松尾スズキのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・コンプレックスやネガティブな感情を笑いに昇華させて肯定する彼らの姿は、1つの笑いの理想形。
でも、弱者のコミュニティが大勢となって強者となり、逆に知的なものやハイソシャエティなものをオミットしていくような傾向を感じることもあり、そうやって笑いが一面的になっていくのは危険だな、とも思うのです。
・芸術というものは正しさだけを訴えるものではない。
むしろ人間が演じるからこそ人間のよこしまな部分を文学的にすら描くことができるわけで、はじめから輝いているものを「ほら輝いているでしょう」と訴えるより、輝いているどころかドブに落っこちているようなものを輝かせることがより困難であり、より挑戦的である、とわたしは考えるものなのです。
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Posted by ブクログ
ネタバレこれは現代の自然主義文学か、と思うほど松尾スズキは現実を生々しく切り取ってみせた。そして切り取った現実から、血なまぐさい、あるいは単に生臭いものを漉しとり、松尾流の「愛」と撹拌して物語に仕立て上げた。タイトルに宗教とあるけれど、物語にはなまやさしい救済は存在しない。汚いものを汚いまま、醜悪なものを醜悪なまま描き、そうした文脈で愛を語ることができるのは、おそらく松尾スズキくらいではあるまいか。
立ち上げたコント集団、劇団が、大きくなり宗教集団となればなるほど、それは破滅的終焉を予期させる。毎頁のように流される血、涙、糞尿や呼吸をするように行われる性交は、どれも破滅に突き進むモチーフのように思える。そこで描かれる「愛」もまた、結局のところ破滅である。さらには終盤、唐突に松尾スズキは自身とかつての女のリアルな愛をも作品に持ち込み、描かれたフィクションとないまぜに物語は進行する。あたかもメタフィクション的だが、待ち受けるのはまたも破綻だ。
松尾は終盤「愛の絶対を書こうとした」と本音ともいえる呟きを挿入している。この長いラブストーリーは、何ひとつ救済しない。松尾の思惑から、もはや物語は独り立ちしているかのようだ。愛ゆえにことごとくおのが身を亡ぼす奴らしかいない。だが、そうした汚穢まみれの物語を丹念に読めば、わずかばかりの光る「愛」をすくい取れるように思える。優れた物語とはそうしたものなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
『50歳を過ぎて、怒られる。けっこうシャレにならない温度で。それも仕事というものの醍醐味だ』
『締め切りは、世界の終わりに似ていて、必ず来る。そういうものだ』
『それほどあの時間と空間は安定していた。その記憶が、今、目の前で鋭利な刃物で切り裂かれたような、いや、バケツ一杯の墨汁をぶっかけられたような、いや、どうだろう、大量のザリガニの死骸を…例えている場合じゃない。まったくない。』
「怖い目しないで ー 私パニック障害って診断されてから、どんどんパニック障害なんだから」
『男というのは潜在意識の中で常に有名な女優を抱きたいものだ。』
『声を上げずに海馬は泣いた。声を出さないのは、軍手をしてオナニーをしているみたいで、苦しい。』
「どうせなら108人にしよう」
「ひゃくはち。なるほど、煩悩の数ですね。海馬さんらしい」
「いや、あいつのフェイスブックに『いいね』を押したやつの数だ」
『やるべきことは、すべてやった。後は、本人の生きる力次第ですね。とでも言いたげな、難しいオペの後の医者のような顔つきだ。』
「舞台に立ちたいのか、体裁を保ちたいのか? しょせん、目立ちたがり屋の烏合の衆だろうが! かっこつけてる奴は、全員やめちまえ! 俺は、かっこつけてる奴らのために、この作品を書いたんじゃない。自由であれ! かっこつけたい欲望から自由になれ! 表現の本質はそこにはない!」
『いろんなおっぱいがあり、いろんなちんぽがある。それが最初の印象だ。
皆、どんな気持ちなのだろう。
どんな人生を歩んできてここにいるんだろう。
聖矢の合図で乱交が始まった。』
「ごめんなさい。私は私で、戦っていたの。再放送で見るミステリードラマに出て来る永遠に若いままの自分と、現実の中で老いさらばえていく自分。テレビをつけるたびそれを突き付けられるのよ。」 -
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とりあえず「クワイエットルーム?」ってところから。静かな部屋?静かにしなきゃならない部屋?音を出したものに罰則とか?みたいに、あれこれ思いを巡らせつつ、とても薄い文庫本に着手。なるほど。精神科病棟の中でも特別な一室っていう位置づけでしたか。そんな病棟の中でのドタバタ喜劇が描かれているけど、主人公は、たまたま発作的にODしてしまった女性。一歩離れたところで、”自分はここの連中とは違う”と向こうを張りながら、でも結局同じ穴の狢的な醜態も晒しつつ、物語は進む。短い中編ながら、登場人物はとても個性的で(舞台設定上、当たり前かも)、もっと見ていたい気持ちにさせられる。サクッと楽しめる、でも味わい深い、そんな物語でした。
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Posted by ブクログ
ーーー東京の片隅で、無宗教で、子供を持たないことを選択し、ただひっそりと死んでいこうと決めた夫婦だって、世にはたくさんいるのだ。ーーー
茨城出身の一人娘で箱入り娘。
福岡出身、既婚暦あり、職業松尾スズキ。
年の差は20。
「だいたい」で生きてきた男と
「厳密」に生きてきた女の暮らしは読んでいて微笑ましい。
子供についての記述はいろーんなことを考える。
自分たちのあり方を「ほぼ、ゲイ」と喩えるところなんてユーモアがあるのだけど、すこし、じっと考えてしまう。
松尾さんは子供がほしくない自分を、欠陥だ、冷たいのでは、と考えるが、まじめで、先を読んでいるからこそ、選ばないという選択をしたのだとおもう。
自分より20も若いM子さんの老後に思いをはせてつらい気持ちになるところも含めて、まじめで、誠実で、やさしい、とわたしはおもう。
結婚も、子供も、通例なんてない、とおもっている。
とはいえ、ある。
あるから、みんな、しばられる。
逸れたひとは、なぜか悪者、みたいになる。
自分にも身に覚えがあるなあとおもって、2人の生活を読みながら、心中穏やかでない部分もあった。
松尾さんの文章はやわらかい。
けっこう、ひらがながおおくて、わたしは好きだ。
だれにでもわかる文章で、だれにもわからないことを書いていて、答えはスンっと出てこないけれど
これでよかった、これがよかった、と笑って言ってほしいなあっとおもった。