柄谷行人のレビュー一覧

  • 世界史の構造

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    2024年、最初の本のご紹介は、柄谷行人氏の主著の一つ『世界史の構造』。昨年柄谷さんの『遊動論 柳田国男と山人』を読んで深い見識に触れた。「哲学のノーベル賞」と言われるバーグルエン賞をなぜこの人が受賞されたのか、この本を読んで少し分かった気がする。

    世界の歴史を「交換様式」から説明するその説得力がとにかく圧巻。世界史の教科書はすべてこの考えた方をベースに作り直した方が良いと思うぐらい、世界の見え方が変わる。(教科書は国家の都合が入るので難しいと思うが・・)歴史は学んでいてもつい違う世界を学んでいるような感覚を受けるが、今現在を歴史のつながりの先端として捉えることができる。そして、日本がなぜ今

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    2025年11月20日
  • 倫理21

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    薄い小さな本だけど、柄谷行人が今まで(今も)ずっと問い続けている、他者性と外部性について、講演のようにより日常的なことばでわかりやすく説いている。『トランスクリティーク』や『世界史の構造』等を読んでいて、理解に不安が出てきたらこれを読んでみたらいいと思う。小著だけど、柄谷の問題意識のコアを諄々と説いている貴重な著作。

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    2025年08月23日
  • 力と交換様式

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    成田悠輔さんの22世紀の民主主義と22世紀の資本主義を読んで、どうしてこんなことを思いつくんだろうと感心した。調べると、この本の著者・柄谷行人さんと交流があったらしい。成田悠輔さんに影響を与えた人物かもしれない、といった経緯で本書を手に取った。

    交換様式から生じる観念的な力が、経済的・政治的な諸問題を生み出すという考え方を提示している。交換様式A(互酬)に取って代わった交換様式B(支配と保護)とC(交易)が生み出す戦争と恐慌の果てに、交換様式D(交換様式Aの高次元での回復)が「やってくる」として締めくくっている。豊富で深い学術的知見と、洗練された見通しのよい議論の展開には感動を覚えた。

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    2025年07月11日
  • 憲法の無意識

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    図 p141, 142

    146 『資本論』は、国家の経済政策・税制や国家間の関係をあまり取り上げていないので、そのような要素が前面に出てくる事態には、簡単に適用できない。
     特にマルクス以降の金融資本や帝国主義の現象をうまく説明できない。
     そこで、マルクス主義者は『資本論』を再考・修正する必要に迫られた。

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    2025年02月04日
  • 力と交換様式

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    星6相当

    じんぶん堂 『柄谷行人回想録』より
    16回 その頃僕がよく使っていた“批評”という言葉がある。自分は、“哲学”とか“文学”じゃなくて、“批評”をやるんだ、と。それは簡単にいえば、批判的である、ということです。既存の思考を組み合わせて新しいものをつくるのではなく、既存の思考を成り立たせているメカニズムを解明しようとすべきだ、と考えた。そういう作業がないと、思想は、既存の体制を追認して、そこでできる範囲のことに甘んじることになる。既存の思考体系は、どんなにラディカルなものであっても、それを反復しているだけだと、既存の体制に吸収されて、それを支えるものになってしまう。


    四つの交換様式

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    2024年10月05日
  • 帝国の構造 中心・周辺・亜周辺

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     著者は『トランスクリティーク』以降、マルクスを生産様式ではなく交換様式で、また、カントの世界共和国をベースに、今後の世界の展望を考察してきた。近代国家は、資本=ネーション=ステートの3つの要因を孕んでおり、依然として、これらは強く結ばれている。資本の力が強まると、新自由主義社会となり、ネーション=ステートの力が強まると、国家資本主義あるいは福祉国家社会となる。しかし、これらに囚われている限り、近代を超克することはできない。その為、著者は、資本=ネーション=ステートを超えた社会システム、すなわち、交換様式Dが主力となる世界を考えてきた。本書もその一環として、交換様式A〜Dに触れているが、今回は

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    2024年01月29日
  • 世界史の構造

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    「交換様式」から世界史を見つめ直す。
    主に、カント、ヘーゲル、マルクスの史観と著者の新しい視点を比較しながら、これまでの世界史の流れを再構築し再解釈されていく。
    25歳の誕生日に出会った本だが、もう少し早く読みたかった。でも、いつだって今日が1番若いのだから大人になってからこの本に出会った意味を考えて、今後の人生に投影していきたい。
    私に影響を与えてくれたのは、本の中身ではなくこの本との出会い方なのかもしれないが、私の人生にとってとても大事な1冊となった。

