柄谷行人のレビュー一覧
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神さま、ご先祖さま、ありがとう!
私たちは
これまでの無窮の時間を紡いできた見えなくなった先人達と、
有機的なつながりを持って、親しく関わって今を生きているのです。
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本居宣長が見出した「古の道」は、
「作る」「作為」ではなく、「なる」ということ、「自然(じねん)」。
日本神話においては、中国と違い、宇宙や国を「つくる」という要素が存在しない。
「うむ」「なる」という要素が強い。
神道は理論ではなく、事実、人間が現実に生きている有様に見出されねばならないとし、
宣長は古の道を古事記に見出した。
古事記や日本書紀は大和朝廷による国内統治の正統性を示すものであった。
中国で -
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産業資本の本質はあくまで、「労働力の商品化」にある(本書p.319)
ここにはカールポランニーの悪魔の碾き臼をさらにわかりやすくしている。土地、資本、労働力(労働ではない)の商品化のうち、土地や資本の商品化は昔からあったが労働力の商品化によって全面的な商品化が可能となる。万物の商品化とウォーラーステインの指摘とも一致する。
「そして信用とは商品交換の困難をとりあえず超える手段」(p319)
信用創造という機能を銀行が持つこと、それは誰かの借金でなければならないこと。
信用は儚いものである、誰かの借金と誰かの返済能力は労働力商品の評価という会計的に非常に困難な人的価値の評価を含んでいるからだ。価 -
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2016年度、H大学にいたときに受けた授業のテキストだった。先生は柄谷行人の弟子だったらしく、ゴシップ満載だった。もっとも哲学科の専門科目ではなく、私含めて学生は哲学の知識がなかったから、中身を読み進めるのではなく序文の最初の30ページくらいをいったりきたりしつつ哲学史を総ざらいしていた。通年で30回の講義で、シラバスは全部読み切る予定で書いてあったのだが… のちに一応なんとか通読して、『世界史の構造』も読んだのだが、さっぱりだった。しかし、哲学とか思想の世界にグワーッと惹き込まれた、講義とともに思い出深い1冊。
まあ、各々の議論が学問的にOKなのかどうかは全然わからないのだが、知識をつけつつ -
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某国公立大の現代文の入試問題で引用されていたのが記憶にあった。
五十歩百歩の中にも、五十歩の差異は「絶対」としてある。
我々は絶対的視点から罪人であることに置いて同等であり、そこに相対的な見方は意味を成さないが、「ドングリの背くらべ」の小さな差異はやはり厳然としてあるということか。
人間の中にある根源的な罪や悪について考えさせられる。
自由とは何か。
ただ他者の欲望を自分の欲望とした自由は自由ではありえない。
私たちの考える自由は本当に自由かといえば他律的な自由でしかない。
責任とは何かという問題。
子の犯罪の責任は親にあるのか。世間は自分に利害がないのに責任を取って死ねと暗黙的に -
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文体というものにさほど注目してこなかった自分にとって、たとえば言文一致のような仕組みが私たちの文化に影響を与えてきたという指摘には軽い衝撃を受けた。「言葉の書き方など本質には関係ない」というようなナイーヴな主張はもともともっていなかったし、むしろ文体が内容を決定づけるところがあるという程度のことは思っていたが、それでも、である。
著者があとがきで示しているように、この本は決して文学史の本ではない。文学という素材を使いながら、その時代の思想の特異性を明らかにしようとしているのが本書である。ここで文学が用いられているのは、文章の変化がもっとも速く、バラエティに富むという性質に由来しているに過ぎな -
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60年代の安保闘争に参加し、現在は脱原発のデモに参加する柄谷行人。本作は、インタビュー形式で、柄谷氏の思想と実践を紐解きつつ、日本のあるべき姿を考えている。
日本が専制国家である理由とは。
