レイ・ブラッドベリのレビュー一覧
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この手の名作がいつだってそうであるように、この本は数十年前に出版された昔の本にもかかわらず提起される警鐘は今でも通用する。「本」が許されない世界。本作では、本が消されていた理由は、思考を促すため。本は政権に、社会に、歴史に、批判的な思考を促してきた。現代社会を映すように「」に入る単語を変えるのであればなんだろうか。独裁政権では分かりやすい。「」に入るのは情報。インターネットが普及した現在では本が担ってきた役割がインターネットによって一部置換されている。そのインターネットが運ぶ情報の内、独裁政権では都合の悪い部分を検閲している。民主主義社会はどうだろうか。あからさまな検閲はないにせよ、現代では逆
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SF 1953年初版
まず表紙がかっこいい。黒地に赤い文字とタロットカードや花札を思わせるイラスト。
華氏451度って一体何度?と思わせる題名もセンスがあると思う!
53年に書かれたにしては、未来を予測しているような本だった。与えられ続ける視覚的な情報、言葉の情報。それらが絶え間なく流され、自分で考えて選択することを捨ててしまった人々。受け身で表面上は楽しそう。
まさに現代!忙しぶっているが実はほんとうにやりたいことをできていないわれわれへの痛烈な皮肉を感じる。この本の世界では、書物忌むべきものとして専門職の人に焼かれてしまうのだが、著者のレイブラッドベリは本が読まれない時代を予期して -
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ネタバレ初めは描写が独特すぎてついていけてなかったがどんどん読みやすくなっていった
たった1週間で人生が180°c変わってしまう話なので、その最中はスピード感があって続きが気になった。
クラリスは私と似ていると思った。しかしミリーの方も 私に似ていると思った。私は両方持っている現代人です笑
同じ30歳ということもあって主人公の雰囲気が私たちの世代と似てました。
現代人の私が見たら大して違和感はないが1950年代の人が当時読んでいたらもっと SF 小説 だったのだろう。最後は原爆が落とされたのかな?そこは1950年代の人ならでは なのかなと思った。 -
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職場の後輩に勧められた一冊!
本の存在は知っていたが、なかなか取る気にはなれなかった・・・
解説に書いてありましたが歴史的な焚書を行ったのは始皇帝とヒトラー(小さな焚書は度々あり)
近年というか、最近の20数年間 少年犯罪や猟奇犯罪が起きるとその犯人が見ていた漫画やゲームの残虐性が問いただされてきた。
わたしはこれ自体が現代版の焚書と華氏451度の世界の始まりではないかと考える。
メディアや政治家達は安易に結論を付けたがる、仮に人が犯罪を犯すまでの公式を
XY/16f(£;Φ17/C)
みたいなものであると仮定して『難しい』から簡易式として
A=X+Y
みたいな方が『解りやすい』をや -
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『華氏四五一度』などが有名なブラッドベリの短編集。表紙に一目惚れしたものだが、これは2024年に出た新装版。
全21篇+文庫版特別収録のエッセイ1。
SFあり、ホラーあり、ミステリーも恋愛も友情も……ととにかく欲張りセットな本だった。ただ、明るい雰囲気の話もあるにはあるが、全体的に悲哀やノスタルジーが漂っているのを感じる。
『華氏四五一度』も読んだことがあるが、そう言えばブラッドベリって良くも悪くもこんな感じの文体だったな〜と思い出した。
個人的に好きな話は「三角関係」「ルート66」「俺の敵はみんなくたばった」辺り。どんな話でもどんでん返し的な展開はほぼ無く、期待した結末が期待通りに訪れる、 -
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ネタバレ【あらすじ】
本を法律で禁止された世界。本を燃やす〈昇火士〉のモンターグはある日の仕事終わりにクラリスという少女に出会い、世界のおかしさに気づいていく。
【感想】
冒頭はノリノリで本を燃やしていたモンターグだけど本当はそうじゃなかったんだよね。だから自宅の空調機のグリルに本を隠し持っていたし、後々モンターグの助けとなる老人、フェーバー教授と出会っていたけど報告してなかった。
しかしハラハラしたな〜〜モンターグに変わるきっかけを与えたクラリスとのバディで何か始まるかと思いきや、ある日車に轢かれて死んだと妻のミルドレッドからあっさり言われて終わりだし、フェーバー教授と再会して今度こそこのバディ -
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ネタバレSF入門企画で紹介されていたので手に取った一冊。
色々と考える所が有りました。
本作での"火星"は言わずもがな、アメリカ人に取ってのアメリカ大陸、火星人はインディアンのメタファーですね。
けっこう早い段階で火星人は滅ぼされてほぼ死滅します。その原因が地球人がもたらした細菌によって、と言うもの。これはヨーロッパ大陸特有の伝染病をもたらした移住者達、と言う構造です。
短編集と言う形を取っていながらもどちらかと言うと連作短編と言うイメージで、火星で移住者達の中で起きたエピソードを時系列順に描きます。
個々のエピソードは個人間の諍いとか家族の話なのですが、背景にある地球-火 -
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アメリカの作家「レイ・ブラッドベリ」の長篇SF作品『華氏451度(原題:Fahrenheit 451)』を読みました。
ここのところSF作品が続いていますね。
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焚書官「モンターグ」の仕事は、世界が禁じている“本”を見つけて焼き払うことだった。
本は忌むべき禁制品とされていたのだ。
人々は耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビを通して与えられるものを無条件に受けいれ、本なしで満足に暮らしていた。
だが、ふとした拍子に本を手にしたことから、「モンターグ」の人生は大きく変わってゆく―SFの抒情詩人が、持てるかぎりの感受性と叡智をこめて現代文明を諷刺した -
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シャーウッド・アンダーソンの『ワインズバーグ・オハイオ』はオハイオの架空の町、ワインズバーグのことを短編小説の連なりから、どんな町なのか浮かび上がってくるという作品だった。
『火星年代記』は序文にも書かれている通り、レイ・ブラッドベリが『ワインズバーグ・オハイオ』から影響を受けて、そのやり方を踏襲、舞台を火星に移した作品だ。
だが描かれている世界はレイ・ブラッドベリらしく非常に幻想的で、不思議な儚さがあった。
時代を感じさせる部分も確かにあるのだが、地球人と火星人という異種族に対する偏見や差別感なども描かれていて、今読んでも強度を感じる部分もある。
個人的な好みとしてはいささか物足りなさも感