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資本=ネーション=国家が世界を覆い尽くした現在、私たちはどんな未来も構想し得ないでいる。しかし本書は、世界史を交換様式の観点から根本的にとらえ直し、人類社会の秘められた次元を浮かび上がらせることで、私たちの前に未来に対する想像力と実践の領域を切り開いて見せた。英語版に基づいて改訂した決定版。
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Posted by ブクログ
2024年、最初の本のご紹介は、柄谷行人氏の主著の一つ『世界史の構造』。昨年柄谷さんの『遊動論 柳田国男と山人』を読んで深い見識に触れた。「哲学のノーベル賞」と言われるバーグルエン賞をなぜこの人が受賞されたのか、この本を読んで少し分かった気がする。 世界の歴史を「交換様式」から説明するその説得力が...続きを読むとにかく圧巻。世界史の教科書はすべてこの考えた方をベースに作り直した方が良いと思うぐらい、世界の見え方が変わる。(教科書は国家の都合が入るので難しいと思うが・・)歴史は学んでいてもつい違う世界を学んでいるような感覚を受けるが、今現在を歴史のつながりの先端として捉えることができる。そして、日本がなぜ今の日本に至っているのかも納得感が深い。 いま起きていることとして、会社辞めて遊動性へ回帰しようという流れが起きる必然性も感じるし、そのために芸術や精神、宗教を今一度見直そうという動きがあることも腹落ちする。アートやヨガ、瞑想が注目を集めるのも時代の要請か。 さて、この本を読んだ私たちは遊動性を取り戻すために何をするのか、また遊動性を維持するために何が必要となるのか、新たな問いが湧いた。
「交換様式」から世界史を見つめ直す。 主に、カント、ヘーゲル、マルクスの史観と著者の新しい視点を比較しながら、これまでの世界史の流れを再構築し再解釈されていく。 25歳の誕生日に出会った本だが、もう少し早く読みたかった。でも、いつだって今日が1番若いのだから大人になってからこの本に出会った意味を考え...続きを読むて、今後の人生に投影していきたい。 私に影響を与えてくれたのは、本の中身ではなくこの本との出会い方なのかもしれないが、私の人生にとってとても大事な1冊となった。
本屋でふと目につき、あまり深く考えずに購入しました。その意味では本当に偶然の出会いで、お恥ずかしい話著者のこともまったく知らずに「題名が面白そう」ということだけで購入しました。しかし本書は本当に面白かったです。これだけ読み応えのある本は久しぶりでした。世界史をダラダラと時系列に記述している本は巷にい...続きを読むくつかあるのですが、本書はまさに題名にあるように世界史の「構造」ということで、フレームを通じて世界史を分析されています。具体的には交換様式A、B、C、Dという4つの形式から世界史を紐解いていて、私自身このフレームには初めて触れましたがユニークなだけでなく説得力があるとも思いました。2016年におこったブレクジット、米国トランプ政権の誕生なども念頭に置きながら本書を読むと、なおさらその説得力の高さに驚かされます。 本書はなるべく読者の読みやすさを意識して書かれているとは思いますが、用語やフレームに慣れないとなかなか読み進められませんが、後半部になるとスラスラ頭に入ってきます。その意味では、もう一度頭から読み直してみると、さらに理解度が深まりそうだと感じましたので、早速2回目読み始めています。
産業資本の本質はあくまで、「労働力の商品化」にある(本書p.319) ここにはカールポランニーの悪魔の碾き臼をさらにわかりやすくしている。土地、資本、労働力(労働ではない)の商品化のうち、土地や資本の商品化は昔からあったが労働力の商品化によって全面的な商品化が可能となる。万物の商品化とウォーラーステ...続きを読むインの指摘とも一致する。 「そして信用とは商品交換の困難をとりあえず超える手段」(p319) 信用創造という機能を銀行が持つこと、それは誰かの借金でなければならないこと。 信用は儚いものである、誰かの借金と誰かの返済能力は労働力商品の評価という会計的に非常に困難な人的価値の評価を含んでいるからだ。価値の評価は難しい。 また恐慌は資本主義の発展に必要だから起こる暴力的な現象で、失敗というより必然であり、必然的に中小の資本家や労働者は淘汰される。320〜321 景気循環をもたらすのは労働力商品に固有の性格。
