染井為人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
まず、読みながら一番に思ったのが、この物語の構成だった。
とても上手く組み立てられているなぁ、と。
鏑木慶一の脱獄からの逃亡生活の物語である。
たくさんの人と関わり、その中で絆が生まれていく。私も引き込まれてしまった。
どんどん読み進めることができるぐらい、描写に臨場感がある。
読んでいる私まで、鏑木慶一に感情が入ってしまって、心が辛くなる気持ちさえ持った。
雪山で死のうとした渡辺淳二とのシーンでは、本当に切ない気持ちになった。鏑木慶一はどんな気持ちで生きてきたのかが窺える場面、そして彼の優しさと強さ、温かさを一番感じられた。
警察に追われ、切迫した場面は私までドキドキした。
登場人物たちの葛藤も上手く描かれていた。
最後はなんか納得出来ない部分もあるが、著者の「あとがき」を読んで、流石!と思った。結末があれでなければならなかったのか、と。
人の人生、社会の問題、信じる強さ、温かさや優しさ、時には腹立たしさ…色んな気持ちにさせてもらえた一冊だった。
そして、現実問題として「冤罪」こそが罪であり、悪だと感じた。
人の人生まで理不尽に取り上げられる、恐ろしくて憎むべきもの。
つくづくそう感じた。 -
Posted by ブクログ
現在の日本が抱える社会問題に切り込んだ内容で、とても興味深く読みました。
特に印象に残ったのは、「ひきこもり」という、実は意外と身近にある問題です。最近では「知人の家族がひきこもっている」といった話を耳にすることもあり、決して遠い世界の話ではないのだと感じます。
この作品では、ひきこもる本人が抱える葛藤だけでなく、その家族が何を考え、どう向き合っていくのかという苦悩も、とてもリアルに描かれていました。読んでいると、著者がこのテーマについてかなり丁寧に取材を重ねたのではないか、と感じる場面も多くありました。
そして、ひきこもった人たちがどのように社会とのつながりを取り戻していくのか、そもそも「社会に戻る」とはどういうことなのか。そんなことについても考えさせられる作品でした。
終盤はテンポよく物語が進み、私はAudibleで聴きましたが、最後まで一気に楽しむことができました。
純粋にミステリーや小説としての面白さだけを求めるのであれば、ほかにも選択肢はあるかもしれません。
でも、この作品の魅力はそこだけではなく、「ひきこもり」という現代日本の社会問題を、小説を通して私たちに考えさせてくれるところにあると思います。
社会問題を扱った作品に興味がある方には、ぜひおすすめしたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ展開が早くて、文章もうまくわくわくしながら最後まで読んだ。
この著者悪い夏に続いて面白かった。
最期終わり方はごちゃごちゃっと進んだが僕はこんなのも好きだ。
<書評より>
結婚アドバイザーを務めるシングルマザーの亜紀は、
クレーマー会員とトラブルを起こして以来、悪質な嫌がらせに苦しんでいた。
息子が通う小学校ではクラスメイトが誘拐される。
担任の祐介は対応に追われる中、
クラスの秀才・莉世から推理を聞かされる――「あの女ならやりかねない」。
その後莉世も何者かに襲われ意識不明に。
亜紀と祐介を追い詰める異常犯罪の数々。
街に潜む“化け物”は一体誰なのか? -
Posted by ブクログ
誰がどうすれば良かったのかわからない、正解のない問題のような物語でした。
他人のことを信じることが難しいのはもちろんのこと、時として自分すら信じられないこともあると。
とはいえ人は、知らないこと、わからないことを恐れて排除しようとし、分かりやすく納得しやすい手頃な理由があればそれを真実のように思ってしまうことも存分にあります。
気を付けて避けられるものでもないですが、加害者にも被害者にもなりたくないものです。
理不尽や不条理は当たり前のように転がっていて、それに見舞われたとき、自分ならどうするか。
どんな結末になろうとも自分だけは己のことを誇らしく思えるように生きたいです。