あらすじ
東日本大震災で被災した三陸沖の島に現れた復興支援のプロ・遠田政吉。行政の支援も届かない地獄で救助、遺体捜索などに奔走し、救世主として信望を得るが、のちに復興支援金の横領疑惑が発覚する。島出身の新聞記者、菊地一朗が疑惑の解明のため遠田の過去を探り始めると、そこにはおぞましい闇が――。けんご氏の激推しと映画化決定で再注目の『正体』、『悪い夏』で大ブレイク中の著者が放つ骨太の社会派ミステリー!
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Posted by ブクログ
2011年3月11日の東日本大震災を舞台に、生き残った人々と彼らを助けにきた「復興のカリスマ」との10年を何人かの目でつづる。
大震災の日に島で生まれた千田来未、新聞記者の菊池一朗、災害ボランティアの椎名姫乃、来未を出産で取り上げた堤佳代、時系列が行ったり来たりしながら復興支援金横領事件を物語る。
私たちも報道で目撃した凄まじい自然災害の中、この物語のような事件は大なり小なりあったのだろう。
そして本当の悪人以外にも、生き残るために良心を捨てた人もいたのではないか?
そういう人たちを私は糾弾出来るのか?
そんな時に良心を持ち続けるためにはどうしたらよいよかあ?
色々考えさせられました。
残念ながら悪人は必ずいるのだから。
匿名
とても辛い内容でした。
震災で悲しい思いをしている人達に、さらに酷い事をする人間がいるなんて悲しいし、怒りが湧きました。そんな人間がいるのは悲しいけれど真実で、そんな人達は許してはないないと強く思いました。
Posted by ブクログ
『わだつみ』とは日本神話の海の神のこと。
そんなタイトルのこの小説は、東日本大震災後に実際にあった『NPO団体による復興資金横領事件』をモチーフとしているフィクション。
岩手県の架空の島・天ノ島が舞台になり、震災後の動乱につけこみ復興支援に現れた遠田と名乗る男が島民の心に入り込み、信頼を得、権力を手にして大金を動かすようになっていくさまが実に衝撃的でリアルだった。
またボランティアとして現地に滞在した女子大生の行動や体験を通じ、読者も被災地の惨憺たる有様や、被災者の感情などを追体験するが、やはり実際はもっともっと言葉には表せないものがあるはずだ。
1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災、今年の元旦の能登半島地震…幸いなことにいずれも僕はもちろん、親族や知人も失っていない。もしも、自分の身に直結する被害があったとしたら、この小説がもっともっとリアルに迫ってきただろうと思う。
震災直後、2年後、10年後の時間軸で章立てになっているので、少し頭の整理をして読まないと、前後がよくわからない。
結果、海や海の犠牲者たちを汚した者には神の鉄槌がくだる…めちゃくちゃ引き込まれた。
染井為人の小説にハズレはないな。
Posted by ブクログ
大好きな小説家の1人、染井為人さん。
『海神』は、震災を元に描かれた話でした。
とにかく、胸をグッと掴まれるような苦しい作品。
東日本大震災を元に描かれた作品で、それぞれの人の想いに焦点を当てる時、とっても苦しかった。
私は当事者じゃないけど、震災にあった方の気持ちになればなるほど苦しくて、気づいた時には目に涙が溜まっていました。
相変わらず読みやすくて、想像しやすい染井さんの作品。また1つ心に残る作品となりました。
Posted by ブクログ
自己肯定感の低さを人助けによって補おうとするメサイアコンプレックス。支援者側が救世主的・英雄的にふるまうことで、被支援者側は相対的に立ち位置が下がり支援側に盲信的にすがってしまうことを言うらしい。この連鎖で絶対的な立場の差が出来上がり、ついには支配するもの・されるものの関係に陥ってしまう。遠田と天ノ島の島民との関係はまさにこれに当てはまるだろう。遠田の横領は、島民から向けられる信頼と期待に虚栄心・承認欲求・ヒロイズム志向が満たされた結果、これだけ島民のために尽力しているんだから少しぐらいいい目を味わってもばちは当たらない、ぐらいの気持ちからエスカレートしていったものではないだろうか。
