染井為人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
社会問題となっている引きこもりを、ブラック支援企業の存在を通して描いた物語。
ブラック支援企業により、監獄のような施設に軟禁された引きこもり5人。作中では、引きこもり自身だけでなく、引きこもりを抱える家族其々の心の有り様やその心理を巧みに利用した企業の悪どいビジネス商法が描かれる。
暗くて救いのない内容に時折心が折れそうになるが、染井さんお得意の疾走感と、個性豊かな登場人物達のおかげで、一気読みするほど夢中になった。
偶然に生じた事件により、5人の間に絆が芽生え始め徐々に引きこもりを克服したかのように見えたのはよかったが、そう簡単にはいかないのが人間の難しさ。
物語の鍵となる隊長が、自ら断食を続けたなかで辿り着いた心境が、胸に刺さる。
一方で、ブラック支援企業が、純粋な支援事業から、なぜ変貌してしまったのか。
その理由には人間の弱さと愚かさを感じた。
終盤の先の見えない展開のなかで希望を感じられるラストだったのは大きな救い。
ただ、引きこもりに限らず、人間の心の闇は根深い。
作品の面白さもだが、他人事ではないと読者に問題提起を感じさせる点でも大成功の作品だと思う。
余談だが、突如始まったカタカナニックネームが面白過ぎた。染井さんの緩急のセンスが光っていた。
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Posted by ブクログ
◼︎総括
・複数の話が並行して進む構成で、それぞれが読みやすく、人物・エピソードともに個性が立っている一冊。
・終盤で全ての線が合流する形を取るが、統合の必然性や驚きは薄い。
◼︎良かった点
1. 並行する複数の話が等しく読みやすい
・どの筋も文章・展開ともに負荷が低く、視点が切り替わっても混乱せずに追える。
2. 人物・エピソードの個性
・登場人物それぞれに特徴が与えられており、各話が独立した読み物として成立している。
・エピソード単位での多彩さが、通読の飽きを防いでいる。
◼︎気になった点
1. 合流の必然性が弱い
・終盤で全ての話が接続されるが、それらが一つに収束する必然性が見えにくい。
・短編を後から連結したような印象が残る。
◼︎向いている読者
・短編集的な構成で、多様な人物とエピソードを気軽に味わいたい人。 -
Posted by ブクログ
物語の舞台は『ベルドゥムール板橋』という築30年超えの集合住宅
このマンションに住む女性たちが、ある事件をキッカケに運命共同体となり、綱渡りで危うい修羅場に何度も遭遇していく。
何を書いてもネタバレになりそうなので…
詳細は避けるとして、本作の見所はそのエンタメ性の高さだと思う。
あらすじは、序盤から何となく透けて見えるので、結末の意外性は低い。けれど、これも染井為人さんの作戦だと感じた。起きている事象は物凄く残酷で卑劣なのに、計画性の低さや杜撰さにハラハラしながら、何故か共犯者になった気分で読み進めてしまう。
集合住宅で、日々そこに住んでいる住民が抱える闇を浮き彫りにしながらも、滑稽さを交えて時に痛快に進んでいく物語は、テンポ感もよくとても面白かった。って、不謹慎かな…
エンタメ感は、『正義の申し子』に匹敵するレベル!
願わくば、エピローグに、「あの人」視点の語りが欲しかった。そこは、ご想像に…ということかしら♪
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Posted by ブクログ
ネタバレ平凡な日常が、ほんの少しの歪みから音を立てて崩れていく恐怖に足がすくんだ。
『正体』や『悪い夏』の染井為人らしく、人間の愚かさや負の側面を一切の容赦なく描く手腕が今作でも遺憾なく発揮されている。舞台はどこにでもある普通のマンション。そこで夫やパートナーに悩みながら暮らす3人の女性たちの姿はごく等身大で、最初は深い同情と共感を覚えながらページをめくっていた。
しかし物語が進むにつれ、日常の裏に潜む悪意や狂気がじわじわと平穏を侵食していく。著者は私たちが普段見ないふりをしている「悪い想像」の領域へと容赦なく踏み込み、普通の人間が蟻地獄のような沼に落ちてもがく様を絶妙な俯瞰の視点で見せつける。いつの間にか自分も逃亡劇に加担しているような恐ろしい緊張感に包まれ、ページを繰る手を止められなかった。
そして物語の終盤、これまで積み重なっていた小さな「違和感」が一気に線となり、想像を超えるラストへと結実する。すべての前提がひっくり返るようなその展開には、まさに背筋に冷たいものが走った。身近だからこそ余計に恐ろしい、圧巻の人間ミステリーだ。