染井為人のレビュー一覧
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ネタバレケースワーカーである主人公が、ひょんなことから社会の闇に巻き込まれ、自分がかつて軽蔑していた生活保護受給者の立場へと転落していく物語。立場の逆転を通して、福祉や貧困の現実が容赦なく描かれており、非常に考えさせられる内容だった。
物語としては、すべての登場人物がどこかで繋がっており、それぞれの視点が絡み合いながら進んでいく構成が見事で、自然とページをめくる手が止まらなくなる読みやすさがあった。
一方で、題材の重さゆえに気分が沈む展開も多く、読んでいて苦しくなる場面も少なくない。特に、主人公が薬物の禁断症状によって正常な判断ができなくなり、本来支援すべき母子家庭に対して十分な対応ができず、結果 -
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ネタバレ2022年にWOWOWだったかで亀梨和也さん主演でドラマ化された時に原作を読んでから…と思っていたものの放送に間に合わず結局読まずにいて…昨年横浜流星さんで映画化された際に次こそは…と思ったのにこれまた劇場公開中に間に合わず…笑
遅ればせながらやっと読み終えました。
こちらは文庫版なので著者の染井さんの後書きがあり、「読者の方から"鏑木を殺さないでほしかった"という声をたくさんいただいた。自分としても殺さない結末も考えたけど、現実はそう簡単ではない」みたいなこと(うろ覚えですみません)を仰っていて…確かに現実には冤罪で何十年も塀の中で過ごさざるを得ず晩年にやっと罪が晴れた人 -
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ネタバレ酷い冤罪の話だった。特に警察と司法の動きに問題がありすぎて現実ではここまで酷くはないことを願わずにはいられない。
後書きで作者は冤罪がテーマである以上鏑木には死んでもらうしかなかったという旨の発言をしているが、個人的にはそれでもやはりこの結末には疑問が残る。彼が冤罪の為に既に多くのものを失ったことは読者も既に分かっている。おまけに再審の判決が何年後のことか記載されていないが、数年が費やされたことは間違いない。10年あるいはもっとかかっているかも知れない。彼が生きていたらその間拘留が続いていたのだろうか。脱獄の実績があるだけに完全な自由は決して与えられなかっただろうと思う。貴重な若い時期を奪われ -
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前半はしんどかったけど、後半は映画のシーンの様なエンタメ展開となり面白かった!
この本を読んで、日本社会の「普通でいなければいけない」という同調圧力の強さを感じた。秩序が保たれる一方で、一度そこから外れた人が復帰するのは難しく、孤独化する。
特に印象に残ったのは母親との関係。
「何とかしてあげなければ」と過度に介入する母親と、「親を安心させたい」と自分を後回しにする息子の姿は非常にリアルだった。
愛情が必ずしも本人のためにならず、かえって状況を長期化させてしまった様に思える。母親が強制的にでも息子を外に出す決断をしたことは、結果的に状況を変えるきっかけとなり良かった。
また、ひきこもり -
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8組の夫婦と一人のシングル男性の物語が、9編の短編で構成されている。
結婚生活を続けることに限界を感じた8組の夫婦の問題が描かれている。
どれも面白い9編の短編中、私のお気に入りの物語3編を敢えて挙げると⋯
⚫︎プライドは富士山
妻から突然「好きな人ができたので離婚してください」と、夫は一方的に告げられた。
妻は幼馴染のレストランシェフと再会し、一緒になると言う。
腹立たしく思った夫は、シェフの元にゴルフクラブを握りしめて抗議に向かう。
⚫︎交換日記
仕事ができない夫は早期退職を迫られて会社を辞した。
何事にも消極的だった夫は家に閉じ篭もるようになってしまう。
そして自室で一日中、プラモデル -
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この作品の面白さを際立たせているのは、各章が19歳の僚太と、44歳のひきこもりの息子を持つ母・幸子の視点で交互に展開していく構成。
視点を変えることで読むほうのスイッチも切り替わり、物語に深みを与えている。
単なるミステリの枠に留まらず、人間の心の最も暗く、それでいて切実な部分をえぐり出す描写には圧倒された。
特に「働きアリ」の法則という言葉には、ある種の冷徹な真理として納得せざるを得ないものがある。
ひきこもりを続けている人も、本当は外に出たいはずだ。仲間を得て、外で必要とされて、生きている実感を得たい。そんな根源的な欲求が、悪徳業者による連れ出しという「最悪のきっかけ」によって引き出さ -
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ネタバレ人は間違える。他人の人生を左右する程の選択でさえも。間違えること自体よりも、間違いを正す機会を得られない事の方が問題だと思う。皆他人を許して他人に許されて生きているから。
周りに散々否定されながら、自分だけは自分の真実を見失わなかった鏑木。私だったら無実の罪で追われるくらいならいっそ死んでしまいたいと思ってしまう。疲れる。自分の誇りを失わない信念が彼を生かし続け、その信念を受け入れた人間だけが彼の正体に触れられる。自分を疑い続けて人生のどん底に突き落とした他人が憎いはずなのに、その他人に自分を認めてもらうために人生を捧げる。切ない。
冤罪だと認められる前に殺されてしまったのは、とてもやる