内田昌之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「星を継ぐもの」シリーズの最終巻という謳い文句に読まずにはいられなかった。この作品を通して、ホーガンという作者に注目していたが、書店で積み上げられていた本書を早速買い求めた。
「星を継ぐもの」では、月の探査の過程で、5万年前の人類の死体?を発見する、という驚きの導入部からスタートする。さらに続編があり、夢中で追随していった。あれから忘れた頃に、最終巻としてリリースされたことに記憶を呼び起こされた。
マルチバースという物理学の最新理論をもとに、宇宙には並行宇宙があり、それぞれが別の宇宙を形成しているという突拍子もない理論があるが、それが本書の主軸を成している。主人公は、この並行宇宙にいる自分自身から連絡を受け、このマルチバース世界への探究に入り込んでいく。現代の物理学では解明できない不可思議な理論を、遥か先を行く知的生命体での解明に委ねながら、不自然さを払拭するかのような理論を展開しながら、物語への現実感を惑わしていく、その力量は素晴らしい。SF作家は科学を先導する、といっても過言ではないかもしれない、と思わせる作品であり、夢物語に付き合えた気楽さが残る。 -
Posted by ブクログ
その時代その時代に反動的な、
社会的に主流の考えをフィクションから壊してくれるような作品が好きです。
もともとSFというジャンルは現代の風刺をしやすい土壌だと思っていましたが、ハインラインはその中でも話題になりやすかったようです。
この作品も、戦争反対の流れが主流だった1950年代アメリカにあっては、多くの批判が集まったそうです。しかも、カテゴリーはティーンエージャー向けのラノベ扱いだったとか?野心的な試みです。
フィクションを通してとはいえ、戦争を肯定する発言、戦いを通して成長する主人公ジョニーの前向きな内省は、戦争も意外に悪くない?と思ってしまいそうになりました。
私は、この作中ではマイノリティーな反戦論者の一人です。
ただ、どういうシチュエーションならその考えが改まるのか?思考実験するのにちょうどいいストーリーテリングでした。
ちなみに、パワードスーツ、いわゆるモビルスーツですが、個人的には物語のモチーフくらいの役割でした。
物語の骨子がしっかりしていたからでしょうね。
いやー面白かった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ文庫オビにデカデカと書かれている「巨竜美血麻薬」というキャッチフレーズが、パワーワードに過ぎる(笑)
ルーシャス・シェパードの「竜のグリオール」シリーズ、唯一の長編にして最後の作品。このシリーズは、グリオールの邪悪な思念に振り回される人々の不安や不幸を描くことを主題としてきましたが、この作品は他の作品と一味違います。それは、グリオールの思念よりも人間の欲望の方が強い、結局「一番怖いのは人間の心」ということを、まざまざと見せつけていることです。
巨竜グリオールの血を人体に直接投与することで、至上の幸福感に包まれることを知ったロザッハーが、それを売って儲ける、という展開。いつもはここで主人公がグリオールの企みによる(と思われる)不幸に見舞われて不穏な結末に至る、というのがこのシリーズのパターンですが、ロザッハーは違います。まぁ、グリオールの思念を感じさせる場面もなくはないのですが、基本的にロザッハーの行動は、欲望と政治的判断に基づくものです。これまでのシリーズ作品に見られた超自然的な展開は政治の背後に溶け込み、極めてリアルな人間同士の丁々発止の駆け引きがストーリーを牽引します。
元々独創的な世界観をベースに分厚いストーリーが織り込まれ、正にシリーズの掉尾を飾るに相応しい作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「星を継ぐもの」シリーズに見えて、そうでもなかった。
あのシリーズの遥か未来の話、と考えても完全に間違っているということはないかもしれないが、まあ、異星人の影も出てこなかったのでさすがに別の世界線ということだな。
ということで、星を継ぐものシリーズだと思ってたし、紹介文でも「もう一つの星を継ぐもの」って言ってるのでそれを期待して読み始めたので結構肩透かしだった。まあ、もちろんそんな自分が悪いのだが。
今作では地球人は既に滅んでいて、なぜかほぼ同じ見た目の人間が金星で文明を発達させており、近年地球に調査しにきたというところ。
となると、どうせ地球人がギリギリで金星に移住したんだろうと思うが、それは金星人も考えたこと。とはいえ、地球が滅んだ時期と、金星人が生まれた時期に大きな差があるというパラドックスがある、というのが本作の大きな謎の一つ。
そういった謎が散りばめられ、徐々に解明していくのが面白くはあるのだが、それがだいぶ分かりにくい。
というのも…
- 金星人が調査して判断してきた地球人の文化が微妙に間違っていたり合ってたりする
- その地球の歴史もSFが入っているので現実とはちょっと違う
- 金星人の文化がまずわからない
- そもそも自分が地球の正しい歴史や文化もよくわかっていない
という4コンボのおかげで話がかなり理解しにくい。難しい。
金星人が見た目は人類と同じで、精神構造だけが異なるというのが物事を更にややこしくしている。
金星人はガニメアンに近い性格で、争いはあんまりなさそう。人は他の人たちのために働く、力を合わせるのが当たり前という考え。指導者は民衆のために働くのであって、私利私欲なんてそもそも選択肢にも上がらないと。
ただ、それでは発展が見込めない、もっと競争していかねばという「進歩派」が徐々に増えてきている。
そんな進歩派の悪役が一人いるのだが、そいつもあくまでも金星人にしては悪者なので、邪魔者を消すということは完全に追い詰められてから突発的に行う、くらいでせいぜい嫌がらせが関の山。そいつが警察に捕まるときも、何かあったら呼び出すので大丈夫でしょう、解放!となり、全体的に優しさに満ち溢れている。
ホーガンさんは現人類に絶望していたのだろうか。星を継ぐもののガニメアンも優しかったし、今作の金星人も戦争も暴力も縁がない。どの本を読んでも人が死なない優しい世界。
金星人も、はるか昔に絶滅した地球人と自分達の見た目がすごく似てるのはなぜかわかっていないようだが、これって普通に地球人が宇宙船で逃げてコールドスリープして金星に辿り着いたという話では…?
というのは最初から怪しんでいたけど、ちょっとだけ違った。ほぼ全滅しかけた頃に一旦コロニーに退避していて、長い間そこで過ごしていてようやく地球に戻ってきたが、結局ウイルスにやられて退散した先が金星だったということだった模様。
星を継ぐものシリーズだと言われなければ普通に楽しめたかもしれないなぁ。勿体無い読み方をしてしまった。