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明治20年代文学における「近代」「文学」「作家」「自己」「表現」という近代文学の装置それ自体を豊かな構想力で再吟味した論考.文学が成立して思考の枠組みになる過程を精神史として描いた.「西洋の文学批評に根源的な衝撃を与えるだろう」(F.ジェイムソン)と評価された古典的名著を全面的に改稿した決定版.
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Posted by ブクログ
文学的に相当訓練を積まないと、本書を了解していくことは困難だ。しかし、その大意を掴むことができれば、本書が扱う問題に関して、現代にも通じている事情が分かるはずである。キーワードの一つが風景の発見であるが、それは今まで人々が見てこなかった風景を発見するということである。ただ、そうした新たな風景を発見す...続きを読むるには、同じく新たな方法を会得する必要がある。明治期は、ヨーロッパ文学の新しい潮流に触れたことで、日本文学の新しい動きが起こり、日本人は風景を発見したと本書は論じる。結びに、そんな近代文学も活力を失ってしまったという。近代文学の革新性は俳諧文学の再構成からも来ており、正岡子規の写生文にせよ、夏目漱石にせよ、俳諧のカーニバル気分を受け継ぐものであるという。つまり、江戸時代に多数人が集まり、句に句を付け足していく連歌を楽しみ、人々に開いて祭りのようだった、その気分がカーニバル気分である。翻って、私が行う、和歌の再構成や日記文学の再興、批評の立ち上げなど、それがカーニバルになるか、私も分からない。とはいえ、本書の視点は重要であった。
文体というものにさほど注目してこなかった自分にとって、たとえば言文一致のような仕組みが私たちの文化に影響を与えてきたという指摘には軽い衝撃を受けた。「言葉の書き方など本質には関係ない」というようなナイーヴな主張はもともともっていなかったし、むしろ文体が内容を決定づけるところがあるという程度のことは思...続きを読むっていたが、それでも、である。 著者があとがきで示しているように、この本は決して文学史の本ではない。文学という素材を使いながら、その時代の思想の特異性を明らかにしようとしているのが本書である。ここで文学が用いられているのは、文章の変化がもっとも速く、バラエティに富むという性質に由来しているに過ぎないのだろう。 また、あとがきを読んで、僕もあずまんよろしく「批評家」になってみたいなと喚起させられるところがあった。今はこの本が書かれた当初に比べ、ポストモダン的思想もだいぶ落ち着いて(というか浸透して)いるだろうけれども、それでもこの本の持つ魅力はまだまだ衰えてはいないように思う。 それにしても翻訳が英語、ドイツ語、中国語、韓国語であるのはすごいな。こういう本を書けるようになりたひ。
タイトル通り、文学におけるあらゆる概念の起源を問う一冊。 引用が多く内容も難しいため半分も理解できた気がしないが、自明と思われているものの転倒を疑い、そこから正しい起源を求める鋭い手法の鮮やかさはこんな自分でも感じ取ることができた。 何度も再読する必要がありそう。
起源はいつの間にか忘れ去られて、ただ形式だけが残ってしまうから怖いよねーということを何度も何度も繰り返し例を挙げて説明して下さっているご本。 という失礼すぎる説明しかつけられないほど、難しい! というか…正直分かりにく…い… 例そのものはとても面白いです。 脚注が多すぎて混乱しちゃうのは私の頭の悪さ...続きを読むが問題です。 近代やるなら必読書って言われてる意味がよくわかる本です。
正直に言うと、ほとんどよく分からなかった。 でもそれは私の背景知識と読解力の不足によるものだと思う。 しかし、第5章「児童の発見」はよく理解できたし、非常に鋭い考察だった。 「子供」という概念は,近代に生まれたモノであるという趣旨の論には胸を打たれた。ここだけで星4。 また文学関連の知識を身につけ...続きを読むた時に、他の章もきちんと読み直したい一冊だった。
これはとんでもなく素晴らしい構成の本ですね。最初にどどーーーんと「風景の発見」から「内面の発見」をブチ上げて、元来あった日本の文芸批評の読みを批判し、そこから告白・病・児童などの各論で、最初にブチ上げたことを精査しながら補足し、説の正しさを裏付けていく。あまりにクリアだな〜としみじみとした。そして、...続きを読む児童の発見の章がとても面白かった。ここに述べられている成熟について私は考えたいのだなあ。
なんとなく20年くらいぶりじゃねえの。という感じで再読。 近代文学史を相対化するねらいがあったのに、近代文学史として読まれてしまった不幸がこの本にはあったと言われているけど、改めて読み返すと、近代文学に関する記述はかなり手薄で、ディコンストラクション以降の「現代思想」の概説的な記述にかなり割かれて...続きを読むいるという印象を持った。その意味では、時代の産物ではある。 「遠近法」というキータームは、柄谷先生の影響で人文系でかなり流行ったわけですが、これってかなりロジックをすっ飛ばした比喩なんじゃねえかな、という気もした。 とはいえ、ここ3、40年の人文科学の流れの中で、この本の果たした役割の大きさは間違いないでしょう。
現代からするとあたかも自然と存在していたかのような近代文学の事象に、豊富な引用とともに考察がなされている。文学の存在に何かしらの疑問を持っているなら読みごたえがあるだろう。
しっとりとして、選び抜かれた的確な言葉で主張を論証していく論文として、その美しさ、端整さに恐れおののく。
風景や内面など、今では当たり前だと思いがちな要素は、実は明治時代以降の制度や明治20年前後に発生した言文一致運動によって誕生したと著者は指摘する。言文一致に関しては、語尾と主語の関係、「彼」、「彼女」、「私」という表現の役割を本書では語られている。また武士の支えであった「武士道」の理念が封建制にお...続きを読むいて有効であったこと、明治の没落士族とキリスト教の関係についての面白い指摘をする。いずれにせよ、昔から存在した思われるもののなかに、実はある時代を境に制度化されたものだと著者は読者に教える。
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定本 日本近代文学の起源
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柄谷行人
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