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    2024年01月06日
  • 世界史の構造

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    ネタバレ

    8 資本と国家に対する対抗運動は一定のレベルを超えると必ず分断されてしまう。

    23 貨幣(交換様式C)に基づく力は、互酬性や再分配に基づく力とは異なっている。それは、他者を物理的・心理的に強制することなく、同意に基づく交換によって使役することができる。

    33 産業資本は労働者を搾取するだけでなく、いわば自然をも搾取=開発(exploit)している。しかし、この「人間と自然の関係」は人間と人間の交換関係に根ざしている。ゆえに、人間を収奪する国家が最初にあり、それが自然の収奪に繋がることを見ないかぎり、本質的ではない。

    45 互酬的交換Aが支配的な共同体の種類
    農業共同体、宗教的共同体、想像

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    2024年01月05日
  • 哲学の起源

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    久しぶりに柄谷行人読んだけど、これけっこう面白かったし意外と説得力あった。昔はもっと小林秀雄みたいに独善的なところがあったけど、だいぶ丁寧な語り口になっている。

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    2023年11月23日
  • 世界史の実験

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    「世界史の構造」から深い感銘を受けていたので、深く考えずに本書を購入しました。結論は大変満足しています。毎回思うのですが、柄谷氏の論考は正しい/正しくない、という軸よりも面白さ、あるいは技量で評価すべきではないかと思います。私が思う柄谷氏の面白さとは、思いもよらぬ点を結びつける力です。本書の冒頭では柳田国男とジャレド・ダイアモンドを結びつけておられますが、この2人を結びつけられるのは世界で柄谷氏だけでしょう。その後も素人には予想もつかない分野の思想が新たに結び付けられて、柄谷ワールドとも呼べる立体曼荼羅的な世界観が繰り広げられています。その意味では、あたかもチベット密教の僧侶が多彩な色の砂を使

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    2023年05月02日
  • 憲法の無意識

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    柄谷さんの本は毎回期待しながら読むのですが、今回も期待を裏切らず面白く拝読しました。柄谷さんの本は、書いてあること自体正しいか正しくないか、という視点で読むのではなく、素直に「そう来たか」というところを面白がって読む方が私は好きです(正確に言えば私のレベルでは正しいかどうかなどわからない)。本書は複数の講演録をもとにつくられているので、章の間のつなぎというか、論理展開が飛躍している感じのある箇所もあったのですが、全体的には面白く拝読しました。憲法9条はなにか仏教で言うところのお布施、見返りを求めない純粋贈与であって、純粋贈与に対してつばを吐きかけるような国があれば世界中から非難を浴びる、よって

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    2023年04月30日
  • 世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて

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    柄谷氏の「世界史の構造」(岩波現代文庫)を読んで感銘を受けたので、続けて本書を購入しました。私は「トランスクリティーク」はまだ読んでいないので、そことの比較はできませんが、本書は「世界史の構造」の理解を深めるためにはちょうどよかったと思います。世界史の構造を交換様式から分析するということで、様式AからDまでがあるわけですが、そこの用語は「世界史の構造」から少し変更が加えられていました。個人的には本書の用語の方がしっくりきます。また「世界史の構造」ではよくわかっていなかった点についても本書でだいぶ捕捉された感じがします。よってこれは人それぞれかもしれませんが、難易度が一番低い本書から読んで、そこ

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    2023年04月28日
  • 世界史の構造

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    本屋でふと目につき、あまり深く考えずに購入しました。その意味では本当に偶然の出会いで、お恥ずかしい話著者のこともまったく知らずに「題名が面白そう」ということだけで購入しました。しかし本書は本当に面白かったです。これだけ読み応えのある本は久しぶりでした。世界史をダラダラと時系列に記述している本は巷にいくつかあるのですが、本書はまさに題名にあるように世界史の「構造」ということで、フレームを通じて世界史を分析されています。具体的には交換様式A、B、C、Dという4つの形式から世界史を紐解いていて、私自身このフレームには初めて触れましたがユニークなだけでなく説得力があるとも思いました。2016年におこっ

