レイ・ブラッドベリのレビュー一覧
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ネタバレ華氏451度とは摂氏233度で紙が燃え始める温度。
この物語の主役は昇火士(ファイアマン)ガイ・モンターグ。彼の仕事は政府が禁止した書物を発見し次第焼きつくすこと。しかし、彼は風変わりな少女との出会いや、本とともに自爆してしまう老女を目撃することで、禁止された本の中には何があるのか興味を持ち始め、こっそり本を集めるようになり、ひいては社会のゆがみを認知するに至る。
焚書が公然と行われる世界、というとどんな強権的な政府があるのかと想像するが、この作品世界の興味深いところは、民衆が自ら本のない世界を選んだことになっている点だ。禁止された本の中には聖書すら含まれているのだが、人の心を思索へ向かわせるもの、目に映る世界の下にもうひとつ、想像力を駆使することでしかたどりつけない世界の存在を示唆するものは、精神的な不快感を与えるという理由で世の中からどんどん排除されていった。詩の朗読によって引き起こされる心のふるえさえも不快感に含まれるというのだ。
結果として残されたのはラジオやテレビによる、人畜無害なドラマ(モンターグによれば、何か言葉はしゃべっているが内容は何もない)や、これまた意味のない音と光の刺激だけ。心のふるえを引き起こすような類の本は見つかり次第すぐに焼却。
1953年に出版されたこの本が想定した「近未来」は焚書のエピソードさえのぞけば、現実のものになりつつある。実際、世の中から本を消そうと思ったら、あるいは目の付かない場所へ追いやろうとするのは難しいことではない。ただ読まなければいいのだ。誰にも読まれない本はすぐに消える。
本が消え去りつつある世界はどうにもおかしい、と気づいたモンターグは、行動に移る。本を隠し持っているとおぼしき老教授に連絡を取り、彼の手助けを得て逃亡し、逃亡先で出版を試みるところまで話は進む。しかし、モンターグはすでに危険人物として上司にマークされており、たちまち追われる身となる。彼は身一つでとにかく逃げた。警察犬ロボットの追跡をまぬがれるため、河(ミシシッピ川)にとびこみ、流れ着いた先で本を記憶する人々に拾われ、彼らと行動をともにするようになったが、その矢先、モンターグが脱出して来た町は戦争のために爆撃されてしまう。
火で本(文化)を焼く仕事をしていたモンターグが目覚めた結果、河(水)に救われ、彼が捨ててきた虚妄の町が戦火で焼き尽くされるところが非常に象徴的で味わい深い。 -
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ネタバレ焚書官ガイ・モンターグは密告をうけて本を焼くことを仕事としていた。ある日、隣に住むクラリスという少女と話をする。そこで問いかけられる。「あんた、幸福なの?」と。それ以降、身の回りの出来事に違和感を感じ始める。テレビに夢中になる妻、本のために自殺する老女、現状を肯定し知性を批判する上司、そして戦争に向かいつつある世界。
老女のもとから本を一冊だけ持ちだしたモンターグは元大学教授フェイバーに会いに行く。フェイバーは過去、政府による焚書に至る経緯におもてだって反対しなかった。結果、現在の状況を激しく後悔していた。そこで、モンターグに協力し焚書係の力を削ぎ、ほんの印刷を始めることに協力することにした。しかし、モンターグは妻や知人に自分が本を持っていることを明かしてしまう。その結果、妻の密告をうけて同僚に本を焼かれてしまう。
自宅の焚書の現場で上司のビーティ署長を焼き殺し、逃亡したモンターグはフェイバーから聞いていた浮浪者グループのもとに向かう。彼らは元大学教授などで、政府の方針に逆らう人たちだった。その頃、遂に戦争が始まり街にいた人たちの多くは死んでしまう。そしてモンターグらのグループは自分の知識をこれからの社会に役立てようと乗り出していく。 -
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SF小説の名作で、ブラッドベリの代表作がこの『火星年代記』です。
その名の通り、火星での様子・出来事を年代順に語る様式の作品。
短編はおおむねそれぞれが独立した形でありながら繋がっていたりもし、
連作短編SF小説と言えそうです。
ネタバレになるので、中身に触れないように説明するのは難しいのですが、
いろいろな要素が詰まった、つまり、いろいろなジャンルの話がありながらも、
どれも火星を舞台にしていて、その時系列で話が進んでいくことによる
統一感、筋の通った感じのある短編集。
僕の読んだバージョンは「定本」というもののようで、
この作品は発刊された時には1999年から始まった物語だったそうなのですが、
2030年から始まっています。つまり、31年、未来に話がずれたようです。
それは、このSF小説が今後も読めれていくための修正です。
内容は変わっていないようで、もしかすると、2030年くらいになったときの
この世界のテクノロジーや社会の進歩具合によっては、さらにまだ「生きている作品」
