内田昌之のレビュー一覧
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広大な銀河帝国を舞台としたSFでありながら、その内容は貴族の陰謀や政治的な駆け引きを主題とした宮廷劇である。また文化や言語、自己の境界などのテーマに関しては哲学的な領域にまで踏み込み非常に読み応えがあった。
まずこのタイトルの素晴らしさよ。なぜSFのタイトルはどれもこう美しいのか。読み進むにつれそのタイトルがもつ物語上の意味が明らかになり、読後に本を閉じたその瞬間、表紙に書かれた表題を見て改めて感嘆の息が漏れる。タイトルとはこうでなくてはならない。
物語は銀河帝国〈テイクスカラアン〉の壮麗な首都に、辺境で併合の危機に晒された〈ルスエル・ステーション〉からやってきた外交官である主人公マ -
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上巻だけ読んだ感想。
とてつもなく面白いSF小説。
テラフォーミング、文明が滅び荒廃した地球を脱出した宇宙船、でかい宇宙昆虫など手垢のついたSFネタを使って、とんでもなく面白いSF作品に仕上げている。
主人公の一人である知性を持った蜘蛛が徐々に進化していく過程の描写が、とてもテレビゲーム的で面白い。
自分が獲得した「知識」を遺伝子のように子孫に受け継がせることができるという設定で、「俺の屍を越えてゆけ」を彷彿とさせるし、敵対する蟻の基地に潜入する描写はメタルギアのようである。
また一方で地球を脱出した人間達の宇宙船が新天地を獲得戦とする物語も同時並行で語られる。蜘蛛と人間の物語がどのように下巻 -
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ネタバレ上巻の、宮廷のパーティで自分にはテイクスカラアンの詩をあんなふうに作ることはできない、と感じてつらかったシーンとか、イスカンダーのイマゴの二つ目を入れた時に、子供の頃読んだテイクスカラアンの小説に複雑な気持ちで胸打たれたことが共通点になってることとか、帝国への、大使たちのややこしい憧れと疎外感と、彼ら自身が帝国に誘惑もできてる存在なところが一番魅力的でドキドキした。
ステーショナーたちの文化やメンタルも読んでる側にしたらぜんぜん当たり前ではないのも良かった。帝国のこともステーションのことも知らない読者視点で、マヒートと同じ野蛮人の気持ちも、マヒートのことがエイリアンに見える帝国側の気持ちもちら -
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特徴的なファンタジー作品を読むたびに、人間の想像力の面白さを感じるのですが、この『竜のグリオールに絵を描いた男』もそれを感じました。表題作もそうなのですが、「始祖の石」という短編の発想は特にすごい。竜と魔法の世界で、法廷ものの話が展開されるなんて思ってもみなかった(笑)
そして、この作品集に共通する空気感も、またすごいのです。
魔法の力によって数千年もの間、その場を動けなくなった竜のグリオール。やがて竜の身体は草木に覆われ、その身体には村ができるまでになります。しかしグリオールは死んだわけでなく、そのあまりにも巨大な力は、たとえ動けなくても、人々の思考に影響を与えることができるそうで……
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本の出版が最近なので、新しい作家かと思ったらデビューは1984年だった。日本で紹介された頃が、ちょうど私がSFをあまり読んでいなかった頃なので、初めて読んだ。竜が存在した世界。竜退治の魔法使いの力が及ばず、グリオールを殺すことが出来ず麻痺させるにとどめた世界。横たわったグリオールの上に植物が生え、危険な生物が棲みつき、それでもグリオールは数千年の間、意識を持って生き続けてきた。その邪悪な意思は、付近に住む人たちの心に影響を与える。この世界での4つの物語が収められている。表題作の絵を描くという発想もすごいけれど「鱗狩人の美しい娘」に出てくる竜の内部の描写が素晴らしい。神秘的で幻想的。蠱惑的。そし
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老人と宇宙シリーズの第6巻。本書は4部構成となっている。最もインパクトがあるのは、最初の「精神の営み」だ。脳だけ摘出された貨物船の操縦士の話である。第5巻(戦いの虚空)でも登場していたが、その時も印象に残っていて、本書でも登場して嬉しくなった。
本書はコンクラーベとコロニー連合が睨み合う状態の中、新たな敵が現れる。そこを武力ではなく政治と外交で乗り切るのかが本作品の面白いところ。CDF兵士のウィルスンが、まさに宇宙を駆け巡るのだが、ページを捲ったら別の場所にいるなど、結構忙しい。途中でウィルスンとダニエルのロマンスがあるのかと期待させるところもあり、いろいろ楽しめる。 -
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本作品では主人公がゾーイとなり、まさに書名通り“ゾーイの物語”となっている。前作「最後の聖戦」の裏話的なものとなっているそうだが、前作のストーリーを忘れているので、新鮮な気持ちで読んだ。
個人的な読みどころは、登場人物のパワーバランスというか義理人情をベースに前進するゾーイやオービン族の姿かなと思う。ゾーイはオービン族と特別な関係があり、オービン族はゾーイのためなら平気で命を投げ出すといった特殊事情の中、オービン族はコンスー族との過去との関係があり、さらにコンクラーベやコロニー連合との関係など、複雑な人間模様(宇宙人模様?)が描かれる。特に難しいところはないが、シリーズものなので、前三部作は -
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ネタバレああ、3部作は読めないんだよね。
地球という故郷を失い、
失意の底にあった少年ロビンが
きっと最後は活躍するだろうと信じていました。
でも、そうなるであろう未来はもうやっては来ないのです。
達成感、承認要求というものは
ある種の人の原動力です。
誰しもが求めるものですが
行き過ぎたそれは時に制御不可能な事態を
招きかねません。
今回のプラグマティストたちの一連の事件は
その最たるもの。
クロニア人はそのような事態を「知らなかった」がゆえに
やすやすと彼らの暗躍を
許してしまったのです。
ですが、キーンたちの機転を利かせた作戦
そして、地球からやってきたラッキたちが
幻滅したことにより
プ