【感想・ネタバレ】山手線が転生して加速器になりました。のレビュー

あらすじ

山手線が転生!? 21世紀前半、地球に強力な謎ウイルスによるパンデミックが蔓延、人類は密集生活でつねに感染の怖れのある都市文明を放棄して世界各地に散らばり、すべてリモートで生きる道を選んだ。つながりたいだれかと遠く離れているのが前提の世界で、ひとはどう生きるか。何を大切にして生きていくのか。その姿を奇想天外な発想とユーモアで優しく描く傑作短篇集。

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Posted by ブクログ

「山手線が丸い」というだけで、都市文明が消滅した未来社会では使われなくなった山手線が加速器に転用されるという下らない思いつきを、理学部出身の著者らしい科学的な知識をもとに一つの短編として仕上げた表題作が2025年の星雲賞を受賞。他の短編もすべてパンデミックによる撤退宣言での都市消失という共通の未来年表に則って書かれており、各々の短編は時代も主人公も異なるが、登場人物が複数話に登場したり、話題になっていたり相互に関連を持っている。また8本足の遠隔行動用ロボットアバター、腕輪型のウェアラブルデバイス、アシスタントAIなどのガジェット類も共通に登場していて、「設定のこだわり」と「スピンオフ創作物」に慣れた読み手向けの、昨今らしいSF作品群と言えるかもしれない。加速器、フェルミパラドックス、ブラックホール、クロスモーダル現象を用いたVRデバイス、和田の湖など、ファンタジー強めではなく昨今の科学的な知見を元に書かれたサイエンスフィクションで、「研究者あるある」的な自虐的なユーモアと、人と人との繋がりの薄れてしまった社会に生きる登場人物たちのセンチメンタルな感情の機微を描いていて味わい深い。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

山手線が転生して加速器になりました。タイトルそのまんまの内容の表題作をはじめとした、同じ世界線を共有する短編集。ちなみに、中央線はリニアコライダーに転生してます(笑)

タイトルからして直球王道どストレートのバカSFで、実際にこの山手線と中央線が主人公を務める2編は実に本寸法、あっぱれなバカSFです。が、この2編はいわば”前座”です。トリを務めるのは、ある種のポストアポカリプスの風景を描き出す、この短編集を貫く世界観そのものです。

世界中に蔓延した激烈な感染症から逃れるため、人類は都市を捨てた。生き残った人々は山間部や離島などの人口密度が低い地域に移住し、主要インフラは遠隔操作ロボットとドローンに任せた結果、文明は問題なく維持されることがわかり、公共交通機関は遺棄され、高層ビル群は廃材とジャングルの山と化した。そんな状況下、山手線と中央線の遺構を加速器として活用することが決定され・・・
というのが、この世界の”フリ”です。

執筆時期に鑑みて、コロナ禍からインスピレーションを得た世界観であることはほぼ間違い無いでしょう。コロナ禍をベースにしたSFは数々書かれていますが、この作品の特徴は、全作品を包み込む温かい眼差し。生き残った者も、捨てられた物/者も、それぞれに辛い記憶と悔恨を胸に刻み、それでもなんとか生きてこの世の中を良くしようと、試行錯誤を続けています。
一見あっけらかんとして楽しい作品ばかりですが、いったん滅びかけた社会でより良い生き方を求めて足掻き続ける者/物の姿に、鴨は久しぶりにSFならではの上質な”Sence of Wonder"を見た思いがしました。

SF初心者でもとっつきやすいライトな作風ですが、実はかなり骨太な作品です。SF者に限らず、あらゆる読書子にオススメ!

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2025年06月18日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて所謂『ジャケ買い』。
仮想と現実がテーマ。
この本の中にあるように、仮想が現実のようになったとき、人の幸福とは一体何なのかを問われた気がした。仮想でなければ発揮できなかった能力を持つ人にも、現実の世界でありのまま生きろといえるのか。或いはその逆はどうか。
答えの出ない問いを前にしながらも、山手線の明るさと中央線の純情さに救われた気がした。

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2025年01月14日

Posted by ブクログ

タイトル買いでした。

蔓延する超強力ウイルスのパンデミック。都市文明を放棄した人類は全てリモートで生きている…。

山手線が転生して、加速器になって、しかも意識まであって、言葉もしゃべれて、夏休みに憧れる山手線。おもしろい!!

「ひとりぼっちの都会人」が特に好きでした。これ程極端ではないにしろ…。コロナウイルスによって人生がガラッと変わってしまった方々、計画が狂ってしまった方々、多くの子供たちも不自由な生活を強いられた日々。

実は、わが息子もコロナきっかけで不登校になってしまったのだ。
その事を思うと、辛くなる…。
本当に辛い日々だったことを思い出す。

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2025年02月13日

Posted by ブクログ

パンデミック後のSF。山手線を加速器として使うタイトル作が一番好き。山手線が夏休みに憧れたり拗ねたりするのがかわいくて可笑しい。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

 前に出版された『シュレーディンガーの少女』が良かったので、最新作のこちらの短編集も読んでみた。

 先に巻末付録の「作中年表」を読むことをおすすめする。何の説明もなしに「撤退宣言」とか「モラヴェック」といった言葉が出てくる。この年表に基づいた、人類が都市を放棄して、リモート暮らす世界を描いている。つまりは、連作短編集のような体裁となっている。いや連作短編集と言っていいのだろう。

 表題作は、鉄道としては廃止された山手線が円形加速器に再生され、さらに自意識を与えられるという話。加えて中央線が直線加速器になっている。さらにその1年後を描いた一編もあり、アイディアとしては秀逸。

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2024年10月18日

Posted by ブクログ

表題作は、パンデミックにより都市が放棄され、東京から人がいなくなり無用となった山手線を線形加速器に転用しちゃったお話。本としては同じ歴史を共有するシェアワールドSF短編集という感じ。どのお話も人々は地方に分散し、リモートコントロールのロボットを使ったり、仮想空間で仕事をしてる。総じてみんな楽しそう。
難しい描写は少ないので手軽に読めますが、それでもSFなので情報量は多い。作品全体で歴史線がしっかりしているので、今後も活用して作品が出てくるといいなと思う。

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2024年08月17日

Posted by ブクログ

「山手線が転生して加速器になりました」
「未来人観光客がいっこうにやってこない50の理由」
「不可能旅行社の冒険 -けっして行けない場所へ、お連れします」
「山手線が転生して一年がすぎました。」
「ひとりぼっちの都会人」
「みんな、どこにいるんだ」
「総論 経済学者の目からみた人類史」
「付録 作中年表」

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2025年03月25日

Posted by ブクログ

2024-11-24
タイトルからバカSFかと思っていたが、なかなかどうして。
知への信頼と憧憬に満ち溢れた、壮大にして希望に満ちた短編群。決して幸せなだけでは無いところにも矜恃を感じる。
そして数多くのイースターエッグが嬉しい。映画、小説、物理学者、数学者。こういう遊び心もたまりません。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

山手線が加速器に!というだけでジャケ買いならぬタイトル買い。
パンデミック後の世界、すごいことになってる…

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2024年10月18日

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