としての寿命が延びる可能性もありますね。2060年とかにずらしたりして。
それで、この「定本・火星年代記」は2010年発刊のものです。
そして、作者のレイ・ブラッドベリが亡くなったのが2012年だそうです。
92歳だったそうですが、亡くなる間際まで現役だったとか。
生命力の強い人だったのかもしれないですね。
本作でいえば、もしかすると、ウォルター・グリップのような人かもしれない。
さて、その『火星年代記』で描かれた世界は、
ユートピア的であったか、ディストピア的であったか。
それは読者だけが知りうることです。よかったら読んでみてください。
SFは、架空の未来世界に人類を置いてみて、そこでどう考え、反応するかという
思考実験的な初体験を、未来が来る前に体験してみようという趣旨があります。
そして、そこが面白味だったりする。
通常の人生では得られない、読書上ではあるけれど、新しい体験をSF小説で
してみてください。 -
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レイ・ブラッドベリって、寂しい話を書く人だなぁと思っていたけれども、掌編集を読んでみると、その方向性がより際立って感じられた。望むも望まざるにも関わらず、みんな孤独で諦念と焦燥で風邪をこじらせているような、そんな印象を持った。
SFの抒情詩人と言われるけれども、多分それは今からするとかなり古典的な文才だからだと思う。ブラッドベリはテクノロジーに興味はなかったのではないかなぁ。寓話的な物語を飾るための、SFという衣装のように感じられた。というのも、表題の『太陽の黄金の林檎』よりも、サイエンス的な要素の薄い『霧笛』や『目に見えぬ少年』のような話のほうがテンションの高さを感じるからだ。
私の一番気に入った作品は『黒白対抗戦』で、これまたSF的な要素はないのだけれど、世界が一瞬で変わるのを、こんなに鮮やかに書ける作家はそんなにいないなぁと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまるで大航海時代にアメリカ大陸を発見して、
その後やってきたことを、
舞台を火星に置き換えた話のようだった
ウイルスの持ち込みとか、まさに歴史の投影
テーマとしては、話は全く違うけど、
『華氏451度』にも通ずるものを感じた
文化や本が失われる事への深い喪失感と同時に、
未来への警鐘を鳴らしてる鎮魂歌のように感じた
文化や書物は人間を人間たらしめる
最良のツールだと思う
叙事的な文章
ことばはすでに惑星間の空間にあり、
もしもなんらかの宇宙の光輝によって
照らし出されたそれらのことばが、
熱に耐えかねて発火したとするならば、
ジャニスの愛はいくつかの惑星を照らし、
地球の夜の側を時ならぬ
夜明けの光でおどろかせるかもしれない。
やっぱ詩人でしょ、この人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元々気にはなっていた本だったけれど、最近の日本に対する不安として「華氏451度の世界」という例えがSNSにいくつも流れてきた為、いよいよ読むべき時が来たか!と読むことにしました。
序盤は背景が読み取れずに???となっていましたが、読み進むごとにスピードアップ。
ホントに「今の日本、今の世界」と被る事ばかりで怖い…。
焼いてはいないし禁止では無いけれど、教育の現場や教科書から都合の悪い話や言葉、歴史を消して学ばせない状況。
テレビ等では当たり障りのない話題ばかりで必要な情報を流さず、国民が知らない間に着々と準備は進められ…ある日突然に…
人と一緒に居ても自分向けの情報を手放さず、快楽な映像、中身の薄い情報に溺れる人々。重要な注意を促す人に向けられる冷笑。カメラ付きのヘリコプターなんてドローンだし…
凄いなブラッドベリ!
タイムトラベル出来る方法でも持っていたの?ってくらい今を描いてる!
これは今読んで正解でした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ人類の火星進出を舞台に、人間の(実際はアメリカ人らしいが)愚かさを風刺的に描いた作品。
かつてアフリカやアジアを蹂躙した欧米人を連想させる。
勝てば官軍、ではないが、残念ながら人類は地球で犯した過ちを反省する機会がなかったので、火星でも同じことを繰り返し、最終的には地球は滅びてしまう。
ブラッドベリ(訳者?)の淡々とした語り口は悲壮感は漂わないが、語られる内容はディストピアに該当するのかもしれない。
とても考えさせられるし、血気盛んな政治家は読んだ方がいいのではとも思うのだが、自分個人の評価がぱっとしないのは、単純に好みの問題。淡々としていると言っても、冷静というよりは、人形劇のようなちょっとずれた淡々さで、各短編になんとなく似たような印象をもってしまい、読み終えるのに時間がかかってしまった。
夢中になれなかったとでも言えばいいのか。
一般的にはとても評価が高いのは知っているのだけど。
そんな★3。