あらすじ
ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。
「ブラック・ハート」に続く傑作ハードボイルド・シリーズ!
感情タグBEST3
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ボッシュに内面に入って行く、いわば彼のアイデンティティがモチーフになっている。ボッシュは組織に入り込むことを好まず、不得手と任じている。その彼の姿を映すかのようなコヨーテ。住まいの近くに現れると言うコヨーテに、彼自身を投影し、ストーリー進行の背景としている。元同僚とのラスト近くの語り・・・真夜中の海の上のボート・・互いの裸の心中がぽつぽつと語られて行く場面がいい。
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ますます盛り上がるハリー・ボッシュシリーズ第4作目。
第1作目からふれられてきた母の事件、死の謎を解く物語がいよいよ始まる。
のだが、ボッシュはまたもや何かまずいことをやらかしたらしい!
ボッシュはストレスによる強制休職に処されており、復職するためにカウンセリングを受けているのだ!
何をしでかしたのかすぐに明かされないし、ボッシュの自宅はLAを襲った大地震で半壊の被害を受けて、立ち入り禁止の赤札がつけらているし、第2作の『ブラック・アイス』からの恋人シルヴィアはボッシュの元を去ってしまっているしで、悲壮感漂う散々な出だしで、ボッシュに一体何があったのか、のっけからグイグイ話に引き込まれる。
本篇の行く末も読み応え満載だが、違法捜査を押し進め、ヤバイこともばんばんやっちゃうボッシュは無事、組織に戻れるのか?
本書のタイトル『ラストコヨーテ』の意味するところは?
ボッシュの家の下の谷に住んでいてボッシュがよく見かけていた一匹の青いコヨーテ。
P148
「コヨーテを見かけるといつも、それがそこに残っている最後の一匹かもしれないという感じがするんだ。つまり、最後のコヨーテだと。そして、もしほんとうにその通りだったり、二度とその姿を見なかったりしたら、おれはさぞかし動揺するような気がしているんだ。」
P149
「あなたがそのコヨーテと同一のものであるのは明らかだと思う。おそらく、あなたのような警官はあまり残っておらず、あなたは自分の存在あるいは任務に同様の懸念を抱いているんでしょう」
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ハリー・ボッシュ・シリーズ第4作。
上司とのトラブルから休職処分を受けたボッシュ。そこで、35年近く前に殺害された母の未解決事件を調べることに。
シリーズ初めから断片的に語られてきた母親についての謎がついに明らかになる。大地震によってお気に入りの住まいを追われ、さらに恋人とも別れ……。ボッシュにつきまとうやりきれなさや寂しさが行間からにじみ出てくる。
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ハードボイルドの主人公がセラピーを受けるなんて!
と、古のハードボイルド・ファンなら怒るところだろう。
まあ、そこらへんが、時代の流れであり、このシリーズをあまり陰鬱にさせてない一因なんだろう。
しかし、ストーリー展開は相変わらず見事。
キャラクター的にというか、設定的にというか、
死ぬとは予想しない人が途中で死んでしまい、
ぐっと引き込まれる。
二段落ちというか、解決したと見せかけて、
さらに奥があるのは、ちょっとパターン化してきて予想範囲内だが。
(下に続く)
Posted by ブクログ
休職中のボッシュが母親殺しの犯人を追う本作品は、ボッシュのルーツを辿るロード・ムービーを観るようなイメージで読める。カウンセリングを通して自分の取るべき行動について閃く辺りは都合がいいようにも感じたが、その後のボッシュの覚悟を伴った心境の変化に比例するように、ひとつひとつ踏み込んでいく複雑な過去にすっかり入り込んでしまった。
善と悪、守るべきものと排除するもの、これらのコントラストが効いており、いろんな局面で考えさせられることが多い。またミステリ的にも面白く、ふっと気の抜けた後のサプライズに、心地よい緊張を強いられた。
憂いを帯びた物悲しいストーリーが読み手に訴えるものは大きく、いかにしてボッシュが現在のキャラクターになったのか、またそうならざるを得なかったのかが、本作品を読むとよくわかる。シリーズの中でも、この四作目はある種の節目となるのではなかろうか。