また、東京では何者でもない、ただの学生であった姫乃も、天ノ島では一転、「地獄に舞い降りた天使」と称えられ、遠田からは復興に必要不可欠な存在、と重用される。島民たちに心から寄り添いつつも、うすうす気が付いていてなお遠田の横領に加担し続けた根底には、自分の存在価値を認めてくれる、評価してくれる人を悪人と認めることは、自分の価値も同時に曖昧なものになってしまう、という気持ちがあった。
そして、アレキシサイミアの江村。感情はあるが、その感情に自分で気づくことが難しく、感情をうまく言語化できない、というその特性ゆえに孤独で、どんな形であれ求められることでしか居場所を見出すことができない彼が、生きていくために遠田の言うままに行動するほかなかったのは明らか。
天ノ島の復興支援金横領事件を引き起こしたのは、そんな、三者三様に震災復興に携わることで自己実現を遂げる、まさに共依存的関係。もちろんこの意識は、誰の心にも大なり小なりあるものであり、そういう動機でボランティア活動や援助に携わることも特に悪いことではないように思う。ただ、常にその意識を自覚しておかなければ、歯止めは利かなくなり、やがて、このような大きな悪事を生み出すことにもなるのだろう。
Posted by ブクログ
時間や視点がコロコロ変わるので読みにくそう…って思っていたら、綺麗に伏線回収されて一気に読み終わった。
面白いと言うには生々しい素材だけど、最後はスッとした。とはいえ震災を食い物にするクズは物語でも現実でも腹が立つなぁ。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
聴き始めて、あれ、こんな話あったような。。と思い出しました。ググってみると、NPO法人大雪りばぁねっと事件。忘れてました。
どこまでこの事件をモデルにしているのかはわからないが、遠田の風貌はりばぁねっとの岡田元代表ぽい。これに限らず被災者につけ込んだ犯罪が後をたたないことから作者はこの小説を書いたのだという。
いやはや、面白かった。
一気に駆け抜けました。
人がこれ以上ない悲惨な状態の中で、涙も枯れて、打ちひしがれ、混乱している中、強そうな手を差し伸べられたら、その手にすがってしまうだろうな。初めの、この人が助けてくれる!という印象が強いほど、後からあれ?おかしいぞと思っても、いやそんなはずはない、となってしまうのは容易に想像できる。
悪い人間はいるもんだ。この小説の中の遠田の最後はヤツの犯したことにふさわしい結末だったけど、りばぁねっとの岡田元代表は、懲役6年でもう出所してる。使い込んだのは6億近くで、支払いを命じられた金額は5680万。
山田町の授業料にしては高すぎ。
それにしても海神というタイトルは、大げさじゃないのかな。。と一瞬思ったけど、いや、最後の「あれ」は神様の仕業だったのだろう。だからなのか。。と、納得。
Posted by ブクログ
様々なテーマが折り重なり、読みながら考えさせられる素晴らしい本だと思います。また東日本大震災の悲劇を後世に語り継ぐ上でも、強過ぎず、弱過ぎない描写が、とても良いと感じました。
人が大事にすべき物を常に頭に置いて過ごしていきたい、と思える本でした。
Posted by ブクログ
3.11を死なせてはいけない
震災で被害にあった島民
そんな人たちの力になりたいとボランティアをする女子大生
水難救助のスペシャリストとして島に招き入れられリーダーとなった男
その男を補佐する表情のない青年
その島出身の記者
困っている人が騙される図は顔をしかめたくなる
小説の中の話だけど、これはきっと日常でリアルにある問題だと思う
でもきっと「神様は見ている」
Posted by ブクログ
東日本大震災から10年後に浜辺に打ち上げられた金塊を拾った少女
震災から島を復興へ導いた英雄=震災で一山当てようとする小悪党
島に復興ボランティアとして訪れた東京の女子大生は地獄に舞い降りた天使と呼ばれる・・・
震災で両親を失ったジャーナリストは、島を裏切ったかつての英雄の正体を暴き出す為 帆走する
物語は3人の主人公と三つの時間軸でユックリとそして確実に読み手を小説の中の世界に縛り付けていく・・・
本書を読んで
・東日本大震災を忘れてはいけないという気持ちが湧いてきた
・悪い事をしようとする人はいる
・どんな事からも儲けを産むこともできる
・それでも人の善意というものはある
・本書の主人公の一人のようなジャーナリストがいればいいと思う
・染井為人さんの作品をもっと読みたいと思った!