生産形式ではなく交換形式を捉えることで浮かび上がる資本=ネーション=国家のボロメオの輪の史的発展を描く中盤までの議論はトランスクリティークの深化として納得させられる議論だと感じた。 統制的理念として世界共和国へ向かう展望が述べられる後半部については消化不良感が残る。世界共和国の実現という国家連邦レベ...続きを読むルの視点での発展とそこに生きる個々人の発展は果たしてつながりうるのだろうか?という疑問が最後まで拭いきれなかった。 とはいえ、資本主義をより深く捉えるためには必読と言える本だと感じた。
歴史の本ですが、交換様式という構造で世界史の流れを捉えているのが、興味深い内容でした。歴史上の出来事を断片とせず、背景を様々に考察し、共通項として読み取れることを交換様式というフレームでまとめていくことの面白さ。物量ともに骨のある内容で、通読するのにある程度の時間を要しますが、年末年始という長い休み...続きを読むには良いものでした。
交換様式のあり方から社会の形を紐解いていく。なるほどこうやって世界を見ていく方法があったんだと。世界が一致団結するために何が出来るのか、どのようなスタイルを取っていくのか、この本を通じて考えたい。まだまだ読み込みが足りないので、関連図書をめぐってまた読み直そう。
ある世代にとっての知識人の典型例が吉本隆明であるように、2000年代に人文社会科学を専攻した私のような世代にとってはの典型例は柄谷行人なのではないかと思っている。本書は2010年に出版された柄谷行人の大仕事であり、『日本近代文学の起源』に並ぶ氏の代表作であろう。 2006年に出版された『世界共和国...続きを読むへ』では、近代社会が、資本=ネーション=国家の三位一体により強固な構成体になっていることを指摘した。本書ではその理論をさらに推し進める。その理論の中心となるのは、マルクスの思想を”生産”ではなく、実際に価値が生まれる”交換”に着目(どんな生産物も、それが交換されなければそこに価値は生じず、むしろ廃棄物として余計なコストを産むだけである)する交換様式論である。 この交換様式に着目し、著者は世界史における交換様式と代表的な政治形態を以下のように整理する。 ・A:互酬制(贈与と返礼)→ローマ帝国等の古代社会におけるネーション ・B:略取と再分配(支配と保護)→封建制を採用した国家 ・C:商品交換(貨幣と商品)→大航海時代以降の資本主義 ・D:X この整理学の最大のポイントは資本主義に続く、象限DにおけるXである。A〜Cの象限が実在の概念であるのに対して、このXは未だに実在せず、あくまで理論上の存在であるが、古代社会における交換様式のAが否定されつつも高次元で回帰するものだと説明される。その具体的なイメージは普遍宗教・アソシエーションである。 本書で示されたように交換様式Cの資本主義がアウフヘーベンされて、交換様式Dのアソシエーションが成立するか、と問われればその可能性はほぼゼロであろう。その点で、この思想を空想の産物として否定することは容易い。しかしながら、我々が自明のものとしている民主主義社会というのは、果たして完璧なものなのかと問われれば、もちろんそうではなく、だからこそ、そのプロセスを少しでも目指すべき理念に近づけようと、近代社会は努力を続ける。そういう意味において、交換様式Dの世界が、少しでも我々の現実社会を理想に近づけるための思考の補助線となるのであれば、十分にこうした概念の理論的価値は存在するように思う。
いや、難しすぎて序文であきらめ、ChatGPT に話を聞く。どうやら世界はC型の資本主義が限界に達して D型に移行していくという仮説。人が手段ではなく、目的となる社会。そうなるといいね。そうあるべきなのだろうね。
なんてわかりやすくて、おもしろい本なんだろう。 一気に読み終えました。 柄谷行人は読者へのいたわりがある。 読みやすいということは、自分がもっともよく理解しているということでしょう。
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