【感想・ネタバレ】力と交換様式のレビュー

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Posted by ブクログ

交換様式=最も普遍的で説得力のある歴史区分、という感じ。
普遍的であるが故にそのダイナミズムは追えないが、その事柄の相対的なポジションを意識したいときにはとても役に立つ。
来るべきDは"A=B=Cの、Aの高次の回復に因る揚棄"によって現れるという点には、環境問題に取り組む身としては賛同できないが、Aの高次の回復が必要なのは今至る所で言われていること。
自分自身もそこに貢献していきたい。

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

2023年バーグルエン哲学文化賞を受賞した作品である。唯物史観では社会の発展要因を「生産様式」とするが、それに対して作者は「交換様式」の概念で人類の発展を理解するというもので、作者が数十年にわたって温めてきた思考を集大成する異色の人類発展史観である。
人間の共同性を贈与と返礼の互酬概念から考え始めるものであるが、哲学的で抽象度が高い文章が続き、理解しながら読み進めるのに相当の努力が必要である。
最初に、四つの交換様式の定義から始める。A 共同体における「互酬(贈与と返礼)」、B 国家権力にみられる垂直的な「服従と保護(略取と再分配)」、C 市場における「水平的な商品交換(貨幣と商品)」、D 「Aの高次元での回復」である。これら四つの交換様式を歴史的段階で考え、それぞれの段階が通底したり重なったりして社会は進化する。氏族社会(A)-封建社会(B)-資本主義社会(C)へと進み、「人間の意思を超えて到来する」D段階に至る、そこは「資本主義-国家-ネーションを揚棄する」究極の社会である。この交換様式からみた発展段階説はマルクス主義の経済的下部構造の段階説とは異なり、政治的・精神的なものも含み霊的な力の作用も重視する。Aにはマルセル・モースのいう「ハウ」、Bにホッブスが名付けた「リバイアサン(海の怪獣)」、Cにはマルクスが指摘した「資本の物神(フェティッシュ)性」という霊的観念諸力である。
Dの「A段階の高次元での回復」については、究極の理想である共産主義社会をイメージし「原初への回復・ユートピアの到来」として、それは「向こうから自然にやってくる」という、・・・この辺りまでくると殆どついていけない。何とか喰らい付いてきたのに最後の一番盛り上がった肝心なところで振り落とされる、「もう一回よく読み直してこい」と、そして又読む。
世界宗教は既にDの要素があるということや、アソシエーションなどの概念もD「高次元での回復」のヒントになる気がして頷ける部分も多々ある。箇所によっては論理・論証の凄さに共感し感覚が昂ぶることもある。作者はこの作品で哲学思考の可能性を存分に味合わせてくれる。人類の将来展望も示す。マルクス・エンゲルスをはじめヘーゲル、カント、ギリシャ哲学者や歴史的な思想家の成果をベースに組み立てた密度の濃い論考である。
生煮えながら少しわかりかけてきた気もする。読む毎に刺激的な思考の世界に入りつつあるという実感が満足感を増幅させる。

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

恐るべき名著。近年では東浩紀「観光客の哲学」に匹敵するかそれを上回るスケールの哲学書といえるのではないか。

交換様式と「力」について、個々の踏み込みとしては弱いような、もう少し説明がほしいような、また、繰り返しが多いような気はしたものの、世界史を総掴みする壮大な試みには驚いた。

そしてラスト。「向こうから」「Dが必ず到来する」と。その言葉に勇気づけられる。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

呪力(A)、権力( B)、資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する力(D)が、必ず到来する
・・・一冊約400ページを読んでみた(私にとっての)結論が、表紙の内側に記載されていたことばそのまんま、の本でした。

去年くらいから、けっこうまじめに、遠からず、資本主義の次のシステム?社会?が到来する時代を自ら経験することになるのだろうなぁ、、、と考えていて、次にきたるものを考えるヒントになるかも!?と手にしたのだけれど、、、
うーん、私の読解力では、上記キャッチフレーズ?以上の深まりはなかった。
ただ、遠からず資本主義の次の時代が到来する、という思いは、深まりました。

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2023年08月18日

Posted by ブクログ

交換様式Aの高次元での回復であるDをキーワードに、時間や地理を横断しスケールの大きい考察が繰り広げられる。
予備知識として欠落している所もあるので、中々消化するのに苦労した。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

かなり久しぶりに柄谷行人さんの本を読んだ。

最後に読んだのはなんだっけと調べてみると、1994年の「「戦前」の思考」だった。これは出版後すぐ読んだ気がするので、なんと28年ぶりに柄谷さんを読んだことになる。