国民が主権者であるといっても、どこにも明確な個人は存在しない。正体不明の視聴率と支持率があるだけだ。与えられた候補者、政党から選ぶことは、本当に政治的な参加と言えるのか?モンテスキューは、代議制とは、貴族制ないし寡頭制だという。そして民主主義の本質は、くじ引きにある、と。つまり行政における実際上の権利において平等であるということだ。
そして、個人が主権をもった主体として存在するためには、直接行動、すな -
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ネタバレ「トランスクリティーク」と、「世界史の構造」の概念を分かりやすくまとめられた一冊。
ネーション→国家→資本と生まれ、それが互いに連関し合っている状態。資本主義がどのように生まれて発達していったかを、前半にて解説されています。そして資本主義に発生する問題より(不平等的なものかと私は感じました)脱出するためにアソシエーションという運動(社会主義など)が発生。
その発生したものの代表として、マルクス(社会主義)とカント(国際連合)を出し、どちらも問題を起こしたし、起こすだろうし、正しく導くための考察を最後に問題提起されています。
現代史というものを、もっと真剣に見る必要を感じ、目を覚まされた本 -
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帯の通り「柄谷行人入門として最適な一冊」。
語り起こしなので、読む上での難易度が低い。
「反原発」。それだけを心情として決定してはいても、理的なよりどころのない自分には、骨を通してくれる一冊だった。
日本はなぜ原発を持つのか。
原子力の平和的利用、石油が枯渇する危機感、炭酸ガスによる温暖化……。
その理由が次々と変わってきた一連のあり方が、ブッシュ政権時のイラク戦争と同じであることを指摘したのち、
「真の動機は核兵器を作ることにあると思います」
と語っている。
また自然エネルギーへの転化、という「脱原発」側のお題目についても柄谷は手厳しい。
「……まるで、まだ経済成長が可能であるかの -
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ネタバレ本書は、端的に言えば、著者である柄谷行人が目指そうとしている「世界共和国」という在り方への道標を、丁寧なテクスト読解を通じて示したものである。世界共和国は、哲学者のイマヌエル・カントによる永遠平和の理念に基づいている(cf. イマヌエル・カント「永遠平和のために」)。つまり、世界共和国というのは、今の「国家」(著者の言葉でより厳密に言えば、「資本=ネーション=ステート」)という体制が抱えている問題を乗り越え、人類の永遠平和を目指すために考えられた体制なのだと言っていいだろう。
世界的な永遠平和は、「国家」間の敵対状態を解消しなければありえない。柄谷によれば、カントの理念を突き詰めていくと、 -
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ネタバレ東浩紀が『思想地図β』にて、文学は村上春樹などによって更新されたが、批評は柄谷行人『日本近代文学の起源』で更新が止まっている、と書いていた。随分と刺激的な暴言だ。柄谷行人にはその後『トランスクリティーク―カントとマルクス』、『世界史の構造』などの著書があるが、マルクス主義化した後の政治的思想家柄谷行人の仕事は、ばっさりと切り捨てられていることになる。政治を語ることに意味を見出していないオタク思想家東浩紀なりのはったりだが、僕も東の意見に賛成で、『日本近代文学の起源』の頃の柄谷の方が、政治化した後の柄谷より好ましい。というわけで『定本 日本近代文学の起源』。
日本近代文学は、ヨーロッパの近代文 -
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今年のベスト候補だな、こりゃ。すんげー分かりやすい。だけど、これって真面目に勉強している学生にとって大部分は普通に知っていることだったりして。一応、資本主義の自由と国家社会主義や共産主義の平等の両立を目指すアソシエーショニズムについて書いた本。mixiで長く書いたから説明は以上で終わり。思想的にはマルクス(実践で失敗)とカントが正解らしい。んで、9条護持と。他のいろんな人の考えがどうダメか、っていうのを順に説明していくのが面白い。分かりやすい。あんまり引っかかる部分がなかったんだけど、無学な俺はこれを鵜呑みにしていいかどうかが分からん。ただ理想でそこに目標を持つべきってのは分かるんだけど、日本