Posted by ブクログ
読み始めたら、一気読みでした。
震災復興を巡る詐欺、10年後に見つかった金塊にまつわる物語が、時間軸と語り手を変えながら、語られていきます。
染井さんらしい展開の仕方ですが、最終盤の謎ときに向かって、話が進み、続きが気になります。
それだけでなく、復興詐欺を描く社会派的な作風、被災者と死者の切ない交流などの点も、良かったです。
海の神様を突き動かしたものは、なんだったのでしょうか。島民の怒り、悲しみ。正義。なんですかね。
Posted by ブクログ
人間臭い悪人たち、震災の犠牲者達の生々しい描写、団結力の強い、悪く言えば閉鎖的な離島の住人たち、未来を見ている子供達…様々な人間模様が描かれるのが染井さんの作品の魅力だなと改めて感じました。
Posted by ブクログ
◾️サマリー
・3.11に東北地方天乃島を襲った悲劇
・復興支援金の横領と悪人の可哀な末路
・天災による被害を忘れるな
◾️感想
震災復興に真面目に取り組む方からは、石が投げ込まれそうな本物語。
天乃島の人々が、復興支援金を横領され、いいようにこき使われたのに全く救われないことが、本書の一番辛いなぁと思うところである。
椎名姫乃という一人の女性は、東京で暮らす普通の女子大生であったが、3.11の地震により天乃島の復興支援に携わる。これが彼女の悲劇の始まり。
人生、いいことを積み上げても良い結果に結び付くとは限らない。
非常に難しいが、どんな状況でも、何が最適なのか、目の前にいる人の発言の真意を図らねばならない。
今の自分にはまだまだ道半ばである。
◾️学び
悪いことばかりではない。
その中に光もある。
Posted by ブクログ
521ページ。読み応えあり。一気読み必至なのは染井為人さんだから、当たり前。
震災の被災地の状況が、
かなり細かく描写されており、
想像をこえた現状を知ることができた。
それは、震災の現実が過酷すぎて
染井さん自身も
「途中で筆を折ってしまった」ほど。
時間軸と
語り手が
あっちこっちと
変わっていくので、
悲惨さに自分が取り込まれすぎず
最後まで社会派ミステリーとして
読むことができた。
海で発見された金塊。
小さな島の復興支援と言う名の
横領事件。
遠田にマインドコントロールされてしまった島民たち。
必死に真実を暴こうとする記者。
純粋ゆえに
翻弄されるヒメ。
島民それぞれの
関係性。
ふりかかった震災の爪痕。
ラストに向かい
グイグイと引き込まれてしまった。
染井さんの震災への
想いが伝わるミステリーだった。
Posted by ブクログ
東日本大震災の年、2年後、10年後の3つの時間軸で進められる。10年後の結末を知っているのに、東日本大震災の年の出来事に何度もハラハラさせられる。結末がわかってる故のもどかしさもある。
海神という題名通り、自然の残酷さと人間の非力さを感じた。
『正体』に感動して2作目として読んだ染井為人さんの今作品。また別の作品を読みたいと思えました。
Posted by ブクログ
3.11の震災後、『こういう人たちは一定数いたんだろうな』
と思える設定の人物がこの島に凝縮されて話しは進む。
何もかも失い復興中も失い続けた小さな島で、
失っていた人間性を取り戻した青年がいる事が、
本人の罪や謝罪の意識も含めてひと筋の光なのか。
当時も今も東京に住んでいる自分は
震災で失った知人もなく、
当日の交通機関の麻痺くらいしか実害がなかったので、
その分軽々しく震災の何ごとも口にしてはいけないと思っていたしそうしてきた。
なので正直この小説は読んでてキツかった。
でも作者が最後に言っているように、
震災の何もかもを忘れない事が鎮魂であり慰霊なんだなと。
現在の能登が、被災した1年前と
ほぼ変わらない状況であることに
絶望と怒りを感じてます。
311より確実に遅い。
Posted by ブクログ
染井為人さん著「海神」
著者の作品はこれで4作品目になる。
購入するまでタイトルの読みは「かいじん」だと思っていたが、購入時に表紙に小さく「わだつみ」と書いてあるのを見て、また読み間違えていた事に気付いた。
物語は「3.11 東日本大震災」の復興が主軸になっている作品。実際に岩手県山田町でおきた復興支援金を私用化して横領していた「NPO法人大雪りばぁねっと」の事件が思い起こされる。きっと作者はこの事件を元に本作品を描かれたに違いない。
どんなに人が死のうが苦しもうが平然と私欲を募らせる輩はこの作品の様に悲しい話だがどこにでもいる。
私欲を募らせるのは大いに結構だが、他所でそういう輩同士で取った取られたとやっとけと思う。その土俵内で相撲をとれ、その土俵に一般人を、特に被災者を巻き込むな。
ましてや復興支援金とはどういうお金なのか?知っていながら手をつけている。
