペラゴ)ではどんなことも起こり得る―

     時間勾配の歪みにより地図の作成が不可能とされている架空の世界。そこに点在する無数の島からなる通称夢幻諸島(ドリーム・アーキペラゴ)が舞台の物語。英国作家の”信頼できない語り手”ことプリーストが書き記した、死と狂気に彩られた島々に纏わる35の記録譚。

     『グールン』~大提督劇場~

     商業演劇の演出家を目指し、とある劇場に勤め始めた青年。出演者の一人、謎の王”ロード”を名乗る奇術師との出逢いを発端に様々な出来事が巻き起こる。やがて、執拗に主人公を付け回す不審な小男や奈落での亡霊騒ぎがひとつに繋がっていく。

     『チェーナー』~雨

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    2016年02月17日
  • 双生児 上

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    SFだと思って読み始めたら、あんまりSF要素なかった。
    でも読みやすいのでぐんぐん先へすすむ。

    WW2詳しくないし、ロンドン空襲のことなどほとんど知らなかったので新しい視点を得た感じ。
    と同時に本編と関係ないんですが、東京大空襲はこのロンドンの空襲と比べるととんでもない規模だっただんだなあと苦しくなった。


    ところで出だしの暇なサイン会の切なさといったらもぅ……

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    2016年02月11日
  • ブラック・アイス

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    USの推理小説を読んでいると、最近?の刑事はけっこう似たような感じが多い、というか、流行ってる推理小説では同じようなタイプが受けているという事か、タフで、割と不器用だけど、何気に頭が切れる、みたいな。昔なら頭だけ働かせてれば良かったけど、今は汚れ仕事もこなさなくちゃいけないから、大変だよなー、などと思ったりする。とはいえケチをつけなければこの主人公は格好良いし、終盤に向けての勢いは悪くない。そしてメイクラブという翻訳を見た時に、なんかドキドキしてしまったという事だけは言っておきたい。なんつーか、こう、一回りして新しい。

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    2016年01月24日
  • 双生児 上

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    第1部で語られる歴史が明らかに我々の時代と異なり、
    「ブラックアウト」「オールクリアー」を
    読んだあとなので第2部の情報はすんなり受け入れ、
    短い第3部では何やら不思議な世界の一端、
    第4部は第2部との明らかな違いが見えて。
    これだけでは単に歴史改変、並行世界のSF
    としか思えないので、帯にある
    「ジャンルの枠を超えた」がいかなるものか
    期待しながら下巻を読むのだが、邦題『双生児』
    に対して原題 The Separation。どちらが
    物語にふさわしいと感じるかも興味のひとつ。

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    2015年12月03日
  • 夢幻諸島から

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    不思議な世界観の中でふわふわとするための本。
    文化レベルは、現代と同じ。
    「夢幻」といっても、魔法やドラゴンが出てくるわけではない。
    短いエピソードの連なりで、どんどん読めてしまうけれど、あまり急いで読むと見落としが出る。

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    2015年01月12日
  • 夢幻諸島から

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    ある世界に存在するたくさんの島についてのガイドブックの態をとってる短編連作。とはいっても少しずつ関連があって、同じ人も出てきたりするので長編とも言えるかもしれない。
    構造がずるい、楽しい!
    ただ、散らばってる情報を集めながら読む話なので、人は選ぶ気がする。
    手紙とか雑誌記事とかそういう断片から情報を取り込みながら読む話がすごい好きなので個人的にはとても楽しかったです。

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    2014年05月26日
  • エコー・パーク(下)

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    ネタバレ

    意外と後半は盛り上がりに欠けた。前半は緻密な展開だったが、後半ではいきなり上司に付いていったら愛人宅に行き、さらには弁護士のところで話しだしてカラクリが全て分かるという拙速な展開。
    一方で犯人はボッシュとレイチェルが調べた質草から簡単に潜伏先が分かって射殺、という物足りない展開だった。ドラマとしてはじっくりボッシュの心情が掘り下げているのは満足だけど、なぜかレイチェルが急に離れていくのは物足りない。果たして次は?

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    2014年04月12日
  • 死角 オーバールック

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    ネタバレ

    「エコーパーク」の失敗から、再び事件にカムバックしたボッシュの活躍を描く。
    ところが、今回は連載小説用に描かれているためにかなりテンポが速い。しかもテロ絡み?と言うことで、あたかも「24」のような物語の展開。
    ただ意外と読み慣れてくると奥さんが狙った殺人と言うオチが分かってくる。それがFBI捜査官と組んで、というのは分からなかったけど。
    エレノアとヨリをもどしそうな気配もあるけど、ボッシュも50代後半。今後はどうなるかな?
    シリーズでは毛色の変わった、番外編と言うような趣の一作。

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    2014年04月12日