松尾スズキのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
松尾スズキ版「カッコーの巣の上で」とイメージしていただけると分かりやすいかもしれない(本当は別物だけど)。自らの意思とは関係なく、違う環境に落とされても生きていく人間の強さと頼るものが必要な弱さ。
無意味な、無自覚の暴力と、無償の愛の同居する空間で、相対的に他人と比較することによって成り立つ自我。短い小説の中に人間の悲喜こもごもが凝縮され、芥川賞はやっぱり文面だけじゃなくて、内面を見ていることがよくわかる作品だった。
全然文学的じゃないけど、目が離せないストーリーと、目を離せない表現はさすが鬼才松尾氏。終わり方は希望を持たせたて、でも現実の無常の繰り返しによる落差とその曖昧さは、字面だけ追うと -
Posted by ブクログ
ニュースを見ていると怖くなる時がある。
この本のような精神病患者だけでなく、犯罪者もしくはその被害者、
ホームレスなどなど、望んでいなくても何かのはずみで
自分が「あっち」側に行ってしまうんじゃないか...と思う。
そんな事を考えてしまう自分にとって
「正常」と「異常」の境界線の脆さを描いたこの小説はとても共鳴できる。
冒頭のゲロのうがいには面食らったが、読み終わった時は
不思議と何かが吹っ切れたような気分になった。
解説にも書いてあるように、男性が書いたとは思えないくらい
女性視点の描き方が自然。
文中の「くだらなさは何にも勝る治療薬」というのは
松尾スズキの信念なんだろうな。