柄谷さんは、80年代の日本ポストモダーン思想を代表する思想家という印象とマルクスやカントを独自に解釈をする思想家という印象がある。

わたしは、柄谷さんの1978年の「マルクスその可能性の中心」を読んで、それまであまり興味なかったマルクスが「こんなふうに読めるのか!」と驚きファンになった人なので、その発展型ともいえる内容と思われるこの本を見つけ、久しぶりに新刊を買って、読んでみたというわけだ。

が、なんだかスッキリしない。

この本で、柄谷さんは、「資本論」を物神論(フェティシズム)を中心に読むというチャレンジをしていて、それはなるほどの説得力がある。

つまり、経済という下部構造、とくに生産様式が政治や文化などの上部構造を規定するといういわゆる史的唯物論については、その後、ウェーバーをはじめ多くの論者が上部構造が下部構造とは独立して、下部構造に影響することがあるということを指摘してきたわけだが、柄谷さんは、マルクス自身、そんなことはわかっていて、その問題に対するマルクスなりの答えが物神論なのだとする。

柄谷さんは、「マルクスその可能性の中心」において、「生産」ではなく、「交通」とか「交換」という概念の重要性を指摘していたわけだが、その議論を「交換様式」として発展させ、それを「資本論」の物神論につなげるわけだ。

このマルクス読解は、当然に好き勝手にやっているのではなくて、「資本論」の執筆が止まっていた時期のマルクスの関心事などをメモ書きなども参照しながらのもので、一定の説得力がある。(柄谷さんは、マルクスがモーガンの「古代社会」を読み込んでいたことを重視している)

マルクスはこう考えていたかもしれないというここまでの議論は、面白いと思う。(あと、科学的な史的唯物論を一般化した考えられるエンゲルスも、実は宗教的なものをある程度肯定的に議論していたことがあるという話しも面白かった)

が、柄谷さんはここで議論を止めずに、その「交換様式」の議論をベースに、唯物史観の下部構造を「生産様式」から「交換様式」に置き換えて、世界史全体を再解釈していこうという壮大なチャレンジに挑む。

柄谷さんの試みは、人類学などの最近の議論も含めて、さまざまな論者の研究を参照しているのだが、かなり大味なもので、最後は宗教的な予言になってしまうのは、疑問がたつ。(ちなみに、マルクスが参照していたモーガンの議論は、人類学的には、古典ではあるものの、その内容に対する現代の評価はかなり批判的なものであると思う。その辺りのところを柄谷さんは、最近の進化人類学などの研究を使って、補強しているわけであるが、それにしても議論の粗さは否めない)

どうして、晩年のマルクスは、いわゆる唯物史観からは離れた物神論を展開していたという読解をするだけで、話を止めなかったのだろうか?というのが素朴な感想。

つまり、柄谷さんは、マルクスの考えていたことが、ソ連や中国の共産主義とは違うものであることを示しつつ、もう一度、マルクスの原典を読み直し、そこから本当のコミュニズムを生み出そうと呼びかけたいのだと思う。そして、それをカントの「永久平和」と連関させて、未来への希望を打ち立てようということなのだ。

わたしは、いわゆる唯物史観は、キリスト教の黙示録的な歴史観の復活と捉えているのだが、柄谷さんは、それを明らかにつつ、それを批判するのではなく、肯定しているようなのだ。

最近のマルクス解釈としては、斎藤幸平さんが、やはり「資本論」以降のマルクスにエコロジーの思想を見出していて、これも面白かったのだが、斎藤さんもマルクスはこう考えていたのかもしれないというところで止めずに、そこから今の世界への批判に直接に議論を進めているように感じた。(柄谷さんほどではないが。。。)

こうした新しいマルクス解釈が現在の世界に一つの視点を与えてくれるというのはいいのだけど、それ以上のことになるとマルクスはやっぱ昔の人なので、今の時点で、そこから直接的に世界を理解するには、やはり無理あるのではないか、と思うわけである。別に、私はマルクス信者ではないので。

となんだかモヤモヤしたのは、「「戦前」の思考」を読んだ時の感覚に近い。

そして、このモヤモヤは、インテグラル理論やティール組織の社会の文化的な進化というコンセプトへの疑問にも通じる。

なんらかの演繹的な理論をベースに歴史全体を解釈して、それを未来に投影することの危険性を柄谷さんがわかってないはずはないのだけど。。。

と批判的になっているのだが、彼の議論の展開を30年くらいフォローしていなかったわたしは、柄谷さんがなんでこんな議論をしているのかが知りたくなっている。

とりあえず、マルクスとカントを柄谷さんが新たに読解しているらしい「トランスクリティーク」を読んでみようかな?

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2022年10月21日

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