松尾スズキのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中編2編、表題作「もう『はい』としか言えない」と「神様ノイローゼ」を収める。
いずれも主人公は、著者自身を彷彿させる、俳優兼シナリオライターの海馬五郎。
この男が、自分が悪いのか世間が悪いのかはたまた人知を越えたナニモノかが悪いのか、のっぴきならない状況に追い込まれ、えええー?と立ち往生するような、ちょっとシュールなストーリー展開である。
「もう『はい』としか言えない」では、五郎は浮気をし、それが妻にばれる。まったく自業自得だが、離婚は何としても避けたい彼に、妻が厳しい条件を突き付けてくる。密会場所となった仕事場の解約はともかくとして、仕事で仕方がない時以外は1時間ごとに写メを送れ、そして毎日夜のおつとめをせよ、と。しかしまぁ弱みがあるので「はい」としか言えないわけである。窮屈な生活を送る五郎に「朗報」が舞い込む。パリの富豪が創設した賞を受賞したので、現地での授賞式に出席せよというのだ。妻の監視から逃れられると色めき立つ五郎だが、実は飛行機はニガテだし外国語もまったくできない。その上、この賞、「世界を代表する5人の自由人のための賞」なるもので、なぜ大して売れていない自分が受賞するのかも謎である。ともあれ、友達に世話してもらった通訳のネクラ美青年を伴い、現地に向かうのだが、富豪はなかなか姿を現さず、ことは意外な展開に・・・。
「神様ノイローゼ」は、五郎の子供時代の回想である。何だか理屈っぽくあれこれ考えすぎる子供。本当は1人で絵を描いたり物語を考えたりするのが好きなのだが、大人たちは周囲の子供と遊ばせようとする。子供社会の不条理なヒエラルキーでしかし、五郎は伸していくことはできない。それもこれも「神様」が決めているのだ、と少年は思い込む。何でもかんでも言い当ててしまう「サトル」の化け物の昔話のように、神様の裏をかくことはできないのか。水泳教室の昇級試験で、窮地に陥った五郎少年が取った策とは。
全般に不思議なブラックユーモアと危ういバランス感覚が漂う。
失笑しつつどこかうすら寒い。
リアルさを残しつつも、理解不能な展開に迷い込むシュールさ。その境界はなかなかスリリングである。
劇化は困難であるようにも思うのだが、何とはなしに発想が「舞台」「演劇」寄りであるように感じられる。 -
Posted by ブクログ
初っ端から面白かった。ニヤニヤしちゃうほどに。不倫がバレた海馬五郎(老人賭博も合わせてどうぞ)が妻に3つの約束を叩きつけられる。
仕事場は解約すること。今後2年間外出先からスマホで1時間おきに背景も含めた自撮りの写メを送ること。そして2年間毎日セックスをすること、丁寧に、もちろん私とね。
半年経ち海馬はフランスの賞を受賞する。飛行機が嫌いで海外が怖い海馬だが妻とのセックスから逃げたい一心でフランスに行く…という話なんだけど、この奥さん最高だわ。
表題作以外にもう一本ありますがこちらも主人公は海馬です。いつか芥川賞受賞してほしい気もするけどこの手の作風だと難しいかな。