あらすじ
野蛮人とは、心がなにものにも縛られていない人のこと。友達は不要。偽善で上等。演劇界のガラパゴス、超人気劇団「大人計画」を生んだ松尾スズキが、この世界でちょっとだけ生きやすくなる方法を考えてみた。「ミニツツブック」の人気連載が新書になりました!
目次
・あなたの心の中にも野蛮人はいる
正義とは、サディスティックなものである/芸術とは、美しくあってはならない/わたしの中にいる野蛮人/やさしい偽善のすすめ
・偽善だっていいじゃないか
「偽善」とは「善の快感」を自覚していること/親孝行は「親切」と「偽善」を学ぶための勉強/偽善の目的は「自己肯定」と「世界平和」
・友達なんていらない
「キャラ」という幻想に縛られて/パンチ社会に溶け込めなかった高校時代/仲間がいれば、友達はいらない
・大人だって子供なのだ
大人になれば楽になれると信じていた/「子供ごっこ」へのアンチだった「大人計画」/子供はもはや大人に憧れを抱いていない
・仕事は死ぬまでの暇つぶし
「やがて死ぬ」という負け戦から逃げ続けてきた人類/理不尽な世界で、うつはもはや日常/イヤイヤやるからこそ仕事なのだ
・それでも笑っていたいんだ
服を着る人間の根源的おかしさ/弱いものを食べてしまわないように人は笑う/日陰者に無理やり光を当ててきた「大人計画」/
・宇宙は見えるところまでしかない
我々は、常に途中までしか見ていない/「わかりあえない」のが人間のデフォルトの状態/かっこいいことは、なんてかっこ悪いのだろう
■松尾スズキ(まつおすずき)
1962年12月15日、福岡県生まれ。88年「大人計画」旗揚げ。作家、演出家、俳優、映画監督、脚本家。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人気劇団「大人計画」を主宰する松尾スズキの自叙伝的エッセイ。「優しい野蛮人」を自称する彼の考え方が実に正鵠を射ていて気持ちよい。SNSなどでますます強化されてきた世間の「良識」の押しつけに真っ向から、あるいはこっそりと反駁する。人間の心の中には野蛮人がいる。まずその事を認めることが大事。それを彼は演劇という世界で暴れさせている。実生活ではタブーとされることをやる。その自由は絶対に必要である。
そもそも「笑い」というものは残酷さと無関係ではいられない。手塚治虫が言ったという、「極限状態で飢えた動物は、弱った個体を共食いしてしまうが、人間はそんな時に食べる代わりに笑うことを覚えた」という説が本当ならば、弱者や他人の失敗を笑うという本能は認めざるを得ない。
いつおふざけているようで、実に真面目に「笑い」や「表現」や「言葉」について考えているのだなぁ。
様々な引用を見るに、その博識振りもすごい。
Posted by ブクログ
素晴らしい。こんなにも高い哲学かあるとは思っていませんでした。お見それしました!読み始めは、同感同感と親和性を持って読んでいましたが、読み進むにつれ、だんだんと考えの奥深さに圧倒されます。
Posted by ブクログ
大人計画を主宰して自身も役者として活動している松尾スズキの自伝的なエッセイ。
彼に興味がなくてもお笑いや世の中に対する鋭い批評があり、楽しめた。