今村翔吾のレビュー一覧
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「くらまし屋稼業」の5冊目。
前作の最後に驚かされてどうなることやらと思い本作を開いたが、こちらの思いは全く放置されたまま、今回は老中・松平武元を晦ます話、って…。
高尾山で対峙した御庭番・曽和一鉄や上尾宿の殺しを洗う道中同心・篠崎瀬兵衛が登場し前作前々作を思い返している内に、武元はもとより田沼意次までも登場。老中・酒井忠寄との権力争いも見え隠れして、この話、どれだけ話が大きくなっていくのか。
今回は老中を晦ますという難しいミッションをどうクリアしていくかというところは勿論の見所だが、それ以上に武元や一鉄、篠崎や同じく道中同心・乾の人となりや胸中がじっくりと描かれ、平九郎・赤也に続いて七瀬の出自も明らかになるなど、シリーズの今後のための節目になる話だったように思える。
話が大きく出た割には武元の依頼の大本がなんとも哀しく可愛らしく、願いを叶えた今井の渡しでのやり取りや亡き母が娘に遺した手紙の存在に泣かされた。
でもって、また最後の最後だけ出てくるのね。さて、これからどうなる? -
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「くらまし屋稼業」の3冊目。
今度は余命僅かの元採薬使・阿部将翁の願いを叶えるお話。
この将翁、仕事柄から幕府にとって重要な情報を持っており、それ故に闇の組織「虚(ウツロ)」に狙われている。
そこから護らんとする薬園奉行により江戸市中から幕府の隠し薬園がある高尾山に匿われるが、駆り出された道中奉行に御庭番まで入り乱れる中で、平九郎らが将翁を晦ますことが出来るのかが、まずは見所。
子どもを勾引かす賊の正体を知るべく取って返した平九郎が「虚」の面々と切り結ぶ場面もいつもの如くの見所。
見慣れぬ得物を使う賊を斬って捨てては、最初の話に登場した榊惣一郎と丁々発止の立ち回り。巻を重ねるごとにその剣法が凄みを増す。
駆り出された道中奉行を束ねるのが前二作でも登場した篠崎瀬兵衛だが、妻を娶ってからは全てを無難にこなすようにしてきた瀬兵衛が平九郎らの影に気づいたことでかつて「路狼」と呼ばれた頃の血を騒がせだし、見過ごすことが出来ない存在になっていく。
その瀬兵衛とのこれからも続くであろう因縁や、これまでに加えて明らかにされた平九郎の妻や娘の話や平九郎の出自も含め、何巻にも続くこの物語の全貌の一端を垣間見せていく作りが巧み。
将翁の最後は、もう「幸福の黄色いハンカチ」でしたね。分かっていてもウルッと来る。
若き日の櫂五郎と武蔵がチラと登場するのも楽しかった。 -
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〈くらまし屋家業〉シリーズ第八作。
今回は剣劇シーンが多い。「くらまし屋」平九郎vs「虚」、「虚」vs「炙り屋」迅十郎、「虚」惣一郎vs新登場・謎の人物レラ…。
くらまし屋の仕事としては、大店・越後屋にまつわる秘密を知ってしまった娘・比奈を逃がすこと。
だが比奈は案外しっかりした娘で、怖い目にあっても泣き言一つ言わないところが良い。陣吾という心強い幼馴染がいたというのも運が良かった。
一方、平九郎自身の問題、彼の妻子の行方については、読者には分かってはいるものの、交差しそうで焦らされっぱなし。次こそは発展あるか?