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    2023年04月28日
  • 力と交換様式

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    交換様式=最も普遍的で説得力のある歴史区分、という感じ。
    普遍的であるが故にそのダイナミズムは追えないが、その事柄の相対的なポジションを意識したいときにはとても役に立つ。
    来るべきDは"A=B=Cの、Aの高次の回復に因る揚棄"によって現れるという点には、環境問題に取り組む身としては賛同できないが、Aの高次の回復が必要なのは今至る所で言われていること。
    自分自身もそこに貢献していきたい。

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    2022年11月23日
  • 柄谷行人対話篇2 1984―88

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    ネタバレ

    極めてハイレベルな対話で、知識の山脈に遭難寸前だったが、知的好奇心は間違いなく刺激される。読む側の興味関心によって目に留まる箇所は異なると思うが、私の場合は“教えることは意図的に出来ない”“文学は何も伝えるものなどない”あたりであった。日々の積み重ねで習得した感覚を言葉で教えることは難しいし、文学から伝わるものはあれど、伝えること前提で書かれたものを文学に分類しかねる感じはなんとなく納得。

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    2022年07月29日
  • 新版 漱石論集成

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    漱石の写生文についての論考に刺激を受けた。
    柄谷は、漱石の写生文がやがて小説に発展すべきものとみる見方を退ける。そうではなく、漱石は近代小説の終わりから出発したのだと。ローレンス・スターンを日本に紹介したのは漱石だが、漱石にとって近代小説はスターンで終わっていた。そのスターンはイロニーが発生する時点に、それと対立する精神態度としてヒューモアを描いた人である。
    漱石がロンドンから書き送った「文」に、まさにこのヒューモアが描かれており、柄谷は次のように評する。

    「これは西洋人のなかに混じって劣等感に打ちのめされているときに、そのように『おびえて尻込みしている自我』に『優しい慰めの言葉をかける』も

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    2021年11月14日
  • 戦後思想の到達点 柄谷行人、自身を語る 見田宗介、自身を語る

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    編者のお二人に対する深い造詣と敬意、鋭い切り口から、お二人の考え、概念を分かりやすく掘り下げながらどんどん引き出してくれています。
    しかも最終章でお二人の鍵概念をつなぎ合わせ、それぞれの思想が混交されていくところが、なんというか、新たな可能性を感じました。

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    2021年10月23日
  • 遊動論 柳田国男と山人

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    遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)
    (和書)2014年02月13日 22:52
    柄谷 行人 文藝春秋 2014年1月20日


    「思考実験=抽象化」ということと遊動性。

    抑圧されたものは強迫的に回帰する。

    柄谷さんの言いたいことを理解しようとそれぞれ考え思考実験(抽象化)してきた人たちにとっては柄谷さんがかなりわかり易い言葉と柳田国男という日本人にとってかなり具体的な例より解説されている。

    今まで自分の中で疑問になっていた部分が氷解されています。

    柄谷さんは人間が思考実験と遊動性をどのように実践していけばいいのか?抑圧された自然状態(遊動性)が強迫的に回帰するということが思考実験とど

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    2020年09月27日
  • 世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて

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    世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて
    (和書)2010年08月30日 22:18
    2006 岩波書店 柄谷 行人


    柄谷行人の言う理念の入門編と言った本らしい。専門家向けにも書いているけれど発表していないって何処かで言っていた。

    貸したら新品になって帰って来た本です。

    今回で4回目になりました。

    自由の相互性というところが大好きです。

    P.S.
    今回5回目の再読だけど、何回読んでも新鮮に読めてしまう。「世界史の構造」「トランスクリティーク」を読んでみて、改めてこの本を読めてとても良いと思う。

    カント 純粋理性宗教 というところ

    1 戦争

    2 環境破壊

    3 経済的格差

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    2020年09月26日
  • 定本 日本近代文学の起源

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    文学的に相当訓練を積まないと、本書を了解していくことは困難だ。しかし、その大意を掴むことができれば、本書が扱う問題に関して、現代にも通じている事情が分かるはずである。キーワードの一つが風景の発見であるが、それは今まで人々が見てこなかった風景を発見するということである。ただ、そうした新たな風景を発見するには、同じく新たな方法を会得する必要がある。明治期は、ヨーロッパ文学の新しい潮流に触れたことで、日本文学の新しい動きが起こり、日本人は風景を発見したと本書は論じる。結びに、そんな近代文学も活力を失ってしまったという。近代文学の革新性は俳諧文学の再構成からも来ており、正岡子規の写生文にせよ、夏目漱石

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    2020年06月25日