松崎有理のレビュー一覧
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「山手線が丸い」というだけで、都市文明が消滅した未来社会では使われなくなった山手線が加速器に転用されるという下らない思いつきを、理学部出身の著者らしい科学的な知識をもとに一つの短編として仕上げた表題作が2025年の星雲賞を受賞。他の短編もすべてパンデミックによる撤退宣言での都市消失という共通の未来年表に則って書かれており、各々の短編は時代も主人公も異なるが、登場人物が複数話に登場したり、話題になっていたり相互に関連を持っている。また8本足の遠隔行動用ロボットアバター、腕輪型のウェアラブルデバイス、アシスタントAIなどのガジェット類も共通に登場していて、「設定のこだわり」と「スピンオフ創作物」に
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山手線が転生して加速器になりました。タイトルそのまんまの内容の表題作をはじめとした、同じ世界線を共有する短編集。ちなみに、中央線はリニアコライダーに転生してます(笑)
タイトルからして直球王道どストレートのバカSFで、実際にこの山手線と中央線が主人公を務める2編は実に本寸法、あっぱれなバカSFです。が、この2編はいわば”前座”です。トリを務めるのは、ある種のポストアポカリプスの風景を描き出す、この短編集を貫く世界観そのものです。
世界中に蔓延した激烈な感染症から逃れるため、人類は都市を捨てた。生き残った人々は山間部や離島などの人口密度が低い地域に移住し、主要インフラは遠隔操作ロボットとドロ -
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満足度高めのSF短編集。SFぎらいでも読めた!どころか引き込まれた!
・六十五歳デス
完全ディストピアの世界観に強おばあちゃん入れて、漫画映えすごそう。読んでる間すごく脳内で映像化できた。紫さんかっこよすぎる。
・太っていたらだめですか?
いちばん血なまぐさいのに友情エンドでよし、とはならない。短いから箸休め的なギャグなのか?
・異世界数学
好き。キャラも立ってて小ネタも楽しい。
タイトルまんま。
・秋刀魚、苦いかしょっぱいか
視点をちょっと未来にすることで秋刀魚にノスタルジーを感じさせるの天才。秋刀魚食べたくなったしSFに地続きの未来を唯一感じられた。SF苦手でも触れやすい。
・ペ -
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ディストピア×ガールがコンセプトのSF短編集。最初の65歳で確実に死が訪れる世界で恰好良い老女が少女と出会う「65歳デス」や肥満者が公開デスゲームに強制的に参加させられる2話目「太っていたらだめですか?」はそうSF色は強くないけど、最終話の表題作と1話前の「ペンローズの乙女」は結構濃いSF。頭使った。どの話にも何らかの喪失があるがコミカルに纏まったり寂寥感が残ったりとバラエティ豊か。コンセプトは「65歳デス」が一番合致していると思う。これと生贄の風習がある島に流れついた少年の話から超壮大な世界に繋がる「ペンローズの乙女」の雰囲気が好み。失われた秋刀魚の味を再現しようとする少女の自由研究「秋刀魚
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東京創元社のSFアンソロジーの二巻目。二〇一九年十二月刊行。まだコロナ禍やリモートばかりの生活を知る前の作品だけど、「あれ、なんだか今っぽい」と感じられるものもあって、フィクションの奥深さを思った。一巻を読んだときに比べて私のSF受容力も上がったのか、どれもそれぞれ大変楽しめた。
■高島雄哉『配信世界のイデアたち』
昔、かこさとしの『ほしのほん』シリーズを読んで、宇宙には「銀河」というものがたくさんあるということを知ったとき、もしかしたらはるかかなたの銀河のどこかに、私みたいな女の子がいて今同じように宇宙の本を読んでいるかもしれない…という想像をした。そんなことを思い出した。
■石川宗生『モ -
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SFアンソロジー7作品短編集。
Genesisも3冊目となり、人の想いの数だけSFの世界があることを、あらためて知る構成。
SFは日常のそこかしこに息づき、私たちの人生に奥行きと彩りを添えてくれます。
『エレファントな宇宙』
アクションSF。ミリタリー好きな方に超オススメ。
宇宙から高次元生命体が飛来した。
その生命体とコンタクトした人間は、憑依され、未知数の破壊力を持つに至った。
最新鋭米陸軍部隊と特殊作戦に挑む3作目。
…前作を読んでいた方が、より楽しいかもしれない。
『メタモルフォシスの龍』
近似未来SF。
恋をしてはいけない世界で恋をしたひとたちの悲哀を描いた作品。
独特な文で -
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この本、教え子たち全員に読ませたいわあ。
研究の世界というものの実質をびしびし
脳髄に叩き込んでくれる。痛快!
しかもなんとなく漂う胡散臭さが
えも言われぬ高尚な香りを漂わせていながら
知的な者以外がこの作品世界に触れることを
拒むような狭量なこともせず
エンターテイメントとしても面白すぎる。
癖のある、しかし出すか出されるか法に
苦しめられる愛すべき研究者たちと
自らの鈍感さと体質的な欠陥ゆえに
実るはずもない恋愛に翻弄されるミクラ。
先輩代書屋トキトーに鍛えられつつ
少しずつ成長してゆく典型的理系男子の
ミクラこそ、愛すべき人だ。
論文という研究者たる者の
宿命、足枷、飯の -
Posted by ブクログ
ディストピアの世界を描いた短編集
数学や量子力学、宇宙の話を点在させながら、AIが今のスマホ並みに普通に使われている近未来が舞台の話が多くてなかなか不思議な内容でした
特に、秋刀魚が絶滅して食べられなくなった時代に、AI技術とかろうじて食べた経験のある曾祖母の協力のもと再現を試みる少女の話は面白かった
数十年後、本当にあり得そうな内容で、でもどれだけ技術が発達したところで、ホンモノには敵わない、ということと感じました
65歳で必ず死ぬ世界や、罹患したら必ずゾンビになるウイルスが蔓延している世界、ひとにうつす前に自殺する手段を国が推奨しているけれど、AIは人を殺してはいけないと言うルール