レイ・ブラッドベリのレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
散文ファンタジー
不意にSF小説が読みたくなり、おすすめをググった結果出会った一冊。散文形式と、あまりに科学考証が乏しいので、読み出してすぐにどうしたものかと悩みましたが、一応読破。そんな読者にとって、SFとはスペース・ファンタジーなのだと思い至らされた一冊でした。架空の世界で、書きたい主題を取り扱うのに、「考証」がどれだけ必要なのか? 必要ありませんよね。
人類に対する悲観的で、不信感をまとった話の運びのなかに、理由はないけど、ヒトはそれでも生き残るのだという、不思議な万能感を示した一冊。
イーロン・マスクは本当に火星を目指すのか?? -
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短編集。SF。ファンタジー。ミステリ。ホラー。幻想。
多様なジャンルの作品を詰め込んだ一冊。
『火星年代記』収録の「イラ」「夜の邂逅」「やさしく雨ぞ降りしきる」は再読。初読のときより楽しめた。
好きな作品も嫌いな作品もあり。やはりSFが好き。ホラーもなかなか。
全体的な満足度は☆3くらいだが、「万華鏡」「霧笛」「やさしく雨ぞ降りしきる」が傑作だと思うので、気持ち甘めに☆4に。
「草原」ヴァーチャルリアリティ。オチが良い。
「歓迎と別離」切ないファンタジー。永遠の少年。
「メランコリイの妙薬」不思議な話。ちょっとイカれてる。
「イラ」火星。とある火星人のファーストコンタクト。
「小ねずみ夫婦」奇妙な隣人。よく分からない。
「夜の邂逅」幻想小説in火星with火星人。
「骨」ホラー。自分の骨を恐れる男。微妙。
「万華鏡」宇宙漂流SF。人間の醜さと宇宙の美しさ。宇宙で死ぬときに、何か良いことができるのか。15ページと短いながらも感動的。
「日と影」ユーモア?イカれた男。
「刺青の男」ホラー。オチは読めたが、奇抜な設定が印象的。
「霧笛」恐竜。センチメンタル。
「熱にうかされて」SFホラー。ジワジワと怖さが迫る感じ。なかなか良い。
「やさしく雨ぞ降りしきる」SF。無人の家と機械。哀愁漂う。
他13作品、全26作品。 -
Posted by ブクログ
レイ・ブラッドベリの自選傑作集。
怪奇小説、SF、心温まるようなものまで。たんぽぽのお酒は、選り抜きとはいえ文庫で読めるのはこれくらいなんじゃないでしょうか。
レイ・ブラッドベリの入門に最適な一冊です。
私は今まで二冊程しか読んだことがないので、メキシコものを読んだのは初めてです。
特に気に入ったのは表題作の「万華鏡」です。宇宙船が砕けて、宇宙に放り出された乗員たち。推進器具もないので、全員がどんどん離れて、無線電話で届かなくなるまで会話します。極限の状態で人間としての差を見てしまい、一人っきりで悩みます。自分に何ができるだろう?そんな言葉と、最後のおちの文章でなんともいえない気分になります。 -
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ネタバレ・レイ・ブラッドベリ「万華鏡」(創元SF文庫)に は「ブラッドベリ自選傑作集」とある。書名通り、表題作を初めとして、作者自選の「草原」「メランコリイの妙薬」「刺青の男」「霧笛」等々の26編を収め る。この中には「たんぽぽのお酒」や「火星年代記」のエピソードも含む。本当に作者選りすぐりの短編集である。特定のジャンルに偏ることもないので、ブ ラッドベリのさまざまな面を知ることができる。おもしろい。本書扉に、「天才作家の幅広い創作活動を俯瞰できる、最大にして最適の一冊。」とある。この先 にも、これだけの内容のブラッドベリの短編集は出ないだらう。たぶんこの一文は正しい。
・巻頭第一作「アンリ・マチスのポーカー・チップの目」は個人的にあまり好きではない。なぜかういふ作品を巻頭に持つてきたのかと私としては疑問に思つて しまふのだが、こんなことを考へる私は「世界はなんと想像力に欠けているのだろう」(29頁)といふ、その「世界」の住人だからなのかもしれない。次の 「草原」、子供の豊かな創造力が大人を食ひ殺す物語である。子供達の両親もまたこの「世界」の住人であつたがゆゑに、子供達の想像力を恐れ、それに食ひ殺 されたのである。子供達の名前がピーターとウェンディであるのは十分に考へられた結果なのであらう。ピーターは永遠の少年といふつながりで次に「歓迎と別離」が置かれてゐるのであらうと思ふのだが……この物語の主人公ウィリーは「十二歳の小柄な少年。ただし、スーツケースには四十三年前に生まれたことを示す出生証明書がはいっている。」(63頁)見かけは少年、「身長四フィート、ひげを剃る必要はな」(64頁)い。肉体的に永遠の少年である。精神的には、 しかし、「ぼくにも仕事があるんだ。