レイ・ブラッドベリのレビュー一覧
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ブラッドベリ的とは
SF小説は、未来や宇宙世界に対するワクワク感をもたらすものが多いが、この短編集はちょっと異質。
グリムやアンデルセンが動物を擬人化したように、SF小説においては舞台を未来や宇宙に置いて、時には異星人をモチーフにして、かえって人間の愚かさや面白さを浮き出させている。
収録作品には、宇宙も未来も何も出ず、ただ村人の話なんてものもあるが、まったく違和感がない。
そう考えると、「ブラッドベリ的」ということもあながち「独特な」という意味ではなくなってくる。
特にこの(初期)短編集は、カテゴリーによる「SF」というレッテル貼りが無意味に感じるほど「独特」でありながら、「普通」に面白い -
ネタバレ 購入済み
焚書の広まったディストピア
米国のSF巨匠レイ・ブラッドベリ氏の作品。
本が禁制品となり、本を焼く職業である"昇火士"のモンターグが主人公。
本を焼く立場である彼だが、とある少女クラリスの出会いからモンターグに心境の変化が生まれる。
単純な情報統制としての焚書だけでなく、人に処理できない量の情報の氾濫など、
現代にも通じるテーマも含まれたディストピア物の傑作の一つ。 -
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「世の中に本がなくても困らない」「本を読まなくても平気」な人がいる(このサイトにはいないだろうけど)。そういう人だって情報はないと困るし、ネットニュースやSNSやTVなどで収集しているだろう。この小説で書かれる「書物」と「TV」は情報を得る媒体として何が違うのだろうか? 一つは読書という行為は受け身の人には敷居が高いということにあるのかも。ネットやTVは受け身でも何とかなるが、読書は受け手が何らかの「問い」を持たない限り、行為が発動しないという不親切さがあるのだと思う。この作品で燃やされる書物は、人間の「問い」の直喩であり、その背景にある「知性」のことだと締めくくられている。読む前はもっとシニ
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いろいろ寄り道しながらも、ここ最近でいちばん夢中になれた本。
ラストが
ラストが!
なーるーほーどー!
手法としてはもう在り来りなのかもしれないけど、怖〜。
最初は、謎系のSF感がとても面白くて読ませます。星新一さんみたいに。
なかなか火星から地球に帰ってこない地球人。だのに、翌月も、また夏にも、地球人たちは火星目指してやって来て…
メンタルを損なわれそうなファンタジーが少しずつ短編として連なっていく。
途中私には難解になったり、すごく腑におちたり、バイロン卿の詩が現れたり。。
神父たちが、火星には新しい罪があるのではないかと、ロケットにのっていってしまうという…シュールで詩的な画が浮 -
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昔のSF小説を読むと、人間社会の行く末を的確に予見した知性の働きに驚く。
本が禁止された世界で、焚書官モンターグの仕事は、本を焼き払うこと。人々は本を読み、物事の本質を捉えることをやめてしまい、物事を考えるいとまを持つこともなく、「幸せ」に暮らしている。
しかし、その世界には戦争が迫っている。テレビやラジオは戦争のことを語らず、のんきな人々は「戦争は誰か他の人が死ぬもの」と思い込んでいる。
実は、この世界では、初めに焚書官がいたのではなく、初めには本を読まなくなった人々がいた。
それから、本を忌み嫌う政権が生まれ、人々が惑わされないようにと本を選び禁止していった。
これは2000年代からの -
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ネタバレ「ご存知かな?書物はすべて、ナツメグのように、異国から招来される香料のにおいがします。わしは子供のとき、書籍のにおいを嗅ぐのが大好きだった....」(p.165) ※この一文、自分がナツメグ好きなこともあって、ドンピシャに刺さった。
ディストピア小説で名高いだけあって、文句なしに面白かった!唯々諾々と受動的に生きてきた主人公が、ある少女との何気ない出会いで認識が一変し、自分の正気を保つために行動し...という話。自分が正気=世界が正気ではない、世界が正気=自分は狂気、という0か100かというとんでもない緊張を突きつけられ、人と出会い、一歩を踏み出していく、希望はあるエンディングだった。自分は -
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目次
・霧笛
・歩行者
・四月の魔女
・荒野
・鉢の底の果物
・目に見えぬ少年
・空飛ぶ機械
・人殺し
・金の凧、銀の風
・二度とみえない
・ぬいとり
・黒白対抗戦
・サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)
・山のあなたに
・発電所
・夜の出来事
・日と影
・草地
・ごみ屋
・大火事
・歓迎と別離
・太陽の黄金の林檎
レイ・ブラッドベリと言えば、SF作家でありながら抒情的、ノスタルジックでメランコリーな作風というのがイメージだったし、そういう作品が多いのはもちろんなんだけど、それだけではないことに気づく。
ただ後ろ向きのノスタルジーではない。
かなりはっきりと、行き過ぎた科学至上主義など -
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ネタバレ目次
・アンリ・マチスのポーカー・チップの目
・草原
・歓迎と別離
・メランコリイの妙薬
・鉢の底の果物
・イラ
・子ねずみ夫婦
・小さな暗殺者
・国歌演奏短距離走者
・すると岩が叫んだ
・見えない少年
・夜の邂逅
・狐と森
・骨
・たんぽぽのお酒
イルミネーション
たんぽぽのお酒
彫像
夢見るための緑のお酒
・万華鏡
・日と影
・刺青の男
・霧笛
・こびと
・熱にうかされて
・すばらしき白服
・やさしく雨ぞ降りしきる
読んだことのある作品もない作品も、通して読めばすべて懐かしいブラッドベリの作品になるのはなぜなんだろう。
これらの作品が書かれたころは未来はバラ色で、苦しみ -
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一篇はたった5~6頁ほどですが巨匠ブラッドベリの手に掛かれば彩り豊かな宝石箱のような様相を見せます。22篇が収められた短編集は全体的に明るい作品が多め。そして日本語訳の表現も素晴らしい。もっと注目されてほしい一冊。
『穏やかな一日』
とある画家の絵画に想いを馳せるひとりの男性。バカンス先で起こった奇跡の出会い。一瞬で湧き上がる興奮とその余韻すら楽しめる心躍る一篇。
『メランコリイの妙薬』
娘に舞い込んだ謎の病。この病ばかりは両親にこそ分かり得ない。
『すばらしき白服』
仕事も金もない男たちが“共有”した一着の白服を巡るてんわやんわの大騒動。純白のバニラ・アイスクリームのような、八月の月の -
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本の所持が禁止された世界を舞台に、見つかった本を焼き払う”焚書官”の仕事をするモンターグの姿を描いたディストピアSF。
以前NHKの「クローズアップ現代」で読書について取り上げられているのを見ました。その番組の中の実験で普段読書をする学生としない学生でレポート課題に取り組む際どのような違いが見られるか、ということが実験されていたのですが、それがこの本の内容とシンクロしているような気がします。
モンターグはふとしたきっかけから衝動的に一冊の本を持ち帰り、その本を読み自分の仕事に疑問を持ち始め元大学教授のフェイバーに話を聞きにいきます。
フェイバーが語る書籍のない社会に欠けているも