人々の悲しみを乗り越えて復興に向けてと思いの詰まったお金を軽々しく私利私欲の為に懐に納めるその輩達の神経を本当に疑う。
「人道的」な側面からしてみれば同じ人間、同じ日本人として自分は認めない。
獣の類いの生き物なのだろう。ならば折に入れて見せ物にして丁度よい。一生折の中で見せ物として暮らしていけばいいだろうと思う。
そこらの石でも投げつけられながら一生を終えてほしい。
過激な発言になってしまったが凄く胸糞悪い作品だった。この作品を読んでいて「大雪りばぁねっと」の事も思い出し、余計に腹がたってきている。
そういう意味では感情移入させられる良い作品だったに違いない。
Posted by ブクログ
2011年、大震災その日に産まれた女の子が10年後に海で金塊を拾ったことから始まった。2013年、2021年が行ったり来たり、新聞記者の菊池一朗、大学生の椎名姫乃、養護施設の職員堤佳代三人の視点で話が進んでいく。
復興支援金を横領した遠田はとんでもない悪人だが、最後は海の神が姫乃たちの味方をしてくれたのかな。
もう一度だけ姫乃に会いたかったと、ナナイロハウスに現れた江村に救いと悲しさを感じた。
Posted by ブクログ
震災の復興支援金をめぐる内容で、色々と考えさせられる話だった。時系列が目まぐるしく変わり混乱しそうになるが、徐々に明らかになる真相にやるせない気持ちになる。
Posted by ブクログ
さすが染井さん!お話しの作り方がとっても上手でした。ただ、現在と過去をいったりきたりするのでちょっとだけ混乱してしまう時がありました…
被災地では本当に火事場泥棒も性犯罪も多いし、大手の募金などもちゃんと被災地に回らないなど、結構あります。3.11だけでは無いですが、忘れてはいけない。そして日頃からの備えの大切さを改めて考えさせられました。
Posted by ブクログ
このお話のすべてはエピローグに、、、
忘れてはいけない3.11あの日自分はホテルのロビーで映画のような惨劇を傍観していました。
若い頃宮城県多賀城市に住んでいた時があり、その土地が大被害にあったこと今でも信じられません。お世話になった方々は、どうなっているのかも知れずじまいです。そんな大混乱の中で詐欺、強奪、性犯罪、ホント信じられん!実際にあるんだろうなぁと悲しく思いました。、
ちょうど読んでいる時に南海トラフ巨大地震注意報が発生されました。自然の力には逆らえないけど、まずは今できる準備を整えることかな?と改めて思った今日この頃、、、
Posted by ブクログ
復興は金になる!東日本大震災の被害を受けた、東北の小島を舞台に、多大な悲しみと被害にあえぐ島民と、そこに救世主のように現れた“復興のプロ“による復興マネーの搾取と復讐を描いた作品。悪役の憎たらしさがもっと描かれてもいいと思った。けれど、最後に作者が復興のマネタイズというテーマに、一時は筆を置いた、と書いていたように、そこには躊躇や葛藤があったのだろう。震災テーマの新しい切り口で人間の業、醜さ、美しさを描き出す。染井作品の中でも異彩を放つ作品。
Posted by ブクログ
染井為人『海神』光文社文庫。
来月は東日本大震災から13年目ということもあってか、東日本大震災や福島第一原発事故に関連する作品が続々と刊行されている。
先に読んだ熊谷達也の『悼みの海』にも大震災が描かれているし、NHKメルトダウン取材班の『福島第一原発事故の真実 ドキュメント編』と『福島第一原発事故の真実 検証編』はタイトル通り福島第一原発事故をストレートに扱ったドキュメンタリーである。
さて、染井為人の本作であるが、まさか東日本大震災とそれに関連する事件がモデルになっているとは思わなかった。本作に描かれる遠田政吉の率いるNPO団体は、岩手県山田町で復興支援金横領事件を起こした旭川のNPO団体『大雪りばぁねっと。』がモデルだろう。途方に暮れ、藁にも縋る思いの被災地を喰い物にした酷い事件である。
テーマは非常に面白いが、余り納得出来る結末ではなかった。
東日本大震災が起きた2011年と2年後の2013年、そして10年後の2021年の3つの時間軸で物語は進行する。そして、物語は、天ノ島出身の新聞記者の菊池一朗と東日本大震災の2日後に東京からボランティアに来た大学生の椎名姫乃、天ノ島で養護施設の臨時職員を務める堤佳代の3人の視点で描かれる。
東日本大震災で壊滅的な被害を受けながら本土からの支援を受けられず、住民たちが途方に暮れる天ノ島に遠田政吉を筆頭にNPO団体を名乗る男たちがやって来た。遠田は巧みに住民たちに取り入り、村長から巨額の復興支援金の活用を一任される。
しかし、遠田たちの復興支援金の横領疑惑が発覚し、新聞記者の菊地一朗が疑惑の解明のため遠田の過去を探り始めると驚愕の過去が浮き彫りになる。