孤独な人々をしあわせにする仕事。(中略)ぼくがやらなければならないのは、母親のいいつけを守る息子、父親の自慢の種になることだけ。」(72頁)と考へる立派な大人なのである。それゆゑにその永遠の少年が発覚しさうになると、ウィリーは新たな居場所を求めて旅に出 る。その繰り返しである。私達の「世界」の住人はこの永遠の少年を認めない。人は老いて死ぬ。老いて死なぬこと、いや老いることのないことを認めない。 ウィリーはそこを出るしかない。これは例の萩尾望都「ポーの一族」と同じ設定ではないか。こちらが1953年発表であるからには、この二つに何らかの関係 があるとすれば、こちらが本家なのであらう。ピーターパンのやうにこの「世界」と孤絶して生きてゐなければ、永遠の少年の運命はかくの如きものであらう。 その意味ではいささか平凡と思はれる物語だが、ブラッドベリの嗜好がよく分かる作品である。実は私はこれが最もうれしかつたと書く一方で、「たんぽぽのお酒」がその一部しかないのは残念だと思ふ。と言つても本書が自選短篇集であるからには、さうせざるをえなかつたのは分かる。本人もそのあたりを悩んだのか もしれない。それでも、私はやはり永遠の少年たるブラッドベリの物語が好きである。ただ、表題作の「万華鏡」や最後の「やさしく雨ぞ降りしきる」のやうな終末の如き物語も好きである。「やさしく」は2026年の物語である。「火星年代記」の一部だが、地球の終末を描く。現在からすると近い将来だが、発表された1950年からすれば十分に遠い未来であつた。未来はかくも機械化されてゐるといふわけで、それが人間がゐなくても動き続ける世界である。「万華鏡」の登場人物が何もない宇宙に放り出されて消えるしかない運命にあるのと対になる。幅広い作品の中で、私にはやはりかういふのがブラッドベリだと思ふ。 -
Posted by ブクログ
米国のSF・幻想文学作家のレイ・ブラッドベリによる1953年発表の作品。
ジョージ・オーウェルの『1984年』などと並び、代表的なディストピア小説のひとつと言われる。ディストピア小説とは、SFなどで空想的な未来として、理想郷(=ユートピア)の正反対の社会(=ディストピア)を描いた小説で、その内容は政治的・社会的な様々な課題を背景としている場合が多い。
華氏451度とは、摂氏では233度にあたり、紙が自然発火する温度というが、本作品は本の所有や読書が禁じられた近未来の物語である。
主人公は「焚書官」として、人類の叡智の結晶である本を焼き尽くす仕事をしているが、その一方で人々は超小型ラジオや家の大型テレビで絶え間なく娯楽を提供されている。彼らが生きている社会では、ホイットマンもフォークナーも聖書も禁書とされ、人々は権力者の都合のいい刹那的な娯楽により飼いならされ、自ら考えることを自然に奪い取られている。
主人公は、その後、謎の少女クラリス、元大学教授フェイバーと知り合い、自分の仕事に疑問を持つようになり、書物の重要性に目覚めて、自分の上官を焼き殺して逃走する。そして、最後に、書物を自分の頭に焼き付けて未来へ伝承しようとしている老人の一団に出会う。
現代の世の中は(少なくとも日本は)、体制側の明示的な意図によって、個々人が自らの考える材料や機会を制限されることは殆どない。しかし、TVをつければ大多数のチャンネルでお笑い番組が流れ、ネットを見れば多くの人がアクセスしたサイトや、過去の自分のアクセス・購入履歴に基づいたサイトが自動的に表示される。。。体制側の焚書官がわざわざ書物を焼かなくても、自らが考えることを放棄するような状況を作り出しているのではあるまいか。。。
まさに現代において考えるべき、重いテーマを扱った作品である。
(2013年1月了) -
Posted by ブクログ
ネタバレ華氏451度とは摂氏233度で紙が燃え始める温度。
この物語の主役は昇火士(ファイアマン)ガイ・モンターグ。彼の仕事は政府が禁止した書物を発見し次第焼きつくすこと。しかし、彼は風変わりな少女との出会いや、本とともに自爆してしまう老女を目撃することで、禁止された本の中には何があるのか興味を持ち始め、こっそり本を集めるようになり、ひいては社会のゆがみを認知するに至る。
焚書が公然と行われる世界、というとどんな強権的な政府があるのかと想像するが、この作品世界の興味深いところは、民衆が自ら本のない世界を選んだことになっている点だ。禁止された本の中には聖書すら含まれているのだが、人の心を思索へ向かわせるもの、目に映る世界の下にもうひとつ、想像力を駆使することでしかたどりつけない世界の存在を示唆するものは、精神的な不快感を与えるという理由で世の中からどんどん排除されていった。詩の朗読によって引き起こされる心のふるえさえも不快感に含まれるというのだ。
