【感想・ネタバレ】遊動論 柳田国男と山人のレビュー

あらすじ

「私は柳田論を仕上げることをずっと待ち望んでいた」(「あとがき」より)
既成の柳田論を刷新する衝撃の論考が出現! 柳田国男は「山人」の研究を放棄し、「常民」=定住農民を中心とした「民俗学」の探求に向かった――。柳田は長らくそのように批判されてきた。本書はその「通説」を鮮やかに覆し、柳田が「山人」「一国民俗学」「固有信仰」など、対象を変えながらも、一貫して国家と資本を乗り越える社会変革の可能性を探求していたことを示す。読み進めるうちに柳田の「可能性の中心」がくっきりした像を結ぶ、知的興奮に満ちた一冊。

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Posted by ブクログ

遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)
(和書)2014年02月13日 22:52
柄谷 行人 文藝春秋 2014年1月20日


「思考実験=抽象化」ということと遊動性。

抑圧されたものは強迫的に回帰する。

柄谷さんの言いたいことを理解しようとそれぞれ考え思考実験(抽象化)してきた人たちにとっては柄谷さんがかなりわかり易い言葉と柳田国男という日本人にとってかなり具体的な例より解説されている。

今まで自分の中で疑問になっていた部分が氷解されています。

柄谷さんは人間が思考実験と遊動性をどのように実践していけばいいのか?抑圧された自然状態(遊動性)が強迫的に回帰するということが思考実験とどのように関係すればいいのか?を示している様に思う。

人間を弱者として体系化するのではなく弱者から格差の解消を目指すということ、それは人間の関係にある格差を止揚することを目指す姿勢であるのだろうと思う。それが思考実験としてありえるがスティグマされ不可触民のようにされているものであるが実践として非常に有効なものであると感じた。そういったものが強迫的に回帰するというのは僕のような人間にとって非常にオプティミスティックに感じるところである。

「小さきもの」の思想 (文春学藝ライブラリー)も楽しみにしています。

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2020年09月27日

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柳田邦男の「山人」という今は忘れられた人々のことをテーマに、その人々が持っていた概念を遊動性という言葉から解き明かそうとされています。国家などに所属をしないという点では、遊牧民もそうですが、彼らはそれに所属していなくても依存しています。そうではない、遊動性を持った過去の人はどういう人であったのか、その答えに一番迫ったと思われる柳田邦男の書からそれを知ろうとされています。
現在では、それに近く残っているのは世界宗教もしくは、この日本だけなのではとも思えました。

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2015年09月01日

Posted by ブクログ

柄谷行人は『世界史の構造』を書くにあたって、色々と調べ上げたということだが、柳田国男の遊動論もその中のひとつであったという。それでも、なぜ、今となって柳田国男なのか。

その答えは、彼の交換様式論にとって、柳田国男の遊動民(ノマド)の理論が重要な位置づけを占めていたからであった。二種類の遊動民(その一つが有名な山人)をあり、それが理解の鍵でもあるとする。遊動民と交換様式論の関係について引用すると次の通りである。

「各種のノマド(遊動民)が、交換様式C(商品交換)の発展を担ったのある」そして、「遊牧民は、交換様式Cとともに、交換様式Bの発展を担ったということができる」
さらに「定住以前の遊動性を高次元で回復するもの、したがって、国家と資本を超えるものを、私は交換様式Dと呼ぶ」

そう、『世界史の構造』における交換様式Dが、遊動性に関係しているのだ。

「交換様式Dにおいて、何が回帰するのか。定住によって失われた狩猟採集民の遊動性である。それは現に存在するものではない。が、それについて理論的に考えることはできる」

だが、その後の議論は具体的には進まない。

「彼がいう日本人の固有信仰は、稲作農民以前のものである。つまり、日本に限定されるものではない。また、それは最古の形態であるとともに、未来的なものである。すなわち、柳田がそこに見いだそうとしたのは、交換様式Dである」

と相変わらずの我田引水っぷりで本文を終える。
柳田国男を読んだことがなかったこともあり、ちょっとわからなかったな。

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2016年09月12日

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読書会で取り上げた國分功一郎「暇と退屈の倫理学」で、キーワードだった「遊動生活」。その後に、本書を目にし、タイトルに惹かれたのと、昨年「哲学のノーベル賞」と言われるバーグルエン賞を日本人で初めて受賞した柄谷行人さんの本も読んでみたかったので読んでみることに。期待していたこととは全く違う内容だったが、やはり日本人としては知っておきたい柳田國男という人物についてよく知れた。昭和の動乱の最中に、民俗学という分野をなぜ立ち上げたのか。それは日本という一国を深く知ることによって、共同自助の精神を見つけたかったから。そして遊動的な生活では蓄財が困難であるから、おのずと贈与的な分配が行われるなど、今にも役立つ知識がたくさんあった。この勢いで柄谷行人さんの本をもっと読んでみよう。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

「付論」が、たまたまいま読み始めた、同じ著者の『世界史の構造』の最初の章とほぼ同じことが書かれていて興味深い。この本のあとがきを読むと、最初に付論から読むとよいかも、みたいなことが書いてあって、それせめてはしがきみたいなところに書いておいてほしかった、と思った。ま、『世界史の構造』との重複を考えてそうなってるのかもしれない。『世界史の構造』では抽象化されてわかりにくくなっているものが、この本では具体的なものに仮託されているので、副読本的に有効なのではないか。

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2024年07月18日

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