古沢嘉通のレビュー一覧
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リンカーン弁護士シリーズ5作目。傑作だった第一作目に匹敵するほどの面白さ。
タイトルが意味するところは陪審員。彼らに対していかに無罪のイメージを植え付けていくかが鍵となる。今回の事件はやや複雑で、複数の事件が入れ子構造に押し込められている。移り変わっていくハラーの思考に共鳴する緊迫感、そこに絡む様々な思惑を持った人物たち。濃厚なドラマに目が離せない。
意外性のある真相も面白いが、果たしてそこまでどうやって辿り着くの?という先の読めない展開がとにかく秀逸。証人を繋ぎながら黒幕へ狙いを定めるハラー手腕は見事の一言で、判事に若干同情しつつも、この法廷ドラマを心地よく堪能できた。
本作品のあと、続編は刊行されてないそうで。そう思うとシリーズ最終作かもと深読みできないこともない。でも、悪役キャラと足並みを揃えたり、証人リストを小道具に利用したりと、こちら側のギリギリで立ち回るハラーの妙味が見られないのは非常に残念だわ。 -
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ボッシュ・シリーズも15作目だそう。
当代最高のハードボイルドと言われる作品、充実した内容です。
ロス市警の未解決犯罪班で捜査を続けることになったハリー・ボッシュ。
根っからの刑事だが、定年が延長になってよかったという年齢。
引き締まった外見らしく、いまだにモテる。
今回は、15歳になる娘のマディと同居、という新しい要素も加わっています。
DNAの判定が進歩したため、再調査であきらかになった証拠による容疑者は、当時8歳の少年という。
ありえない事実は、なぜ起きたのか?
一方、高級ホテルから市議の息子が転落死。
事故か、自殺か、他殺か?
この市議というのが元ロス市警にいたアーヴィン・アーヴィングで、今では市警の天敵ともいうべき存在。
因縁のあるボッシュに、なぜか捜査を依頼してきたが‥?
いつものボッシュが帰ってきた?
期待させる展開に☆ -
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ネタバレ著者の実力が判る短編集。様々なSF的素材を上手いとうならせる料理法で絶妙な作品に仕上げている。それぞれに味があり面白かったが、題材はありがちだが残されし者が心に残った。人としての尊厳と子供たちの未来の天秤。以外に早くその時は訪れるのでは?
以下 覚書
・ウスリー羆:バンパイヤ
・草を結びて環を銜えん:揚州大虐殺
・重荷は常に汝と共に:異世界の税金
・母の記憶に:ウラシマ効果
・プレゼンス(存在):遠隔介護
・シミュラクラ:3次元カメラ?の発展版
・レギュラー:ハードボイルド探偵
・ループの中で:遠隔戦争
・状態変化:魂が氷だったら
・パーフェクトマッチ:ビッグデータ=ビッグママが支配する世界
・カサンドラ:スーパーマンの相手役
・残されし者:電脳化を拒否した人の末路
・上級読者のための比較認知科学絵本:様々な生命形態
・訴訟師と猿の王:揚州大虐殺の記録を守ろうとした人
・軍神関羽のアメリカでの物語:1800年代後半のアイダホ中国人入植
・輸送年報より長距離貨物輸送飛行船:飛行船で甘粛州からラスベガスまで荷物をお届け -
Posted by ブクログ
各篇実に多様な趣の短篇集なのだけど、そのどれにも独特の叙情感が漂っているのがケン・リュウの特徴ではないかなあ。作品によって濃淡はあるが、切なく心にしみる感じが共通している。
強く印象に残るのは、揚州大虐殺に材を取った二篇。隠蔽され続けてきた歴史に光を当てたもので、心を揺さぶられた。特に「訴訟師と猿の王」の田の造型が見事。
進んだテクノロジーが家族にもたらす軋みを描いたものも目につく。テーマ的な新しさはないが、ケン・リュウの故国や家族、特に母に対する思慕の念が色濃く投影されているようで、しみじみと読んだ。
なかでもやはり表題作が出色。SF的ガジェットと普遍的な親子のありようが溶け合った一篇で、たった数ページでこれだけのことが言えることに驚嘆する。 -
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ターニングポイントとなるハリー・ボッシュシリーズ第4弾。主人公はハリウッド署殺人課に所属する一刑事に過ぎないが、コナリーは群れること嫌う「一匹狼」的な存在として描いてきた。
本作は、第1作から伏線としてあったボッシュの母親の死の真相を追い求める物語で、これまで以上の私闘を繰り広げている。上司への暴力行為で休職処分となったことを機に、30年以上前の未解決事件を再捜査するのだが、埋もれた過去から浮かび上がってくる事実は、当然のこと痛みを伴う。娼婦であるがために引き離された息子と再び暮らすことを夢見ていた母親の思いを知るほどに、ボッシュは殺人者への憎しみを深める。
事件の性質上、全編がボッシュの単独捜査となり、より一層孤立感は深まっている。途上でボッシュの闇とも共鳴する女との情愛も挿入しているが、ロマンスの色合いは随分とくすんでいる。終盤において、愛する者の死さえも無常なる社会では泡沫にしか過ぎないことを、悔恨とともにあらためて悟るボッシュの姿が哀しい。
本筋とは直接関係ないが、ボッシュが野性のコヨーテと出会い、荒廃した自らの心象をダブらせるシーンは、静謐ながらも熱い心根を持つ孤独な男の心情を見事に表現している。恐らく生息地域による設定であろうが、強靱で孤高の力強さを想起させる狼ではなく、共通する部分はありながらも、より小型で寂寥感のあるコヨーテをモチーフにしたところに、コナリーのこだわりを感じる。
生存環境を奪われていくコヨーテ。闇に逃れつつも、蝕まれた世界を凝視する眼光。生き続けるための原動力となる餓えと渇き。そのイメージは、卑しい街で不条理な「死」と向き合い続けるしかない一人の男へと繋がっていくのである。
現代ハードボイルドの新たな地平を開くパイオニアとしてのマイクル・コナリーの存在意義は大きい。