結果として残されたのはラジオやテレビによる、人畜無害なドラマ(モンターグによれば、何か言葉はしゃべっているが内容は何もない)や、これまた意味のない音と光の刺激だけ。心のふるえを引き起こすような類の本は見つかり次第すぐに焼却。
1953年に出版されたこの本が想定した「近未来」は焚書のエピソードさえのぞけば、現実のものになりつつある。実際、世の中から本を消そうと思ったら、あるいは目の付かない場所へ追いやろうとするのは難しいことではない。ただ読まなければいいのだ。誰にも読まれない本はすぐに消える。
本が消え去りつつある世界はどうにもおかしい、と気づいたモンターグは、行動に移る。本を隠し持っているとおぼしき老教授に連絡を取り、彼の手助けを得て逃亡し、逃亡先で出版を試みるところまで話は進む。しかし、モンターグはすでに危険人物として上司にマークされており、たちまち追われる身となる。彼は身一つでとにかく逃げた。警察犬ロボットの追跡をまぬがれるため、河(ミシシッピ川)にとびこみ、流れ着いた先で本を記憶する人々に拾われ、彼らと行動をともにするようになったが、その矢先、モンターグが脱出して来た町は戦争のために爆撃されてしまう。
火で本(文化)を焼く仕事をしていたモンターグが目覚めた結果、河(水)に救われ、彼が捨ててきた虚妄の町が戦火で焼き尽くされるところが非常に象徴的で味わい深い。 -
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ネタバレ焚書官ガイ・モンターグは密告をうけて本を焼くことを仕事としていた。ある日、隣に住むクラリスという少女と話をする。そこで問いかけられる。「あんた、幸福なの?」と。それ以降、身の回りの出来事に違和感を感じ始める。テレビに夢中になる妻、本のために自殺する老女、現状を肯定し知性を批判する上司、そして戦争に向かいつつある世界。
老女のもとから本を一冊だけ持ちだしたモンターグは元大学教授フェイバーに会いに行く。フェイバーは過去、政府による焚書に至る経緯におもてだって反対しなかった。結果、現在の状況を激しく後悔していた。そこで、モンターグに協力し焚書係の力を削ぎ、ほんの印刷を始めることに協力することにした。しかし、モンターグは妻や知人に自分が本を持っていることを明かしてしまう。その結果、妻の密告をうけて同僚に本を焼かれてしまう。
自宅の焚書の現場で上司のビーティ署長を焼き殺し、逃亡したモンターグはフェイバーから聞いていた浮浪者グループのもとに向かう。彼らは元大学教授などで、政府の方針に逆らう人たちだった。その頃、遂に戦争が始まり街にいた人たちの多くは死んでしまう。そしてモンターグらのグループは自分の知識をこれからの社会に役立てようと乗り出していく。 -
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SF小説の名作で、ブラッドベリの代表作がこの『火星年代記』です。
その名の通り、火星での様子・出来事を年代順に語る様式の作品。
短編はおおむねそれぞれが独立した形でありながら繋がっていたりもし、
連作短編SF小説と言えそうです。
ネタバレになるので、中身に触れないように説明するのは難しいのですが、
いろいろな要素が詰まった、つまり、いろいろなジャンルの話がありながらも、
どれも火星を舞台にしていて、その時系列で話が進んでいくことによる
統一感、筋の通った感じのある短編集。
僕の読んだバージョンは「定本」というもののようで、
この作品は発刊された時には1999年から始まった物語だったそうなのですが、
2030年から始まっています。つまり、31年、未来に話がずれたようです。
それは、このSF小説が今後も読めれていくための修正です。
内容は変わっていないようで、もしかすると、2030年くらいになったときの
この世界のテクノロジーや社会の進歩具合によっては、さらにまだ「生きている作品」
としての寿命が延びる可能性もありますね。2060年とかにずらしたりして。
それで、この「定本・火星年代記」は2010年発刊のものです。
そして、作者のレイ・ブラッドベリが亡くなったのが2012年だそうです。
92歳だったそうですが、亡くなる間際まで現役だったとか。
生命力の強い人だったのかもしれないですね。
本作でいえば、もしかすると、ウォルター・グリップのような人かもしれない。
さて、その『火星年代記』で描かれた世界は、
ユートピア的であったか、ディストピア的であったか。
それは読者だけが知りうることです。よかったら読んでみてください。
SFは、架空の未来世界に人類を置いてみて、そこでどう考え、反応するかという
思考実験的な初体験を、未来が来る前に体験してみようという趣旨があります。
そして、そこが面白味だったりする。
通常の人生では得られない、読書上ではあるけれど、新しい体験をSF小説で
してみてください。