個人的には七瀬のアイデアが毎回楽しみなだけに、今回はちょっと肩透かし感があって物足りなかった。
その分、戦闘シーンが多くて少々疲れた。平九郎一人では荷が重いのでは…と思っていたら、心強い味方がいたのでホッとした。
惣一郎の狂気が少し違う方向に向いていたのも一つの転機。最初はただの危ないヤツだったのか、段々魅力的になってきた。
そして平九郎の師匠は、今後物語の展開に絡んでくるのか。
「虚」グループの手練れはかなり減ってしまったが、今後も闘いが続くのか。その分『夢の国』を狙う新しい勢力との闘いが始まるのか。平九郎の妻子がいる『夢の国』の安全は保たれるのか、そして平九郎と妻子との再会はいつなのかも気になるところ。
シリーズはまだまだ続きそう。〈羽州ぼろ鳶組〉もあるし、作家さんも大変でしょうが両方楽しみにしています。
※シリーズ作品一覧 全てレビュー登録済
①「くらまし屋家業」
②「春はまだか」
③「夏の戻り船」
④「秋暮の五人」
⑤「冬晴れの花嫁」
⑥「花唄の頃へ」
⑦「立つ鳥の舞」
⑧「風待ちの四傑」 -
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シリーズ第八弾。
シリーズ一作目に登場した(うろ覚えですが)“夜討ちの陣吾”から、彼の幼馴染で呉服の大店〈越後屋〉に勤める比奈を晦ましてほしいとの依頼を受けた平九郎。
闇組織「虚」と組んで行われていた悪事が露見することを恐れた〈越後屋〉の大番頭・富蔵は裏の口入屋〈四三屋〉の利一に比奈の始末を依頼しますが・・・。
今回はとにかくバトルが凄いですね。
富蔵が金に糸目を付けないのをいいことに〈四三屋〉の利一がエース級の裏稼業の手練れを大量投入して、平九郎と比奈を狙ってきます。
そんな中〈大丸〉の“神童”(ぼろ鳶シリーズ”のあの人の幼き頃でしょうか)の機転により「炙り屋」が味方側についたのは不幸中の幸いでしたね。
で、圧巻のバトルシーンですが、まず平九郎VS凄腕の暗殺者たち・・とにかく数が多い!しかも手練ればかりときては流石の平九郎も大怪我を負うなど、かなりハードモードでした。
ただ、中には“プロ”としての矜持がある者もいて、何故か“今際の際”に、平九郎にお役立ち情報を教えて事切れるというパターンもありました。
“プロ”といえば、探索の達人“黒狗の玄九”もなかなかいいキャラでしたね。彼なら平九郎の“探し人”も見つけてくれそうです。
一方「夢の国」では、「虚」の一員・惣一郎VS弓の達人で(多分)アイヌのレラとの激闘も見どころでした。途中からはロシア勢(多分)と相対するため、惣一郎とレラが共闘したりとこちらも複雑且つ面白いことになっている模様です。
そして、「炙り屋」こと迅十郎VS「虚」メンバーの九鬼の闘いも決着はつかずとも手に汗握るものがありました。
因みにタイトルの「四傑」は、表紙から推測するに、平九郎・迅十郎・惣一郎・レラの四人のことと思われます。
という事で、キャラも増えてますます今後の展開が楽しみになってきたこのシリーズ。早く続きが読みたいです~。 -
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「くらまし屋稼業」の2冊目。
今度は呉服屋の土蔵に幽閉された少女・お春を晦ます話。
「くらまし屋七箇条」の一に『依頼は必ず面通しの上』とあるのだが、前作でもそうだったように、依頼人に直接会うところからして大変な稼業ね。
まずはそこからひと工夫だが、□□を騙るとはなかなかやってくれる。そこに菩薩の面みたいな顔した気味悪い若侍が顔を出したり、他にも鬼灯組や大丸が出てくるなど小ネタでも楽しませてくれる。
お春の事情を聞いて自らに課した掟を破ることにしたため、単身、くらましを行うことになる平九郎だが、前作ではなんとなく匂わされていた妻や娘のことも少しだけ知れることになる(全てが明かされるのはシリーズがもう少し進んでからなのね)。
救出劇はいかに“土竜”と言ってもややうまく行き過ぎだったように思うが、その後に来る染谷不動での立ち回りの変幻自在がまた一興。これも前作ではセリフの中に出ただけだった「炙り屋」万木迅十郎が姿を現すが、こいつもまた凄まじく強く、今後の絡みがどうなることやら。
辛い境遇に耐える登場人物が多い話だったが、ようやく春めいた終章に心温まる。 -
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今村翔吾氏の初エッセイ集。
小説家は豊富な知識と経験が物を言うと思う。小説の中に豆知識、風習や事の起源など、色んな事がさらっと書かれてたりする。
著者が、ダンススクールの講師、埋蔵文化財調査員、作家という変わった経歴を持つ事は知っていたけど、家庭の事情、家族との関係など初めて知ることも多々あった。そんないろんな経験があったから、どの作品の登場人物もとても魅力的で、読んでいるといつしか今村ワールドに惹き込まれるのだろう。
私がこの歳になって歴史小説に興味を持つきっかけになったのは『じんかん』。これからも著者の作品を追っかけていきたいと思う。