内田昌之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ前作同様、ねっとりとした筆致で描かれる圧倒的な世界観。今作を鴨がSFとして評価するのはこれも前作同様、「世界の変容」を描いているからです。鴨的に、SFとは物の考え方や世界の見え方を根底から揺さぶる、「変容」を描く文学だと思っています。それが科学的な変容でも、社会的な変容でも、一個人の価値観の変容でも、揺さぶる幅が大きければSFたりうる、と定義しています。そういう視点において、グリオールの思念が世界に影響を与えるこの作品は、まさにSFです。
前作との大きな違いは、前作では物語の世界観を形成するバックグラウンドの立ち位置にあったグリオールが、今作では思いっきり「主要キャラ」として生き生きと動き回っていること。吠えたり襲ったり空飛んだり、まぁ忙しいこと忙しいこと(笑)前作の、世界背景に溶け込んだグリオールの姿しか知らない鴨的には、「えっ?えっ!?」と結構衝撃でしたヽ( ´ー`)ノ
でも、結局の読後感は前作と同様で、主題はグリオール自身ではなく、彼の邪念に絡めとられて閉塞感に苛まれる人間の愚かさを描くことなんだろうなー、と感じました。収録作「タボリンの鱗」「スカル」のどちらも、主役級の人間は最終的に生き延びます。生き延びるのですが、その先に広がるのは例えようのない絶望感。邪竜グリオールは既にいない、それでもなお視界を覆う不穏な空気、ひっそりと忍び寄る不安な気配・・・なんでしょうね、このゾワゾワした感覚。文字だけでこのゾワゾワ感を表現できる、ルーシャス・シェパードの筆力を感じますね。
というわけで、それなりに面白いです。が、読後感はめちゃくちゃスッキリしません(^_^;
それでも読んでみたい!という上級者向けの作品ですね、これは。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ凡作。読める文章ではあるが、面白くない。
タイトルからすごくワクワクしたのに、期待外れだ!
と星1をつけないだけマシだと思っていただきたい。
純文学という装いで提示されたら、別の評価をする。
『エンタメ』として提示されたら、精々が凡作。と言うよりほかはない。
具体的に評価できないポイントは『キャラクター』と『筋立て』の2点。
・キャラクターの描写が、ワークショップで習った技法なりに頑張ってるんであろうけど、血肉の通った人として読み取れない。外見以外の表現が、常に第三者視点であり、キャラがでてこない。
・キャラクターの内面の変化や人格が、訳文で読む限りにおいて、『作者が神の/現代人的な視点から描写した言葉』であって、『そのキャラならこういう言葉遣いでこう述べるだろう気持ち』で表現されていない。
・筋立てがもう……純文学すぎて、わあもう。
第1話:このタイトルで、どうやればここまで、「下らない人間の野心やいざこざを、だらっと描いてて、なんか政治の都合で工事中断したら竜も(原因不明のまま)死んじゃう。」という内容で終わらせ切れるのか。謎である。
第2話:神秘の竜の探索が全然、驚きも感動もなく描かれてて、平凡な人生の延長線上にある、やっぱり平凡で全く打ち解けない『何か』のように、退屈に描写できるのもある種才能を感じる。
しかもギミックとして登場する『蔓草』が、デウス・エクス・マキナすぎて面白くない。
第3話:法廷ドラマも、うん……、法廷ドラマですが……別にグリオール要らなくない?
あらゆる人のあらゆる行動が『竜グリオール』の影響下にあろうがなかろうが、「いずれ考えるのを止めて動かねばならない」のだとしたら、この話に背景画として描かれた竜は惰性で登場しているに過ぎない。
なお、ミステリ的な意味で評価すると、あらゆる部分に無理がありまくりで、話が破たんしないかどうかが、はらはらする。
第4話:変身したい男の苦しい言い訳が、「グリオールに影響されていた」なら、彼を吊るしたい人々の「グリオールを吊るすわけにはいかないから、お前は代理ね!」も通るという。不条理な社会の軋轢を最前線で人間に仮託した話と言えば言えるだろうが、これファンタジーで銘打ってやるべき話だっけ感がぬぐえない。
なので、エンタメ作品としては凡作。
文体はねちっこいというか細かくて重厚だが、キャラがイマイチ生きてる感じしない。評者的には好きになれないタイプなので、
「背景美術が荘厳な劇場で演じる大根」
という評価。
純文学的なテーマを追求するにも、キャラクターが生きてないわ世界に入り込みづらいわ、なので星3つとした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表紙とタイトルで珍しく海外ファンタジーに手を出してみたけど、翻訳モノってセンスのズレが言語のせいなのか訳者のせいなのか解らなくてなんとも…
稀代の魔法使いと相討ちになり、生命を維持する以外の活動を停止している巨大な竜。殆ど大地と一体化しているその身体の周辺には街が出来…と云う設定勝ちなところはある。
或いはこの物語そのものがグリオールによって書かされている可能性だって見えてくる。解説にあるように、暗喩としては社会体制であるとかを踏まえて書かれているんだろうけれど、そういった状況が果たして良くないものばかりを生み出すと決まっているかと云われるとなんとも云えないわけで。
しかし現代ファンタジー、ってジャンルとしてあるのかしら?
いやでも現代ファンタジーって云うともっとそれらしいのは沢山あるような…異世界云々ってあれも現代ファンタジーなわけ? 要するに現行の世の中の仕組みをファンタジーに持ち込んで面白可笑しくする…ってなるとそれはもうアンチファンタジーなんじゃないかって気がするけど。
この間から、えすえふとはなんぞや、ファンタジーとはなんぞや、みたいな枠組みの話ばかり。
嗚呼、我がグリオールは何処。なんてね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ紛争調停人のキーラン・セインは、休暇で火星を訪れた。ギネスを伴って。彼は彼の親友。黒色のドーベルマンとラブラドールの血を継いでいた。ジューンのアパートに腰を落ち着いたキーランは、クアントニックスのテレポーテーション技術の実験の結果を聞いていた。今度は開発者自身が被験者になったという。そして成功したと。でもそれはオリジナルがコピーされたので失敗はないとのことだった。キーランは驚いた。オリジナルのコピーがいるのだと。それは問題にはならないのだろうか?久しぶりのホーガンだ。火星に巨石遺跡だって!でもなかなか巨石遺跡にはお目にかかれない。ようやく第二部で出てきたけど。どうも脇役のような感じ。それに最後に巨石文明を作った古代人の呪いとかの言及が…。ちょっと、期待したホーガンとは違うようだった。
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Posted by ブクログ
ルーシャス・シェパードの書いた、巨大な竜であるグリオールを中心に動く世界に生きる人間たちの物語を、全7作品中4作品集めた短編集。
後半になるほど面白くなっていく、スルメ作品だなっていうのが素直な感想。故に後半2作は本当に面白かったし、文章の書かれ方も大分変っていたように思う。冒険譚のようなものではないけど、ファンタジーの世界で生きる、巨大な竜に突き動かされる世界で生きる、人間味があったり、とてつもない存在だったり、闇が深かったり、キャラクターたちが繰り出すそれぞれの物語はとても魅力的だった。
自分自身もグリオールに、この本を読むことを強制されているのかもしれない。