本体価格900円
★★★★
Posted by ブクログ
染井さん4作目なので何かやってくるだろうと構えてましたが、良い意味で裏切られた感でした。
震災の被災者と、支えるボランティア、復興ビジネスという難しいネタでミステリーを展開する。敢えて不快なストーリー仕立てにする。
それらは全てラストのためにあるんだろうなと思います。もっというと、あとがきが真のラストなのかも。
当時TVで見て、大きな被害にも遭わず、ボランティアに行くわけでもなく、募金という偽善をはたらいたくらいの私には、染井さんが生の実態を取材してくれたというニュースな内容で学びにもつながりました。
受け取り手によっては印象がかなり変わってくる作品ではないでしょうか。
Posted by ブクログ
おもしろいし続きが気になるのでサクサク読めるが、読後感としては微妙な違和感が残った。
当時被災地の復興はテレビ越しで見ていて、復興支援金の不正利用事件についても知らなかったので、実話を元にしているという点では勉強になった。実際に無駄に使われてしまった復興支援金は多いんだろうなと思う。
震災の当日に生まれ、その日に両親を失った遺児に、明るい未来が訪れるようにとつけられた来未という名前が素敵。
遠田に悪役の要素を詰め込みすぎだと思った。特に、小児性愛者という要素が必要だったのかは疑問。島民が英雄と崇めるぐらいなので、一定程度復興に貢献していたはずだが、それが全部帳消しになるぐらいあまりに嫌われる要素を盛り込んだキャラクターだなと思った。口が達者なだけで頭が良くないので、悪役としての魅力もない。
最後の船上のシーンは、遠田と姫乃と生死がわからない状態で読みたかった。
Posted by ブクログ
復興支援金詐欺については、ニュースでちらっと聞いた覚えがある程度の知識しかなかったが、傷口に塩を塗る許しがたい犯罪だ。ボランティアに行った20歳の女性・姫乃が経験した被災後の様子が、生々しく真に迫る。ただ、姫乃は純粋無垢な女の子というイメージが湧かない。ボランティアに行く気概があるほど覇気があるようにも見えないし、騙されたとわかってからの島民への対応も腑に落ちない。
終わり方はエンタメ色が強い。盛り込んだ感がして私は好きではないが、来未の一言に笑みが溢れるラストだった。結局江村はなぜナナイロハウスへ行こうと思ったのかよくわからなかった。
Posted by ブクログ
面白くて一気に読み進めてしまいました。
東日本大震災をきっかけに起こる、ある島でのnpo団体における横領事件のお話でした。
人間模様が悲しすぎて、読んだ後に切ない気持ちになりました。若者が毒されて人生が変わっていくのが辛い、、
震災が起きた時の嫌なことが詰め合わされていました。色々考えさせられます、、、
しかし染井さんの小説はやはり面白いです。
Posted by ブクログ
災害は金になる。
恐ろしい言葉だけど綺麗事だけでは無いのは事実。
そして“2度目の死”は決して訪れてはいけない。
時系列でないので混乱する場面もあるけど
個々の思いが強くスっと入ってきてくれた。
そしてこの事件について忘れてしまっていたことが何よりも恥ずかしい。
読んでいて、あれ?って思いつつも、これ事実だったらめちゃくちゃ怖いよなって思ってた。
今1度あの頃のことをしっかり思い出していきたい。
Posted by ブクログ
海神
著者:染井為人
「災害は金になるってことよ」――。東日本大震災で被災した三陸沖の有人島、天ノ島に現れたNPO法人「ウォーターヒューマン」代表、遠田政吉。「復興のカリスマ」と豪語する彼は、見捨てられた島に支援隊を立ち上げ、救世主として君臨するが、復興支援金四億二千万円の横領疑惑が発覚する。地元出身の新聞記者、菊池一朗は、島を冒瀆した遠田の罪を追い、得体の知れない詐欺事件の解明に奔走する。デビュー作『悪い夏』や、映像化決定で話題の『正体』でブレイク中の著者が、圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、興奮の感動巨編です。
この物語を通して、災害という非常事態が浮き彫りにする人間の本性が強く伝わりました。人の弱みに漬け込む最低の人間がいる一方で、人のために自分を犠牲にする優しい人もいる。大災害がきっかけで、人間の弱みと強さが浮かび上がることを実感しました。関東圏に住んでいた私には、東日本大震災の被害は直接的ではなく、計画停電の不便さや未来への漠然とした不安が思い出されます。被災経験がない私たちには、被災者の苦しみや悲しみを完全に理解することは難しいですが、想像力を働かせることで少しでもその気持ちに寄り添い、何か力になれることがあればと改めて考えさせられました。